近年、地球温暖化をはじめとしたさまざまな環境問題が顕在化しており、世界各国では持続可能な社会の実現へ向けたサステナビリティの取り組みのなかで環境・エネルギーも注目されています。ここでは、環境・エネルギー業界の開発現場に役立つ基礎知識やトレンド、ノウハウを紹介します。
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脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。CO₂フリー水素は、水素の製造工程でCO₂排出を抑えたブルー水素の一種であり、具体的には原料となる水や石炭から複数種類のガスを取り出し(ガス化)、CO₂のガスは大気中に放出されないよう分離・回収し、H₂のガス精製を行う工程で製造されます。第11回目は、化石燃料由来のCO₂フリー水素製造・供給・利用の商用化を目指す電源開発株式会社(J-POWER)の取り組みに注目し、同社が進める2つの実証試験、石炭を輸入し国内でCO₂フリー水素を製造するプロジェクト、産炭国でCO₂フリー水素を製造し日本に輸送するプロジェクトについてお話を伺いました。
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再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。最終回となる第10回目は、日本における再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを紹介します。再生可能エネルギーの導入ポテンシャルとは、現在の技術水準では利用困難なものや法令・土地用途などによる制約があるものを除き、賦存量の中で利用可能とみなせる再生可能エネルギーの潜在的な量を意味します。今回は、環境庁の再生可能エネルギー情報提供システム(PEPOS)のデータを基に導入ポテンシャルを把握するとともに、これから日本の地域毎にどのように再エネ政策を考えていくべきか、東京農工大学工学研究院の秋澤淳教授に解説いただきました。
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透明太陽電池とは、既存の太陽電池が約400〜1,200nmの波長の可視光線を含む光を吸収して発電するのに対し、可視光線の多くは透過させ、可視光線外にある赤外線(IR)と紫外線(UV)を使って発電するため透明に見える太陽電池です。透明太陽電池の基礎技術を開発した米国のスタートアップ企業ユビキタスエナジーは、透明な窓ガラスでの太陽光発電の研究開発を進めており、その重要なパートナーを務めているのがガラスメーカーである日本板硝子株式会社です。今回は、日本板硝子ビルディングプロダクツ株式会社の清原氏に、透明太陽電池が拡げる窓ガラスの可能性についてお話を伺いました。
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熊本大学が研究開発を進める「パルスパワー」を紹介する本連載。熊本大学が研究開発を進める「パルスパワー」はアニサキスの殺虫だけでなく、コンクリートの減容化にも使われています。コンクリートの減容化とは、コンクリートを構成する「骨材」と「セメント」を破砕・分解することで廃棄物などの容積を減少させることです。高精度な減容化が実現できれば品質の高い再生骨材を生産できるため、最終処分材(産廃物)の削減にも寄与し、コンクリートの再利用、すなわちリサイクルにも貢献することが期待できます。後編では、前編に引き続き熊本大学の浪平准教授氏に、パルスパワーによるコンクリート塊の骨材再生処理技術についてお伺いします。
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LNG(液化天然ガス)は、天然ガスを超低温で冷却し無色透明な液体としたものです。液化の際に体積の600分の1となる特徴を活かし、大量のLNGがLNGタンカーにより海上輸送されています。LNGは蒸発して天然ガスに戻る(再ガス化)の際に、周囲から熱を奪い冷却する現象「冷熱」が生じます。この冷熱利用で注目されているFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)です。FSRUは、洋上でLNGを受け入れてタンクに貯蔵し、必要に応じてLNGを温めて再ガス化した高圧ガスを陸上パイプラインに送出する浮体式設備です。今回は、LNG導入の低コスト、短期間での実現を目指すFSRUプロジェクトを手掛ける商船三井の近藤氏、中山氏および岡氏に、プロジェクト開発のお話を伺いました。
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再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第9回目は、太陽エネルギーなどを使って製造することができ、燃料電池などで利用される水素についてです。太陽光発電や風力発電などの変動が大きい自然エネルギー、そして季節や昼夜で大きく変動するエネルギー需要に対応するため、その運び手と調整役として水素エネルギーが期待されています。水素需要シナリオを紹介しつつ、製造プロセスの種類によって色分けされる水素の種類や燃料電池など水素の利用形態について解説します。
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2022年1月26〜28日の3日間、東京ビッグサイトにて「第16回 再生可能エネルギー世界展示会&フォーラム RENEWABLE ENERGY 2022」が開催されました。本展示会では、省エネ・再エネのようにエネルギーをうまく活用することで化石資源の消費抑制を図り、地球温暖化の防止と持続可能な社会の実現を目指すための様々な技術が紹介されていました。今回は、「太陽光パネルお掃除ロボット」、「プラスチック製雨水貯留浸透施設用ブロック」、「肌になじみやすい特殊ポリレフィン」および「様々な素材に適用できるメッキ用プライマー」の展示内容を紹介します。
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2022年1月26〜28日の3日間、東京ビッグサイトにて「ENEX2022 第46回 地球環境とエネルギーの調和展」が開催されました。本展示会は、「エネルギーミックスで加速する脱炭素社会」をテーマとする需給一体型のエネルギーに関する総合展であり、脱炭素社会の実現に欠かせない省エネ、エネルギーマネジメントやデジタル技術、再生可能エネルギー商材などが出展されていました。今回は、「廃プラスチックのカーボンナノチューブ変換技術」と「環境振動を利用した発電素子」、「銅ドーピングを最適化したマグネシウム・アンチモン系熱電変換モジュール」および「農業用水の高低差を利用したナノ水力発電ユニット」の展示内容を紹介します。
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セルロースナノファイバー蓄電体開発者に聞く脱炭素社会の材料開発を紹介する本連載。後編では、セルロースナノファイバー蓄電体が持つ可能性に注目します。アモルファス物性を巧みに利用し、環境負荷の低い植物由来のセルロースナノファイバーを用いた蓄電体の開発を行う東北大学未来科学技術共同研究センターのリサーチフェロー福原氏は、脱炭素社会でどのような用途を考えているのでしょうか?後編では、引き続き福原氏に、セルロースナノファイバー蓄電体の特性や用途、その可能性についてお伺いします。
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全固体電池は、電子の蓄積や電子の移動を担うイオン伝導を実現する電解質が従来の液体でなく固体で構成された電池です。従来の電池では、電解質の蒸発、分解、液漏れなどの液体特有の課題があり、長期保管や電池性能向上の妨げとなっていました。本状況下において2021年に東北大学より固体電解質に関わる「セルロースナノファイバーによる蓄電体の開発」が発表されました。今回は、脱炭素社会における材料開発に注目し、2回にわたって同研究開発を主導した東北大学未来科学技術共同研究センターのリサーチフェロー福原氏へお話を伺いしました。前編では、アモルファス物性の概要やアモルファス物性により蓄電効果が高まる原理についてご紹介します。
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超音波霧化分離とは、混合溶液に超音波を照射して霧化し、物質を分離・精製・濃縮する技術です。徳島県鳴門市に拠点を構えるスタートアップ「ナノミストテクノロジーズ」は、「超音波霧化分離」を用いた独自装置を用いて、従来の化学プロセスで利用されてきた蒸発・蒸留法に比べ使用エネルギーを3〜7割、CO2排出量を4〜8割削減したと発表しました。今回は、化学産業のCO2排出量削減に期待される「超音波霧化分離」の装置開発を行うナノミストテクノロジーズ株式会社代表取締役社長の松浦一雄氏に、超音波霧化分離の原理や概要、同技術の適用事例についてお伺いしました。
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「黒の中の黒」を追求する研究開発を紹介する本連載。後編では、「究極の黒」を身近にするプラスチック製品への「反射防止構造体」成形転写技術の可能性に注目します。金型の表面に微細な形状を施し、転写することで、光を外に出さずに閉じ込め、反射を限りなく抑えることができるという同技術。後編では、引き続き大塚テクノの佐藤氏に、二次加工を必要としない「反射防止構造体」成形転写技術の特徴や用途開発展望についてお伺いします。
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世界各国がカーボンニュートラルに舵を切る中で、世界的なIT企業やメーカーなど民間企業の中には、サプライチェーン全体の省エネルギー化を目指し、取引先にも取組みを求めるケースが増えてきました。ものづくり産業では、この流れに対してどのような対応、対策が取れるのでしょうか?今回は「ものづくり産業における省エネルギーな製造プロセス」に注目し、セメダイン株式会社が提案する接着ソリューションについて具体的な製品事例を交えながらご紹介します。
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再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第8回目は、バイオマスについてです。バイオマスとは、元々は生態学の分野で用いられていた言葉であり、光合成生物が太陽光を受けて生産した物質とそれらを利用する従属栄養生物がつくり出す生物体の量を指します。再生可能エネルギー社会に向けたバイオマスが注目されていますが、バイオマスのエネルギー利用には地域に賦存するバイオマスの種類に応じ、またその地域のエネルギー需要に適した方法で利用する「適材・適地・適法」といった考え方が必要です。今回は、バイオマスの定義や種類、利用形態について解説します。
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2020年秋の菅義偉首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル」宣言の影響もあり、自動車の「脱エンジン」「EV化」に拍車がかかっている。これは、日本のモノづくりを支えてきた自動車産業が大転換の時を迎えることを意味する。一方、温暖化の進行を止め、持続可能な地球の未来をつくっていくには、人類とエネルギーの関係のあり方を見直す必要があるだろう。これらの動きは、どのような変化をもたらすのだろうか。そして、その変化に対応するには、どんな発想の転換が求められるのだろう。2冊の書籍から考察してみたい。
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化学産業にイノベーションを起こすことが期待されるマイクロ波を紹介する本連載。後編では、マイクロ波を活用した化学品製造プロセスの実用化状況に注目します。内部から直接、特定の分子だけにエネルギーを伝達する電子レンジに使われているマイクロ波の特徴を活かし、消費エネルギー1/3、加熱時間1/10、工場面積1/5の削減可能性がある技術を開発したマイクロ波化学。同社はどのように本技術の社会実装を進めてきたのでしょうか?後編では、引き続きマイクロ波化学代表取締役の吉野氏に、マイクロ波を活用した化学品製造プロセス実用化に向けた取り組みや将来的な技術開発展望についてお伺いします。
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化学産業は医薬品、化粧品から農業、食品、製造、輸送など幅広い分野へ原材料や触媒などを提供してきた一大産業であり、2013年度時点で化学産業のエネルギー消費量は日本の全産業の40%、二酸化炭素排出量では22%を占めています。脱炭素社会を目指す日本にとって、化学品製造プロセスの省エネルギー化が求められています。一方で、従来の化学品製造プロセスは熱と圧力を使ったものが主流であり、100年以上の歴史のなかで変化がありません。今回は、化学産業にイノベーションを起こすことが期待されるマイクロ波に注目し、2回にわたってマイクロ波化学代表取締役の吉野氏へお話を伺いしました。前編では、マイクロ波の化学品製造プロセス実用化に向けた開発秘話をご紹介します。
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PCP社会実装に向けた取り組みを紹介する本連載。後編では、産業ガスの高効率貯蔵でエネルギーインフラ改革を目指すPCPの最新事例に注目します。キュビタンは、京都大学発スタートアップAtomisで開発された「Cubic Tank」の略であり、ガスボンベの概念を大きく覆すことが期待されるキューブ型のガス容器です。後編では、Atomis代表取締役浅利氏に、キュビタン概要やPCP社会実装に向けて製品だけでなくビジネスモデル開発も行う同社取り組みについてお伺いします。
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再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。第7回目は、建築・住宅における太陽エネルギー利用についてです。日本において全消費エネルギーに占める住宅の割合は14.1%あり、これをゼロに近づける技術の開発と普及が進められています。太陽光発電システムの導入にプラスして、太陽熱を取り入れ、断熱・蓄熱、空気の流れの工夫などにより空調や給湯などにかかるエネルギーを減らす技術が開発されているのです。今回は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、PVTシステム、パッシブソーラーとZEB(ゼロエネルギービル)の4つのトレンドについて解説します。
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2030年までの商用化に向けて動き出すCCUS動向を紹介する本連載。後編では、北海道・苫小牧市にて2012年より開始された大規模なCCS実証実験に注目します。CCSは二酸化炭素を分離・回収して地中に貯蔵するCCUS主要技術です。これまでCCUSにおけるCO₂を分離・回収し、貯留するまでの各要素技術が各々の分野で確立されてきましたが、今回の実験では統合した一貫システムとして機能するのかの検証が行われました。後編では、経済産業省の担当者に、CCS実証実験で得られた成果と課題についてお伺いします。