ロボティクスとは、ロボットの設計や制作、制御を行う「ロボット工学」のことです。労働力の減少や人件費の上昇による自動化需要が高まるなか、ロボティクスは産業分野をはじめ医療・介護分野などの様々な分野で活用されるようになりました。ここでは、ロボティクス業界の開発現場に役立つ基礎知識やトレンド、ノウハウを紹介します。
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有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬、遺伝子組換え技術を利用せず、環境への負荷をできる限り低減した農業です。地球環境への優しさに加え、生産者および消費者の人体への悪影響の可能性がなく、豊富な栄養を含んだ作物が育つこともメリットがある一方で、農薬を使わないため、栽培に手間がかかり、労働時間は慣行農業の1.5倍かかるデメリットが存在します。この労働時間の多くを占めるものが、雑草を抜くまたは抑草のための除草作業です。この除草作業を自動化するロボット「アイガモロボ」の開発に取り組むのが、東京農工大学発ベンチャーでスタートアップの有機米デザイン株式会社です。今回は、アイガモロボの開発者でもある同社取締役の中村氏にアイガモロボの開発ストーリーに加え、同ロボット活用による日本の農業存続への期待についてお話を伺いました。
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リハビリ支援ロボットとは、事故や疾病などを原因とし後遺症が残った対象者にその能力を回復させる目的で実施する訓練や療法、リハビリテーションを支援するロボットです。日本人の三大疾病に数えられている脳血管疾患(脳卒中)を例にとると、厚生労働省の調査によれば、2017年の患者数は111.5万人に上ります。発症して死を免れたとしても、重い麻痺が残り、歩けなくなったり、介護を必要としたりするケースも多いことから社会問題にもなっています。今回は、脳卒中患者のリハビリをサポートし、社会復帰を促すためのロボット「ウェルウォーク」を開発するトヨタ自動車株式会社新事業企画部の中村氏に、リハビリ支援ロボットの開発ストーリーをお伺いしました。
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海洋プラスチックは、海洋に流入したプラスチックの浮遊ごみやマイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下の微細なプラスチックの総称です。海洋プラスチックが注目される背景として、海上に漂う分解されにくいプラスチックが海の生物に付着したり、体内に取り込まれたりしたことが確認されたため、海の生態系に深刻な影響を及ぼす懸念がクローズアップされました。このような状況下において、海洋プラスチックや油などの浮遊ごみを回収するドローンJELLYFISHBOTを開発したフランスのスタートアップIADYS(アイァディーズ)は、これまでに157万ユーロ(約2億円)の資金調達に成功しています。今回は、IADYS創業者でJELLYFISHBOTの開発者であるNicolas Carlési(以下ニコラス)氏に、開発した水上ドローンの概要や世界各地での実証実験の状況についてお伺いしました。
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物流ロボットとは、物流現場における「ピッキング」や「仕分け」といった業務を担うロボットであり、完全無人の環境下だけでなく、人との協働を行うものも存在します。多忙を極める物流の現場では、大量の荷物を効率よく運ぶために欠かせないものが格子状の台車「カゴ台車」が普及していますが、搬送に人手がいることや人身事故の発生といった課題を抱えていました。物流システムを扱う株式会社オカムラは、物流倉庫などでカゴ台車を掴んで搬送する自律走行搬送ロボットを開発しています。今回は、物流システム事業本部の山崎氏、田中氏に、同社が手がけるSLAM技術とAIの組み合わせでカゴ車を自動搬送する自律移動ロボットの開発ストーリーをお伺いました。
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物流支援ロボットは、人手不足が顕著となっている物流業界の省人化・効率化をめざし開発されたロボットです。自動車やロボットの自動運転技術を開発してきた株式会社ZMPは、人の移動だけでなく、物の移動も自動化するために2014年に物流支援ロボットの「CarriRo(R)(キャリロ)」を開発しました。同ロボットはコロナ禍による物流需要の高まりや、省人化の取り組みに対する関心の高まりから、倉庫や工場での導入が増えていると言います。今回は、株式会社ZMPのCarriRo事業部長笠置氏に、物流支援ロボットの開発背景や特徴、種類について詳しくお伺いしました。
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コミュニケーションロボットとは、家事を手伝い、人と会話し、心を通わせ、家族のように暮らすといった人とのコミュニケーションを果たすロボットです。一方で、身近にあるロボットは、重たいものを運んだり、正確な作業を長時間続けたり、人間以上の能力を発揮して世の中の役に立っています。しかし、ロボットは人より力強くて、有能で、社会に役立つ存在でなければいけないと誰が決めたのでしょうか?今回は、身体性を伴うコミュニケーションが成立する過程について研究を行うなか「弱いロボット」という概念を提唱した豊橋技術科学大学情報・知能工学系の岡田教授に、コミュニケーションロボットの未来についてお伺いしました。
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日本の製造業は、弱体化が指摘される一方、素材産業や工作機械など世界的なシェアを維持する分野も少なくない。そうした状況を踏まえ、日本の製造業が再び世界で強みを発揮するには、どの分野に注力すべきか、戦略的に考えることが重要だ。大きな可能性のあるものとして挙げられるのが「ロボット産業」だ。現状でも日本は産業用ロボットの分野で世界に評価されているが、さらにサービスロボット、知的ロボットといった分野を伸ばしていくための鍵は何か。2冊の書籍から考察してみたい。
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2021年11月10〜11日の2日間、パシフィコ横浜にて「横浜ロボットワールド2021」が開催されました。本展示会は、人間に対して直接サービスを提供するロボット「サービスロボット」に特化した展示会としてスタートし、毎年大阪と横浜にて2度開催されている展示会です。現在ではロボット技術自体やモビリティなどの専門技術展として発展した内容となっています。今回は、印象に残ったロボットとAIによる受診支援ロボット、突出型リニアアクチュエータや球駆動式の全方向移動機構の展示内容をご紹介します。
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近年北海道では酪農の集約、大規模化が進んでいますが、従来の日本の酪農方法である「舎飼い」では生産効率が上がらないなどから、「放牧」への転換が注目されています。しかし、大規模な放牧でも、「放牧のエリア選定」や「牛追い」など人手不足による課題があるといいます。今回の後編では、人手不足を解決する北海道の「宇野牧場」の取り組みの中で、システム開発会社と協業しAIやドローンなどIT技術を駆使し放牧の課題を解決しようとする事例についてご紹介します。
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高齢化、核家族化により、全国的に買い物難民が増えている中、都市部では店も多く買い物は行きやすいと思われますが、車を持たない人など徒歩で買い物に行く高齢者も少なくないです。ネットショップなども利用できるものの、配送ドライバーの人員不足などの問題でまだ解決していません。今回は、自動運転やロボット技術を駆使し様々なロボットを開発している株式会社ZMP 代表取締役社長の谷口恒氏に、同社の「無人宅配ロボット」の機能と今まで行った実証実験の成果についてお話を伺いました。
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物流配送において、配達スタッフの人員不足、地方での過疎化と高齢化、都市部のマンションやオフィスビルのセキュリティ強化などの問題から、荷物を受取人まで届けるラストワンマイル配送にロボットを導入しようとする動きが進みつつあります。今回は、屋内配送に特化した「自律走行配送ロボット」を開発している香港発Rice Robotics社のCEO Victor Lee氏と日本での販売、導入支援を行うアスラテック株式会社に、「自律走行配送ロボット」の活用場の開発や、社会実装に向けたデザイン設計についてお話を伺いました。
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近年ドローン(無人航空機)の商用化が急速に進められており、ホビードローンだけでなく、農業や林業での植物生育状況の空撮・センシングや、災害時の状況調査、宅配など物流分野などその応用は多岐に渡っています。一方、墜落事故が相次ぐなど安全性については厳しく検討され、飛行条件が厳しく規定されています。今回は、ドローンの安全性を確保するための通信技術を研究している情報通信研究機構(NICT)に、ニアミスを回避するためのドローン間の直接通信技術についてお話を伺いました。
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ネットショップなどのEC市場は右肩上がりで拡大を続けていますが、物流業界は倉庫内で商品をピッキング・梱包する作業に従事する人材の不足に悩んでいます。そこで、ピッキング作業の自動化が注目されていますが、この作業はコンピューターとロボットで行うには難易度が高く、自動化は進んできませんでした。今回は、作業の一部をロボットが補助する形で省人化を目指しているラピュタロボティクス株式会社に、同社が開発しているクラウドコンピューティングによるAMR(自律走行搬送ロボット)が、どのようにピッキング作業を省人化しているかお話を伺いました。
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2021年6月14~16日に、幕張メッセにて「Japan Drone 2021(第6回 ジャパンドローン)」が開催されました。ジャパンドローンは、名前の通り、日本のドローン技術の発信と企業交流の場を提供している展示会です。急速な市場の広がりなどの影響によりこれまで以上に安全性が求められるドローン。今回は、緊急パラシュートシステムやエアバッグなどドローンの安全に関する技術や、商用運用ドローンの飛行時間の延伸に関する技術についてご紹介致します。
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農家の課題を解決するために、外部の技術者とタックを組んで新しい農業の仕組みを開発する方法もありますが、「必要は発明の母」というように、農家自ら農業における課題を解決できる仕組みを開発することも一つの方法かもしれません。今回は前編で紹介した農業ベンチャー、AGRIST株式会社のアドバイザーとして、またピーマン農家を営みながら自ら農業向け発明を行っている福山望氏に、同氏が考えた「ピーマン収穫ロボット」の基本概念や、収穫ロボットなど農業ロボットを開発することで実現する人間とロボットの共存についてお話を伺いました。
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「適切に収穫できれば収量も増えるのに、その人手が確保できない」など、日本農業の人手不足は深刻な課題です。人手不足が解決できなければ「儲かる農業」は実現できず、新規就農者や後継者も増えません。そこで、AIとロボット技術でこの課題の解決に挑んでいるのが、農業ベンチャーAGRIST株式会社です。今回は、同社に吊り下げ式、2度切り可能なピーマン収穫ロボットについて、その開発経緯や販売仕組みについてお話を伺いました。
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ブレイン・マシン・インターフェース(以下BMI)技術は、頭皮の外側から脳波を計測する装置を搭載したヘッドギアをつけて行う「非侵襲型」が主流ですが、脳との間に隔たりがあるため脳波にノイズが混ざり精度に欠けてしまうのが難点となっています。そこで、頭蓋骨を外して電極を挿す、つまり身体に手を加える「侵襲型」が提案されていますが、その普及には心理的ハードルが懸念されているようです。今回は、アンドロイド研究の第一人者である株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の石黒浩氏に、「侵襲型」BMI普及における心理的ハードルに関する見解と、その普及が社会にもたらすインパクトについてお話を伺いました。
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人間の脳波を利用して脳とマシンを直接つなぎ、頭で動けと念じるだけでモノを動かせる技術、「ブレイン・マシン・インターフェース(以下BMI)」をご存じでしょうか。従来、BMIは身体の麻痺や欠損による障がいを補うことを主な目的として研究が進められてきました。しかし、最近の研究により健常者にとってもBMI使用は脳機能向上などメリットがあることが示唆されました。今回は、BMI使用による人間の身体機能拡張への可能性を研究している株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の西尾修一氏に、BMIを用いた「第3の腕」を動かす実験や、その結果得られた健常者へのメリット、また実用化までのハードルについてお話を伺いました。
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自律化は、最近の大きなITメガトレンドの一つです。例えば、家庭向けの癒し系ロボットは、これまで予めプログラムされている言葉を話すこと「自動化」を行っていたのに対し、今後AIの自然言語処理技術により、相手の意味を理解し、対応すべき候補から応答してくれる「自律化」が期待されています。こういった自律化の応用では半導体が重要な機能を果たしています。今回は、半導体の果たす重要な機能に注目し、自律化の3つの応用事例として自動運転車、ドローン、癒し系ロボットについて解説します。
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2020年11月7~8日に、沖縄県宜野湾市宜野湾新漁港にて「第6回 沖縄海洋ロボットコンペティション」が開催されました。今回も引き続き、実際に海上が会場として採用されている世界的にも珍しい海洋ロボット競技大会、コロナ禍の中で開催された大会様子をお届けします。今回は、大会2日目に行われた予選、豪雨の中で行われた決勝の結果、各部門の勝者とその海洋ロボットの仕様についてご紹介します。