近年、地球温暖化をはじめとしたさまざまな環境問題が顕在化しており、世界各国では持続可能な社会の実現へ向けたサステナビリティの取り組みのなかで環境・エネルギーも注目されています。ここでは、環境・エネルギー業界の開発現場に役立つ基礎知識やトレンド、ノウハウを紹介します。
-
化学産業にイノベーションを起こすことが期待されるマイクロ波を紹介する本連載。後編では、マイクロ波を活用した化学品製造プロセスの実用化状況に注目します。内部から直接、特定の分子だけにエネルギーを伝達する電子レンジに使われているマイクロ波の特徴を活かし、消費エネルギー1/3、加熱時間1/10、工場面積1/5の削減可能性がある技術を開発したマイクロ波化学。同社はどのように本技術の社会実装を進めてきたのでしょうか?後編では、引き続きマイクロ波化学代表取締役の吉野氏に、マイクロ波を活用した化学品製造プロセス実用化に向けた取り組みや将来的な技術開発展望についてお伺いします。
-
化学産業は医薬品、化粧品から農業、食品、製造、輸送など幅広い分野へ原材料や触媒などを提供してきた一大産業であり、2013年度時点で化学産業のエネルギー消費量は日本の全産業の40%、二酸化炭素排出量では22%を占めています。脱炭素社会を目指す日本にとって、化学品製造プロセスの省エネルギー化が求められています。一方で、従来の化学品製造プロセスは熱と圧力を使ったものが主流であり、100年以上の歴史のなかで変化がありません。今回は、化学産業にイノベーションを起こすことが期待されるマイクロ波に注目し、2回にわたってマイクロ波化学代表取締役の吉野氏へお話を伺いしました。前編では、マイクロ波の化学品製造プロセス実用化に向けた開発秘話をご紹介します。
-
PCP社会実装に向けた取り組みを紹介する本連載。後編では、産業ガスの高効率貯蔵でエネルギーインフラ改革を目指すPCPの最新事例に注目します。キュビタンは、京都大学発スタートアップAtomisで開発された「Cubic Tank」の略であり、ガスボンベの概念を大きく覆すことが期待されるキューブ型のガス容器です。後編では、Atomis代表取締役浅利氏に、キュビタン概要やPCP社会実装に向けて製品だけでなくビジネスモデル開発も行う同社取り組みについてお伺いします。
-
再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第7回目は、建築・住宅における太陽エネルギー利用についてです。日本において全消費エネルギーに占める住宅の割合は14.1%あり、これをゼロに近づける技術の開発と普及が進められています。太陽光発電システムの導入にプラスして、太陽熱を取り入れ、断熱・蓄熱、空気の流れの工夫などにより空調や給湯などにかかるエネルギーを減らす技術が開発されているのです。今回は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、PVTシステム、パッシブソーラーとZEB(ゼロエネルギービル)の4つのトレンドについて解説します。
-
2030年までの商用化に向けて動き出すCCUS動向を紹介する本連載。後編では、北海道・苫小牧市にて2012年より開始された大規模なCCS実証実験に注目します。CCSは二酸化炭素を分離・回収して地中に貯蔵するCCUS主要技術です。これまでCCUSにおけるCO₂を分離・回収し、貯留するまでの各要素技術が各々の分野で確立されてきましたが、今回の実験では統合した一貫システムとして機能するのかの検証が行われました。後編では、経済産業省の担当者に、CCS実証実験で得られた成果と課題についてお伺いします。
-
CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は分離・貯留したCO₂を利用する技術の総称であり、CCS(二酸化炭素(CO₂)を分離・回収して地中に貯留する)とCCU(分離・回収したCO₂を利用する)で構成されます。CCUSは、国際エネルギー機関(IEA)の2020年のレポートによれば、2070年までの累積CO₂削減量の15%を担い、カーボンニュートラル達成時に約69億トン/年の削減貢献が期待されています。今回は、2030年までの商用化に向けて動き出すCCUS動向に注目し、2回にわたって経済産業省へお話を伺いしました。前編では、CCUSの概要やアジアCCUSネットワークの取り組みについてご紹介します。
-
脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。第10回目は、福島県・浪江町に「福島水素エネルギー研究フィールド(以下FH2R)」という再生可能エネルギーを利用した水素製造施設を立ち上げた「産(民間企業)」と「官」の取り組みに注目します。今回も、9回目に続いてFH2Rの取り組みと活用事例、電力系統の需給バランスの調整(ディマンドリスポンス)の重要性についてお話を伺いました。
-
脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。第9回目は、福島県・浪江町に「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」という再生可能エネルギーを利用した水素製造施設を立ち上げた「産(民間企業)」と「官」の取り組みに注目します。今回は、福島県が復興に向けて「再生可能エネルギー」と「水素」に注目した背景や、再生可能エネルギーの活用拡大における課題についてお話を伺いました。
-
再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第6回目は、太陽光の熱をそのまま使う「太陽熱利用システム」についてです。太陽熱利用は太陽光発電に比べて、電気に変換する際のロスがない分、上手に使えばエネルギー利用効率が高いと言えます。今回は、世界と日本の太陽熱利用システムの設置面積の推移、太陽熱利用システムとソーラークッカーの特徴と種類について解説します。
-
ペロブスカイト太陽電池の研究開発ストーリーや特徴などについて、同太陽電池の研究開発を主導した桐蔭横浜大学の特任教授 宮坂力氏にお話を伺う本連載。ペロブスカイト薄膜は、ペロブスカイトの原料液を垂らし、溶液の溶媒が揮発することでペロブスカイトの単結晶ができるというシンプルの製法ですが、研究者個人としての成膜を作る達人の存在が重要になるといいます。後編は、ペロブスカイト太陽電池の構造、製造方法、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた特性研究、従来のシリコン太陽電池との比較などについてお話を伺いました。
-
ペロブスカイト太陽電池の研究開発ストーリーや特徴などについて、同太陽電池の研究開発を主導した桐蔭横浜大学の特任教授 宮坂力氏にお話を伺う本連載。中編では、化学でもあり物理学でもあるペロブスカイト太陽電池研究の特徴や、ペロブスカイト太陽電池の実現するまで重要な役割を果たした研究者同士のつながり、開発中のペロブスカイト太陽電池の課題を、色素増感太陽電池の全固体研究成果を適応して解決した開発ストーリーについてお話を伺いました。
-
太陽電池は、環境への配慮など持続可能な社会を支える上で利用が増えていますが、その材料として広く使われているのがシリコンです。一方、透明で柔軟、軽いという特性をもつ「ペロブスカイト」を使った太陽電池の研究開発も盛んに進んでいます。今回は、このペロブスカイト太陽電池に注目し、3回にわたって、同太陽電池の研究開発を主導した桐蔭横浜大学の特任教授 宮坂力氏に、ペロブスカイト太陽電池の研究開発ストーリーや特徴などについてお話を伺いました。前編は、学生の提案によりペロブスカイトによる太陽電池の研究を行った経緯についてのお話です。
-
IPランドスケープとは、英語でいうと「Intellectual Property Landscape」で「自社、競合他社、市場の研究開発、経営戦略等の動向及び個別特許等の技術情報を含み、自社の市場ポジションについて現状の俯瞰・将来の展望等を示すもの」であり、知財に関する環境と見通しを意味します。今回は、ビジネス・オーナーと知財アナリストをマッチングする場を提供し、IPランドスケープを使ってビジネス開発をしようとする「NBIL-5」という任意団体に焦点をあてた連載の後編として、NBIL-5の活動事例を紹介します。水素内燃機関の事業化に取り組んでいるi Labo株式会社 代表取締役社長 中山泉氏に、水素内燃機関の技術と意義、NBIL-5によるIPランドスケープなどの具体的な知財サポート事例についてお話を伺いました。
-
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年の国連サミットで宣言された「2030アジェンダ」の中核をなす、測定可能で期限を定めた17の目標です。なかでもSDGs目標12「持続可能な生産消費形態の確保」では、天然資源の管理及び効率的利用をうたっており、循環型経済への変換に向け製造業の貢献が期待されます。本記事では、環境負荷に配慮した循環型ビジネスを手掛けるエステー株式会社の協力のもと、SDGs目標12の詳細や他社とのコラボレーションで進める循環型ビジネス事例などの情報をご紹介します。
-
再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第5回目は、太陽光発電とともに再生可能エネルギーの主要な発電方式の一つである「風力発電」についてです。太陽エネルギーと風は無関係のように思われがちですが、地球に降り注ぐ太陽エネルギーが大気を動かし、風を発生させていますので、大きなくくりでは風力発電も太陽エネルギー由来だとも言えます。今回は、風力発電の仕組みや導入量の推移、洋上風力発電について解説します。
-
国連(UN)が2015年に採択した17の「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち、目標6である「安全な水とトイレを世界中に」。世界の人びとに安全な水と衛生へのアクセスを確保することが掲げられており、自宅にトイレのない生活を送っている約20億人など不衛生な環境に置かれている人々のための施策が求められています。今回も引き続き、水を使わずに微生物の力で排泄物を処理する「バイオトイレ」を開発・販売している正和電工株式会社 代表取締役 橘井敏弘氏に、ベトナムの世界遺産・ハロン湾に導入したバイオトイレなど発展途上国での利活用事例についてお話を伺いました。
-
前編では、日本のトイレの9割が公共下水道または合併処理浄化槽を使って処理されていますが、1割はまだ汲み取り式などの非水洗トイレであり、そうしたトイレにバイオトイレが適しているという解説と、正和電工がバイオトイレの開発を始めるきっかけについて紹介をしました。しかし、上水道も下水道も浄化槽も必要なく、糞尿が消滅し、匂いもしない、良質な肥料ができるトイレがあることを、世間にはなかなか認知してもらえず、国内では法律の障壁もあり、認められるまでには長い年月がかかりました。中編では、日本で認められるまでのストーリーを紹介します。
-
トイレは私たちが当たり前のように毎日使用していますが、日本のおよそ9割が使用している水洗式トイレは、都市部のように下水道が整備なしでは使用できない設備であり、人口密度の低い農村部などでは汚水処理の設備が整っておらず汲み取り式トイレが使われています。日本のおよそ1割が使うこの汲み取り式トイレは、衛生面で安全とは言えません。今回は、水を使わずに微生物の力で排泄物を処理する「バイオトイレ」を開発・販売している正和電工株式会社 代表取締役 橘井敏弘氏に、バイオトイレが必要な理由と、26年前から開発を始めたきっかけ・商品化までの道のりについてお話を伺いました。
-
サステナビリティに対する意識が世界的に高まっている中、環境に大きな負荷を与える既存の材料を見直す動きが出てきています。例えば、製造工程で多くの二酸化炭素を排出するほか、海洋プラスチック問題を起こしているプラスチックや、枯渇が危惧されている水・森林資源でつくる紙に代われる素材への研究開発がなされています。今回は、石灰石から紙・プラスチックの代替素材を開発している株式会社TBMに、石灰石からつくる環境面でのメリットや、代替素材としての特徴についてお話を伺いました。
-
プラスチックは軽く、耐水性があり、加工もしやすいという特徴から、ペットボトル、買い物袋など使い捨て製品に多く使われていますが、リサイクル率の低さや投棄などによりプラスチックごみ問題は深刻化されています。この問題への一つの取り組みとして代替プラスチックの研究開発が行われています。今回は、代替プラスチックの中でも生分解性プラスチックに注目し、その開発を行っている三菱ケミカル株式会社に同社の生分解性プラスチックの特徴と活用事例、生分解性プラスチック普及の課題についてお話を伺いました。