多くの製品化には欠かせない材料・加工・計測解析などの技術情報について、企業で研究・開発に従事される方や加工技術をサービス提供する企業の専門家など、各分野で活躍されている方にお話をお伺いしました。
-
テレビやゲーム機など表示デバイスで用いられる有機ELは、素子構造を簡素化し細かくしたり、薄くしたりすることでデバイスの高画質化や薄型化が行われてきた一方で、消費電力低減を目的とした有機EL素子の駆動電圧を低減するニーズがあります。このニーズに対して、従来の1/3程度となる約1Vの起電力での有機ELの低減圧駆動を発表したのは、富山大学の有機ELと分子科学研究所の有機太陽電池の研究グループによる共同研究であることを御存じでしょうか?今回は、同研究成果を発表した富山大学の森本准教授と分子科学研究所の伊澤助教に、共同研究の経緯や有機EL素子の低電圧駆動メカニズム、今後の研究方向性についてお話をお伺いしました。
-
アルミニウムの「水素脆化」は、アルミニウム合金内に存在する水素が金属の強度を低下させる現象ですが、そのメカニズムは長い間分かっていませんでした。このアルミニウムの水素脆化や応力腐食割れといった技術的課題が、アルミニウムの活用範囲の制限となっていたのです。この未解決課題に対し、九州大学大学院をはじめとする研究グループはアルミニウムの水素脆化メカニズムの解明を進め、ナノサイズの添加元素を入れることで水素脆化を防止できることを発見しました。今回は、九州大学大学院工学研究院の戸田教授にアルミニウムの水素脆化メカニズムや防止技術についてお話を伺いました。
-
有機ELでものづくり日本を取り戻そうとする活動を紹介する本連載。世界トップレベルの印刷有機EL技術を保有する山形大学は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業大学新創業創出プログラム(START)プログラム(2021~2023年度:3年間)に採択され、印刷有機ELの社会実装を目指す研究開発を進めています。後編では、前編に引き続き山形大学大学院の城戸卓越研究教授に、JST-STARTプログラムの概要やマイクロLEDと比較したときの有機ELの優位性について紹介して頂くともに、ものづくり日本を取り戻すための提言をお伺いします。
-
有機EL(有機エレクトロ・ルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence))は、電圧をかけ電気を流すことにより有機物が自ら発光する現象を意味し、その特徴を活かし次世代ディスプレイとして腕時計デバイス、テレビをはじめとした様々な製品に使われています。これら実用化に向けたブレイクスルーとなったのが、山形大学の城戸教授による白色有機ELの発見です。世界の誰も試みていなかった白色有機ELが、どのように開発されていったのかを御存じでしょうか?本連載では、有機ELでものづくり日本を取り戻そうとする活動に注目します。前編となる今回は、山形大学大学院の城戸卓越研究教授に、白色有機EL開発ストーリーについてお伺いしました。
-
コンクリート業界の脱炭素化の取り組みを紹介する本連載。建設用3Dプリンターは、建設分野で用いられる3Dデータをもとにロボットが自動で立体形状を造形する3D構造物の製造装置ですが、世界でこの建設用3Dプリンターが注目される理由をご存じでしょうか?注目される理由として、工期短縮、高い造形自由度、廃棄物・二酸化炭素排出削減という3つの特徴が挙げられており、日本も2018年に官民連携組織「3Dプリンティングによるコンクリート構造物構築に関する研究委員会」が発足しました。そうしたなか、日本でいち早く海外から建設用3Dプリンターを導入し、事業着手したのが會澤高圧コンクリートです。後編では、前編に引き続き會澤高圧コンクリートに、モルタルを使った建設用3Dプリンターの特徴や導入事例を紹介して頂くともに、コンクリート業界の脱炭素化に向けた提言をお伺いします。
-
有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬、遺伝子組換え技術を利用せず、環境への負荷をできる限り低減した農業です。地球環境への優しさに加え、生産者および消費者の人体への悪影響の可能性がなく、豊富な栄養を含んだ作物が育つこともメリットがある一方で、農薬を使わないため、栽培に手間がかかり、労働時間は慣行農業の1.5倍かかるデメリットが存在します。この労働時間の多くを占めるものが、雑草を抜くまたは抑草のための除草作業です。この除草作業を自動化するロボット「アイガモロボ」の開発に取り組むのが、東京農工大学発ベンチャーでスタートアップの有機米デザイン株式会社です。今回は、アイガモロボの開発者でもある同社取締役の中村氏にアイガモロボの開発ストーリーに加え、同ロボット活用による日本の農業存続への期待についてお話を伺いました。
-
リハビリ支援ロボットとは、事故や疾病などを原因とし後遺症が残った対象者にその能力を回復させる目的で実施する訓練や療法、リハビリテーションを支援するロボットです。日本人の三大疾病に数えられている脳血管疾患(脳卒中)を例にとると、厚生労働省の調査によれば、2017年の患者数は111.5万人に上ります。発症して死を免れたとしても、重い麻痺が残り、歩けなくなったり、介護を必要としたりするケースも多いことから社会問題にもなっています。今回は、脳卒中患者のリハビリをサポートし、社会復帰を促すためのロボット「ウェルウォーク」を開発するトヨタ自動車株式会社新事業企画部の中村氏に、リハビリ支援ロボットの開発ストーリーをお伺いしました。
-
コンクリートに入ったひび割れ(クラック)をバクテリアが自動的に修復する「自己治癒コンクリート」は、オランダのデルフト工科大学で発見されました。この自己治癒コンクリートを用いることによるコンクリートの長寿命化に注目し、デルフト工科大学の研究チームが大学発スタートアップとして設立したBasilisk BVと量産技術の共同開発に着手したのが、北海道に拠点を構えるコンクリートメーカーの會澤高圧コンクリートです。本連載では、コンクリート業界の脱炭素化について注目します。前編となる今回は、同社代表取締役社長の會澤氏、常務取締役の酒井氏に、脱炭素化に向けたコンクリート業界の課題や、「自己治癒コンクリート」量産技術確立に向けた開発ストーリーに加え、本技術の導入事例についてお伺いしました。
-
雨天時浸入水とは、本来流れ込むはずのない地下に埋設された汚水管に侵入する雨水のことです。雨天時浸入水の一例として、大雨によりマンホールから汚水が溢れ出す現象が知られています。この原因は汚水管(主にコンクリート製)の老朽化による破損ですが、地中に埋められた汚水管の破損箇所を特定するには多大なコストと労力がかかるため、補修がなかなか進まないのが現状でした。そうしたなか国土交通省は2019年「雨天時浸入水対策ガイドライン策定検討委員会」が立ち上がり、本格的な問題解決に乗り出します。今回は、同プロジェクトに参画し、AIによる音響解析を用いた下水道雨天時浸入水検知システムを開発した株式会社建設技術研究所の石川氏、鈴木氏にお話を伺いました。
-
プラスチック金型とは、プラスチック製品を開発する際に必要となる金型のことです。量産する場合は、切削したりシリコン型を使ったりするよりも、金型を使用した方が精度が高く、コスト面でもメリットがあります。また、最終的な製品の用途や性能によって、プラスチックの成形方法や使用する樹脂の種類も変わりますし、それに合わせたプラスチック金型を設計しなければならないのだそうです。今回は、東京都江東区にある株式会社関東製作所に、プラスチック金型による成形方法や金型の構造、費用、注意点などの基礎知識について、話を伺いました。
-
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、連鎖的につながる調達、製造、在庫管理、販売、物流といったプロセス全体(サプライチェーン)を見直すことで、効率化と最適化を行う経営管理手法のことです。昨今グローバル化をはじめとしたビジネス環境の変化によりその重要性が高まっています。さらに、2020年から始まった新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な流行により、世界各国にまたがるサプライチェーンの品質管理が課題として浮上してきています。本記事では、サプライヤ品質サービスを展開する株式会社日立ハイテクの協力のもと、サプライチェーンマネジメントの概要と一連のプロセス、品質改善事例をご紹介いたします。
-
海洋プラスチックは、海洋に流入したプラスチックの浮遊ごみやマイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下の微細なプラスチックの総称です。海洋プラスチックが注目される背景として、海上に漂う分解されにくいプラスチックが海の生物に付着したり、体内に取り込まれたりしたことが確認されたため、海の生態系に深刻な影響を及ぼす懸念がクローズアップされました。このような状況下において、海洋プラスチックや油などの浮遊ごみを回収するドローンJELLYFISHBOTを開発したフランスのスタートアップIADYS(アイァディーズ)は、これまでに157万ユーロ(約2億円)の資金調達に成功しています。今回は、IADYS創業者でJELLYFISHBOTの開発者であるNicolas Carlési(以下ニコラス)氏に、開発した水上ドローンの概要や世界各地での実証実験の状況についてお伺いしました。
-
物流ロボットとは、物流現場における「ピッキング」や「仕分け」といった業務を担うロボットであり、完全無人の環境下だけでなく、人との協働を行うものも存在します。多忙を極める物流の現場では、大量の荷物を効率よく運ぶために欠かせないものが格子状の台車「カゴ台車」が普及していますが、搬送に人手がいることや人身事故の発生といった課題を抱えていました。物流システムを扱う株式会社オカムラは、物流倉庫などでカゴ台車を掴んで搬送する自律走行搬送ロボットを開発しています。今回は、物流システム事業本部の山崎氏、田中氏に、同社が手がけるSLAM技術とAIの組み合わせでカゴ車を自動搬送する自律移動ロボットの開発ストーリーをお伺いました。
-
納品スピードと品質。どちらも顧客から要望の多いものですが、それらを両立させるには技術と経験が必要になります。部品や製造装置の製造を行う株式会社グローバルマシーンは、特急品に関するスピーディーな対応が強みです。また、精度高く仕上げることができるため、顧客からの信頼も厚いと言います。今回は、山形県東田川郡にある株式会社グローバルマシーンに、スピード対応の秘訣や仕事をする上で大切にしていることなどについて話を伺いました。
-
物流支援ロボットは、人手不足が顕著となっている物流業界の省人化・効率化をめざし開発されたロボットです。自動車やロボットの自動運転技術を開発してきた株式会社ZMPは、人の移動だけでなく、物の移動も自動化するために2014年に物流支援ロボットの「CarriRo(R)(キャリロ)」を開発しました。同ロボットはコロナ禍による物流需要の高まりや、省人化の取り組みに対する関心の高まりから、倉庫や工場での導入が増えていると言います。今回は、株式会社ZMPのCarriRo事業部長笠置氏に、物流支援ロボットの開発背景や特徴、種類について詳しくお伺いしました。
-
日用品や工業製品など幅広く使用され、あらゆる業界のものづくりを支えているゴム製品。精度の高いゴム加工を行うためには、使用用途や材質に対する適切な知識と加工技術が求められます。今回は、切削加工、ウォータージェット加工などをはじめとしたさまざまなゴム加工を行っている大阪府にある亜木津工業株式会社にゴム加工で失敗しないために知っておくべきことについてお話を伺いました。
-
脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。CO₂フリー水素は、水素の製造工程でCO₂排出を抑えたブルー水素の一種であり、具体的には原料となる水や石炭から複数種類のガスを取り出し(ガス化)、CO₂のガスは大気中に放出されないよう分離・回収し、H₂のガス精製を行う工程で製造されます。第11回目は、化石燃料由来のCO₂フリー水素製造・供給・利用の商用化を目指す電源開発株式会社(J-POWER)の取り組みに注目し、同社が進める2つの実証試験、石炭を輸入し国内でCO₂フリー水素を製造するプロジェクト、産炭国でCO₂フリー水素を製造し日本に輸送するプロジェクトについてお話を伺いました。
-
金属加工の中でも難易度が高い深穴加工。現在はドリルの進化に伴って、径の50倍近い深さまで開けられるようになってきました。しかし、そこまで深い穴を開けるには、内部給油方式の特殊な機械が必要です。そのため、顧客から加工を依頼されても断らざるを得ないケースも多いのだと言います。そんな状況を打破すべく、特殊な機械がなくても径の20倍近い深穴加工を可能にするドリル「Crea Borer(以下、クレアボーラー)」を開発したのが西研株式会社です。今回は、広島県広島市にある西研株式会社に深穴加工の注意点や加工時のコツなどについて話を伺いました。
-
沖縄科学技術大学院大学(OIST)で超伝導方式の量子コンピュータにおける周辺ハードウェアの研究開発を行う久保氏に、最近の量子コンピュータ研究開発状況を伺う本連載。量子コンピュータの測定の際に利用されるマイクロ波信号はエネルギーが極めて小さく、低温で効率良く信号を増幅する増幅器が必要になると言います。後編では、同氏が研究開発を進めるスピンメーザー増幅器の原理や、その開発ストーリーについてお話を伺いました。
-
量子コンピュータとは、原子や電子、分子といったミクロな粒子の状態や挙動を説明する理論である量子力学の特徴を巧みに利用して動作するコンピュータです。量子コンピュータは、従来のトランジスタ・コンピュータでは計算に膨大な時間がかかっていた問題を早く解ける特徴が注目され、高機能材料や薬品などの物質探索やシミュレーション、機械学習などへの活用が期待されています。本連載では、沖縄科学技術大学院大学(OIST)で行われている量子コンピュータの研究開発に注目します。今回は、超伝導方式の量子コンピュータの周辺ハードウェア技術の研究開発を行うOISTの久保氏に、量子コンピュータの種類や原理、仕組みについてご解説頂きました。