試作屋さんが教える!コスト・納期に効く、発注時に注意したいポイント6つ

はじめに

この記事では試作のプロの方のお話を紹介します。(株)仙北谷代表取締役社長 仙北谷英貴氏です。(株)仙北谷は1953年にプレス加工会社としてスタートし、現在では切削・放電加工・3Dプリンター加工を用いて、試作・単品加工、治工具や金型の設計製作を中心に事業を展開している会社です。
要望があれば顧客へのコンサルティングにも対応しており、ホームページには、仙北谷社長の経歴を含め、これまでの実績や加工技術に関する豊富な解説と事例が掲載されています。 ダイカスト部品の設計や切削加工を想定した試作において、駆け出しの研究開発者が陥りがちな設計ミス、およびその際に注意すべきポイントを加工業者の経験談としてお伺いしました。上記ポイントを押さえれば、より早く、より安く外部の加工事業者を活用した試作が実現できるかもしれません。ぜひ、ご参考ください。

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それでは、まずは切削加工時に注意したいポイントから解説していきましょう。

ポイント1:平面に突起物のある部品は2部品にしてコストダウン

平面に突起物がある<図1>のような部品の設計をしようとしています。単一部品として切削加工で製作することは不可能ではありませんが、A面の平面度の条件が厳しい場合、突起物を避けるように慎重な削り出しを行うため、非常に長い時間を要してしまいます。

「平面度の条件が厳しい箇所には、研磨加工を行うことができれば加工が早く高精度に仕上がる。しかし、突起物がある部品の場合にはマシニング加工で慎重に削っていく必要がある。しかし、マシニング加工は研磨加工に比べて平面度を出しにくい加工です。そこで、単一部品(一体であること)に拘らなければ、研磨加工を施した平面部品に穴をあけ、ピンを挿入<図2>できれば時間もかからず低コストの試作ができるのです。」

<図1>切削加工(マシニング加工)にて平面度を出しにくい部品例(立体イメージ)
<図2>切削加工(マシニング加工)にて平面度を出すための改善例(ピン挿入)(立体イメージ)

ポイント2:薄肉部品の設計では、図面に入れる寸法公差は部品の機能を理解して設定すべし

コの字型の断面をもつ<図3>のような(他の部品を挟み込むような)薄肉の押さえ部品を設計する際、<図3>開口部の寸法lに公差の縛りを入れる設計者がいます。薄肉製品では加工後の変形が避けられないため、lの寸法精度を要求されてしまうと、加工難易度があがり加工業者さんを悩ませる原因となってしまいます。

「一般的に<図3>のような形状は、別の部品にはめるための押さえ部品でよく見られる構造です。薄肉であればコの字の先端部分は相手部品にならって変形するため、lの寸法精度はほとんど必要ありません。相手部品に組み付くかどうかは、むしろ<図4>l’の寸法精度の方が重要です。しかも、<図4>l’の寸法精度は出しやすく、加工の難易度は下がります。lに寸法公差を入れる設計は無駄な費用がかかるだけでなく、機能を満足しない場合も出てくるわけです。」

研究開発者が各種検討・設計を行う際は、コンピュータ上で完成図(今回のケースでは部品組合せ図)<図5>を見ていることが多いと考えます。
今回のように、そのなかの一部品を外注試作に出すケースでは、部品ごとの機能を理解して寸法公差を定めることが大切とのコメントを頂きました。

<図3>寸法公差(精度)の設定で加工難易度があがってしまう薄肉部品例
<図4>適切な寸法公差(精度)の設定をおこなった薄肉部品例(改善例)
<図5>設計時に確認する薄肉部品完成図(部品組み合わせ図)(イメージ)
<図5>設計時に確認する薄肉部品完成図(部品組み合わせ図)(イメージ)

ポイント3:スリット入りの薄肉円筒形状の設計図面では、真円度の指定の方法に工夫が必要

<図6>のように薄肉の円筒形にスリットが入っているC形の部品を設計する際、真円度の寸法公差が入っている場合があります。この場合もポイント2で紹介したように、かみ合わせ部品として利用する場合であれば、C形の状態での真円度は必要ない場合があります。

<図6>真円度の指定方法に工夫が必要な薄肉円筒形状の部品例
<図6>真円度の指定方法に工夫が必要な薄肉円筒形状の部品例

「通常、スリットのない円筒形状の加工は旋盤加工を用いて外径と内径を加工すればよいため、比較的加工しやすく真円度を確保するのも難しくありません。しかし、その円筒部品にスリットを加工すると必ず変形が起こり、真円度を出すのは極めて難しくなります。<図7>」

<図7>加工後に薄肉円筒形状の真円度が変化する理由
<図7>加工後に薄肉円筒形状の真円度が変化する理由

「今回のように、真円度の指定が入ったスリットがある円筒形状の加工を受けたときは、ワイヤーカット加工でC形に加工しますが、高精度なワイヤーカットでも加工後にひずみが生じますので、荒加工、中仕上げ、最終仕上げのように何工程かに分けて加工する必要があります。これでは、旋盤加工よりも加工難易度が高く、工数もコストもかかってしまいます。」

「ところが、今までの経験上、スリットの入った円筒形状の使用用途はスペーサーとして、円筒状と円筒状の部品を組み合わせる際の間にはめ込むための部品である場合が多いです。このような使い方だと、C形の状態での真円度は必要ありません。例えば、スリットを入れる前の測定で真円度が出ていれば合格とし、スリットを入れた後の変形は考慮しない、あるいは真円度の公差を大幅に緩和する、という設計であれば旋盤加工が使えます。<図8>旋盤加工後に真円度を測定し、OKであればスリットを加工します。この方法であれば、コストは1/2~1/10になるかも知れません。」

<図8>部品用途を想定しコスト低減を図った加工図面記載例(改善例)
<図8>部品用途を想定しコスト低減を図った加工図面記載例(改善例)

ポイント4:スペーサー用途での薄板の板厚の公差の指定は、平面度ではなく平行度

薄板平面板の試作が行われる場合に、平面度の指定がつくことが多いです。この試作品はどのような用途で用いられるのでしょう?スペーサーとして使用する場合であれば、部材自体の平面度は重要ではなく、平行度を設定するだけで加工しやすくなり、平面度を重視する加工に比べコスト・工数ともに削減することができます。

「プラスチックや薄い金属材料を用いる場合、平行度の加工は簡単です。一方で、平面度の加工は非常に難しい。平行度の場合は、平板上に材料を固定して両面を1回ずつ研磨加工すれば終了です。平面度が入っている場合では、機械から取り外した状態で反っているとNGになってしまいます。そのため、<図9>のように、材料の下にスペーサーを入れ、ひずみを与えないように少しずつ加工し、両面を交互に何度も研磨しなければなりません。平行度の加工に比べ工数がかかる加工となります。平行度と平面度、図面記号の違いでコストと工数は大幅に変わり、倍近くの差がでることがあります。」

<図9>スペーサー用途の薄板において平面度指定で加工コストが高くなる理由
<図9>スペーサー用途の薄板において平面度指定で加工コストが高くなる理由

それでは次に、ダイカスト製品の試作の際に注意すべきポイントを解説します。

ポイント5:ダイカスト部品の試作では隅Rの指定が必要か、試作目的を確認すべし

ダイカスト部品を試作する場合は切削加工で作ることが多いですが、切削加工では回転する刃物を用いて素材を削りとり製作します。そのため、<図10>のような隅には円弧状の形状がどうしてもできてしまいます。

<図10>切削加工にて円弧状の形状が形成される場所(隅)を示した部品断面図
<図10>切削加工にて円弧状の形状が形成される場所(隅)を示した部品断面図

「例えばダイカスト部品<図11>の隅Rを0.5ミリとして設計するとマシニング加工で製作する際には、直径1ミリの工具を使用することになります。細い工具はしなりやすいため、加工スピードがあげられず、長時間を要することになります。もし、隅Rを5ミリに変更いただくことが可能であれば、直径10ミリの工具で加工することが可能となり、工数を大幅に削減することができます。」


<図11>隅(コーナー)に施される丸みの半径(R)を指定した部品断面図
<図11>隅(コーナー)に施される丸みの半径(R)を指定した部品断面図

「他の部品とはめ合わせる必要があるため、上記のような設計変更ができない場合、<図12>のような逃がし形状も提案しています。隅Rを切り込ませることで、他部品とはめ合わせやすくなります。」



<図12>試作サンプル品の作製にて工数削減を図る逃がし形状の提案例
<図12>試作サンプル品の作製にて工数削減を図る逃がし形状の提案例

ポイント6:試作品においても量産時のダイカスト成形で想定する抜け勾配の指定が必要か、試作目的を確認すべし

ダイカストで量産を行う場合、金型には抜け勾配が必要となります。この抜け勾配がダイカストを想定したサンプル試作に時間を要している理由の一つになる場合があります。

「通常、ダイカスト成形には抜け勾配が必要となります。<図13>のように直角の金型を製作してダイカストを行うと、成形した際に金型と製品が密着して金型から外せなくなってしまいます。そのため、<図14>のように必ず抜け勾配(1度程度)を付ける必要があります。当然、製品にも抜け勾配がついています。」
「サンプル試作(例えば削り出し等で)を行う際に、この抜け勾配は必須なのでしょうか。この抜け勾配をマシニング加工で施すには斜面に沿って少しずつ加工する必要があり、工数を要します。この抜け勾配自体は部品の機能上必要としない場合が多く、試作の場合はCADデータや設計図面を修正して、抜け勾配がない形状の製品を製作することで加工時間が短縮される場合があります。」

<図13>ダイカスト成形では使用が難しい直角(⊥)の金型形状
<図14>ダイカスト成形で用いられる金型形状(抜け勾配あり)

まとめ

以上、駆け出しの設計者の方々が陥りやすいポイント6つを紹介しました。試作では、製品化に向けた技術課題の解決・現行設計での性能把握を「早く・安く・効率的」に実現することが大切です。コンピュータ上で展開される図面ひとつひとつの項目・大きさにとらわれる必要はないのです。
本来の目的に沿った適切な加工方法を選択することで、試作スピードの向上やコスト削減につながることもしばしばあり、試作設計の際には、この6つのポイントをご参考いただければと幸いです。可能ならば、加工業者の方たちに実際にどのような利用用途をイメージしているかを共有することも検討してみてはいかがでしょう。豊富な加工知識と経験に基づいた試作加工のアドバイスを得られることが往々にしてあります。

「試作屋にとって重要なことは図面通りの正確な加工を実現することではなく、お客様の最終的な目的を達成させ、試作に満足いただくことだと考えています。そのため、試作品にとって必要ない要求仕様は緩和してもらうこともあれば、図面以上の加工精度にこだわって試作する場合も少なくありません。お客様のご要望に応じて最適な加工方法を提案致しますので、ぜひ一度ご相談ください。」

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