自動運転、コネクテッド・カーは未来ではなく現実に!世界最大級の家電ショー2019CES現地報告(後編)

毎年1月、ラスベガスで開催される世界最大級の家電の見本市、Consumer Electronics Show(CES)を、なぜ自動車のジャーナリストがリポートするのでしょうか? 前回に続いて、CESを紹介するにあたって、そんな疑問もあるでしょう。実のところ、その翌週にアメリカ車の生まれ故郷であるデトロイトで開催されるモーターショー以上に、各国の自動車メーカーやメガ・サプライヤーが集まる、というシンプルな理由なのです。もちろん、デトロイトでは、トヨタが最新のスポーツカーである「スープラ」を発表するといった大きな話題もあったのですが、自動車の最新テクノロジーといった点では、圧倒的にCESの方が話題性が高いのです。

機能満載のインテリジェンス・カーが続々と登場!

2019年のCESでは、メルセデス・ベンツは新型「CLAクーペ」を、モーターショーではなく、CESの会場で発表しました。さらに、従来、最新機能を搭載するのは高級車からと相場が決まっていましたが、メルセデス・ベンツは新しいコネクテッド・カーの機能とHMI(Human Machine Interface〔ヒューマン・マシン・インターフェイス〕)をエントリーモデルの「Aクラス」から搭載しはじめました。今回、「Aクラス」の派生モデルである小型4ドアクーペ「CLAクーペ」のニューモデル発表をCESで行ったのです。元々、自動車業界では、クルマを家電に喩えることを嫌う文化があったこともあって、家電のショーで新車を発表することに驚きの声があがっていました。

メルセデス・ベンツ CLAクーペ
メルセデス・ベンツ CLAクーペ

最新のインフォテインメントシステムである「MBUX(Mercedes-Benz User Experience)〔メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス〕」を使ってみると、二度びっくり! です。最新のスマートフォンやスマートウォッチといったデバイスと同等の最新のハードウェアとソフトウェアを搭載しているからです。NVIDIA製Reilly PXとParker128を採用し、OSにはリナックス、マップデータにはHERE、ボイスコマンドにはニュアンスを採用しています。

スクリーンに投影されるグラフィックは鮮明で、ヘッドアップディスプレイもフルカラーです。ディスプレイのカスタマイズも可能で、ソフトウェアも学習していきます。「Aクラス」と比べて、「CLAクーペ」では音声認識の精度が高まっていました。特に北米仕様では、質問を理解し、高度な対応ができるようになりました。タッチパッド式パネルに手を近づけると、センサーが反応して操作できる非接触モードで作動する「インテリアアシスタント」も搭載されています。

インテリジェンスな機能を持つ「MBUX」。
インテリジェンスな機能を持つ「MBUX」。

ドイツの高級車では、アウディも負けてはいません。なんと、自らスタートアップ企業である「ホライド」社を共同設立したと発表しました。車内でVRゴーグルを装着して楽しむ後席エンタテインメントを3年以内に提供する方針です。

具体的には、自動車メーカーや開発会社が利用可能なオープンプラットフォームを使って、次世代のエンタテインメントの商品化を目指します。同社は、車載VRコンテンツに対応するプラットフォームを開発し、VRに転送するSDKを提供する方針です。筆者のこれまでのVR経験上、VR酔いが心配でしたが、視覚からの体験とユーザーの感覚を同期させて、VR体験中の乗り物酔いは大幅に軽減できるとのことです。3年後としている理由は、C2Xのインフラが整う時期をめどにしているとのことでした。

ちなみにC2X(Car to X)とは、自動車と自動車(C2C:Car to Car)、または自動車と信号機や標識などの道路インフラ(C2I:Car to Infrastructure)が、ITインフラを介すことなく直接無線通信して情報交換をして、安全運転や環境に配慮した運転支援につなげる仕組みのことです。

「インカーエンタテインメント」を詰め込んだアウディ
「インカーエンタテインメント」を詰め込んだアウディ

トヨタは自動運転のためのトヨタ・リサーチ・インスティチュート(=TRI)のトップを務めるギル・プラット氏が登壇し、オンボードカメラ、センサー、3Dアニメーションを駆使して、事故のシーンを見せたあと、自動運転の最新テスト車「P4」のシステムを発表しました。2018年夏にマニュアルモードでマッピングと走行データ収集中に起こった事故の詳細を伝え、もし「トヨタ・ガーディアン高度安全支援システム」を使用中であれば、むしろ、この事故は防げたと考えているとのことでした。“ガーディアン”とは、トヨタが推奨する自動運転の機能のことで、人間の代わりに運転してくれる完全な自動運転というより、人間のミスや弱点をカバーするためにシステムが働くという思想のことです。

「トヨタ・ガーディアン高度安全支援システム」で障害物を自動的に回避。
「トヨタ・ガーディアン高度安全支援システム」で障害物を自動的に回避。


8つのスキャニングヘッドを持つLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)システムは「Platform3.0」からの踏襲ですが、両サイドに追加された2つのカメラに加えて、専用設計された画像センサーを前後に搭載。レーダーシステムの最適化などを行っています。頭脳となるエンジンパワーを高めたことで、高い機械学習能力を得た上に速度も高めました。もちろん、それらの電力を供給するためにバッテリはハイブリッド車用2次電池を搭載しています。

LiDAR完全装備のトヨタのテスト車両
LiDAR完全装備のトヨタのテスト車両


ホンダはおおよそ自動車メーカーと思えない展示でした。山火事の際に活躍する4輪バギーにはAIが搭載されていたり、ロボットが活躍する時代に備えたロボット・アズ・ア・サービス(=RaaS)のプラットフォームを展示したりしていました。

ホンダRaaSプラットフォームとは、データ蓄積、共有、通信制御、状態遷移、ロボット間連携などの共有する機能を、インターフェイスとなるAPIやSDKとともにパッケージで提供することを指しています。ホンダのためだけに使用するのではなく、たくさんのパートナーと手を組んで、ロボット、システム、アプリをこのプラットフォームの上で作動することで、つなぎ目のないロボットのサービスの実現を目指しています。

ホンダでは、バッテリーパックの標準化にも注力しており、自動車メーカーの枠を超えて、エネルギー、AI、RaaSプラットフォーマーと全方位で「動くもの」としてのロボティックス全体の作動環境の構築を目指しています。

日産は、見えないものを可視化する「I2V(Invisible to Visible)」に挑戦しました。これは車内外のセンサーが集めたデータとクラウド上のデータを統合することにより、クルマの周囲全体を把握することに加えて、クルマの前方の予測や、カーブの向こうの見えないエリアの状況を映し出す技術です。アバターを車内に登場させて、まるで人間同士がコミュニケーションをとっているかのように運転をサポートしてくれます。「プロパイロット」、「Seamless Autonomous Mobility(=SAM)」、室内センサーからの情報を統合する「オムニ・センシング」の機能を使って、リアルタイムに車内外の状況を把握して、全方位の情報を収集しています。その結果、得られたデータを元に、クルマの周囲360度のバーチャル空間を作り出し、周囲のリアルな情報を重ね合わせます。

リアルとバーチャルを融合した日産のコネクテッド・カー技術。
リアルとバーチャルを融合した日産のコネクテッド・カー技術。

確実に進化した百花繚乱のサプライヤー!

CESでは、自動車メーカーだけではなく、メガ・サプライヤーも主役です。フランスのヴァレオは、自動運転車を持ち込んでラスベガスの町中を走らせていました。2018年秋に「ハンズオフ ジャパンツアー」と銘打って、日本を一周する6,700kmものグランドツアーを敢行したばかりです。ヴァレオの自動運転機能「ドライブ4U」は、毎年、着実に性能が向上しているのですが、2019年版でも驚きの進化を見せてくれました。超音波、カメラ、レーダー、LiDARのすべてを自社で生産している上に、ジーメンスとAIの開発で手を結んでいます。スタートアップ企業である「クラウド・メイド」も買収し、全方位でコネクテッド&自動運転の時代に挑んでいます。

自動運転の機能である「ドライブ4U」を搭載したテスト車の運転席に開発担当のエンジニアが座って、後席に同乗しました。超音波、カメラ、レーダー、LiDARといった各種のセンサーを駆使して、刻々と変化する路上の出来事を捉えるのですが、6個のLiDARを使っていることもあって、一般的な4個のLiDARを搭載するより死角が少ないそうです。

道路の合流地点などの難しいシーンでも難なく自動運転を続けます。道路の分離帯の手前に背の低いポールがあるような珍しいシーンでも、障害物を検知して、避けて走るのには驚かされました。歩行者の往来がある町中でも、人間の存在をセンサーが検知して停車します。唯一、自動運転がキャンセルされたシーンがあります。横断歩道を渡ろうとして、急に戻ろうと方向を変えた人がいたときでした。もちろん、横断歩道の手前で停止している状態での解除なので、ドライバーは安全に自動運転から手動に運転を代わることができました。センサーで周囲の状況を検知するだけではなく、搭載されるAIが周囲の動きを予測することで、より人間の感覚に近い運転ができるようになっています。

加えて、遠隔で自動運転を行う「ドライブ4Uリモート」と、遠隔にいる人がまるで車内に同乗しているかのように仮想で再現する「ヴォヤージュXR」も試しました。前者は、レストランの駐車場のような設定で、運転席から降りると、遠隔でバレーパーキングを行うというデモでした。

ヴォヤージュVRは、遠くに住むおばあちゃんがリビングルームに座ったまま、家族のドライブに参加するというシナリオでした。特殊なVRデバイスなどは使わずに、おばあちゃんの動きをキャプチャーして、車内のバックミラーにARで映し出すという仕組みです。ただ、それでも音声と画像があることで、まるでそこに人がいるかのような雰囲気を味わえるので、人間の感覚というのは不思議なものです。

後部座席にARで映し出された遠方の家族。リアルな動きに連動。
後部座席にARで映し出された遠方の家族。リアルな動きに連動。

日本勢では、日立グループによる展示が興味を引きました。2018年にフォレシアに買収されたクラリオンがHMIやインフォテインメントを担当し、日立オートモーティブがアクチュエーターを含めた車載制御を担当しています。加えて、クラウドやシステム構築などで日立製作所が背景に控えています。

一番の目玉は、2018年に発表した2種類の自動駐車の機能を一つにして、さらに進化させた最新の自動駐車の機能でした。昨年は駐車場側にサーバを置く必要がありましたが、今年は最初にクルマを停める際に、駐車場を覚えておいて、自動で出庫する仕組み。スマホを使ってクルマを呼び出すと、管制センターから指示が出ます。クルマが指示を受け取ると、覚えた駐車場の地図をもとに自動で出庫してきます。もちろん、単に覚えた道を走るだけではありません。途中にショッピングカートがあれば避けますし、人間が渡るのを検知すれば、しっかりブレーキを踏んで止まります。

ショッピングカートもよけて自動的に出庫。
ショッピングカートもよけて自動的に出庫。

日立オートモーティブでは、操舵や足回りのアクチュエーターを自社で開発していることもあって、単に自動で走るだけではなく、クルマの動きがスムーズであることにもこだわっています。また、システムが動作するためには、管制センター、クラウド、セキュリティ・システム、通信や差分更新の技術が必要になりますが、これらはすべて日立グループとして提供できるのも強みです。

もう一つ、ステレオカメラの技術を、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)ではなく、走りに応用した「細かな路面形状を高精度に検知可能な車載用ステレオカメラ向けの技術」も興味深いものでした。

現状、車載用ステレオカメラは、ADASに使われており、2つのカメラを使うことで人間の視覚と同じく、障害物との距離が測れることがセリングポイントでした。しかし今回は、ステレオカメラを路面の状況を認識することに応用しています。実際にテスト車に乗って、穴の空いた路面を通ると、その前にステレオカメラで路面に穴があることを検知して、サスペンションを固くする制御を行うため、大きな陥没を越えるときのショックが和らげられていました。盛り上がったバンプを越えるときは、柔らかく制御することで乗員がショックを感じにくくしています。

アメリカでは、このような陥没路面がよくあり、ダンパーを壊したり、パンクしたりする危険もあります。また、大型ショッピングセンターの広い駐車場や、薄暗い駐車場の奥に止めたとき、身の安全が心配になるといったことも多いため、地元メディアには特に好評でした。

まとめ

CESの会場を歩いていると、これまでのように自動車メーカーが頂点としてヒエラルキーのトップに君臨するのではなく、自動車メーカーもIoTの中に平らに組み込まれていく姿勢が見えます。電動車や自動運転の機能はあって当たり前、さらにコネクテッド・カーも着々と現実のものになってきています。ここにいると、モーターショー以上に、クルマの未来が手の届くものになっていると感じます。そして今年のCESでは、より現実的なビジネスにつなげていくときに必要となるプラットフォームの発表も多く、その点からも未来が現実に近づきつつある印象でした。

文/川端由美

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