試作とは|ゼロから学ぶ試作の基本【設計開発の初心者向け】

はじめに

今回は「試作」とは何か、についてご紹介したいと思います。企業にお勤めの試作未経験者の方や、これから自作でモノを作ってみたい方、ぜひご参考ください。
「試作」とは、文字通り「試しに作る」ことです。
一般的に、私たちの身の回りにある製品はすべて、「試作」を経た完成品として出回っており、どんな製品を作るにしても「試作」は欠かせません。
では、何のために「試しに作って」いるのか。まずは試作を行う上で重視される観点についてご説明します。

試作とは、量産前に5つの観点から確認を行うため製品を試しに作ること

試作とは、モノを試しに作ってみることです。モノづくりにおける試作とは、製品を製造(量産化、量産工程)・販売する流れの前に、主に下記5つの観点から試験・評価を行うために部品・ユニット・製品を試しに作ることを指します。


試作で重要視される5つの観点

ひとえに試作といっても、製品化までの流れの中で試作は何回も行われ、その時々に応じて特に重視される観点は異なりますが、一般的には大きく以下5つの観点が重要になります。

(1) 安心・安全性
製品の作り方から使い方まで、危険がなく信頼できるものであるか

(2) 品質
製品の持つ機能、見た目、使いやすさなどが優れているか

(3) コスト
製品を制作するにあたってどの程度の費用がかかるか

(4) 納期
量産時に材料の仕入れ~製品化までどの程度の期間がかかるか

(5) 環境性
環境への負荷はどの程度か

例えば、コンセプトが決まり、まずカタチにしてみよう!となったときには、「(2)品質」が最も重視され、量産化に向けた生産方法の検討を行う場合は、「(3)コスト」や「(4)納期」が特に重視される傾向にあります。


製品開発の流れと試作の流れ

先ほど、試作は何回も実施される、と書きましたが、機械製品の商品開発の一般的な流れは<図1><表1>のようになります。

<図1>商品開発の一般的な流れ  ※上記赤枠内の工程で試作が行われます。
<図1>商品開発の一般的な流れ  ※上記赤枠内の工程で試作が行われます。

<表1>商品開発における各種工程の内容

企画 製品のコンセプト、企画立案
開発設計 設計仕様、デザインの決定
製品設計 材料、加工、詳細仕様の決定
量産設計 材料調達、生産方法の決定
生産 部品の製造、組み立て
販売 製品の販売
保守 販売された製品に対する問い合わせ・修理保証対応

 

 

試作の流れ

一般的な製品開発の流れは前述しましたが、各工程における試作の流れは<図2>のようになります。

<図2>試作の流れ
<図2>試作の流れ


1.企画立案
事業戦略などに基づき、PJ始動。開発会議などで決定された新製品コンセプトに基づき、各々の部品・モジュール等の改善目標値を設定

2.部品設計
目標値を満たすように、物理シミュレーション(有限要素法などによる応力計算)やCAE解析を用いた机上検討を繰り返し、試作に向けた部品の形状、候補となる部材を決定

3.試作見積
CADデータや図面を元に、量産メーカーや試作メーカーへ見積依頼

4.試作メーカー選定
試作メーカーとの打合せを踏まえつつ、加工方法を決定、試作部品の製作へ

5.試作品納入
試作品の組付け

6.試作品試験・評価
試験装置の確保は大変。開発遅延につながりがちな落とし穴

製品開発の具体的な流れについては、実際の設計者や加工業者の方々からのお話を元に下記の記事でも詳しく解説されています。そちらも合わせてご参考ください。


基本的に開発~製品設計までに、製品の用途・設計仕様が決定されます。
量産設計では材料が安定的に供給可能か、工場の生産ラインを確保できるかといったことも含めて最終製品や生産方法全体の設計を行います。

それでは次に、試作対象となる構造体や機械部品で利用される材料について、種類と特徴をご説明します。


試作対象の分類

試作対象は、大きく分けて3種類に分類できます。

1.部品の試作

装置を動かすための歯車やねじなどの部品を試作。各々の部品の強度・寿命などの性能検証が行われます。

2.モジュールの試作

部品を組付け(組立、アセンブリともいわれます)、モジュール単位での想定された性能を確認できるか試験を行うために行う試作。

3.製品の試作

量産・販売に向けて全ての機能を備えた製品段階での試作。ユニット試作とも呼ばれ、最終製品の利用形態をふまえ、耐久性試験や量産時の歩留まりに直結する個々のユニット性能のばらつきが評価されます。

試作でよく用いられる材料

材料は大きく、主に3つの種類に整理されます。<図3>

<図3>主な材料の種類
<図3>主な材料の種類



<表2>試作でよく用いられる材料一覧

金属材料 幅広い用途に用いられる「鉄鋼材料」や、アルミニウム、銅、チタンなどの「非鉄金属材料」
非金属材料 プラスチック、セラミック、ゴム、ガラス 等
特殊材料 メーカが独自に開発した「機能材料」や、2種類以上の異なる材料の組み合わせである「複合材料」

 

 

金属材料のうち、鉄が最も強度に優れています。他金属と組み合わせ、更に強度や耐熱性等の特性を向上させた合金材も多く、ステンレス鋼やクロムモリブデン鋼等様々な種類の合金があります。
アルミニウムは重さが鉄の約1/3と軽く、軽くて強度に優れた材料として知られています。
金属材料の価格を重さ当たりで比較すると、安い方から鉄、ステンレス鋼、アルミニウムとなります。
また、大きさで比較すると、安い方から鉄、アルミニウム、ステンレス鋼となり、鉄と比べてアルミニウムは約2倍、ステンレス鋼は約4倍の価格相場ととらえておくとよいでしょう。

非金属材料のうち、プラスチックは軽く、比較的容易に量産でき、形状の自由度も高い特徴があります。
強度が弱く耐熱性が低いというデメリットもありますが、高強度・耐熱プラスチックの開発が進んでおり、金属材料よりも比較的に安価であるため、代替材として注目を浴びています。

また、上記では、簡単にまとめましたが、材料には膨大な種類があり、特性や材料同士の比較が困難であったり、実際の使用環境下では予想と違う結果が出ることもあるため、材料選定には知識だけでなく、材料加工の経験も重要となります。

他の記事では、金属材料とプラスチック材料それぞれに対しても解説しています。そちらもあわせてご参考ください。


試作でよく用いられる加工方法

材料の種類ほど膨大ではありませんが、加工技術にも様々な方法があります。
次は、その一例をご紹介します。

(1) 切削加工

切削工具を用いて工作物の不要な部分を削りとる方法

(2) 鋳造加工

原料(金属材料)を溶かし、型に流し入れて冷却・凝固させて取り出す方法

(3) 塑性加工

材料に力や熱を加えて特定の形状に成型する方法。熱間加工や冷間加工がある

(4) 3Dプリンター加工

3Dモデルの設計図面をもとに、材料を積層させながら立体モデルを作成する方法

(5) 表面処理加工

素材表面の耐熱性、耐食性、耐摩耗性、装飾性を高めるために施される方法

(6) 溶接・接合加工

材料の溶解・凝固、材料の混合、接着面での摩擦力等を用いて複数の部品を一体化させる方法


(1)~(4)は一次加工とよばれ素材を成型する方法であり、(5)、(6)は後処理加工(追加工)とよばれ成形された部品の機能や装飾を向上させる加工です。
試作開発でモノを作る場合は、スピードが求められることが多いため、特定の形状を作るために切削加工が多く用いられる傾向にあります。
近年では3Dプリンター技術の発達により、早く、自由な造形が可能な3Dプリンターによる試作も増えてきているようです。

一次加工のうち、一般的に加工精度が高いものは切削加工とされています。少量の加工に対しては、切削加工や3Dプリンター加工がよく用いられていますが、どちらの場合も試作はあくまで試作であり、そのまま量産できるかはまた別です。
量産加工の場合は、鋳造加工や塑性加工の一種である鍛造加工が用いられることが多いです。
重要なのは、試作によって何を検証したいかであり、検証したいことを明確にしたうえで適切な加工方法を選びましょう。

各加工方法の詳細については、他の記事で解説していますので、そちらも合わせてご確認ください。

試作の費用と相場

試作にかかる費用は、部品形状や材料、要求性能(仕様)によって大きく異なります。
その際に押さえておくべきポイントとしては、所望する仕様を満たす部品形状・材料が試作メーカーの所有する加工装置、製造装置(量産装置)で対応可能かどうかです。

製造装置で対応可能、すなわち市販されている歯車やねじ、ばねといった部品には必ず型番がついて流通・販売されています。この型番品と同じ形状・材料であれば、試作を行うよりも、まずは数十円〜数百円/個といった量産価格で流通した商材を購入し、要求性能を満たすか評価した方がコスト面、品質面で優れています。
 
一方で、外形寸法(大きさ)は同じでも、ねじの溝の切り方が違う、ばねの巻き数が違うといった小規模な変更は、セミカスタム試作とも言われます。このケースは、主に試作メーカーのもつ装置の小規模なオペレーション変更、追加工で対応できる可能性があります。ただし、オペレーター人件費、試作品の出荷検査等などの工賃も発生するため、量産価格の数倍程度の価格、先ほどの例に合わせれば数千円/個程度のコストを想定しておきましょう。また、試作品提供もボランティア事業でないため、一定収益を上げるため最低●個以上などといった販売条件がつくことが多いようです。
 
独自形状、装置での加工実績がない新材料を使用したいなど、試作メーカー側で検討や加工用治具の製作が必要となるケースは、カスタム試作と呼ばれます。この場合、検討料金(コンサル料)・治具作成費などが価格のなかで占める割合が大きいため、先ほどの例に合わせると数十万円〜数百万円/一式で、試作品も●●個まで提供といった条件になることが予想されます。このケースでは1個でも●●個でも価格は変わりません。

このように試作の種類に応じた相場について説明しましたが、上記費用は、依頼側の設計図面・仕様や、受け手となる試作メーカーの状況(繁忙期など)によって大きく変わるものなので、まずは試作メーカーと相談しましょう。


試作の注意点

念のため緊急対応してくれる試作メーカーを確保しておく

ユニットでの試験や評価には、歯車やねじなどの部品や、電子部品やプリント基板などのモジュール化が必要となります。試作開発は他社と競争でもあるので短納期でスケジュールされるケースが多く、たった1つの組付け部品であっても欠品による影響は小さくありません。
そのような事態に備え、備品のストックや緊急対応が可能な試作メーカーを確保しておきましょう。


まとめ

以上、試作開発の進め方について簡単にまとめてみました。
ほかの記事でも、材料や加工技術の選び方のポイントも紹介しています。


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※2019年11月27日:加筆修正し再アップ
※2017年12月01日:初回公開

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