光造形+注型で“世界最速の開発支援企業”を目指すデザイン思考の最先端ベンチャー(後編)

ものづくりに今までとは違う次元の「スピード」が必要となり、アウトソーシングの形態も変革が求められています。そんななか、「デザイン」「開発」「設計」「試作」までを、最短時間で一気通貫にサポートする「ものづくりエキスパート企業」、クロスエフェクト社。後編では彼らのノウハウと技術に裏打ちされた“時短”の極意を中心に話をうかがいました。

『時間を納品している会社』とさえ言い切る時短術

数々の大手企業の開発パートナーとしてプロトタイプの試作、開発を支援し、医療向けの心臓モデルでは第5回「ものづくり日本大賞」において内閣総理大臣賞を受賞するなど、注目を集めるクロスエフェクト。その強みは大きく2つあります。

1つ目の強みは、試作におけるスピードです。
「当社は、開発における『時間という価値を提供する』企業です。『時間を納品している会社』と言ってもいいかもしれません。スピードこそが最大の武器。当社をパートナーにしていただければ、製品開発が効率化され、開発期間の大幅な短縮が可能です」と営業グループの名倉司氏は言います。

同社が得意とするのは、3Dプリンターよりも高精度な樹脂の立体成型ができる「光造形」、および真空注型による小ロット製造「高速試作」サービスです。
「光造形」は3次元CADデータをもとにレーザー光線と光硬化性樹脂を用いて積層造形し、3次元CADでデザインされたモデルと寸分違わない実物モデルを超短納期に作成する3Dプリンティング技術です。

通常では3日から1週間ほどの納期ですが、同サービスでは場合によっては受託から1〜2日でプロトタイプの製作も行います。小ロットの複数製造は、「真空注型」によって行います。光造形や切削加工によって作った「マスターモデル」を元にシリコーン型を製作し、複製していくため、意匠面の確認や金型製作前の検討用モデルとして短納期かつ安価に製作ができるメリットがあります。

「注型で重要なのは、マスターモデルの表面を綺麗に処理して仕上げることです。次に、シリコーンをどこからどう流し込んで固めるのかを考えます。樹脂は固まるまでにどうしても収縮や変形をするので、その変化も予測しなければなりません」と開発支援グループプロトタイプチームの和田遼太氏は言います。

クロスエフェクトのクライアントには、パナソニック、オムロン、ローム、NTT西日本、村田製作所など大手がずらり。大学病院の医療機関や、大学、スタートアップ企業も多数あります。

短納期の発注はどんなケースが多いのでしょうか。
「社内でプロトタイプを発表する日程ギリギリになってようやく仕様が固まったり、直前に問題が発覚して作り直したりといった状況で、当社に特急で製作を依頼されるケースがあります。もともと研究開発をかなり厳しいスケジュールで行っていますので、試作までにかけられる時間が短くなっているのだと感じています」と営業グループの田中哉大氏。

製品化のライフサイクルが早まっている中、競合との開発競争に負けるわけにはいかないという事情があるのです。
また、同じく営業グループの名倉司氏は、
「割とよくあるケースとしては、展示会で試作品を会場に運んだところ、運搬や搬入のときに壊れてしまったため、それをすぐに造形して塗装して翌日に持ってきてほしいといったものですね。展示会においてプロトタイプは次にリリースする商品を発表する非常に重要な場です。ただし形を見せるためのモックアップで、強度がなく壊れやすいものも多いです。そうした受注は、展示会シーズンになると増えますね」と言います。

<写真1>営業グループ名倉司(なぐらつかさ)氏
<写真1>営業グループ名倉司(なぐらつかさ)氏

短納期を実現している理由の一つに、クロスエフェクトの特長の一つである24時間稼働の製造体制が挙げられます。
「24時間と言っても常に現場に人間を貼り付けているわけじゃありません。日中の勤務時間に造形のプログラムを入力し、光造形機を深夜に動かしているので、24時間稼働ができています。交代制もしておりません。設計も製造も社員全員がほぼ定時に帰宅できるよう、スケジュールを組んでいます」と開発支援グループプロトタイプチームチーフの吉村和樹氏は説明します。

<写真2>開発支援グループプロトタイプチームチーフ吉村和樹(よしむらかずき)氏
<写真2>開発支援グループプロトタイプチームチーフ吉村和樹(よしむらかずき)氏

同社の社屋は1Fと2Fが吹き抜け構造になっているため、営業メンバーと製造メンバーのコミュニケーションが取りやすくなっています。そのため、営業が受注した仕事を即座に製造チームに受け渡すことができ、受注したタイミング時間次第では、翌朝には試作品ができあがっています。そこから仕上げ工程を行い、最短ならばその日のうちに出荷できるというわけです。

<写真3>就活学生にも評判のとてもきれいな作業場
<写真3>就活学生にも評判のとてもきれいな作業場

オリジナルアプリを開発して時短を実現する

同社では通常納期の受託製作の中に、特急対応の製作を組み込んでいます。そのような複雑な製作フローを滞りやトラブルなく進めるためには、生産指示が非常に重要になります。以前は紙ベースでやっていましたが、同社はITの導入による生産性向上を進めました。システム開発会社と共同で、生産管理システムと連動したオリジナルアプリを開発したのです。

<写真4>時短実現の切り札となるオリジナルアプリ
<写真4>時短実現の切り札となるオリジナルアプリ

マネージャーは特急で飛び込んでくる仕事をどうやって組み込むか、現場の状況を見ながら判断し、臨機応変に工程を組み替えます。そして、作業指示書をアプリにアップロードします。

「作業指示書が従業員のスマートフォンにリアルタイムで表示されます。各工程に対して実際にかかった作業時間や、その工程においてどれだけ利益が出たのかといった数字が自動的に計算され、フィードバックされますので、振り返りができ、社員一人ひとりの意識がだいぶ変わってきますね」と吉村氏は言います。また月に1回ミーティングを開き、全体での振り返りと、効率化のための勉強会を開いています。

特急対応の制作は、特急価格を上乗せしているため、利益率は高くなっています。ただしその効果はそれだけではありません。いざというときにどこよりも短納期の特急対応をしてくれることがわかっているからこそ、クライアントは普段からの仕事をクロスエフェクトに発注してくれていると言います。同社の経営理念の中核にあるという「時短」こそが同社の大きな差別化要因になっているのです。

社屋中央に光り輝く滑り台が「デザイン力」を象徴

同社のもう一つの強みは、その「デザイン力」。その象徴とも言えるモニュメントが2015年に新築した本社社屋中央の吹き抜けにある、2階と1階をつなぐチューブ型の滑り台。ステンレス製の滑り台は光輝いており、かなりの存在感です。高さがあり、ブレーキをかけずに降りるとけっこうなスピードが出ますが、慣れた社員はこれをスルりと滑り降ります。

<写真5>1階と2階をつなぐ滑り台
<写真5>1階と2階をつなぐ滑り台

この滑り台をデザインしたのは、同社のフランス人デザイナー、バンジャマン・ダヴー氏。ものづくりの中小企業とはとても思えないほどスタイリッシュで、社屋のシンボルとなっています。

<写真6>フランス人デザイナーのバンジャマン・ダヴー氏
<写真6>フランス人デザイナーのバンジャマン・ダヴー氏

クロスエフェクトは約10年前にデザイン部門を設立。現在はダヴー氏をはじめ社内に4名のデザイナーを抱え、プロダクトデザインを受託するサービス「Rapid Design Service」を提供しています。

「曖昧な状態のラフスケッチや文字情報でしかなかったアイデアをビジュアル化し、製品のイメージを明確化させます。アイデア段階から製品を総合的にプロデュースしています」と名倉氏は言います。

3DCADの進歩、3Dプリンターの性能向上などにより、プロダクトデザインは大きく進化しています。美しく触り心地の良い流麗な3次元デザインが求められているのです。どのような家電であっても、リモコンであっても、インテリアの一つとしてあるべきであり、機能は良くてもセンスの悪いモノは、もはや売れない時代になってきています。機器の多くは機能過多に陥っており、機能で選ばれる時代ではなくなったのです。一方で、美しいデザインのプロダクトは顧客に選ばれ、利益率を確保しやすいということも言えます。

商品企画者や開発担当者は、「こんなものを作りたい」と企画しても、自分でデザインまでできる人は多くありません。そこで社内または社外のデザイナーにデザインを発注するのが一般的です。さらにデザイナーが作成した3DCADデータをもとに、加工エンジニアが加工プログラムを作成し、モックアップを製造します。そのプロセスにはそれなりの時間がかかります。クロスエフェクトにデザインを発注すれば、それらのプロセスを一気通貫で行えるため、さらなる“Rapid”=“時短”につながるのです。

企業にとって、企画、設計、デザイン、開発、生産それぞれの工程の設備・人員を含むリソースを社内で用意し、一気通貫したフローで行うには大きな資本が必要であり、リスクも大きいと言えます。そのため一部の工程を専業企業にアウトソーシングするケースは増えています。一般的なメーカー(ブランド)であれば、開発工程におけるプロトタイプの試作や、デザイン、生産の一部を外部にアウトソーシングすることはよくあります。また、ファブレスメーカーは、企画、デザイン、販売のみを自社で行い、開発、設計、生産は外部に丸ごと委託する場合もあります。

外部にアウトソーシングしながらものづくりをする場合、試作なら町工場、デザインならデザイン事務所、生産なら量産工場というように工程ごとに専門会社に依頼することが一般的です。しかしそれにはデメリットがあります。やり取りが増え、管理が大変であり、時間がかかるのです。

クロスエフェクトのデザイナーは、クライアントからヒアリングしたイメージやラフ画から3Dデータを作成します(3Dモデリング)。そこから、CG(コンピューターグラフィックス)を使用してリアルなイメージ画像を作成します(3Dレンダリング)。動画を制作するサービスも行っています。

商品企画者、開発担当者がそこから新たな発想を得たり、デザインをブラッシュアップしていったりして、ビジュアライズされたプレゼンテーションを行うことなどを助けているのです。

価格設定も明確です。例えばプロダクトデザインスタンダードプランの基本価格は30万円。2〜4案のデザイン提案をし、3Dデータ制作までを行います。

もちろん同社のデザインサービスは光造形+真空注型による試作サービスと連携しています。クライアントはアウトプットされた3次元造形モデルを確認し、生産部門とともに検証して、さらにデザインをつき詰めていくことができます。

つまり、商品のアイデアから3Dデザイン、開発、量産化設計の検証というプロセスを、クロスエフェクト1社をパートナーにして行えるのです。さらに同社にはメカニカルエンジニアも在籍しており、内部の構造設計を委託することも可能です。

「デザイナーはお客様に寄り添い、市場投入がより早くできるデザインを目指しています。また、より安価に量産ができるデザインも心がけています。現在、大企業から中小企業まで、1年間に100件を超えるデザインを受注しています」と田中氏は言います。

<写真7>自慢の滑り台の前で。左から田中氏、和田氏、吉村氏、名倉氏
<写真7>自慢の滑り台の前で。左から田中氏、和田氏、吉村氏、名倉氏

クロスエフェクトは、技術力はもちろんのこと、「時短」と「デザイン力」という2つの強みが加わることによって、日本のものづくり産業に、新しく先進的な価値を提供しています。

文/嶺 竜一