金属3Dプリンターで造形する際の一般的な流れとサポート材の上手な使い方

はじめに

金属3Dプリンターについて、押さえてほしい基礎知識や実際の金属3Dプリンターによる造形サービスについては、他の記事で紹介しています。

ここでは、実際に金属3Dプリンターを使う上で必要な知識として、3次元CADから試作部品完成までの工程、サポート材の基礎知識について紹介します。

金属3Dプリンターによる造形の流れ10ステップ

金属3Dプリンターを活用した部品製作の流れと作業内容を示します。<表1>
3次元CADから試作部品完成までの工程を、ノウハウも混じえ解説しましょう。

<表1>金属3Dプリンターを用いた部品製作工程
# 工程 内容
1 設計前準備 ①専門家(金属3Dプリンター技術者)と打合せ
-設計構想、欲しい部品の形状のイメージの検討
②3D金属プリンターのメリット・デメリット把握
2 3次元CAD図面作成 ①造形する部品データを作成
②部品材質決定
③後加工基準面決定
3 STLデータ作成 3次元形状データを作成
4 造形仕様決定 専門家と打合せ
-造形方案(造形条件、個数、配置、積層ピッチ、サポート材配置など)、造形時間見積りの検討
5 造件条件入力 STLデータ・造形条件・仕様入力
6 造形開始、終了 電源断などの外部トラブル、プリンタの造形不良トラブルの監視
7 造形物取り外し ①プリンターより取り出し
②電動帯鋸切りまたはワイヤ放電加工でカット
③造形ベースより取り外し
8 サポート材除去 手作業、機械加工によるサポート材の除去
9 機械加工 高精度必要部の機械加工
10 検査 3次元寸法検査

また、他の記事では、金属部品の加工全体の流れについて解説しています。金属部品がどのように製作されるかについては、そちらをご参考いただければ幸いです。

1.設計前準備

①専門家(金属3Dプリンター技術者)と打合せ
打合せでは設計構想、欲しい部品の形状のイメージを相談し共有します。また、プリンターの四隅には造形に使えないスペースがあり、機械仕様の寸法よりも小さい場合があるため専門家に確認した方がよいでしょう。

②3D金属プリンターのメリット・デメリットの把握
造形サンプルを見ることで、3Dプリンター造形のメリット・デメリットを把握し、技術的要因を把握します。形状によっては、サポート材を配置する必要があり、例えば、冷却水孔の大きな直径、オーバハング部分の造形などはサポート材無しでの造形が困難です。しかし、孔のサポート材の除去は困難なため、孔径を小さくするなどの設計変更により対処する必要があります。サポート材無しで造形できる限界孔径については、専門家に相談することをおすめします。

2.3次元CAD図面作成

3D専門家との打合せを基に部品形状決定し部品データを作成します。部品材料は従来製品や今回の設計条件から決定することが一般的ですが、造形できない材料もあるため、専門家に相談しながら進めましょう。さらに後加工が必要な場合は、加工技術者とも打合わせを行い、造形物に加工基準面を設定し、さらに後加工の削り代を3次元データに含めておくことが必要です。

3.STLデータ作成

3次元CAD図面があれば、STLデータは付属ソフトで作成できます。ある部品と同じものを作成したい場合は、3Dスキャナを使用してその部品のデータを取り込み、STLデータを作成します。
対象部品の一部を変更したい場合は、変更箇所のみほしい形状のデータに入れ替えることで変更できます。たとえば、取り付け穴の配置や直径の変更などがあります。

4.造形仕様決定

再度、専門家と打合せ実施し、造形方案(造形条件、個数、配置、積層ピッチ、サポート材配置など)を決定します。造形方案に不都合がある場合は、設計変更を実施した上で、造形時間を見積り費用、納期を決定します。

5.造件条件入力

打合わせに基づき、専門家がSTLデータや造形条件・仕様を入力します。

6.造形開始、終了

電源断などの外部トラブルを監視します。経験の少ない造形方式ではプリンターの造形不良トラブルを監視し、発生時の対応を迅速に行います。トラブルにはコータの造形物引っ掛けといったことなどがあり、トラブルが発生した場合は原因を推定し造形方式を変更します。

7.造形物取り外し

造形終了後、プリンターより造形ベースごと取り出します。パウダーベッド方式では作業者保護のため、金属粉末の吸入防護を徹底しなければなりません。

8.サポート材除去

サポート材は取り除き易いように、薄い板構造に設計することが一般的ですが、手作業での除去は工数と熟練が必要となります。できれば手作業と機械加工併用による除去が望ましく、そのため、機械加工で除去できる位置にサポート材を配置する工夫や、加工基準面の設定や加工治具が必要となる場合があります。
サポート材の配置の工夫については後述でも解説します。

9.機械加工

部品の寸法精度が要求される個所については機械加工で仕上げます。サポート材除去の場合と同様に加工基準面の設定や加工治具が必要となる場合があります。

10.検査

3次元測定機などと3次元CADデータを利用し寸法検査を実施します。

3種類の造形形状別 サポート材の配置の工夫

3D金属プリンターには大きなメリットはあるがサポート材が必要となる場合は、サポート材を適切に使い3Dプリンターのメリットを損なわない工夫が必要です。ここではサポート材の理解を深めるために、3種類の形状別に、サポート材の配置例について説明します。

(1) 容器状の造形物の場合<図1>

<図1>容器上造形物のサポート材の配置
<図1>容器上造形物のサポート材の配置

①:造形したい容器状のイメージです。
②:角度が大きい器の造形時イメージです。レーザによる溶融・凝固物は徐々に外側に張り出しているため、サポート材がなくても造形可能です。
③:サポート材を配置した角度の浅い器の造形時のイメージです。サポート材を配置しなければ造形できません。外側面側の溶融物の張り出しが大きく、溶融物の直下は固化していない金属粉であるので、1層あるいは2層の薄い溶融物は反って、材料供給用コータにより掻きとられあるいは、コータに引っかかってしまい造形できません。このため溶融物を下から支えるサポートを追加して、サポート上に薄い層を形成し張り出しを助けます。
④:サポート材がない、角度の浅い器の造形時の、サポートがなく失敗イメージです。

(2) 冷却管などパイプ状の造形物の場合<図2>

<図2>パイプにおけるサポート材の配置
<図2>パイプにおけるサポート材の配置

①:円管の上部付近で角度が浅くなるため造形不良となった例です。ただし数mm程度の小径孔はサポート材無しでの造形は可能です。
②:円管上部をサポート材で支えた例です。この場合サポート材の除去が困難です。
③:四角形孔のサポート例です。孔の天井を支えています。この場合もサポート材の除去が困難です。設計的に除去しないことが許されるケース以外は成り立たちません。
④:ワークを斜めに造形し四角形孔のサポート材を省いた例です。

(3) 壁からの張出し部分のある造形物の場合<図3>

<図3>張り出し部におけるサポート材の配置
<図3>張り出し部におけるサポート材の配置

①:造形したい壁からの張出しのある形状イメージです。
②:Aは張出し形状を妥協し下部を斜め45度で張出したイメージ、Bは本来欲しい形状のままで、サポート材を斜めに配置し造形した場合のイメージです。
③:Bのサポート材を除去した形状です。
サポート材が必要かどうかは張出し角度、造形条件、金属粉材料などにより変わります。一般的に、サポート材の断面形状は後加工で除去しやすいように薄肉断面に設計されています。この断面形状はプリンターのソフトとしていろいろな種類があり、造形時に選択できます。

サポート材の除去は試作時には手作業でこなすことが多く、工数がかかり、形状精度も劣ります。②のAに示した45度程度の斜め張り出しのように設計変更できれば工数は省けます。特に試作のように様々な観点での検討目的がある場合、目的に応じて柔軟に設計変更することで、試作スピードが速くなる可能性があります。

まとめ

実際に金属3Dプリンターを使う上で必要と思われる知識として、3次元CADから試作部品完成までの一般的な工程、サポート材の配置の工夫について紹介しました。
形状の自由度は高く、従来の加工方法では実現することが困難な形状も造形できる可能性がありますが、サポート材をどう配置するかの設計も重要となります。
また、従来の金属加工方法の基礎知識は他の記事で紹介しています。 そちらも合わせてご参考ください。

これから活用が広がる領域であり、領域自体のナレッジがまだ少ないため、金属3Dプリンターを用いて試作を検討する際は、できるだけ、メーカーや加工事業者への相談を検討しましょう。