簡単図解!知っておきたい塑性加工の加工方法の違いとその特徴

はじめに

塑性加工とは、「材料に力を加えて変形させ、力を取り除いた後も変形が残る材料の性質(塑性)を利用して、材料を所定の形状・寸法に成形する」ことです。
鋼、銅、アルミニウムなどの金属材料は塑性のある材料で、これを利用して種々の形状に加工できます。金属の塑性加工に属する加工方法には、鍛造、押し出し加工、圧延加工をはじめ多くの方法があります。
この記事では、そんな「塑性加工」の加工方法の違いとその特徴について解説します。

また、他の記事では、金属加工の種類やそれぞれの特徴についてまとめています。こちらも合わせてご参考下さい。

金属の塑性加工方法は、「鍛造」、「ダイス成形」、「圧延」、「曲げ」、「絞り」「せん断」の6種類

塑性加工には材料素材を加工し、板、棒、線、管などの一次製品を製造する加工と、一次製品をさらに加工して部品などを製作する加工とがあります。
<表1>に主な塑性加工とそれに使用する機械を示します。一次製品の加工には鍛造、押し出し加工、引き抜き加工、圧延加工があります。曲げ、深絞り、せん断、ファインブランキング加工は部品製作に適用されます。

<表1>金属塑性加工の分類
原理 塑性加工名 使用機械・工具
鍛造 自由鍛造 プレス機、汎用工具
型鍛造
ダイス成形 押し出し加工 押出加工機(成形機)、ダイス
引き抜き加工 引抜加工機(成型機)、ダイス
圧延 圧延加工 圧延機、ローラ
曲げ 曲げ加工 精密プレス機、パンチ、ダイス
絞り 深絞り加工
せん断 せん断加工
ファインブランキング加工

ここでは、鍛造を除く各種塑性加工方法について原理、特徴、機械の金属部品への適用例をご紹介します。

鍛造に関しては、以下の記事でまとめています。こちらも合わせてご参考下さい。

ダイス成形の基本的特徴

1.押し出し加工

金属を溶融温度近くまで加熱し、ダイスで成形しながら押出して所望の断面形状にする方法で、断面形状が一様な棒状の製品が得られます。通常、熱間押し出しが多いですが、冷間押し出し、温間押し出し方式もあります。<図1>に各種押し出し方式を示します。

塑性加工の内、ダイス成形の各種押し出し方式(前方・後方・静水圧押し出し)
<図1>各種押し出し方式(前方・後方・静水圧押し出し)

(a)前方押し出し
コンテナの中に材料の塊ビレットが入っており、これをラムと呼ばれる部品で押しダイスの孔を通過させることで、断面を成形します。ラムの進行方向と製品(押し出し材)の進行方向が同じであることが特徴です。ビレットはコンテナとの間で大きな摩擦力を生じるため、大きな力が必要です。

(b)後方押し出し
ラムと製品の進行方向が逆になる方式。コンテナとビレットは滑らないので摩擦力は発生せず、ラムを押す力は前方押し出しより小さくなります。

(c)静水圧押し出し
ラムを押すとビレットが圧力媒体によって押し出されコンテナに触れることはありません。このため前方押し出しと似た方式であるが、ラムを押す力は小さくなります。

いずれの押し出し方式においても、ダイス穴の形状を変えることでさまざまな断面形状の製品を得ることが出来ます。

<写真1>に押し出し成形品の断面形状例を示します。精度の高い断面のパイプ状の棒材が得られるため用途は広く、各種材質の丸棒、角棒、パイプ、アルミサッシ等に適用されています。

押し出し成形品の断面形状例
<写真1>押し出し成形品の断面形状例

2.引き抜き加工

引き抜き加工は、丸、パイプ形状のバーをダイスに通し引き抜き、細く長く引き伸ばす加工法です。ダイスは硬い金属の厚い円板で、中心に円錐台形、四角錐台形などの徐々に細くなる穴があけてあり、穴の出口付近の寸法が所定の値に正確につくりあげられています。ダイスの形状は種々あり、それに倣った断面形状のバーが得られます。
<図2>に棒線の引き抜き作業、<図3>にパイプの引き抜き作業を示します。

<図2>ダイス成形の引き抜き加工の内、棒、線の引き抜き作業
<図2>棒、線の引き抜き作業
<図3>ダイス成形の引き抜き加工の内、パイプの引き抜き作業
<図3>パイプの引き抜き作業

5つのメリットがあります。パイプ、異形管、異形みがき棒鋼、電線、針金に適用されています。

①寸法精度が良い  寸法許容差±0.05mm
②表面肌がなめらか
③異形管が製造可能
④強度が上昇する
⑤削らないので材料歩留まりが良い

圧延加工の基本的特徴

<図4>に示す圧延加工は、厚い金属板を1対のローラの間に通し薄く延ばす、あるいは形材などに成形する加工方法であり、熱間圧延と冷間圧延の2つの方式が知られています。
鋼の場合は、連続鋳造などで製作した厚板鋼を2個一対のローラの間に通し、成形あるいは薄く延ばします。ローラはラインにより多段で何十対になることもあります。こうした圧延加工で製作される代表例として、H形鋼材があります。複数の圧延ローラにより粗圧延から、仕上げ圧延まで徐々に最終形状にむけ連続的に加工することで製品が出来上がります。

厚い金属板をローラで薄く延ばす圧延加工の原理
<図4>圧延加工の原理

圧延加工は、連続的に加工されるため能率が良いことに加え、冷間圧延では表面はローラ表面が転写してなめらかである特徴があります。<図5>に各種形鋼、鋼管等代表的な製品を示します。代表的な適用例として、鋼板、形鋼、アルミ板、銅板などの金属板などがあります。

鋼管、H形鋼、丸棒、角形鋼管などの圧延製品例 (イメージ図)
<図5>圧延製品例 (イメージ図)

曲げ加工の基本的特徴

金属板や棒をまげて立体的な形状に加工するのを曲げ加工といいます。下記の三つの加工方式があります。

(1)3個のローラの間に金属板を通して曲げる(ロール曲げ)

(2)折曲げ機にかけて曲げる(板折曲げ)

(3)金型をプレス機に取り付け、金属板をその間で圧縮して曲げる(プレス曲げ)

1.ロール曲げ

<図6>に上記(1)の3個のローラの間に金属板を通して曲げるロール曲げの原理を示します。この方式は汎用性が高く、曲がり板ばねの試作、生産に利用されています。特別な治具無しでローラの間隔を調整して、種々の曲げ形状が得られます。くるりと巻くことで、パイプ形状の加工にも適用されています。

塑性加工の一種であるロール曲げ加工の原理
<図6>ロール曲げ加工の原理

2.板折曲げ

<図7>に板折曲げ機の原理を示します。ベースの上に置いた金属板を上方より上板で固定し、支点を中心に90度回転する曲げ板を回転させて板を曲げます。この方式は汎用性が高く、特別な治具無しで大小の金属板の曲げ加工ができるので、各種曲げ板の試作、生産に利用され、操作盤等電気装置の筐体など中量産品の生産に利用されています。

塑性加工の一種である板折曲げ機の原理 (板折曲げ)
<図7>板折曲げ機の原理 (板折曲げ)

3.プレス曲げ

プレス曲げはプレス機を使った加工方式です。同方式では金型が必要になりますが、ある程度汎用性のある金型を利用することができ、生産性も高いため曲げ加工の主流となっています。
<図8>にプレス機の模式図を示します。スライドは上部のクラウン内にある動力源とスライド駆動機構により上下に往復移動ができ、ボルスタには下型が固定されており、スライドには上型がセットされています。この下型の上に金属板のワークを置き、上型を大きな力で下降させ、ワークを変形させて種々の塑性加工ができる構造になっています。

塑性加工の一種であるプレス機の模式図(プレス曲げ)
<図8>プレス機の模式図(プレス曲げ)

<図9>にプレス機を使った曲げ加工の方式を示します。上金型のパンチと下金型のダイスを利用し種々の曲げ加工に対応でき、この方式は中小物部品の大量生産に適しています。

塑性加工の一種であるプレス曲げ加工機を用いた各種方式
<図9>プレス曲げ加工機を用いた各種方式

深絞り加工の基本的特徴

<図10>に示す深絞り加工は、ポンチを用いて板素材(ブランク)をダイス穴に押し込み、外側を縮めることで容器状の製品を成形する加工方法です。

深絞り加工
<図10>深絞り加工

深絞り加工では、下記(1)~(4)の工程をたどることで成形品が得られます。

(1) ワークの1種である「円形ブランク」をダイスの上に載せ、しわ押さえリングで上方より押し付ける

(2) ポンチが下方向に移動し、ブランクはポンチの先端のアール部に接する部分で曲げられる

(3) ブランクはさらに、ポンチの進む下方向に引っ張られる

(4) ポンチとダイスの隙間に絞りこまれたブランクは、円筒に形成される

このとき、ブランクがダイスに引き込まれるとき上面にしわができるため、しわ押さえのリングでブランクを押し付けています。安定的に深絞り加工を行うには、しわ押さえとブランク、ダイスの間の潤滑が重要となり、このため押しつけ力の調整と潤滑剤選択の工夫がなされています。

深絞り加工では、応力状態が複雑なため圧縮応力のかかるフランジ部にしわが出やすく、また円筒側面に引っ張り応力が働くため横クラックが生じやすい問題があります。金型製作、押し込み条件等技術的に困難ですが、製品の軽量化、低コスト等には効果大です。ブランク材として、軟鋼、18-8ステンレス、アルミニウム、銅、黄銅などが用いられています。適用例として、電子機械等機器のカバー、容器状の小物部品、金属製日用品、乾電池ケース、コンデンサケース、流し台のシンク、自動車エンジンのヘッドカバー等があげられます。

なお、プレスを利用しない深絞り加工があります。旋盤を用いたヘラ絞り方式や、金属板を叩いて成形する叩き出し方式です。前者は楽器などの薄物パイプ形状や薄物容器形状に適用されます。後者は鉄道先頭車両の車体カバー、大物容器の製造に適用されており、しばしば話題を呼んでおります。

せん断加工の基本的特徴

<図11>にせん断加工の原理を示します。ダイスはポンチの径よりわずかに大きく、両者の間にはわずかなクリアランスがあります。ダイス上にブランクを載せ、上部よりポンチが下降し板に当たると板の内部にせん断応力が生じ、板を切断することができます。

せん断加工の原理
<図11>せん断加工の原理

<図12>にせん断加工における切断面の状態を示します。上部より、ポンチが入ったところに板表面の変形によるダレが発生し、その下にせん断応力により切断された滑かな「せん断面」ができます。せん断面の下には引っ張られて破壊した破断面、板の裏面にはバリが発生します。基本的には切断面にはカエリ、ダレが発生し、クリアランスが適正でないとワークの形状精度が悪く、きれいな切断面が得られません。

せん断加工における切断面の状態
<図12>せん断加工における切断面の状態

せん断加工は、プレス機を使い、板材をダイス通りの形状に大量に製作できるので大量生産向きで、生産現場では広く用いられています。適用例として、軽荷重歯車、日用ステンレス製品、各種形状の打ち抜き部品があります。

ファインブランキング加工

ファインブランキング加工は、名の通り精密打ち抜き加工です。せん断加工のところで説明したように、せん断加工では基本的には切断面にダレ、バリ(カエリ)、面の粗い破断断面が生じ、部品の機能上この切断面の滑らかさが必要な場合は切削加工が必要となります。この欠点を改良する目的で、ファインブランキング加工が開発されました。
<図13>に通常せん断加工の一般打ち抜き加工とファインブランキング加工の比較を示します。一般打ち抜き加工では、パンチが板にあたることで反りが生じ、最終的に切断に至ります。パンチとダイスの隙間であるクリアランスが大きくなると、切断面が引き裂かれたかのように粗くなってしまうのです。

一般打ち抜き加工とファインブランキング加工の比較図
<図13>一般打ち抜き加工とファインブランキング加工の比較図

これに対し、ファインブランキング加工では多くの改良がなされています。主な改良点は、下記(1)~(3)の通りです。

(1) 板抑え(環歯)でワークのズレ、そりを防止する

(2) 下部より逆押しパンチでワークのズレ、変形を防止する

(3) クリアランスを最小にするため、ダイスとパンチの位置合わせを精密にする

ファインブランキング加工では以上のように、ワークを上下から大きな力と環歯で押し付けることにより、ワークのずれを防止しながら打ち抜き、これによりバリの小さい、ダレのない破断面を得ると同時に高精度打ち抜きが可能となるのです。

このため、ファインブランキング加工の切断面は大部分がせん断面に覆われ非常に滑らかで、バリもほとんど出ない特徴があります。破断面の精度が高いため、切削加工無しで切削部品として使用できるというメリットを活かし、小型精密機械の部品、軽荷重歯車等の製作に用いられています。

まとめ

この記事では「塑性加工」として、「鍛造」を除く「ダイス成形」、「圧延」、「曲げ」、「絞り」「せん断」の5種類の加工方法に加え、「ファインブランキング加工」の解説を行ないました。塑性加工のメリットは、塑性変形を利用し「材料を無駄なく所定の部品形状に加工できる」ことと、せん断加工により「素早く部品形状に加工できる」ことの2点に尽きます。

精密プレス機と金型技術の進歩により、種々の金属部品が高精度に効率よく生産されるようになっていますが、依然として長い経験に基づくノウハウが重要な加工方法です。試作にあたっては、経験豊富な職場の先輩や試作専門業者などにコンタクトし情報を収集・検討することも必要になると考えます。試作を考えている方は、以下の加工専門業者に相談してみてはいかがでしょうか。

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