少子高齢化が進むなか、先端医療だけでなく、介護福祉も含めた社会インフラが個人のQoL(Quality of Life)をどう高めていくのかが問われています。新たな医療機器開発やソリューション提案において、医工連携などの取組みが加速しており、ものづくりも大きな変革期を迎えました。ヘルスケア業界の開発現場に役立つ基礎知識やトレンド、ノウハウを紹介します。
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女性のがんの中で、罹患率が2位の大腸がんに大きく水をあけて1位なのが「乳がん」。従来の乳がん検査方法は「X線マンモグラフィー」「乳腺エコー(超音波)」「MRI」などがありますが、放射線被曝リスク、人体深部での映像化困難、造影剤の副作用などの課題があります。前編に引き続き、株式会社Integral Geometry Scienceの創業者であり、神戸大学大学院理学研究科教授の木村建次郎氏に、応用数学上の未解決問題「散乱の逆問題」を解いたことで開発が可能になった「マイクロ波マンモグラフィー」と乳がん発見の仕組みについてお話を伺いました。
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人体を貫通するX線の透過量データを数式処理し、体の断面画像を再構成するX線検査。病気の発見や治療に役立てた一方、強い直進力を持つX線を人体に当てると被爆するという課題があります。人体に影響の少ない、直線より弱い「波」を使って人体内部検査に利用したいところですが、そのためには応用数学上の未解決問題「散乱の逆問題」を解かなくてはなりません。今回は、この問題の解決がもたらす「見える化」の可能性に注目し、株式会社Integral Geometry Scienceの創業者であり、神戸大学大学院理学研究科教授の木村建次郎氏に、「散乱の逆問題」を解決した方法について数式を用いず、わかりやすく說明して頂きました。
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新規事業への参入・投資プロジェクトを検討される企業向けに、業界関係者や社外有識者の知見や専門情報を伺う本連載。引き続き、「人間拡張(Human Augmentation)」技術に注目します。人間拡張というと、人に身に着けるウエアなどを想像しやすいですが、人間拡張技術をビジネスとして発展していくためには「モノ」はもちろんのこと「サービス」と絡めることが重要といいます。今回も国立研究開発法人・産業技術総合研究所(産総研)人間拡張研究センター長の持丸正明氏に、人間拡張技術を利用した製造業のサービス化や同センターの取り組みについてお話を伺いました。
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遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとに紹介する本連載。4回目は、引き続き「デジタル聴診デバイス」を紹介します。非破壊で、尚且つ記録が残せるレントゲンの功績のように、聴診器からの生体音を録音して残し、患者の経過を観察、議論し、若い医師にも知識の継承ができるようにしたいという株式会社シェアメディカル。今回は、同社のデジタル聴診デバイスが遠隔診療に及ぼす影響と医療現場での活用事例について伺いました。
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遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとに紹介する本連載。3回目は、聴診時の悩みに答える「デジタル聴診デバイス」の開発秘話を紹介します。医師が聴診器を長時間使用する時、聴診器の耳に挿入する部分が耳介を圧迫し、耳が痛くなるという悩みがあるといいます。このような悩みに答えるために、ヘッドフォンで聴診できるよう生体音をデジタル化する聴診デバイスを開発している株式会社シェアメディカルに、開発のきっかけや開発過程について伺いました。
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遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとにご紹介する本連載。引き続き、2回目は、日本遠隔医療学会専務理事・事務局長 高崎健康福祉大学の東福寺幾夫教授に、オンライン診療が法律上の制約である「対面診療の原則」の壁を越えて医療として認められた90年代末からの変遷について伺いました。また、オンライン診療のメリットやデメリット、今後の遠隔医療の可能性や課題についてもご紹介します。
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新型コロナウイルス感染拡大により、身近なものになりつつある「遠隔医療」。遠隔医療で使われる技術は1970年代頃から、診療科や地域の偏在による医療現場の強いニーズから発展しました。本連載では、遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとにご紹介します。今回は、連載の1回目として、遠隔医療が推進される背景や、過去の事例からみる遠隔病理診断(テレパソロジー)の発展について、日本遠隔医療学会専務理事・事務局長 高崎健康福祉大学の東福寺幾夫教授にお伺いました。
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2020年11月25~27日に幕張メッセで「第2回ファーマラボ EXPO[東京]」が開催されました。本展示会は、医薬品の研究・開発を支援するための研究機器や試薬などの企業が一堂に会する展示会です。今回は人や室内空気などを対象とする新型コロナウィルス検査サービスや微生物や細胞の自動分析、培養に関する技術をご紹介致します。
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西陣織の老舗から生体データを扱うウェアラブルデバイス企業への転身に成功、生地の製造から生体データの管理までをワンストップで手がけているミツフジ株式会社。当社の強みの一つは、多様な業界・団体との協業を可能にするコラボ力だといいます。今回も引き続き、同社の生体データによって実現したい姿を他社とどう協業しているかの事例と、そのような協業が実現できる秘訣について伺いました。
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自社の強み技術をもっている企業は、その技術を活かして需要の高い市場で勝負するにはどうすればよいかという悩みを多く抱いていると思います。その答えのヒントになる企業が、64年前西陣織工場として創業し、数年前からウェアラブルデバイス市場に参入、様々な組織と協業を行っているミツフジ株式会社です。今回は、同社の西陣織工場から生体データを扱うウェアラブルデバイス企業への転身ストーリーをご紹介します。
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人をアシストする人間支援ロボットには色んなタイプがありますが、平田教授の研究チームが注目したのは、「人の力をいかにうまく使って足りない機能を助けてあげるのか」という技術だといいます。今回は、引き続き東北大学の平田教授に、永守賞を受賞したパッシブブレーキと回生ブレーキの組み合わせによる「足漕ぎ車椅子ロボット」や、ファントムセンセーションを利用した「振動モーター」など人間支援ロボットへの応用事例について伺いました。
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「ロボティクスというのは、出口戦略が重要で、何か人間の役に立たないと単におもちゃを作ったことになってしまう」という平田教授。今回は、引き続き東北大学の平田教授に、ブレーキによってロボットの運動特性を変化させる「パッシブブレーキ」技術が、災害地などの陸上、漁業が行われる水中、私たちの生活場などで役立つ仕組みについてお伺いしました。
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2020年10月14~16日に、幕張メッセで「第3回 医療と介護の総合展 [東京](メディカル ジャパン)」が開催されました。感染対策が講じられた中、実際的・具体的な製品や技術も多く、患者さんや家族、医療介護関係者の問題解決のための多種多様な出展された大規模な展示会。今回は、トイレ支援補助機器や見守りセンサーなど介護用機器のほか、医療現場で使うスマートグラスや乳がん治療に役立つ磁気ナノ粒子を利用した診断技術・装置についてご紹介いたします。
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人と協調して作業を行うロボットを設計する方法は色々ありますが、モーター等で能動的に駆動されるのではなく、ロボットに加えられる外力に対して受動的(パッシブ)に動くように設計しようとする「パッシブロボティクス」という概念があります。本連載では3回にわたり、「パッシブロボティクス」に基づいた非駆動型ロボットを研究し人を支援しようとする、東北大学ロボティクス専攻知能機械デザイン学分野の平田泰久教授に、研究テーマとその応用事例についてお話を伺いました。今回は、主に「パッシブロボティクス」の概念についてお話を伺いました。
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日本人の死因の上位に入る「脳血管疾患」。多くの場合は手指に麻痺が残り日常生活への影響が大きいと言われています。この手指の動きを助けるリハビリ用装具は、手指の関節が多く骨格が複雑なため、技術的ハードルが高く実用化が難しいと言われてきました。今回は、手指の筋電を感知し動きをサポートする小型で安価なリハビリ用ロボット装具を開発している「メグウェル」に、地場企業と大学がタックを組んだ経緯など開発ストーリーを伺いました。
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ビルや工場における二酸化炭素(CO₂)濃度の上昇は、眠気や倦怠感、頭痛を引き起こすなど人体への悪影響を及ぼします。そこで固体を利用したCO₂吸着分離法として「ゼオライトCO₂除去材」が広く使用されていますが、空気が大気レベルの水分を含むだけで吸着性能が大きく低下することが課題です。今回は、日立製作所 研究開発グループの吉川研究員に、水分雰囲気下でも効率よくCO₂を除去する材料である「酸化セリウム(CeO₂)系CO₂除去材」の特徴と活用可能性についてお伺いしました。
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『TOKYOオリンピック物語』の著者、野地秩嘉氏の連載第8回は、引き続き機能性寝具を紹介します。眠ることは幸せであり、健康と考えるエアウィーヴ。今回は、アスリートに注目しスポーツビジネス、スポーツマネジメントの進化をうながしたとも言える同社の広告宣伝戦略を紹介します。また、東京2020大会におけるスポーツ記録の進化に注目し、食事、ユニフォームに続き個別化される「睡眠」を実現するふたつの技術レガシーを探ります。
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『TOKYOオリンピック物語』の著者、野地秩嘉氏の連載第7回は、株式会社エアウィーヴから機能性寝具を紹介します。五輪の選手村に寝具を提供し、多くのアスリートに寝具を使ってもらうというエアウィーヴの機能性寝具。2007年商品がリリースしてから4年の間殆ど売れなかったそうです。今回は、大手企業が寡占している寝具業界で、「機能性」という概念を取り込んだ高反発素材の寝具がどのように開発され、試行錯誤を重ねて誕生したのか探っていきます。
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昨今のコロナ禍を背景に空気環境の改善に対するニーズが高まっています。殺菌力が高い紫外線を利用した室内空調装置は市販されていますが、「人がいる空間」では利用が難しかったといいます。今回は、「人がいる空間」でも設置でき、ランニングコストを抑えながら浮遊菌を減少できる紫外線照射技術を開発したエネフォレスト株式会社に、商品開発に至る想いとコロナ時代における空気改善に関する意識改革について伺いました。
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産業の空洞化だけでなく、地域医療の存続も課題となっています。高度な技術を要する外科手術では、構造が複雑かつ独特な質感の臓器を扱うため、経験に頼る部分が大きいものでした。こうした経験不足を埋め若手医師や研修医の技術を高めるため、地場の中小企業2社と地域医療機関が手を組み、安価、かつ精巧な臓器模型を製作する取り組みが始まっています。今回は、引き続き伊那市で進められている共同開発プロジェクトについてご紹介します。