イノベーターのために進化する3DCADソリューションの未来とは「SOLIDWORKS WORLD 2019」

INTERVIEW

SOLIDWORKS
CEO
ジャン・パオロ・バッシ(Gian Paolo Bassi)

3Dソリューションのグローバル企業、ダッソー・システムズ。戦闘機ミラージュで知られるダッソー・アビエーションのR&D(研究開発)部門から1981年に独立した3DCAD(設計支援)システムのソフトウェア会社です。

同社は、航空宇宙、自動車、建設、海洋、エネルギー、素材、医薬品開発など11の産業領域に展開し、世界130カ国22万社に3次元モデリングを核とした開発プラットフォームを提供。2018年の世界経済フォーラム(WEF:通称ダボス会議)において、「世界で最も持続可能性のある企業」にも選ばれています。

そんなダッソー・システムズが、この2019年2月10〜13日、世界最大ともいわれる3Dフォーラム「SOLIDWORKS WORLD 2019」を米国テキサス州ダラスにて開催。熱狂的なファンが多いこのイベントは、ユーザーを中心に世界から6,000人を超える参加者がありました。

SOLIDWORKSはダッソー・システムズの製品ラインナップのうち、主に中小企業や個人事業主向けの3D設計・解析ソフトウェアであり、世界に600万人のユーザーを擁するベストセラー製品です。SOLIDWORKSのライセンスは一括購入でおよそ100万円、米国ではサブスプリクションモデルもあります。

これまでの主なユーザーは中小企業の設計者、アントレプレナー(スタートアップ)でしたが、昨今はフリーデザイナー、造形アーティスト、学生にもユーザーは広がっています。SOLIDWORKSには世界に144のユーザーコミュニティがあり、年間数百回のミーティングが行われています。そこはユーザー同士の技術交換やアライアンスの場になっており、SOLIDWORKS WORLDはそうした設計者や技術者たちが1年に1度、1か所に集まり、4日間を過ごすお祭りのようなイベントです。

メインカンファレンスの開場時間に扉が開くと、少しでも前の席に座ろうと走り出す参加者たち。SOLIDWORKS WORLD恒例の風景です。
メインカンファレンスの開場時間に扉が開くと、少しでも前の席に座ろうと走り出す参加者たち。SOLIDWORKS WORLD恒例の風景です。

筆者は今回、SOLIDWORKS WORLD 2019に参加し、ジャン・パオロ・バッシSOLIDWORKS CEOに同社が提示する新たな戦略を伺いました。

新戦略の要は一貫したマネジメントシステム

──── 今回のカンファレンスで主に4つの発表を行いました。その内容をお聞かせください。

バッシ:
1つ目は3DEXPERIENCE.WORKSという新戦略です。これは、ダッソー・システムズの持つ上位システムである3D EXPERIENCEと同じような、企画から設計、シミュレーション、製造まで一貫したマネジメントが可能なシステムです。

ソリッドワークスという独立した3DCADシステムを、ダッソー・システムズが持つ複数のソフトウェアと連携し、設計から製造までを包括的につなぐということになります。

具体的には、企画はエノビア、設計デザインはソリッドワークス、シミュレーションはシミリア、製造はデルミアワークス、この4つのソフトウェアが連携し、中小企業と個人向けに再構築したものを、3D EXPERIENCE.WORKSとしてユーザーに、非常にお手頃で適切な価格で提供します。

2つ目は、ダッソーがこのたび、 ERP ソフトウェアのリーディング企業である IQMS (米国カリフォルニア) の買収を完了し、「デルミアワークス」という名称の新ブランドに加えたことです。そして先程述べたようにデルミアワークスは3D EXPERIENCE.WORKSの中で、ソリッドワークスと連携します。これにより、発注処理、スケジューリング、生産、発送といった各プロセスのデジタル化とリアルタイムの接続を実現します。

3つ目は、新たなxAppシリーズアプリケーションとして、「SOLIDWORKS xShape」をリリースします。これは2016年にリリースしたWebブラウザベースの3次元設計環境「SOLIDWORKS xDesign」に続く製品です。これまで難しかったサブディビションサーフェスの再分割をブラウザ上で容易に行うことができ、有機的なデザインがシンプルな操作で行えます。これはソリッドワークスデスクトップ、xDesign 、3D EXPERIENCEのすべてのソフトウェアと互換性を持ちます。

そして最後に、来年より「SOLIDWORKS WORLD」のイベント名称を「3DEXPERIENCE WORLD」に変えることです。これはソリッドワークスの価値がより大きく深い意味のあるものになるということです。現在のソリッドワークスユーザーに理解してほしいことは、ソリッドワークスのユーザーが期待しているもの、愛してやまないもの、役に立つと思っているものはそのまま持ち続け、プラスの価値を加えるということです。

イノベーションに必要な「3つの軸」とは?

──── ソリッドワークスは特にベンチャーや個人ユーザーに高い支持を得てきましたが、その点は変わらないのでしょうか。

バッシ:
ちろんです。これまで私たちはアントレプレナー=起業家に情熱を注いできました。さまざまな夢と情熱を持っている人たちが、その可能性を物理的なモノの形にし、イノベーションを実現すること支援したいと考えています。

私はイノベーションの実現には3つの軸があると考えています。それはアート、サイエンス、テクノロジーの3つです。この3つの軸が集約して交差するところにイノベーションが生まれると考えています。

デザインにはアート性が必要であり、技術にはトポロジーやオプティマイゼーション、材料科学といったテクノロジーが必要であり、マテリアルにはサイエンスが必要です。ユーザビリティについてはライフサイエンスも重要です。

こうしたイノベーションの3つの軸を育てるインキュベーターになりたいと私たちは考えています。そのために、私たちは教育機関などにも足を運び、彼らにとってのインスピレーションとは何なのかを理解しようと探っています。それはこれからもまったく変わりません。

SOLIDWORKSがユーチューブやインスタグラムに!?

──── 今回の3DEXPERIENCE.WORKSの戦略は新規ユーザーの開拓にもつなげていくつもりですか?

バッシ:
その通りです。これまで中小企業・個人向け3DCAD市場におけるSOLIDWORKSのマーケットシェアは非常に高いものです。ただしマーケットはまだ拡大できると思っています。例えば、ホビイスト(趣味の製作者)の方、ファブラボ、学生、そして、一般のコンシューマーにも広げていきたいと思っています。

今、市場規模全体では1,000万ユーザー程度だと思いますが、そうやって市場規模を広げていくことで、1億人のユーザーを持つことができると考えています。

さらに私たちは将来的に、3DCADというものを、写真や動画と同じぐらい手頃なものにしたい。動画のユーチューブ、写真のインスタグラムのようにしたい。そこまでいければ、10億ユーザーを対象にすることも不可能ではない。それくらい使いやすく、シェアラブルなものにしたいという野望を持っています。そうすれば世界はさらにイノベーションが起きるようになるでしょう。

私は、企業が起こすビジネスイノベーションの上には、いろんな属性の人が繋がって起きるコラボレーティブイノベーションがあると思っています。そうした環境を私たちが作りたいのです。

SOLIDWORKSで設計されたアーケードゲームで遊ぶ参加者。SOLIDWORKS WORLDはこうした体験型の展示が多数あります。
SOLIDWORKSで設計されたアーケードゲームで遊ぶ参加者。SOLIDWORKS WORLDはこうした体験型の展示が多数あります。

日本のものづくりスタートアップがイノベーションを起こすために必要なこと

──── 日本ではものづくりのスタートアップの事業環境が厳しく、イノベーションも起きにくい状況にあります。どうしたらよいでしょうか。

バッシ:
起業家精神の根本にあるのはネバーギブアップの精神だと思います。それこそが起業家が持っているべきスキルです。

日本でアントレプレナーを目指す人たちが今、最も難しさを感じているのは、資本調達ではないかと思います。ただし昨今、資本調達も国内ばかりではなく、ワールドワイドになってきています。日本のアントレプレナーはもっと世界の資本家にアピールするときではないでしょうか。

また、私も日本を何度も訪れていますが、日本にもファブラボのようなメーカースペースがたくさんあるのを見ています。またSOLIDWORKSを始め、スタートアップでもリーズナブルな価格で使用できるさまざまなツールができている。SOLIDWORKSも起業家のために、1年間無償でアクセスできるプログラムを用意しています。

ネバーギブアップの精神を持ち、トライを続ければ、きっと課題を解決できると思っています。


文/嶺竜一

編集部から

多くの製品が居並ぶCAD業界の中で「使い勝手の良さ」に定評があるSOLIDWORKS製品。それが単独ではなく、今後複数のソフトウェアと連携し、包括することで、ますます使い勝手が良くなることが期待されます。彼らは教育機関にもさまざまなプログラムを提供し、多くの若い世代への人材育成にも力を入れています。そしてまたスタートアップにも導入しやすい価格帯の製品として進化し続けてはいます。が、もちろん競合他社も同様に進化しようとしています。編集部では、進化し続ける3DCAD業界の動向にも目を向けていきたいと思います。

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