板金加工のネット自動見積りで日本の町工場と発注者を繋ぐ急成長ベンチャーを直撃(後編)

INTERVIEW

キャディ株式会社
代表取締役
加藤 勇志郎

前回に続き、小さな町工場から日本の製造業を立て直そうという元気なベンチャー、キャディ株式会社の代表取締役の加藤勇志郎氏に話をうかがいました。キャディは、特注品の調達分野で発注者と全国の協力工場を結び、自動見積もりでマッチングするサービス「CADDi」で急速に伸びている企業です。

<写真1>キャディ株式会社 代表取締役 加藤勇志郎氏
<写真1>キャディ株式会社 代表取締役 加藤勇志郎氏

────御社の協力工場は全国にあるのでしょうか。

加藤:
そうです。パートナーの協力工場さんは全国に現在(2018年11月21日)70社くらいあります。協力工場さんを探す場合、国際標準化機構(ISO: International Organization for Standardization)などの品質を満たす登録事業者情報をリスト化し、弊社からアプローチする場合と、町工場さんのほうからアクセスしていただく場合とがあります。

協力工場さんから提出していただくデータは、材料あたりの単価など共通カテゴリーだと数十項目ですが、そこからさらに技術の差、かかる時間など、協力工場さんごとに異なるパラメーターを掛け合わせて細かくみていくと数百項目くらいになります。それらを分析しアルゴリズムを構築することで、自動で最適な受発注をマッチさせることが弊社の強みです。

そのためにも協力工場さんごとにどんな加工機械を持っているか詳細なデータヒアリングをしています。例えば、レーザーでしたら切断できる厚みも違いますし、曲げ加工なら厚みによってかける人員の数も変わってきます。加工の段取りも含めたすべての技術や手順に関して細かくデータをもらうことで、仮に従来ないような特注品がきても弊社の中で製造プロセスを分解して工程を出し、自動でコストを出すことができます。

板金や加工品を扱う会社は1社1社が小さく、できる領域が限られているので1社がすべて対応することは難しく、大量生産ではないので効率も悪い。弊社のサービスは小さな会社の強みをマッチングする、シェアリングに近いサービスになります。ものによっては同じ部品でも違う工場で作ると3倍ほど価格に違いがでることはざらですが、最適なマッチングとシェアリングが実現できると製造コストが劇的に安くなるんです。



────どのようにして協力工場になるのでしょう。

加藤:
最初からいきなりすべてのチェック項目を開示してもらうわけにもいきませんから、協力工場さんには必ず初めに対面してお話するようにしていますし、ステップごとにデータを埋めていただくようにしています。また、マネジメント・インタビューのような形で社長さんの話をうかがい、経営理念や方向性、考え方についてもヒアリングし、参考にさせていただいています。

パートナーの数は将来的に増やしていきたいと考えていますが、特定の領域に関して強みがあり品質が保たれ、価格競争があることが重要です。協力工場さんのデータを発注元にみせることはありませんし、どんな材料や工程でも先方の任意の利益を乗せてもらうようにしていますからデメリットはないと思います。協力工場さんごとに強みのある技術などには高めの設定を、そうでない部分では平均的にというように、戦略的に価格を調整していただけるのも弊社のサービスの強みになっています。

規模が拡大していけば価格は自然と市場の中でバランスがとれていくはずなので、弊社としてはパートナーの協力工場さんがどれくらい利益を乗せるのかはあまり問題にしていません。ただ、将来的にレポートという形で、発注の傾向や技術的なマッチング、価格などからの位置づけを利益額や利益率といった形でご提示し、サポーターさんの方向性や値決めなどの戦略の参考にしてもらおうと考えています。



────協力工場との関係構築はどのようにされていますか。

加藤:
弊社はまだ設立して約1年ですが、パートナーの協力工場さんとの信頼の構築に最も力を注いできました。売上げも月に30%くらい伸びていますので、供給側である協力工場さんとの関係性が最も重要で、足繁く通って話をさせていただいております。

基本的に注文が入りましたら最適なマッチング先一社にのみお声をかけさせていただくので、協力工場さんはその案件を受けるか受けないかの選択をするだけで100%受注できます。しかし何かしらの事情で受注できないとしたら、断ることもできます。発注側からのデータを解析し最適な受注先とマッチングするというサービスですから、弊社のシステムで最適な受注先から断られた場合、次に最適な受注先をご提案するということになります。

サービスはカスタマーさんのほうを向きがちになりますが、弊社ではパートナーさんとの関係構築も同様に重要視しています。例えば2月にはパートナーさん向けのフォーラムを開催し、一緒にビジネスを伸ばしていきましょうというメッセージを伝える予定です。弊社のサービスにより、もしかすると適正価格に平準化されてしまうという側面もあるかもしれませんが、それぞれの町工場さんごとに何かしら強みがあるという前提があるとすると、各町工場の強みに立脚すれば自ずと安定的な利益が出るはずだと思っています。



────今後、協力工場をどのように増やしていくのでしょうか。

加藤:
これまで多くのメディアには露出していませんでしたが、おかげさまで週に数件は町工場さんのほうからお問い合わせをいただいています。あとは、自治体や地銀さんからの紹介もあります。地域創生などの場合、同じ地域内でカニバる(注:需要を食い合う)のは避けたいので、地域外への販路拡大として日本全国、あるいはグローバルレベルで最適化する弊社のような存在はお役立ていただけると思います。

弊社では板金に関して321の細かいカテゴリーに分類していますが、321の中で1つでもいいので他にはない技術や強みのある品質を担保できるパートナーさんと一緒にやっていきたいと考えています。もちろん、これらの強みのカテゴリーが重複するパートナーさんも全国規模ではいるでしょうし、同じカテゴリーで価格差が生じることもあると思います。ただ、安かろう悪かろうとよく言いますが、私は安くても高品質であるという状態は両立可能だと思いますし、本当に競争力があれば安くていいものができるのは当然なのではないでしょうか。



────起業されてからのご苦労などについてお聞かせください。

加藤:
私の前職のマッキンゼーが強い領域はコスト分析なので、例えばパソコンのコストを下げたいというお客さまがいたら、そのパソコンをすべて分解してそれぞれの部品を材料、組み立て工程、ロジスティクスなどすべてのコストを分析し、材料の調達の時間や工程にかかる時間などからコストの理論値を出し、その理論値を元にしてサプライヤーさんと交渉してコストを下げていくというような仕事をしていました。製造物の現状のコストと、それを理論値ではいくらで作ることが可能なのか、ということを考えて提案するわけです。

キャディはそれを自社開発のアルゴリズムをもとにしたシステムで自動的に行い、価格を算出した後はその価格で作らなければならないので、あらかじめパートナーである協力工場さん側の価格をなるべく正確に把握しておくことが重要です。また、協力工場さんに依頼した内容や条件をそのまま作ってもらえるかどうかが難しいところですが、協力工場さんと丁寧に合意形成しながら進めています。

CADDi(キャディ)の発注画面
CADDi(キャディ)の発注画面

────グローバル展開などはお考えですか。

加藤:
米国では“なんでも屋”のジョブショップが多く、コストが高止まりになっています。私自身、米国の製造業の仕事をしたとき、日本から部品調達したこともありましたが、やはり町工場がいきなり海外のお客さんから受注するというのはハードルが高いと感じています。

将来的には海外のお客さまと日本の強みのある町工場をブリッジングするようなサービスも考えています。グローバルにサプライチェーンを最適化することができればインパクトはかなり大きいでしょう。



────発注元のお客さまの業種業態についてお聞かせください。

加藤:
多品種少量がメインで、装置、機械、産業、食品、医薬などのお客さまからの発注が多い傾向にあります。また、大学や研究機関など、アカデミアのお客さまも多く、そうしたお客さまからは試作品の発注などがあります。



────受発注ではどのようなリクエストまで対応可能ですか。

加藤:
板金加工では、これまで3,000mmくらいまではやったことがありますが、2,000を超えると弊社ではハンドリングが難しい案件も出てきます。それも現状ではパートナーさんと話をさせていただき、受け入れ可能かどうか相談しつつ決めています。

また、プラスチック材料も扱っています。プラスチック材料の場合、金属材料と異なり、業界の違いによる設計仕様の違いや素材特有の細かい指定がある可能性もありますが、まだ素材の違いで混乱したことはありません。



────最後に御社のミッションについてご説明ください。

加藤:
弊社のミッションは「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」で、町工場さんも大企業さんも付加価値の低い作業に忙殺されている現状が非常にもったいないという課題意識を強く持っています。例えば、町工場さんの多くは社長さんが一番技術力を持っているのにもかかわらず、見積もり作成に時間の大半を割かれてしまっているという状況を変えていきたい。技術力があるのに、セールス力やマーケティング力がないから経営が悪くなる、あるいは管理業務に力を削がれて本来の実力を発揮できないという町工場さんが多い。ここを変えていくことができれば、日本のモノづくり産業界全体が良くなっていくのではないでしょうか。

また、日本の製造業における下請け構造にも問題があります。大手メーカーに紐付く下請け・孫請け構造は、お客さまからの注文は得意であるかないかに関わらず何でも作らざるをえない、という問題を生んでいます。しかし、一口で板金といっても多種多様な技術があり得意不得意の分野があったとしても十把一絡げにされてしまう。さらにはほとんどの零細企業は得意分野も含めてギリギリまで価格交渉をされてしまう状況が続いてきたんです。

私たちは安くていいものができて発注側も受注側も利益を得ることができる、三方よしの構造に変えていきたいという思いで事業推進しています。

まとめ

前後編にわたって、キャディのサービスと、その特徴をご紹介しました。スピード見積もりと高いコストパフォーマンス、また協力工場への黒字保証。発注側も受注側も利益を得られるモデルは、これまで必要にもかかわらず、だれも手を付けることが出来なかった領域でした。それを新たな発想とシステムにより、解決した彼らの次なる一手に目を離すことができません。

文/石田雅彦