最新進化型ポルシェほかEV、PHVの最新版も!LAモーターショー現地リポート(後編)

前回は、ロサンゼルス・ショーのなかでも、車両のない展示をしたボルボや、MIT(マサチューセッツ工科大学)出身者によって創業されたEVスタートアップのRivianといった個性派に焦点をあてましたが、今回は、最新型ポルシェを中心にモーターショーの主役といえるクルマとその技術にスポットを当てていきます。

技術ブラッシュアップで大きくパワーアップした新型ポルシェ

走行性能が著しく進化

なんといっても、7年ぶりにブランニューとなる新型ポルシェ「911」が、最大の注目株。少々、クルマ好きの視点になりますが、ポルシェのスポーツ・クーペは初代からずっと「911」というモデル名を使っているため、7代目となる最新モデルは、開発コードを引用して「タイプ992」と呼ばれています。なお、初代は「901」、2代目は「930」、3代目は「964」、4代目は「993」、5代目は「996」、5代目は「997」、そして先代モデルが「991」という開発コードを使っていました。

「992」こと、新型ポルシェ「911」では、RWDモデルが「カレラS」、4WDモデルは「カレラ4S」となります。「991」までは、4WDモデルや高性能モデルに与えられたワイド・ボディですが、「992」からはRWDモデルにも与えられました。
「992」こと、新型ポルシェ「911」では、RWDモデルが「カレラS」、4WDモデルは「カレラ4S」となります。「991」までは、4WDモデルや高性能モデルに与えられたワイド・ボディですが、「992」からはRWDモデルにも与えられました。

エクステリア・デザインは、あきらかに「911」とわかる正常進化をしています。例えば、丸目の2灯式ヘッドランプと張り出したリア・フェンダーといった“911らしい”アピアランスを継承していますし、リアに水平対向エンジンを搭載し、後輪または4輪を駆動するという伝統も守られています。ただし、直線的なリアランプの造形は、2020年発売予定のピュアEV「タイカン」と共通する新世代ポルシェのスタイリングとなります。

直線的なリアランプ
直線的なリアランプ

一方で、走行性能は著しい進化を見せています。リアに搭載されるターボ付き3リッター水平対向6気筒エンジンは、ターボチャージャーのレイアウトや燃料噴射システムなどの改良に加えて、新開発の8段ディアルクラッチ・トランスミッションと組み合わせることにより、+30psのスープアップ(性能向上:編集部注)を施されました。

具体的な数字で見ていくと、0〜100km/h加速は、先代と比べて、0.4秒速くなり、「911カレラS」で3.7秒、「911カレラ4S」で3.6秒へと縮められました。最高速は、「911カレラS」で308km/h、「カレラ4S」で306km/hという俊足ぶりを発揮します。「スポーツクロノパッケージ」をオプションで装着すれば、さらに0.2秒の短縮できます。同時に、燃費性能も、「カレラS」で8.9ℓ/100km、「カレラ4S」で9.0ℓ/kmへと向上しています。

4WDモデルの「カレラ4S」
4WDモデルの「カレラ4S」

独自技術の電動ターボやトランスミションも進化

一つひとつの詳細に目を向けていきましょう。ポルシェ独自のバリオカム・プラスでは、吸気・排気ともにバルブの開閉タイミングを制御できるのですが、新型ではより詳細な調整ができるようになりました。具体的には、2〜4.5mmの異なるバルブ・ストロークで、バルブタイミングを制御でき、またアクセルペダルを緩めたときに、吸気バルブをより早く閉じることができるようになりました。加えて、最大250バールの直噴ピエゾ式インジェクターは、1回のストロークの間に最大5回までの燃料噴射が可能です。これによって、過給エンジンとしては、比較的高い10.2:1の圧縮比を得ることに成功しています。

もう一つ、電動ターボチャージャーの採用も特筆すべきでしょう。排ガス性能にも重要な役割を果たす触媒付近の吸気の流れを最適化し、タービン径は+3mmの48mmに、コンプレッサー径は+4mmの55mmに、それぞれ拡大したことで、よりたくさんの空気をエンジンに送り込むことができるようになりました。また、排気マニフォールドを従来の板金から鋳鉄製へと変更するなどにより、ターボチャージャーの応答性を高め、全開時の燃費の改善や、触媒を早期に温めることによる排ガス性能の向上を行っています。インタークーラーについても、14%の高容量化を行うことで、高出力化に寄与しています。

組み合わされるトランスミッションは、ポルシェ自慢の「ポルシェ・ドッペルクップルング(Porsche-doppelkupplung:PDK)」と呼ばれるウェット式デュアル・クラッチ・トランスミッションに特徴があります。デュアル・クラッチ・トランスミッションは、ドイツで主流のオートマチックトランスミッションで、ディファレンシャルギアを中心に、2セットのギアセットが常に回転しており、クラッチを介して、ギアセットを切り替えることにより、日本で主流のCVTやステップATと比べ、スムーズな変速ができる仕組みです。

オイルを使用したウェット式と、クラッチ部分にオイルを使わないドライ式の2種類があり、前者は大容量のものに使われています。「991」では7段でしたが、「992」では8段に多段化されて、よりロングレンジになっています。新型PDKでは、1-3_5-7の奇数段のギアセットと、2-4_6-8の偶数のギアセットにわかれています。

ボディへのスチール使用率が半減!

シャシー性能の向上にも、目を見張るものがあります。ボディ構造にさまざまな強度の素材を“ハイブリッド”で組み合わせることにより、スチールの使用比率は「991」の63%から 30%へと半減。乗員空間、Aピラー、Bピラー、サイドルーフフレーム周辺の部品に熱間成形の超張力鋼板を採用するなど、高張力鋼板の活用を高めています。同時に、アルミ押出材をドアシルやフロア補強に使って、3%から25%へと高めました。さらに、フロントスプリングストラットマウント、リアトンネルハウジング、リアキャリア、ショックアブソーバーマウントといった部品に、アルミダイカストを採用しています。

エンジンマウントについては、「991」ではエンジン後方にある2つのマウントを介してクロスバーに接続されていましたが、「992」では、クロスバーが省略されて、約20 cm前方のパーツにエンジンマウントが統合されています。これにより、エンジン振動が大幅に減少し、乗り心地に向上とともに、スポーティに高速でカーブを曲がるシーンでも、車両の安定性に寄与します。

刷新されたエンジンマウント
刷新されたエンジンマウント

シャシー関連の電子制御技術では、自社開発ソフトウェアを搭載した統合車両制御システムである「PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネジメントシステム)」に、「ウェット・モード」なる新しい機能が加わった点は、見逃せません。音響センサーを前輪のハウジングに内蔵しており、飛び散った水しぶきの音を検知することにより、路面の濡れを事前に検出して、PSMおよびPTM(ポルシェ・トラクション・マネジメントシステム)といった車両制御装置の応答を、事前に準備する仕組みです。

実際の使い方は、路面の濡れを検知して、ドライバーがウェット・モードに手動で切替えると、PSM、PTM、空力性能、オプション設定のポルシェ・トルク・ベクタリング(PTV)プラスといったすべての車両安定のためのシステムが、より車両を安定させる方向に作動します。その結果、90km/h以上ではリアスポイラーは最大のダウンフォースを得るように調整されて、冷気フラップが開いて、アクセル開度が調整されて、PSMオフやスポーツモードは作動しなくなります。驚くことに、この機能は1990年代なかばにはすでに、社内で研究開発がスタートしていたといいます。

高出力化にともなって、ブレーキ性能も向上しています。リアブレーキディスクの直径は330mmから350mmまで拡大し、カーボン複合材の採用で300gも軽量化されたブレーキペダルのストロークも短くなり、応答性に優れます。ブレーキ・ブースターが空気圧式から電動式へと変わったことも、ブレーキ性能の強化につながっています。ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ(PCCB)と呼ばれるカーボン・セラミック素材を採用していることは、言うまでもありません。

自動車雑誌ではよく「最新のポルシェは最良のポルシェ」と言われますが、技術的な視点から見ても、最新型ポルシェ「911」ではまさに、今現在、最良と思われる技術が満載されています。

カリフォルニアならではのエコカー技術が続々登場

スバルのPHVは、航続距離最大約772km!

ポルシェと同じ水平対向エンジンを積むモデル、スバル「クロストレック(日本名「XV」)」のPHV版が登場したことが、現地で話題を呼んでいました。日本仕様のハイブリッド機構「e−ボクサー」がスバル独自開発であるのに対し、このクロストレックはトヨタのハイブリッドをベースに設計されています。気になる違いを、スバル常務執行役員・商品企画本部長 臺 卓治(だい たくじ)氏に確認しました。

「『e−ボクサー』では走りを重視したのに対して、今回発表した『クロストレック」のPHV版は低燃費性能に重きをおきました。カリフォルニアのお客様にとって、渋滞を緩和するためのカープールレーンを走ることができるかは重要な指標であり、その認証を重視して開発したからです。といっても、スバルらしい走りの魅力は一切犠牲にはしていません」

 スバル常務執行役員・商品企画本部長 臺 卓治氏
スバル常務執行役員・商品企画本部長 臺 卓治氏

会場に展示されたモデルのバンパーには、カープールレーンを走れる環境性能を示すカリフォルニア州発行の赤いステッカーが誇らしげに貼られています。搭載されるPHV用パワートレインは、「スバル・スタードライブ・テクノロジー」と呼ばれるもので、専用に新開発された2リッター水平対向4気筒直噴エンジンに、2基の電気モーターを内蔵した新型リニアトロニック(=CVT)を組み合わせています。

クロストレックPHV版。バンパーの左側にカリフォルニア州発行の赤いステッカー。
クロストレックPHV版。バンパーの左側にカリフォルニア州発行の赤いステッカー。

もちろん、駆動方式は4WDを採用しています。エンジンの最高出力は135ps/5,600rpm、最大トルク182Nm/4,400rpm、電気モーターは最高出力116ps/最大トルク202Nmをそれぞれ発揮します。床下に8.8kWh/25Ah/351.5Vのリチウムイオン電池を内包し、フル充電の状態から約27kmのEV走行が可能です。ガソリンエンジンを始動して、PHVとして走れば、最大約772kmまでの巡航ができます。電動化による重量増加に対しては、専用デザインの軽量ホイールの採用でバネ下荷重を減らし、衝突時の衝撃を吸収するサポートフレームを追加するなど、対策が施されています。

また、「電池の重さを逆手に取って、前後の重量バランスを良くして、走りの魅力を引き出しました」(スバル・臺氏)と聞くと、日本への導入が気になります。アメリカでは2018年中に発売されますが、残念ながら、今のところ、日本への導入予定は決まっていません。

2トン超で0〜100km/hわずか3.5秒!

最後に、アウディの電動ブランドである「e-tron」シリーズの第3弾となる「e-tron GT」もご紹介しましょう。2年後に量産が予定されるピュアEVの4ドアGTで、トルクベクタリング付き4WD機構を搭載し、2基の電気モーターの合計で434kWの出力を誇ります。全長×全幅×全高=4.96×1.96×1.38mのボディサイズゆえ、ワイド&ローのアウディらしいスポーティな外観を持っています。

アウディe-tron GT
アウディe-tron GT

リチウムイオン電池の搭載位置は、一般的なEVがフロア下に内蔵するのとは異なり、フロントと乗員の背後に配して、車高をスポーツカー同等に低くしています。電動パワートレインなので2トン超の重量級ですが、カーボンやアルミといった軽量素材をふんだんに奢ることで軽量化を施し、0〜100km/hまでわずか3.5秒で加速できるハイパフォーマンスを発揮します。ポルシェ「タイカン」が最高速270km/hなのに対して、アウディ「e-tron GT」は最高速240km/hに制限しています。が、これは国際ルールの燃費基準WLTPモードでの航続距離を約400km確保するためです。「タイカン」と同様、800Vの充電システムも採用しています。


今回、技術的な視点から選んだ“ロサンゼルス・ショーの花形”を駆け足で紹介しました。アメリカの中でも、いえ、世界の中でも先進的な環境法を施行するカリフォルニア州ならではの環境技術に注目すべき点が多いことに加えて、世界最大級のラグジュアリー・スポーツカー市場ということもあって、それらの先進技術を惜しみなく投入した高級スポーツカーが登場することでも、見ごたえのあるモーターショーであったと言えるでしょう。

文/川端由美

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