ものづくりの現場では、開発を効率よく進めるためだけでなく、不測の事態(トラブル)が生じた際の原因究明・再発防止のためにも、物性測定、分析評価、試験を正しく行うことが重要です。ここでは知っておきたい計測・分析技術に関する基礎知識を集めました。
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ストレスチェックとは、人が心(精神)や身体に外部からの刺激(ストレッサー)に適応しようとして心や身体に生じた様々な反応(ストレス反応)を調べる検査です。平成27年12月以降、「労働安全衛生法」の改正によって50人以上の労働者がいる事業所でストレスチェック制度の実施が義務化されました。こうしたなか、目に見える身体ではなく、心の健康を可視化することが注目されています。今回は、メンタルヘルスの計測技術に注目し、シリコンバレーのIoTスタートアップYume Cloud日本法人と共同でメンタル自己管理サービス「マインドスケール」を開発した山形大学の横山准教授、原田助教に話を伺いました。
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血管内イメージングデバイスの開発動向を追う本連載。後編では、IVUSとOFDIの機能を搭載したデュアルセンサーシステムに注目します。1990年代以降、多くの病院で導入された心臓カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患の治療において一般的な治療方法となりました。超音波センサーを使うことにより腎機能に負担をかける造影剤を使わずに血管断面の画像を取得できるIVUS、そして近赤外線により血管の性状まで詳細に判別できるOFDIが開発されたことで、カテーテル治療の質は大きく向上します。後編では、佐賀大学医学部附属病院の園田教授に、IVUSとOFDIの機能を搭載したデュアルセンサーシステムに対する医療現場の期待についてお伺いします。
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心臓カテーテル治療は、心筋に血液を送る冠動脈が動脈硬化などにより狭くなった(狭窄)部分を拡張するために行われる治療方法であり、具体的には直径1mm程度の細いカテーテルを冠動脈に挿入し、拡張用バルーンやステントなどの治療用器具が挿入されます。日本では、近年、手術前後に血管の状態を調べる血管内イメージングの普及が進み臨床成績の向上に寄与しています。今回は、血管内イメージングデバイスに注目し、2回に分け前編では同開発に携わってきたテルモ株式会社鬼村氏、後編では医療現場で同製品を利用する佐賀大学医学部附属病院の医師で佐賀大学の園田教授に話を伺いました。前編では、超音波を利用したIVUSと、光(近赤外線)を利用したOFDIという血管内イメージング技術の概要についてご紹介します。
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セルロースナノファイバー蓄電体開発者に聞く脱炭素社会の材料開発を紹介する本連載。後編では、セルロースナノファイバー蓄電体が持つ可能性に注目します。アモルファス物性を巧みに利用し、環境負荷の低い植物由来のセルロースナノファイバーを用いた蓄電体の開発を行う東北大学未来科学技術共同研究センターのリサーチフェロー福原氏は、脱炭素社会でどのような用途を考えているのでしょうか?後編では、引き続き福原氏に、セルロースナノファイバー蓄電体の特性や用途、その可能性についてお伺いします。
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全固体電池は、電子の蓄積や電子の移動を担うイオン伝導を実現する電解質が従来の液体でなく固体で構成された電池です。従来の電池では、電解質の蒸発、分解、液漏れなどの液体特有の課題があり、長期保管や電池性能向上の妨げとなっていました。本状況下において2021年に東北大学より固体電解質に関わる「セルロースナノファイバーによる蓄電体の開発」が発表されました。今回は、脱炭素社会における材料開発に注目し、2回にわたって同研究開発を主導した東北大学未来科学技術共同研究センターのリサーチフェロー福原氏へお話を伺いしました。前編では、アモルファス物性の概要やアモルファス物性により蓄電効果が高まる原理についてご紹介します。
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2021年12月8〜10日の3日間、幕張メッセにて「第12回 高機能素材Week」が開催されました。本展示会は、製品の高付加価値化に繋がる素材技術が一堂に出典する展示会で、自動車など身近な産業からエレクトロニクス、医療機器、航空・宇宙などの各業界の技術者、研究開発・製造担当者らが4万人以上も来場していました。コロナ禍でありながらもかなり展示会らしさが戻ってきた本展示会の様子を2回に分けてご紹介します。今回は、「機械・高機能素材編」として印象に残ったレーザー溶接深度解析用非破壊モニタ、クリーンエネルギーによる部品製造、低環境負荷セルロースナノファイバー製造方法やお米を使ったバイオマスプラスチックの展示内容をご紹介します。
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2021年11月8〜10日に、幕張メッセで「JASIS 2021」が開催されました。JASISは分析機器や科学機器に関する展示会であり、今年は、モノづくり技術や自動運転、ライフサイエンス、新型コロナ対策技術、環境技術といった先端技術の展示がされていました。また昨年同様オンライン展示会にて展示や講演の配信がされ、こちらも盛況だったようです。今回は、印象に残った実験器具、気流検査装置や機能性材料などの展示内容をご紹介します。
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難易度の高いコア技術の真空技術と低温技術。研究開発で使われる製品になると、指紋が一つでも内部に残っていたら、分子レベルのガスが発生する原因になって研究結果に差が出てしまうため、そこまで理解して仕上げる必要があるそうです。今回は、東京都大田区にある、精密機器の設計・製造・販売会社で大学・官公庁の研究所をはじめ、民間企業の基礎研究所に向けた実験機器の開発・製造において優れた品質と信頼性に高い評価を得る、北野精機株式会社に同社の強みと、ものづくりへのこだわりについてお話を伺いました。
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食事後の血糖値が異常に高くなる「血糖値スパイク」は、空腹時で行われる通常の健康診断では見落としがちだといいます。その結果、重度の糖尿病に進行する恐れがあるため「隠れ糖尿病」と呼ばれています。このような隠れ糖尿病の人を見つけて治療や生活習慣の改善など行動変容を促すために、株式会社タニタと富山県立大学らのチームは、非侵襲で血糖値と血中脂質値を常時測定できる装置を開発しています。今回も引き続き、同研究チームに、同装置開発に利用した遠赤外光や中赤外光の計測原理について説明して頂くほか、今後の開発フェーズについてお話を伺いました。
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部材の中や表面の欠陥を調べるのに、対象物の形状や機能を損なわず検査ができる非破壊検査。オーダーメイドで作る非破壊検査機器や検査システムは、性能面で過不足がなく、操作性もよく、使い勝手のいい検査システムを構築することができるだけでなく、コストや品質管理などの面でメリットがたくさんあるそうです。今回は、山口県岩国市に本社、韓国に子会社を構え、非破壊検査機器の設計、制作、販売を手掛ける有限会社エヌ・ケイ・システムに「オーダーメイドの非破壊検査システム」には、どのようなメリットがあるかお話を伺いました。
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キウイの栽培に必要な主な気象条件は、キウイの栽培者が蓄積してきた栽培ノウハウといえます。しかし、実際にある土地で栽培をしてみなくても、衛星リモートセンシングデータと地上で得られるさまざまなデータをかけあわせることで、栽培に適した気象条件を満たすキウイの栽培最適地を見つけることができるといいます。今回は、引き続き宇宙ビッグデータを解析・加工し、ビジネスや公共事業向けに提供している株式会社天地人に、農業や観光業などにおける宇宙データ活用事例などを伺いながら、宇宙ビジネスの今後についてお話を伺いました。
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現在地球の衛星軌道を回っているおよそ4,400機の人工衛星の中で、地球の天候、地形、温度分布などを観測する人工衛星を「地球観測衛星」と言い、この衛星が獲得するデータを「衛星リモートセンシングデータ」と言います。観測衛星から得られる膨大な量のデータの多くは公開されていますが、気象情報や地図以外の分野で十分に活用が進んでいません。今回は、それらのデータを民間や行政が活用できるように解析、編集し宇宙ビジネスを展開しているJAXA認定スタートアップの株式会社天地人に、宇宙データが民間で十分に活用しきれていない理由や同社の創業ストーリーについてお話を伺いました。
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沖縄科学技術大学院大学(OIST)の量子波光学顕微鏡ユニット代表、新竹積教授の電子顕微鏡や波力発電など多岐にわたる研究テーマに注目し、同氏の今までの研究活動や「ものづくり」への姿勢について伺う本連載。4回目は、3回目で登場した「電子ビームを観察する技術(新竹モニター)」を応用して開発している、新型コロナウイルス検出装置(フローサイトメーター)の仕組みと、通常表面観察ができないとされている透過型電子顕微鏡(TEM)で大腸菌など試料の「表面観察」を可能にした仕組みについて伺いました。
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沖縄科学技術大学院大学(OIST)の量子波光学顕微鏡ユニット代表、新竹積教授の電子顕微鏡や波力発電など多岐にわたる研究テーマに注目し、同氏の今までの研究活動や「ものづくり」への姿勢について伺う本連載。3回目は、同氏がイタリア留学中に常識(古典的な理論)を疑うことで、米国の研究機関が賞金を出して募集していたリニアコライダー(直線型衝突加速器)の問題を解決した方法と、その過程で生まれた、加速器の電子ビームを観察する技術について伺いました。
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日本にはおよそ1万のトンネルが存在し、1960年代高度成長期に建設されたトンネルは老朽化が進んでいます。また、携帯電話などに使われるリチウムイオン電池は、製造時の不良を見つけられず発火や爆発事件を起こしたりします。このような社会課題を解決すべく、「散乱の逆問題」を解くことで「見えないものを見る」技術を開発しているのが株式会社Integral Geometry Scienceです。3回目となる後編では、引き続き同社の創業者であり、神戸大学大学院理学研究科教授の木村建次郎氏に、トンネル等のコンクリート内部の劣化検出装置やリチウムイオン電池の爆発を防ぐための検査装置など幅広い応用事例を紹介して頂きました。
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沖縄科学技術大学院大学(OIST)の量子波光学顕微鏡ユニット代表、新竹積教授の電子顕微鏡や波力発電など多岐にわたる研究テーマに注目し、同氏の今までの研究活動や「ものづくり」への姿勢について伺う本連載。2回目は、引き続きSACLA(X線自由電子レーザー施設)建設にあたって、同氏がもつ「ものづくりの感覚」がC-band加速器や増幅装置のものづくりにどう生かされたかについてご紹介します。また、同氏が小学生の時抱いた「電波」に対する疑問からだという、ものづくりに心酔するようになった過程を伺いました。
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女性のがんの中で、罹患率が2位の大腸がんに大きく水をあけて1位なのが「乳がん」。従来の乳がん検査方法は「X線マンモグラフィー」「乳腺エコー(超音波)」「MRI」などがありますが、放射線被曝リスク、人体深部での映像化困難、造影剤の副作用などの課題があります。前編に引き続き、株式会社Integral Geometry Scienceの創業者であり、神戸大学大学院理学研究科教授の木村建次郎氏に、応用数学上の未解決問題「散乱の逆問題」を解いたことで開発が可能になった「マイクロ波マンモグラフィー」と乳がん発見の仕組みについてお話を伺いました。
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近年日本のアカデミアの中で注目が集まっている沖縄科学技術大学院大学(OIST)。科学分野の5年一貫制博士課程を置く大学院大学で、国内外から優れた研究者や学生を集め、質の高い研究を行っていることで知られています。今回から6回にわたって、電子顕微鏡や波力発電など幅広いジャンルで評価されてきた同校の量子波光学顕微鏡ユニット代表、新竹積教授の研究テーマに注目し、今までの研究活動や新しい「ものづくり」への姿勢について伺いました。1回目は、同氏が子ども時代から続けている工作のスケッチと、SACLA(X線自由電子レーザー施設)の研究開発に携わった経緯についてお話を伺いました。
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人体を貫通するX線の透過量データを数式処理し、体の断面画像を再構成するX線検査。病気の発見や治療に役立てた一方、強い直進力を持つX線を人体に当てると被爆するという課題があります。人体に影響の少ない、直線より弱い「波」を使って人体内部検査に利用したいところですが、そのためには応用数学上の未解決問題「散乱の逆問題」を解かなくてはなりません。今回は、この問題の解決がもたらす「見える化」の可能性に注目し、株式会社Integral Geometry Scienceの創業者であり、神戸大学大学院理学研究科教授の木村建次郎氏に、「散乱の逆問題」を解決した方法について数式を用いず、わかりやすく說明して頂きました。
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新規事業への参入・投資プロジェクトを検討される企業向けに、業界関係者や社外有識者の知見や専門情報を伺う本連載。引き続き、「人間拡張(Human Augmentation)」技術に注目します。人間拡張というと、人に身に着けるウエアなどを想像しやすいですが、人間拡張技術をビジネスとして発展していくためには「モノ」はもちろんのこと「サービス」と絡めることが重要といいます。今回も国立研究開発法人・産業技術総合研究所(産総研)人間拡張研究センター長の持丸正明氏に、人間拡張技術を利用した製造業のサービス化や同センターの取り組みについてお話を伺いました。