資本主義のもと大量生産・大量消費が宿命づけられた製造業も、デジタル化が進行しモノに縛られない価値観が生まれるなか変革期を迎えています。ものづくり・製品開発の在り方を変えうる技術として注目を集める3Dプリンター。 ここでは、様々な材料(プラスチック樹脂・金属)・手法による、3Dプリンタの基礎知識やトレンド、事例紹介に関する記事を集めました。
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コンクリート業界の脱炭素化の取り組みを紹介する本連載。建設用3Dプリンターは、建設分野で用いられる3Dデータをもとにロボットが自動で立体形状を造形する3D構造物の製造装置ですが、世界でこの建設用3Dプリンターが注目される理由をご存じでしょうか?注目される理由として、工期短縮、高い造形自由度、廃棄物・二酸化炭素排出削減という3つの特徴が挙げられており、日本も2018年に官民連携組織「3Dプリンティングによるコンクリート構造物構築に関する研究委員会」が発足しました。そうしたなか、日本でいち早く海外から建設用3Dプリンターを導入し、事業着手したのが會澤高圧コンクリートです。後編では、前編に引き続き會澤高圧コンクリートに、モルタルを使った建設用3Dプリンターの特徴や導入事例を紹介して頂くともに、コンクリート業界の脱炭素化に向けた提言をお伺いします。
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バイオセミラックス3Dプリンターの研究開発内容を紹介する本連載。バイオセラミックスは、人体に対する毒性がなく、生体組織への親和性が高く、かつ体内において高い耐久性を有する生体機能を代行するセラミックスであり、人工骨や人工関節、歯、歯根などに使われています。2018年、株式会社リコーと理化学研究所は、3Dプリンターを用いた新たな人工骨の造形技術を発表しました。後編では、理化学研究所のスタッフとして協力していた名古屋大学病院の整形外科医の大山慎太郎氏に、医師としての共同研究への関わり方や同技術が患者にもたらす価値、およびバイオセミラックス3Dプリンターによる人工骨造形技術応用の可能性についてお伺いします。
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人工骨は、病気や外傷で欠損した骨を補うために開発された人工的な素材です。人工骨の材料として、人体に対する毒性がなく、生体組織への親和性が高く、かつ体内において高い耐久性を有する生体機能を代行するセラミックスである「バイオセラミックス」が知られています。2018年、株式会社リコーと理化学研究所は、3Dプリンターを用いた新たな人工骨の造形技術を発表しました。本連載では、バイオセミラックス3Dプリンターに注目します。前編となる今回は、リコーで中心的に本プロジェクトを実施している渡邉政樹氏に、人工骨が必要とされる骨移植手術の現状と課題、および人工骨で注目すべき骨置換性を高める材料と構造についてお伺いします。
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セラミック3Dプリンターは、3Dプリンターの一種であり、耐熱、絶縁、耐摩耗などに優れるセラミックス材料を3次元の設計データをもとに立体造形する装置です。セラミックス材料の一般的な加工方法は、材料の粉を金型に入れて加圧して固めて成形し、炉に入れて焼成します。この焼成の過程で粉末粒子が融合し、焼き固まる際に収縮します。セラミック3Dプリンターの課題は、セラミックス材料だけでなく、接着剤の役目として添加された樹脂のバインダーの収縮で大きな変形が生じるため、高精細な造形が難しく、熱収縮を抑えるために長い加工時間を要していたことです。キヤノン株式会社では、こうした課題を解決するため、独自にセラミック3Dプリンター向けの新材料を開発しました。今回は、R&D本部の安居氏とフロンティア事業推進本部の川村氏に、セラミック3Dプリンターにおける課題と開発した新材料の概要についてお伺いしました。
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3Dプリンターで食品をつくることが現実の話となってきました。以前より食品業界で普及していたフードプリンターは、食品に食べられるインクを用いて直接文字や絵柄、写真をプリントできる装置です。一方で、3Dフードプリンターは、食材を3次元の設計データをもとに立体造形し、形状や食感が制御された食品を製造できる装置です。山形大学では、柔らかいゲル状の素材を用いた3Dプリンター技術を応用し、ソフトでありつつも複数の味と食感を持つ介護食を開発しています。今回は、山形大学有機材料システムフロンティアセンターの川上准教授に、3Dフードプリンターの開発経緯や開発した介護食の可能性についてお話を伺いました。
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2022年1月26~28日の3日間、東京ビッグサイトにて「TCT Japan 2022 (3Dプリンティング&AM技術の総合展)」(オンライン展示は2021年11月26日~2022年2月28日)が開催されました。同展示会では、3Dプリンターの急速な発展に伴い、そのための材料・評価/分析や加工、生産管理製品開発といった周辺領域のプレイヤーによる展示も行われていました。今回は3Dプリンティング・アディティブマニュファクチャリングに注目し、カーボンナノファイバーを材料とした3Dプリンター、3Dプリンター向け海洋生分解性材料、金属3Dプリンター造形の仕上げで注目の小型真空脱脂焼結炉、3Dプリンター造形による透明バイオリンの展示内容を紹介します。
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ここでは金属加工法の一つである金属3Dプリンターを取り上げます。まず押さえてほしい基礎知識として、原理、使用される金属材料、特徴と課題や活用事例などを解説します。
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金属3Dプリンターの造形方法には、主にパウダーベッド方式とパウダーデポジション方式があります。金属3Dプリンター造形は、一般的に装置、粉体ともに機械加工に比べ値段が高く、造形精度等で課題があり、最終製品への適用は航空宇宙業界などの軽量化、部品点数削減などによるメリットが生まれる高付加価値部品に留まるケースが多いと考えられています。本状況下にて、光学機械などを製造・販売する株式会社ニコンは得意とする光学設計などの技術を活用し、パウダーデポジション方式に分類される金属3Dプリンターを開発しました。今回は、金属3Dプリンターの造形方法を整理しつつ、同社が開発した3Dプリンターの特徴や開発コンセプトに加え、金属3Dプリンターの適用先拡大や装置開発の展望までお伺いしました。
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粉末金属材料を敷いた床上にレーザーをあてて溶融凝固させながら造形(粉末床溶融結合法)する金属3Dプリンター。前編で解説した金属3Dプリンターによる造形プロセスの課題は、造形品質のばらつき以外にも、熱収縮による応力によって生じる反り変形があります。今回も引き続き、金属3Dプリンターの造形物の品質向上に向けた技術研究を行っている石川県工業試験場に、熱収縮による反り変形が生じる理由や「マルテンサイト変態」を利用した変形低減への取り組みについてお話を伺いました。
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金属3Dプリンターでの造形技術は、金属加工では難しい複雑な形状の部品を強度はそのままに軽量化させたいといった用途に使われることが多いですが、機械加工と比べると品質にばらつきが生じやすいという課題があります。今回は、金属3Dプリンター造形物の品質向上に向けた研究を行っている石川県工業試験場に、金属3Dプリンターによる造形プロセスの課題や造形品質がばらつく理由を解説して頂いた後、同研究所で開発しているAI機械学習による造形品質のリアルタイム診断技術についてお話を伺いました。
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2020年12月9~11日に、東京ビッグサイトで3Dプリンティング & アディティブ・マニュファクチャリング(AM、積層造形)技術の総合展「TCT Japan 2021」が開催されました。同展示会は3DプリンターをはじめとしたAM技術を有する35社・団体が出展し、最新のソリューションがわかるイベントです。今回は、光造形法など多様な造形手法を有する3Dプリンターの最新動向や、最適な3Dテクノロジーの組み合わせを提供するサービスなどをご紹介します。
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日本のものづくりの根幹を担う産業の一つ、鋳造業。その鋳造に欠かせないのが「型」です。できあがり製品の模型を正確に製作し、その模型によって鋳型を造り、そこに溶かした金属を流し込んで鋳物を生成します。今回は、1946年創業以来、造船、自動車などあらゆる産業で使われている鋳造型を製作している高知機型工業株式会社に、他社と差別化できる鋳造型制作の技術とノウハウについて伺いました。
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金沢大学設計製造技術研究所でのモノづくり研究開発動向を紹介する連載第4回では、引き続き古本達明教授に高精度化に向けた金属AM(金属3Dプリンター)の研究開発について伺います。同研究では、高速度カメラ用いて金属AM造形時のスパッタやヒュームの発生などを可視化することで、その発生要因を探っています。今回は、高速度カメラによる可視化の特徴をはじめ、造形と切削を交互に繰り返す技術を用いた水管の高精度金型加工の実例をご紹介します。
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地域のモノづくり技術を活かし、新たなオープン・イノベーションを模索する金沢大学 設計製造技術研究所でのモノづくり研究開発動向を紹介している本連載。第3回は、金属AM(金属3Dプリンター)に注目し、金属AMによる金型製作の高精度化研究を行う金属AM研究班の古本達明教授に、金属AMの課題や高精度化に向けた研究アプローチについてお伺いしました。
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電子顕微鏡や表面分析装置、金属3Dプリンター・・・先端的なものづくり現場で使用される装置ですが、共通するパーツは何だかご存知でしょうか?その答えは、電子源。電子線の放出源となる、なくてはならないパーツです。今回は、電子源の中でも世界に数社しかないといわれる金属単結晶を使用した電子源を製造し、米国オレゴン州に拠点を置くApplied Physics Technologies, Inc.(APTech)の製品とその技術力について迫ります。
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3Dプリンターは、自由自在な形状が実現できることや、従来の工法では複数の部品を組み合わせる必要があったパーツを一体で造形できるなど、さまざまな利点があります。一方で工法として造形物のサイズ制約や造形時間・コストなどの課題が存在し、「限界」もあります。10回にわたって連載してきた「樹脂3Dプリンター入門講座」、最終回では3Dプリンターの「限界」とそれを乗り越えようとする3つの取り組みについてご紹介します。
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産業の空洞化だけでなく、地域医療の存続も課題となっています。高度な技術を要する外科手術では、構造が複雑かつ独特な質感の臓器を扱うため、経験に頼る部分が大きいものでした。こうした経験不足を埋め若手医師や研修医の技術を高めるため、地場の中小企業2社と地域医療機関が手を組み、安価、かつ精巧な臓器模型を製作する取り組みが始まっています。今回は、引き続き伊那市で進められている共同開発プロジェクトについてご紹介します。
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3Dプリンターの世界では装置だけでなく、3Dプリンターで使う材料も日々、進化を続けています。装置により使われる材料のバリエーションは異なりますが、廉価な装置でも使用可能な材料が増えているだけなく、造形の難しさを解消する新材料も開発されています。今回は、FDM(熱溶解積層)と粉末焼結積層造形における3Dプリンター向け新材料について、様々な材料メーカーの開発動向をご紹介していきます。
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試作といえば、真先に3Dプリンターを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。今やモノを作る過程で欠かせない3Dプリンターですが、3Dプリンター以外の加工方法は非常に多岐にわたり、自分の試作に最適な方法を選択する必要があります。今回は、3Dプリンターのメリットデメリットを解説しながら、CAEや切削加工、成形加工など試作でよく使われる加工方法についてご紹介します。
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3Dプリンターで樹脂造形品を作る時、どのような材料を選べばよいのでしょうか。材料の選定は3Dプリンターの機種で決まる部分もありますが、各材料の特徴や用途を知っておけば、作る目的に最適な材料を選ぶことができます。今回は、PLA、ABS樹脂等の汎用プラスチックやPC、ポリアミド(ナイロン樹脂)のエンジニアリングプラスチックなどの材料の特徴と用途についてご紹介します。