BANDAI SPIRITSのハイターゲットトイ「FORMANIA EX」新作開発ストーリー(後編)

INTERVIEW
株式会社BANDAI SPIRITS
コレクターズ事業部
前田 哲也
松本 亮
インタビュイーの写真 (左)前田氏、(右)松本氏

2017年、株式会社BANDAI SPIRITSは、ガンダムユーザーの間で超人気のハイターゲットトイ、「FORMANIA EX」シリーズを販売開始。2018年10月に販売された電飾、金属パーツを詰め込んだ「FORMANIA EX」新作の開発経緯と、そのこだわりについて、前編に引き続き、コレクターズ事業部 企画第二チームの前田哲也氏、開発チームの松本亮氏に話を聞きました。

前編の記事はこちらから

企画と開発、設計の各チームが議論を尽くす

今回発売したガンダム試作1号機 フルバーニアンは、初めてのモデルということで、約8年ぶりにすべてを一から設計されましたね。企画から2年ほどの歳月を経ての発売だと聞きました。「FORMANIA EX」の最高峰モデルということもあり、細部に至るまでかなりこだわられたのではないでしょうか。設計において苦労された点はなんでしょうか。

前田

私はもともとCADを使って設計をやっていたため、今回は設計面でもチェックさせていただきました。まず重視したのは、可動部をどうするかという点です。やはり企画側の発想に立つと、キャラクターの特性上、どうしても動かしたい部分というのが出てきます。

またLEDを入れた際の配線の問題もありますし、今回は特にLEDの数も多かったため、設計はかなり難しかったと思います。単体での設計では、「これができる」「あれができる」といった意見を提案するのですが、じゃあ次にそれを量産するという話になった際に、プラモデルとしての組み順であったりだとか、配線が断線するかしないかという問題がでてきて、そういったことには何度も頭を悩ませられました。

3DCADにおける試作設計から、量産化設計に落とす際に、新たな苦労があったわけですね。

前田

コレクターズ事業部におけるものづくりは企画チームと開発チームに分かれていて、企画チームが「これがやりたい」「こういう形にしたい」という意見と思いの丈を伝えて、開発チームがその意見を製品としてカタチにしてくれるという流れになります。

おもちゃというのは他の製品に比べると自由度がかなり高いので、企画側が「こんな凄いものを作りたい」という思いが強くなりすぎてしまう傾向があって(苦笑)、開発の方々にはかなり苦労をかけているなと思います。でも開発は私たちのそうした理想を理解してくれて、実現するための最大限の努力をしてくれています。

どのようなチーム構成なのですか。

前田

私がいる企画チームと松本のいる開発チームはそれぞれ20名ほどのBANDAI SPIRITSの社員中心のメンバーで構成されていますが、設計チームの社員は5名で、設計については協力企業とチームを組んでやっています。設計の皆さんは相当高いプロフェッショナル意識をお持ちです。
企画チームの要望を設計図に落とし込む段階でも、工場を交えて量産化設計に落とす際にも、想定していないさまざまな問題が出てきます。企画と開発、設計でアイデアを出し合いながら、それらを一つひとつクリアしていくということを繰り返しています。

<写真1>松本亮氏(左)と前田哲也氏(右)からは製品に対する強い愛情が感じられる。
<写真1>松本亮氏(左)と前田哲也氏(右)からは製品に対する強い愛情が感じられる。

世界観を再現するために試作を繰り返す

モックアップ(試作品)ができてくると想像と違ったということはありますか。

松本

もちろんそれはありますね。どうしてもモノが出てこないとわからない部分というのはあります。例えば画面上ではライティングの光り方はわからないですし、稼働させた時の光の漏れ方、その周囲がどのように反射して、どんな色や質感で見えるのかといったことは、やはりどんなにCADが進化しても、再現できないですから。いかにストーリーのもつ世界観を再現できるかが重要なのです。

「FORMANIA EX」シリーズは要所要所にダイカスト(ダイキャスト)を採用しています。それも設計の難しさに影響していますか。

前田

もちろん、どのパーツをダイカストにするかはかなり議論しました。ルックスの面で考えるとどうしてもダイカストにしたいパーツでも、製造上難しいケースも出てきます。例えば「アンテナはダイカストにしてもっと尖らせたい」という要望を出しても、製造側から「そんなに尖っていたら材料が金型の中を流れないよ」と言われてしまったり。

松本

バンダイは子ども向けの玩具も扱っていますので、安全面においてもある程度の配慮は必要になります。金属の先端が尖っていたら怪我をする危険がありますから、そうしたことも考えなければなりません。とにかくトライアンドエラーを繰り返しましたね。

試作は何回ぐらい行いましたか?

前田

3Dの設計図ができたら、まずは3Dプリンターでモックアップを出すのですが、それを見て修正したい箇所を洗い出して、また設計図面を修正して、またモックアップを出して、ということを4、5回ほどは繰り返したでしょうか。

部分部分ではもっと多いですね。フィギュアで最もポイントとなる部分は、やはり顔なんです。3DCADで見たときと実際に立体にしたときを比べると、どうしても顔つきが違うので、顔だけはかなりの回数モックアップを出して、修正を繰り返しました。それはすべて量産化設計に行く前の段階の話です。

松本

強度に関する感覚は子ども向けの玩具とは違います。例えばライダーベルトだとお子さんが投げたり叩いたり何度もボタンを押し続けたりしても簡単に壊れない耐久性が必要ですが、基本的には飾っておく大人向けのフィギュアですから、大人の常識の範囲で、ビジュアルを優先できるという違いはありますね。

製造のプロとも意見を出し合い、最終調整を行う

それで設計図ができ上がってから、各パーツの金型の設計に入るわけですね。非常に長い工程ですね。

松本

そうですね。私たちの方でも金型に合わせた造形をし、そのデータでの提案はしますが、工場の方からは、金型に「抜き勾配」を付けることが必要だったり、「パーツ割」など量産に向けて必要な要素が多数ありますから、工場から設計変更要望が出てきます。そこでも何度もやり取りをして、設計図を詰めていきました。

前田

もちろんコストの問題も出てきますよね。繋げるところは繋いで部品点数を減らしたり、左右対称で同じパーツにして金型の数を減らすなどですね。金型の数だけコストが跳ね上がりますからね。かなり試行錯誤しました。

LEDをどこにどれだけ仕込むかについても、企画段階だけでなく、試作や製造の工程でもかなり議論しました。実際にプロダクトに仕込んでみると、光らせてみた色の具合で、ここにも欲しいと思うこともありますし。今はRGBのLEDが玩具のレベルでも使えるぐらいの価格になったので、色味の調整も相当しました。ただ、LEDを多く仕込むと、コストはもちろん、配線の問題も出てきて、とても苦労しました。バンダイは他部署でもこれほどの電飾を一つのフィギュアに入れたものはあまりないですからね。

<動画1>数々の電飾で雰囲気を盛り上げる

夢を実現するチャレンジを続けていきたい

今後、「FORMANIA EX」で、お二人がチャレンジしたいことはありますか。

松本

Bluetoothのコストが下がってきたので、何かに使えたらおもしろそうだなという風には思います。スマートフォンから操作してスイッチを入れて、光具合や色目をコントロールしたり、可動部を動かしたりできたら楽しいですよね。

前田

今はだれもがスマートフォンを持っている時代なので、AR(=拡張現実)というものも考えられますね。なりきり玩具というものは、言ってしまえばARみたいなものなんですね、それが物理的なのか電子的なのかという差があるだけで。私の中でいろいろと夢は膨らんでいて、これからチャレンジしたいですね。

おわりに

こだわり抜いた「FORMANIA EX ガンダム」。もはや〝おもちゃ〟の域を超えているといえそうです。しかも私たちが普段考えることがない〝世界観〟もあります。世界観とはもともとのストーリーがもっているもの。つまりできあがった製品にはストーリーがあるのです。そのように考えると私たちが日ごろ製作している製品にも、アプローチとしてあらかじめ〝世界観〟を考え、それをカタチにするという発想もあるのかもしれません。新たなものを生み出すヒントにしていきたいと思います。

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文/嶺竜一