紙、WEBカタログから、3DCADデータによる特注品の短納期納品へ。meviy(メヴィー)が目指す時間的価値の創造とは(前編)

INTERVIEW

ミスミ3D2M企業体
マーケティング推進室チーフディレクター
吉田 聡

1963年に創業、以後ものづくりを支える製造業として発展を続けてきたミスミグループ。メーカー事業と流通事業を併せ持ち、それらを強力なIT基盤、事業基盤が支えているという彼らは、このユニークなビジネスモデルにより、グローバルで短納期を実現し、顧客に時間的価値を与えていると言います。

そのようなミスミが2016年にサービスを開始したmeviy(メヴィー)は、3Dデータをアップロードするだけで自動的に見積もりが完了、価格・納期・型番が表示されます。注文が確定すれば、注文から最短1日で出荷。ラピッドプロトタイピング、金型部品に加えて板金部品、切削プレート部品にも対応しつつあります。

この記事では前編でメヴィーの技術と特徴について、後編ではその具体的なメリットについて触れていきます。ミスミ3D2M企業体マーケティング推進室チーフディレクター吉田聡氏にお話をうかがいました。

ミスミ3D2M企業体マーケティング推進室チーフディレクター吉田聡氏
ミスミ3D2M企業体マーケティング推進室チーフディレクター吉田聡氏

────ミスミはWebカタログで注文した部品を非常に短納期で発送するそうですね。

吉田:
ミスミはもともと金型部品から成長してきた会社です。その中で急成長を続けてこられた理由が、フロントエンドの技術革新と、バックエンドの技術革新を同時におこなったことです。例えば、弊社は電話帳より分厚いカタログを多くのお客様に活用いただいています。設計者は手配部品の図面を描くことなく、カタログから一行の型番を決めて注文でき、時間を大幅に節約できます。これらをはじめとしたミスミの時間価値に対する取り組みの積み重ねが多くのお客様に受け入れられ、いまに至ります。

さらにWebカタログ「MISUMI-VONA」では、ミスミが従来から扱ってきたFAメカニカル用部品や金型部品だけでなく、手袋や工具、パーツクリーナーなどの製造副資材や消耗品まで、他社ブランドまで含めて2,070万点以上の部品を発注できる仕組みを技術革新で作りました。スペックを指定して絞り込みができる検索機能や、3,324のメーカーから横断的に絞り込む機能があり、違いを比較できます。2Dや3DのCADデータもダウンロードできるので、組み立てのシミュレーション等にも活用できます。

これらの改革を実現したのがミスミ「QCT(Quality Cost Time)モデル」に対する取り組みです。フロントエンドでは、お客さまに対して、カタログ販売でのQ=提供情報品質向上、C=流通・営業削減、T=簡単発注・宅配便を追求します。バックエンドでは協力メーカーに対して、ものづくりの抜本的改革を目指して、Q=品質作り込み、C=製造原価低減、T=生産納期短縮を追求してきました。

従来は、製造現場のエンジニアが特注品として作っていた製品をカタログによって標準化して、高品質で低コスト、短納期でお届けできるようにしました。特注品の標準生産するためには、受注事前予測の困難性、納期とコストの矛盾の同時解消が不可欠でした。

金型部品にもいろいろな種類がありますが、途中までは同じ形のことが多い場合があります。これを我々は半製品と呼んでいます。例えば、ベトナム工場などで半完成製品を大量に製造して船で運送、在庫しておきます。日本、タイなどにある最終仕上げ工場において、半製品をベースにして注文を受けた金型部品を素早く作っていきます。これで半製品の大ロット生産による生産コスト削減、半製品からの1個流しによって確実短納期を実現しています。

2005年には当時最大規模の協力メーカーであった駿河精機と経営統合して、自社内にメーカー機能を持つことにより生産革新を加速しました。また、2012年には米国金型部品メーカー大手のDayton、Anchor Laminaを買収して、メーカー機能を強化することによりグローバルでの短納期体制を強化しています。


────紙のカタログ、Webカタログからの注文のみならず、さらにメヴィーの開発に踏み切った経緯を教えてください。

吉田:
いままでの話は、50年以上前からの取り組みです。現在はカタログで網羅できない製品も増えてきています。カタログにない部品は、図面手配品として発注する必要があり、部品図を作成してから、見積もり、調整、発注という手順を踏みます。すると例えば図面作成に1部品で1時間以内、加工屋さんへの見積もりが1~2日、納期が2週間、納品までに約21日もかかる場合もあります。カタログ発注であれば納期1~2日しかかからないのに、これでは非効率的です。

私たちはこの状況を打破するための対策をいくつか考えています。その中の1つが「meviy Rapid Prototype」になるわけです。注文される方はメヴィーに丸ごと3Dデータをアップロードしていただくと、価格、納期、そして新たな型番が自動的に発行されます。さらにPCからそのまま注文できます。

次回からはこの型番を使えば簡単にリピートオーダーもできるようになります。Webカタログから選んで注文するプレタポルテと、オートクチュールで1点ものがすぐに製作できるメヴィーの2本立てになったわけです。


────メヴィーの需要はどのぐらいを見込まれたのでしょうか。事前調査などはおこなわれましたか

吉田:
既存の1,000人のエンジニアに電話でインタビューしたんですが、999人の方が使いたいと言ってくれました。一番の使いたい理由は図面を起こさなくても発注できるという点ですね。公差も含めて紙図面を起こそうとするとかなり時間が掛かります。これが不要になるというのが、大きなメリットですね。次に3Dデータをアップロードして金額が決まれば、すぐにプロトタイプが届くという手軽さですね。

従来は3Dデータだけでなく2Dの図面が必要でした。なぜ2Dが必要なのかと言えば部品の製造に必要不可欠な寸法公差を指示するためです。この2つを携えて見積もり依頼すると1~2日ぐらい経って返事がきます。そしたら、数字の間違いが見つかってもう一度書き直して見積もり出します。このやりとりでさらに1週間、2週間かかって、ようやく製造となります。

メヴィーは3Dデータから材料や製造方法を指定できるので2Dデータが不要になりました。さらに、その場で数値を修正できて、何度でも見積もり可能という点も評価されています。いま悩んでいる部分をかなり解決して、製造可能なものであればすぐに作って納品できるという点もアドバンテージになります。

セキュリティに関してメヴィーではサーバーにAWS(amazon web service)を使っています。ここにお客様のデータをアップロードしていただきます。クラウド型なので常に最新のセキュリティ対策が取られています。


────WOS(Web Order System)との違いはどこにあるのでしょうか

吉田:
WOSはミスミの電子発注システムのことを指します。メヴィーのシステムを使って型番発行し、メヴィー上から発注することも、このWOSシステム経由でカタログの手配品と一緒に発注することもできます。メヴィーもWOSも、24時間注文可能です。例えばSOLIDWORKSの3D CADファイルをアップロード、3Dの形状から、部位を自動認識して、製造情報を検証・付与します。ここから安定した価格で見積もり回答を作成します。

オンライン見積もりシステムで、仕上げ、数量、材料、希望納期などを変更すると、見積金額に反映されます。材料は30種類以上のエンジニアリンググレードの樹脂材料と金属材料に対応しています。例えば金属はアルミ合金、ステンレス合金、炭素鋼、樹脂ならABS、POM、ナイロンといった一般的な材料をはじめ、ガラス繊維入りの樹脂も対応しています。

つまり、紙カタログ、Webカタログ、そしてメヴィーへと進化してきました。最初はカタログで部品を探してWebで注文、そしてWebで型番を検索して、そのまま発注、メヴィーなら設計作業中に部品を選定して、そのまま見積もりがおこなえ、独自の型番も発行されるようになりました。

2Dデータ不用ですぐに見積もりが出ます。
2Dデータ不用ですぐに見積もりが出ます。

────メヴィーはどんな設計シーンに対応してくれますか

吉田:
現在は4つの設計シーンを考えています。まずは、弊社の得意な金型部品ですね。金型に関してはピンなどの部品からスタートしています。汎用性のある金型ではなく、一品一品に違いがあり、抜き出し、突き出しの必要なエジェクタピンを注文できます。次に、生産設備などに使われる板金部品ですね。さらに設備設計で良く使用される切削プレートも加わっていきます。これらに加えて試作用途にも拡大することで、製造プロセス全体をカバーしていきます。


────メヴィーで最も発注が多い部品は試作品ですか、金型部品ですか

吉田:
金型部品に関しては2016年7月からスタートしています。ラピッドプロトタイピングに関しては2017年11月からテスト公開しています。実際にリリースできたのは18年の6月に入ってからです。ですから数的には金型部品の方が多くオーダーを受けています。しかし、勢いとしては試作品の方が伸びています。板金と切削プレートに関しては2019年度から本格的にサービスを開始する予定です。

これによって、RP(ラピッドプロトタイピング)、SM(板金部品)、MP(切削プレート)、DM(金型)の4つの設計シーンに適したサービスを提供していきます。

2016年に金型加工サービスから開始したメヴィーは、2017年に試作品、2019年には板金部品、切削プレートを加え、4つの設計シーンに対応できるようになります。すべて3Dデータのみで見積もり可能、従来必要だった2D図面による詳細な指示は不要となり、自動見積もりのおかげで24時間、365日の対応が可能になりました。また、素材や表面処理も選択でき、発注前にその部品が加工しやすいかどうかという製造性についての確認もできます。

見積もり確定後は加工プログラムが生成され、タイムロスなく部品の加工がスタートします。これにより超短納期が特徴のラピットプロトタイピングでは、最短1日出荷を実現しています。一度、発注した部品にはミスミのシステムに対応した型番が発行され、発注した企業での製品管理を容易にしています。さらに今後は材料・サイズ・加工方法など対応可能な範囲をどんどん広げていくという発展性もあると思われます。



後編に続く

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文/川野 剛

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