多くの製品化には欠かせない材料・加工・計測解析などの技術情報について、企業で研究・開発に従事される方や加工技術をサービス提供する企業の専門家など、各分野で活躍されている方にお話をお伺いしました。
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金属を溶かして接合する溶接には、ロボットによる溶接と手作業による溶接があります。溶接は、扱う材料の材質や形状に合わせて、一つの製品でも箇所により動かす手の速度や電流の高さなどを調節しつつパルス波で電流の強弱をつけるなど、非常に細やかな判断が求められます。形状が複雑なものや場所によって細やかに設定を変える必要があるものなどは、手作業による溶接が向いていると言います。今回は、徳島県阿南市にある溶接とレーザー加工を中心とした板金加工業を営む、有限会社遠藤産業に手作業溶接だけでなくロボット溶接のメリットも含め、歪みなく溶接する難しさなどについてお話を伺いました。
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「ロストワックス製法」とは、鋳造方法の一種です。ロストワックス製法で部品を製造する際に、最初に金型にワックス(ロウ)を流し込んで原型を作りますが、その原型を粉末床溶融結合法で製作することで、金型レスで原型を作ることができるため、試作に最適だそうです。今回は、島根県安来市にある金属加工の会社でロストワックス製品の機械加工及び組立を中心に、MIM製品の機械加工、射出成形機部品製造、粉末焼結積層造形品の製作などを行っている株式会社ナカサに金型レスの試作についてお話を伺いました。
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宇宙輸送サービスは、小型衛星などの対象物を希望するタイミングで宇宙へ打上げ希望する軌道へ輸送するサービスですが、従来の大型ロケットへピギーバック(相乗り)するのではなく、専用射場を用いて低軌道に小型ロケットを打ち上げることで契約から打上げまでの期間が「世界最短」、打上げの「世界最高頻度」を目指す企業が現れています。今回は、打ち上げ時期と軌道の調整が可能な自前の打上げ射場を建設、小型ロケットなどを開発しているスペースワン株式会社 代表取締役社長 太田信一郎に本ビジネスに取り組む背景となった小型衛星打上げ市場や宇宙開発に関する法制度整備の現状に加え、ロケット打上げ射場建設の狙いについてお話を伺いました。
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匂いを検出したいというニーズは、医療、セキュリティ、品質管理など多岐に渡ることから、匂いの検出や分析の技術は進んでいますが、匂いの発生源を特定する技術はまだ確立されていません。その理由は、匂い源から発生した匂いは風や地形の影響を受け、時々刻々と匂い分布が複雑に変化するからだといいます。今回は、昆虫の嗅覚を使って匂いの発生源を探索するシステムを開発している東京大学先端科学技術研究センターの照月大悟特任助教に、同研究室が取り組んでいる「匂い源探索システム」の研究開発についてお話を伺いました。
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糖尿病患者が使用するインスリン注入器用注射針は、採血で使う注射針より小さいものの、針の直径は180㎛の大きさがあり痛みを伴います。一方、現在開発中のマイクロニードルは、針の尖端の直径が50㎛と、蚊が血を吸う吸い口(直径60㎛)より小さく、ほぼ痛みがないといいます。今回も引き続き、生体溶解型マイクロニードルを開発している東京大学生産技術研究所 金範埈教授に、同技術の医療分野への応用として、血糖値が測れるマイクロニードルパッチ型センサーや、新型コロナの抗体検査などドラッグデリバリーシステム(DDS)実用化への取り組みについてお話を伺いました。
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プラスチックは軽く、耐水性があり、加工もしやすいという特徴から、ペットボトル、買い物袋など使い捨て製品に多く使われていますが、リサイクル率の低さや投棄などによりプラスチックごみ問題は深刻化されています。この問題への一つの取り組みとして代替プラスチックの研究開発が行われています。今回は、代替プラスチックの中でも生分解性プラスチックに注目し、その開発を行っている三菱ケミカル株式会社に同社の生分解性プラスチックの特徴と活用事例、生分解性プラスチック普及の課題についてお話を伺いました。
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私たちの生活をさまざまな場面で支える産業用モーターは、急な故障や動作不良を起こさないよう適切な保全が求められます。モーターの故障は大きな損害につながるもので、鉄道業界の場合は数年に1度法定点検を行いますが、他の産業用モーターにおいても定期的なメンテナンスを実施し、長く使い続ける工夫が大切だそうです。今回は、神奈川県平塚市にある、産業用モーターの点検・修理・修繕、歯車装置の修理・更新、制御機器の製造・修理を手掛ける東洋工機株式会社にモーターを長く使い続けるために知っておきたいポイントや、同社の強みについてお話を伺いました。
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圧力容器とは、内部や外部からの圧力に耐えられるよう設計された密封容器のことです。圧力容器の溶接はボイラー溶接士の資格がなければできません。変形や歪みをできるだけ抑えるには、容器の形や大きさに適した治具をゼロから作る必要がありますが、資格や免許があるからといって優れた治具を作れるわけではないと言います。今回は、長崎県諫早市にある、プラント向けの圧力容器をはじめ、配管や架台等の設計、製作を手掛ける株式会社界工業になぜ他社が断わる特殊案件が集まるのかお話を伺いました。
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空中を飛ぶドローンが農業や輸送など様々な商業利用に期待される一方、水中を泳ぎ回る「水中ドローン」は漁業の人手不足解消へ期待されています。水中ドローンはケーブル式が実用化されていますが、深い海底設備の点検や漁業分野に応用するためには、ワイヤレス式の技術開発が望まれます。今回は、水中でワイヤレス給電とデータ通信可能な高周波電流を用いた方式を開発している豊橋技術科学大学 田村昌也准教授に、同方式の動作原理や他のワイヤレス給電方式との違い、実証実験の成果についてお話を伺いました。
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マイクロニードルといえば、既に実用化されている美容分野のヒアルロン酸のマイクロニードルパッチを思い浮かべるかもしれませんが、今医薬品を身体に投与するドラッグデリバリーシステム(以下DDS)としてのマイクロニードルパッチの開発が進んでいます。皮膚の薄く硬い角質層というバリアを乗り越えて定量の薬剤送達を可能にする技術とはどのようなものでしょうか。今回は、生体溶解型マイクロニードルを開発している東京大学生産技術研究所 金範埈教授に、マイクロニードルについての解説として、その種類や生体溶解型マイクロニードルの製造方法などについてお話を伺いました。
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近年、熱処理で得られる機能に注目が集まるアルミ。アルミを熱処理すると、硬度と粘りが出て耐久性が向上し、軽量さと強度の両立が叶います。一方で硬度を求めるほど歪みが出やすくなる特徴があり、硬さと歪みはトレードオフの関係にあると言います。硬さを求めて低い温度で急冷すると、強度は高くても歪みは大きくなり、そこがアルミの熱処理の難しいところだそうです。今回は、岡山県笠岡市にある小型鋼材製造と金属熱処理を事業の柱にする光陽産業株式会社にアルミ熱処理で得られる機能、気をつけるべきポイントについてお話を伺いました。
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難易度の高いコア技術の真空技術と低温技術。研究開発で使われる製品になると、指紋が一つでも内部に残っていたら、分子レベルのガスが発生する原因になって研究結果に差が出てしまうため、そこまで理解して仕上げる必要があるそうです。今回は、東京都大田区にある、精密機器の設計・製造・販売会社で大学・官公庁の研究所をはじめ、民間企業の基礎研究所に向けた実験機器の開発・製造において優れた品質と信頼性に高い評価を得る、北野精機株式会社に同社の強みと、ものづくりへのこだわりについてお話を伺いました。
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プラスチックは、私たちの生活のさまざまなシーンで利用される素材ですが、もともとの製造原価が安いこともあり金属に比べてさほどリサイクルは進んでいません。そのため海洋に流れ込むプラスチックごみ問題は深刻であり、世界的にプラスチック使用量削減へと動きが進んでいます。今回は、その取り組みの一つとして植物廃材を利用したバイオマス素材「セルロースファイバー樹脂」を研究開発しているパナソニック株式会社に、セルロースファイバー樹脂の特徴、同社が行った製造方法の改善と同素材の性能についてお話を伺いました。
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周囲が山に囲まれており、アクセスが良いとは言えないため、一般的に見れば商売をするには不利な環境といえる中山間地域。入ってくる情報自体は少ないですが、少ないがゆえに選別もしやすいなど、物理的な不便さが逆に強みになっていると言います。今回は、プラスチックをはじめ、アルミダイキャストやウレタンなど金型設計、開発、および製造を手掛ける岡山県真庭市にある、山陽精機株式会社になぜ金型生産・供給のグローバルネットワークを構築できたのかお話を伺いました。
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ゴムの成形を行う場合、通常は製品の金型が必要です。しかし切削加工でゴムの成形を行う場合、ゴムブロックを直接削るため金型は必要がなく、金型を製作する工程がなくなるため、その分の納期の短縮とコストダウンを実現することができるそうです。今回は、約50種類のゴムから製品に合わせた材料を選び、半導体装置メーカーから造船や発電プラントまで幅広い業界の製品を製造している、長崎県西彼杵郡にある有限会社津野田ゴム加工所に得意とするゴム切削加工の強みや長所についてお話を伺いました。
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高齢化、核家族化により、全国的に買い物難民が増えている中、都市部では店も多く買い物は行きやすいと思われますが、車を持たない人など徒歩で買い物に行く高齢者も少なくないです。ネットショップなども利用できるものの、配送ドライバーの人員不足などの問題でまだ解決していません。今回は、自動運転やロボット技術を駆使し様々なロボットを開発している株式会社ZMP 代表取締役社長の谷口恒氏に、同社の「無人宅配ロボット」の機能と今まで行った実証実験の成果についてお話を伺いました。
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脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。第6回目は、引き続き水素エネルギー普及に向けたサプライチェーンを構築しようとしている「産(民間企業)」に注目します。川崎重工業株式会社の水素戦略本部副本部長の西村元彦氏に、同社が取り組んでいる水素発電のための水素ガスタービン燃焼技術の開発と、水素発電からの熱と電気を近隣施設に供給するコージェネレーションシステム(CGS)の活用についてお話を伺いました。
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脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。第5回目は、引き続き水素エネルギー普及に向けたサプライチェーンを構築しようとしている「産(民間企業)」に注目します。今回は、川崎重工業株式会社の液化水素運搬船開発部部長の村岸治氏に、同社が持つLNG(液化天然ガス)運搬船建造のノウハウから開発した液化水素運搬船で用いる真空断熱による極低温技術や、液化水素を船から地上の貯蔵タンクへ搬送する設備の開発についてお話を伺いました。
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スペースデブリ(宇宙ゴミ)とは、惑星などの重力の存在の影響を受け衛星軌道で数km/秒という高速度で移動する、宇宙空間を漂う役割を終えた人工衛星やロケットなどの物体です。今後宇宙産業に参加する民間企業が多くなると予想される中、われわれ人類が持続可能な宇宙開発を行っていく上でこのスペースデブリへの取り組みは避けられない課題になりそうです。今回は、引き続き人工流れ星を開発している株式会社ALEのチーフエンジニア蒲池康氏に、人工流星源(粒)の素材、速度などの特徴を伺った後、スペースデブリを除去及び防止する技術の開発についてお話を伺いました。
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脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。第4回目は、引き続き水素エネルギー普及に向けたサプライチェーンを構築しようとしている「産(民間企業)」に注目します。今回も、川崎重工業株式会社の水素戦略本部副本部長の西村元彦氏に、水素の低コスト化のため同社が「褐炭」に着目した理由と、褐炭から高純度の水素を取り出す方法、水素の大量輸送のための膨張タービンを用いた水素液化システムについてお話を伺いました。