日本のものづくりを自動車業界ともに支えたのは、生活家電や情報通信機器などを世に送り出したエレクトロニクス業界です。21世紀初頭の半導体微細化による飛躍的なデバイス性能向上が社会のデジタル化を加速し、すべてのモノがインタネットと繋がるIoT社会の実現が近づいています。ロボットやドローンなどのトピックスに加え、エレクトロニクス業界の開発現場に役立つ基礎知識やトレンド、ノウハウを紹介します。
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「ロボティクスというのは、出口戦略が重要で、何か人間の役に立たないと単におもちゃを作ったことになってしまう」という平田教授。今回は、引き続き東北大学の平田教授に、ブレーキによってロボットの運動特性を変化させる「パッシブブレーキ」技術が、災害地などの陸上、漁業が行われる水中、私たちの生活場などで役立つ仕組みについてお伺いしました。
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人と協調して作業を行うロボットを設計する方法は色々ありますが、モーター等で能動的に駆動されるのではなく、ロボットに加えられる外力に対して受動的(パッシブ)に動くように設計しようとする「パッシブロボティクス」という概念があります。本連載では3回にわたり、「パッシブロボティクス」に基づいた非駆動型ロボットを研究し人を支援しようとする、東北大学ロボティクス専攻知能機械デザイン学分野の平田泰久教授に、研究テーマとその応用事例についてお話を伺いました。今回は、主に「パッシブロボティクス」の概念についてお話を伺いました。
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半導体は今や100億個のトランジスタを集積する時代になり、もはやこの複雑な一連の設計作業は人手に負えなくなった背景のもと、半導体を自動設計するためのソフトウェアを提供する「EDAツールベンダー」が登場しました。また、こうした設計専門会社が生まれたことで、半導体製造専門の「ファウンドリ」が誕生します。今回は、「EDAツールベンダー」が台頭した背景やその成長戦略、台湾の「ファウンドリ」事業が日本を逆転するまで強くなった理由をご紹介します。
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2020年9月14日、ソフトバンクグループ(以下SBG)は、半導体CPUコアベンダーのArmを400億ドルでNVIDIAに売却することで合意したと発表しました。モバイル機器のCPUコアで採用が進むArmに対しIoT端末のCPUとして有望であることから3兆円以上の投資を惜しまなかったSBGが約4年でArmを手放した理由、更にArmを手に入れたNVIDAが目指すことはなんでしょうか。この買収劇の背景を連載「半導体入門講座」の著者津田建二氏がArm、SBG、NVIDIAのそれぞれの視点で探っていきます。
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半導体は“産業のコメ”とも呼ばれ、日本に始まって、世界中の経済を支えてきました。複雑な工程が必要とする高集積半導体ICですが、1960年代くらいまでは半導体メーカー1社がほぼ設計から製造まですべての工程を担ってきましたが、1970年代から分業化が進み、現在の「デザインハウス」、「ファブレス」、「ファウンドリ」などの分業体制が確立します。今回は、半導体産業の業界構造の変遷に注目し、日本企業が半導体ビジネスで没落した理由を詳しくご紹介します。
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スマートロックや温湿度センサーなど、あらゆる分野で私たちの生活に浸透しているIoT(モノのインターネット)。一方でIoTの普及に伴い電源問題が浮き彫りになっています。身近な振動や動きで発電する振動発電がその一端を担う技術になるかもしれません。今回は、逆磁歪効果を利用した振動発電技術の基本原理(平行梁型)を発明した金沢大学の上野敏幸准教授に、電池フリーのIoTデバイス実用化に向けた振動発電技術について伺いました。
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AI開発国と聞いて真っ先に思い浮かぶのは米国かもしれませんが、そんな米国に迫る勢いで存在感を増しているのが中国です。中国は2030年までにAI技術を世界最先端のレベルにまで引き上げると発表するほか、AI応用関連の特許出願やAI人材育成に力を入れています。今回は、中国がどのようにして世界をリードするAI大国になろうとしているのか、また中国AI技術の最新動向を8つの事例でご紹介します。
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半導体ICの高集積度が進むにつれ、一つのチップ上に数十億個のトランジスタが集積されることになり、1個のトランジスタをみるのに肉眼どころか電子顕微鏡を使用せずにはみられない世界になりました。この微細な半導体はどのように作られるのでしょうか。今回は、半導体製造工程を、設計、製造、組立、テストの4つ工程に分けて解説していきます。
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『TOKYOオリンピック物語』の著者、野地秩嘉氏の連載第9回は、セコムから警備システムを紹介します。夏季大会は競技数や参加選手の数が増加傾向にあることから、大会の警備に多くの大会では軍人が動員されたそうです。しかし、今回の大会では軍人が動員されることはなく、民間警備員や警察官、大会ボランティアが対応する見込みです。今回は、大規模スポーツイベントの警備経験がほぼなかったというセコムが、どのようにして警備システムの開発や大会の警備体制構築を進めていったのかご紹介します。
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ITの3大要素となる「コンピュータと通信と半導体」。1980年代半導体メモリが急速に進化しているなか、「通信」ではまだ黒電話のアナログ回線が主力でした。その音声通信を高速のデジタル通信へと牽引したのは、デジタル電話である携帯電話や急速に普及したインターネットでした。今回は、通信トレンドと半導体の関わりに加え、IoTや自律化などが注目される将来の「ITメガトレンド」時代における半導体の役割についてご紹介します。
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今では個人に一台の「パソコン」があるのが普通ですが、パソコンが普及する前は数億円もするメインフレーム「コンピュータ」が大企業に1台しかない時代がありました。当時の国内パソコンメーカーは、ハイエンド技術に磨きをかけることだけを一所懸命で1990年代はじめまでメインフレーム向けDRAM市場で日本半導体が活躍しましたが、米国を中心に世界でダウンサイジングが進んでいることに注意を払ってきませんでした。今回は、ダウンサイジング化が進んだ背景と流れ、日本のメーカーたちがその流れに乗れなかった理由についてご説明します。
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車椅子が必要な障がい者が、ベッドから車椅子に乗るという一瞬の動作は、障がい者の全体重を支え立ち上がらせるなど介助者に身体的負担になっているそうです。今回は、様々なロボット開発の実績を持ち、障がい者が一人でも前傾姿勢で乗り込んで日常生活しやすい乗り物を開発した株式会社テムザックに、ユニバーサルなビークルの開発ストーリーだけでなく、将来のスマートモビリティとしての可能性まで伺いました。
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私たちの生活に溶け込んでいる家電製品やスマホ等は、ボタン一つで操作が可能なことから製品の中身(技術)に関してはあまり知るきっかけがなかったのではないでしょうか。これからはますます、テクノロジートランスペアレント(テクノロジーが見えない)の時代になってきます。今回は、このような最新製品の舞台裏で溶け込んでいる半導体技術、マイクロプロセッサ(MPU)、マイクロコントローラ(マイコン)、メモリなどの進化を紹介し、その技術の進歩がもたらす「スマート社会」について考えていきます。
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トランジスタを互いに接続することで構成される集積回路(IC)。IC化は特にコンピュータ分野で大きく進展しましたが、このグローバル化で欠かせなかったものが、デジタル信号の送受信において取り決める約束事、すなわち世界標準のプロトコル(protocol)決定でした。今回は、コンピュータ発展の歴史に注目し、集積回路(IC)の誕生から、世界標準のプロトコルが定められた背景、更にコンピュータ普及に向け割高な専用IC化を解決すべく開発されたマイクロプロセッサ(MPU)とメモリについてご紹介します。
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従来の材料開発より時間とコストを大幅に削減できるという、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)。後編では引き継ぎ、日立製作所研究開発グループの岩崎主管研究員にMIの応用事例をお伺いします。本記事では、異種材料界面の密着強度を高精度でシミュレーションすることで、樹脂、金属に留まらずセラミックスやDNAにまで対象を広げた異種材料接合の設計・導入事例を詳しくご紹介頂きながら、これからのMIや材料研究の展望を探っていきます。
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私たちの日常生活に欠かせないコンピュータと高速通信のインターネット。これらの機器で用いられている半導体は、どのように進化していったでしょうか。今回は、第2次世界大戦後急速の技術的進歩を遂げたコンピュータや通信に注目し、デジタルとアナログ回路という切り口から半導体ICの進化について解説します。
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私たちが普段使っている自動車や電子機器などにはたくさんの材料が使われており、製品の性能を向上すべく新材料開発が求められています。従来の材料開発は、理論計算と実験による試行錯誤を前提とし、研究者の経験や勘に頼らざるを得ず、膨大な時間とコストがかかっていました。一方、近年、情報科学技術を材料分野にも応用して、時間とコストを削減するマテリアルズ・インフォマティクス(以下MI)が注目されています。今回は、MIの基礎知識や適用事例、課題を解説したうえで、日立製作所研究開発グループの岩崎主管研究員にMIを応用した異種材料の密着強度予測技術についてお伺いしました。
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私たちが肌身離さず持ち歩いているスマートフォンはもちろんのこと、あらゆる電化製品は半導体がないと作ることができません。特に、半導体集積回路(IC)は年々進化しており、その用途を拡大しています。今回は、私たちの身のまわりでよく使われている主な半導体ICの種類について簡単に解説しながら、今後の成長が期待される半導体ICとして、パワー半導体ICや高周波半導体ICについても簡単にご紹介します。
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『TOKYOオリンピック物語』の著者、野地秩嘉氏の連載第6回目は、引き続き日本電気株式会社(以後NEC)から顔認証技術を紹介します。顔認証システムは、歩いている間に顔の照合は全部終わり、その間「なりすまし入場」を識別するなど、さりげない警備の実現への貢献が期待されています。今回は、これまでの警備員の目視による入場管理と「顔認証」の違いから顔認証技術の特徴を探るほか、生体認証技術における「収集データの質」の重要性について野地氏が迫ります。
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半導体という言葉は、トランジスタの工業化が始まったころは、ゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)結晶といった材料そのものを指していましたが、今は集積回路(IC)や半導体デバイスのことをいうようになりました。今回は、シリコン(Si)から始まり青色LEDなどをつくる化合物半導体へと用途が広がる半導体材料の開発動向と、バイポーラ型からCMOSまでの集積回路(IC)の変遷をふまえたMOSトランジスタの進化についてご紹介します。