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デジタルパソロジーとは、病理標本を専用スキャナで撮影してデジタル化することで病理診断をサポートする技術です。デジタルパソロジーは、保存したデータをいつでも見られるようにできること、ネットワーク等を介して他者と共有できること、コンピュータ分析などに活用できること、といったメリットに加え、テレパソロジー(遠隔病理診断)としての利用が期待されています。今回は、医療機器として認証されたデジタルパソロジーシステムを開発している株式会社フィリップス・ジャパンに、同社の製品サービスの開発背景や概要、導入事例についてお話を伺いました。
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セラミック3Dプリンターは、3Dプリンターの一種であり、耐熱、絶縁、耐摩耗などに優れるセラミックス材料を3次元の設計データをもとに立体造形する装置です。セラミックス材料の一般的な加工方法は、材料の粉を金型に入れて加圧して固めて成形し、炉に入れて焼成します。この焼成の過程で粉末粒子が融合し、焼き固まる際に収縮します。セラミック3Dプリンターの課題は、セラミックス材料だけでなく、接着剤の役目として添加された樹脂のバインダーの収縮で大きな変形が生じるため、高精細な造形が難しく、熱収縮を抑えるために長い加工時間を要していたことです。キヤノン株式会社では、こうした課題を解決するため、独自にセラミック3Dプリンター向けの新材料を開発しました。今回は、R&D本部の安居氏とフロンティア事業推進本部の川村氏に、セラミック3Dプリンターにおける課題と開発した新材料の概要についてお伺いしました。
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心臓カテーテル治療は、心筋に血液を送る冠動脈が動脈硬化などにより狭くなった(狭窄)部分を拡張するために行われる治療方法であり、具体的には直径1mm程度の細いカテーテルを冠動脈に挿入し、拡張用バルーンやステントなどの治療用器具が挿入されます。日本では、近年、手術前後に血管の状態を調べる血管内イメージングの普及が進み臨床成績の向上に寄与しています。今回は、血管内イメージングデバイスに注目し、2回に分け前編では同開発に携わってきたテルモ株式会社鬼村氏、後編では医療現場で同製品を利用する佐賀大学医学部附属病院の医師で佐賀大学の園田教授に話を伺いました。前編では、超音波を利用したIVUSと、光(近赤外線)を利用したOFDIという血管内イメージング技術の概要についてご紹介します。
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電力変換装置製造技術は太陽光発電やEV車、燃料電池などを始めとした新電力関連で注目されていますが、長年利用されている古い設備にも広く利用されており、それらの装置の新規製造・修理・メンテナンスを行なう事業者が少なくなくなっているという課題もあります。今回は、産業機器や自動車や電車、医療機器向けの電力変換装置の設計から製造、修理・メンテナンスまでを自社で一貫して行う東京都杉並区に本社を構える、東京精電株式会社に電力変換装置のカスタムオーダーについてお話しを伺いました。
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宇宙開発ビジネス動向を紹介する本連載。後編では、有人宇宙開発で必要とされる閉鎖型生態系による生命維持システムに注目します。閉鎖型生態系による生命維持システムCELSS(Closed Ecological Life Support System)は、宇宙空間に閉鎖型の生態系を人工的に作り出し、理想的にはすべての資源を作り出し、再利用し、コントロールするシステムです。CELSSは宇宙空間での資源リサイクルの取り組みとして国内外で様々な取組みが行われています。後編では、宇宙システム開発代表取締役広崎氏に、閉鎖型生態系による生命維持システムの概要や将来的な有人宇宙開発の展望についてお伺いします。
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宇宙スタートアップは、小型の人工衛星を目標の軌道上まで打ち上げて運用し、サービスを提供するというビジネスモデルです。一方で、彼らのビジネス提供には人工衛星の安定運用を実現するため地上システムが必要です。地上システムとは、大きく、利用・研究システム、ミッション運用システム、追跡管制システムに分かれており、人工衛星の軌道投入までの計画作成、過去や未来の軌道などの計算、人工衛星の観測計画の立案、観測機会検索の最適化などを行うものです。今回は、宇宙開発ビジネス動向に注目し、2回にわたって地上システムや有人宇宙技術などの開発を行う宇宙システム開発株式会社へお話を伺いしました。前編では、地上システムの概要や地上システムのサービス提供を行う会社設立の背景についてご紹介します。
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遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとに紹介する本連載。第8回は「ポータブルエコー(超音波診断装置)」について紹介します。産婦人科やがん検査などで使用する超音波(以下エコー)検査は、放射線被ばくがなく、リアルタイムで見られるという特徴があります。一方、従来の装置は大型で数千万円と高価であるため、エコーの普及にはさらなる小型軽量・低価格化が望まれました。今回は、2000年代から小型エコーを開発しているGEヘルスケアに、同社の場所を問わず使用可能なポータブルエコーのメリットと活用先についてお話を伺いました。
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ナイロンメッシュは目開きが1μm〜数百μmと加工精度が高く、耐久性に富む特徴から様々な分野で利用されています。本記事ではナイロンメッシュの基本とふるい効率を高めるための選定のポイントをご紹介します。株式会社NBCメッシュテックの協力のもと、ナイロンメッシュをはじめとするメッシュのふるい効率を高める技術についても事例を交えてご紹介します。
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金属3Dプリンターの造形方法には、主にパウダーベッド方式とパウダーデポジション方式があります。金属3Dプリンター造形は、一般的に装置、粉体ともに機械加工に比べ値段が高く、造形精度等で課題があり、最終製品への適用は航空宇宙業界などの軽量化、部品点数削減などによるメリットが生まれる高付加価値部品に留まるケースが多いと考えられています。本状況下にて、光学機械などを製造・販売する株式会社ニコンは得意とする光学設計などの技術を活用し、パウダーデポジション方式に分類される金属3Dプリンターを開発しました。今回は、金属3Dプリンターの造形方法を整理しつつ、同社が開発した3Dプリンターの特徴や開発コンセプトに加え、金属3Dプリンターの適用先拡大や装置開発の展望までお伺いしました。
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宇宙輸送サービスは、小型衛星などの対象物を希望するタイミングで宇宙へ打上げ希望する軌道へ輸送するサービスですが、従来の大型ロケットへピギーバック(相乗り)するのではなく、専用射場を用いて低軌道に小型ロケットを打ち上げることで契約から打上げまでの期間が「世界最短」、打上げの「世界最高頻度」を目指す企業が現れています。今回は、打ち上げ時期と軌道の調整が可能な自前の打上げ射場を建設、小型ロケットなどを開発しているスペースワン株式会社 代表取締役社長 太田信一郎に本ビジネスに取り組む背景となった小型衛星打上げ市場や宇宙開発に関する法制度整備の現状に加え、ロケット打上げ射場建設の狙いについてお話を伺いました。
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糖尿病患者が使用するインスリン注入器用注射針は、採血で使う注射針より小さいものの、針の直径は180㎛の大きさがあり痛みを伴います。一方、現在開発中のマイクロニードルは、針の尖端の直径が50㎛と、蚊が血を吸う吸い口(直径60㎛)より小さく、ほぼ痛みがないといいます。今回も引き続き、生体溶解型マイクロニードルを開発している東京大学生産技術研究所 金範埈教授に、同技術の医療分野への応用として、血糖値が測れるマイクロニードルパッチ型センサーや、新型コロナの抗体検査などドラッグデリバリーシステム(DDS)実用化への取り組みについてお話を伺いました。
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プラスチックは軽く、耐水性があり、加工もしやすいという特徴から、ペットボトル、買い物袋など使い捨て製品に多く使われていますが、リサイクル率の低さや投棄などによりプラスチックごみ問題は深刻化されています。この問題への一つの取り組みとして代替プラスチックの研究開発が行われています。今回は、代替プラスチックの中でも生分解性プラスチックに注目し、その開発を行っている三菱ケミカル株式会社に同社の生分解性プラスチックの特徴と活用事例、生分解性プラスチック普及の課題についてお話を伺いました。
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マイクロニードルといえば、既に実用化されている美容分野のヒアルロン酸のマイクロニードルパッチを思い浮かべるかもしれませんが、今医薬品を身体に投与するドラッグデリバリーシステム(以下DDS)としてのマイクロニードルパッチの開発が進んでいます。皮膚の薄く硬い角質層というバリアを乗り越えて定量の薬剤送達を可能にする技術とはどのようなものでしょうか。今回は、生体溶解型マイクロニードルを開発している東京大学生産技術研究所 金範埈教授に、マイクロニードルについての解説として、その種類や生体溶解型マイクロニードルの製造方法などについてお話を伺いました。
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難易度の高いコア技術の真空技術と低温技術。研究開発で使われる製品になると、指紋が一つでも内部に残っていたら、分子レベルのガスが発生する原因になって研究結果に差が出てしまうため、そこまで理解して仕上げる必要があるそうです。今回は、東京都大田区にある、精密機器の設計・製造・販売会社で大学・官公庁の研究所をはじめ、民間企業の基礎研究所に向けた実験機器の開発・製造において優れた品質と信頼性に高い評価を得る、北野精機株式会社に同社の強みと、ものづくりへのこだわりについてお話を伺いました。
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高齢化、核家族化により、全国的に買い物難民が増えている中、都市部では店も多く買い物は行きやすいと思われますが、車を持たない人など徒歩で買い物に行く高齢者も少なくないです。ネットショップなども利用できるものの、配送ドライバーの人員不足などの問題でまだ解決していません。今回は、自動運転やロボット技術を駆使し様々なロボットを開発している株式会社ZMP 代表取締役社長の谷口恒氏に、同社の「無人宅配ロボット」の機能と今まで行った実証実験の成果についてお話を伺いました。
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スペースデブリ(宇宙ゴミ)とは、惑星などの重力の存在の影響を受け衛星軌道で数km/秒という高速度で移動する、宇宙空間を漂う役割を終えた人工衛星やロケットなどの物体です。今後宇宙産業に参加する民間企業が多くなると予想される中、われわれ人類が持続可能な宇宙開発を行っていく上でこのスペースデブリへの取り組みは避けられない課題になりそうです。今回は、引き続き人工流れ星を開発している株式会社ALEのチーフエンジニア蒲池康氏に、人工流星源(粒)の素材、速度などの特徴を伺った後、スペースデブリを除去及び防止する技術の開発についてお話を伺いました。
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人工流れ星は、宇宙空間にある直径1mmから数cm程度のチリの粒が地球の大気圏に突入、衝突して気化し、大気の成分と混ざり合って光を放つ現象である流星を人工的に再現するものです。太古の昔より人々を魅了するこの流星群が、決まった日にち、決まった場所に降らせることができたらどうでしょうか。今回は、この人工流れ星で宇宙ビジネスに参入しようとしている株式会社ALEのチーフエンジニア蒲池康氏に、同社が取り組んでいる人工流れ星の宇宙空間への放出技術や安全性の取り組みについてお話を伺いました。
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物流配送において、配達スタッフの人員不足、地方での過疎化と高齢化、都市部のマンションやオフィスビルのセキュリティ強化などの問題から、荷物を受取人まで届けるラストワンマイル配送にロボットを導入しようとする動きが進みつつあります。今回は、屋内配送に特化した「自律走行配送ロボット」を開発している香港発Rice Robotics社のCEO Victor Lee氏と日本での販売、導入支援を行うアスラテック株式会社に、「自律走行配送ロボット」の活用場の開発や、社会実装に向けたデザイン設計についてお話を伺いました。
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ネットショップなどのEC市場は右肩上がりで拡大を続けていますが、物流業界は倉庫内で商品をピッキング・梱包する作業に従事する人材の不足に悩んでいます。そこで、ピッキング作業の自動化が注目されていますが、この作業はコンピューターとロボットで行うには難易度が高く、自動化は進んできませんでした。今回は、作業の一部をロボットが補助する形で省人化を目指しているラピュタロボティクス株式会社に、同社が開発しているクラウドコンピューティングによるAMR(自律走行搬送ロボット)が、どのようにピッキング作業を省人化しているかお話を伺いました。
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高血圧症は、がんに次ぐ日本人の死因である脳心血管病の重大な危険因子であり、現在日本には約4,300万人の患者がいると言われています。高血圧症の治療は適切な血圧値を維持するための薬を服用し続ける必要がありますが、多くの患者は薬をもらうための通院が続けられず治療を中断してしまうといいます。今回は、高血圧症患者が通院せず自宅でも薬を服用し続けられるサービスを提供している一般社団法人テレメディーズの谷田部淳一医師に、高血圧のオンライン診療の仕組みと今後と課題についてお話を伺いました。