BANDAI SPIRITSのハイエンドモデル「FORMANIA EX」新作開発ストーリー(前編)

INTERVIEW
株式会社BANDAI SPIRITS
コレクターズ事業部
前田 哲也
松本 亮
インタビュイーの写真 (左)前田氏、(右)松本氏

10月27日、BANDAI SPIRITSは、ガンダムユーザーの間で超人気のハイターゲットトイ(大人向けの模型・ホビー商品)、「FORMANIA EX」シリーズ第3作目となる「FORMANIA EX ガンダム試作1号機 フルバーニアン」を発売しました。

これは1991年から1992年にかけて全13話が製作されたガンダムシリーズのオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する「ガンダム試作1号機 フルバーニアン」を「FORMANIA EX」オリジナルの解釈で再現した、全長約170mmの塗装済み完成品フィギュアです。

素材は樹脂(ABS、PVC)を基本としながら、一部のパーツにダイカスト(ダイキャスト)を採用。金属パーツの質感、光沢感は、樹脂素材や彩色では再現することのできない輝きを放ちます。

2010年に発売されたFORMANIA シリーズのバージョンアップ版として2017年に発売されたのがFORMANIA EXシリーズです。「ν(ニュー)ガンダム」、「サザビー」に続く「ガンダム試作1号機 フルバーニアン」は、さらにリアリティを追求したといいます。

この製品は、シリーズ初の試みとして機体内部にLED発光ギミックを装備し、全身16か所に内蔵されたLEDでカメラアイやセンサー部、各部メカディテールが細かく発光します。

さらに各部の装甲ハッチが開閉し、LED発光ギミックを仕込んだ内部メカディテールが露出するのもポイント。装甲ハッチを展開した内部などのメカディテールは、マルチカラーLED(8か所)によってカラーチェンジしつつ発光します。

ハイエンドトイシリーズ「FORMANIA EX」の開発経緯と、そのこだわりについて、発売元である株式会社BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部 企画第二チームの前田哲也氏、開発チームの松本亮氏に話を聞きました。

<写真1>前田哲也氏(左)と松本亮氏。ギミックに凝った株式会社BANDAI SPIRITSの自動扉の前で
<写真1>前田哲也氏(左)と松本亮氏。ギミックに凝った株式会社BANDAI SPIRITSの自動扉の前で

ハイエンドトイシリーズ「FORMANIA EX」誕生の経緯は?

「FORMANIA」シリーズの歴史を教えてください。

前田

まず最初に当社について簡単に説明させてください。株式会社BANDAI SPIRITSは、バンダイナムコグループの再編にともない、2018年2月に誕生した新会社です。

また、我々の所属するコレクターズ事業部なのですが、前身は株式会社BANDAIの中でハイターゲットトイを主に扱っていたコレクターズ事業部になります。「超合金」シリーズ、「ROBOT魂」、「S.H.Figuarts」など複数のブランドを持っており、2010年に誕生した大人向けホビーのブランドが「FORMANIA」です。その改良版として今回、「FORMANIA EX」というブランドを出させていただきました。ちなみに一般に「ガンプラ」と言われているガンダムのプラモデルシリーズは、同じBANDAI SPIRITS内にあるホビー事業部が展開している商品になります。

2010年に「FORMANIA」を商品化した際は、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(ガンダムの作品名)に登場するモビルスーツである「νガンダム」「サザビー」の2つを商品化いたしました。

非常にハイクオリティな完成度で、ユーザーからの評判はよかったのですが、まだ当時は1万円以上の高単価な玩具は多くなく、しかもバストアップ(=上半身だけのフィギュア)の完成品は珍しいものでしたので少しニーズとのギャップがあり、ラインナップが2アイテムまでとなっておりました。

しかしそれ以降、当事業部はハイクオリティの商品を徐々に増やし、その結果ユーザーのなかにもハイエンドの商品をコレクションされる方が増えてきました。そこで、2010年にあれだけのクオリティの商品を販売したのだから、それを改良して、「FORMANIA EX」という新ブランドで展開していこうというのが今回の商品誕生までの流れになれます。

松本

EXとして展開するにあたり、「FORMANIA」で発売した「νガンダム」「サザビー」の2商品をまずバージョンアップしてリリースいたしました。前作よりも彩色を増やし、ダイカストと呼ばれる金属パーツを用いて金属の重厚感を演出し、LEDによるライトパーツを追加してライティングできるようにいたしました。

おかげさまで2017年に日本玩具協会主催の「おもちゃ大賞」のハイターゲット部門で大賞を受賞いたしました。

2つの前作の発売から1年以上の歳月を経て、今回満を持して発売した「ガンダム試作1号機 フルバーニアン(GP01)」は、「FORMANIA EX」シリーズとしては初めて、一から設計し、さらなる進化を遂げたハイエンドモデルとなっております。

新商品の企画・設計・開発には相当の議論と技術が必要だったのではないかと想像できます。

前田

新作を企画するにあたり、まずキャラクターの選出からスタートいたしました。2010年よりもダイカスト成形や彩色の技術力が上がったことを受け、キャラクターのもつ特性をより魅力的に再現しやすいものを選びたいと考えました。

松本

また企画コンセプトとしてライティング(発光体)をもっと入れていきたいという方針がありました。2017年はバージョンアップでありライトパーツの追加まででしたが、今回は新設計なのでライティングを採用できなかった場所に、チップLEDやマルチカラーLEDを採用できると考えていました。

前田

ではライティングが似合うキャラクターって何だろうという点も選出の基準になりました。たとえば、企画側が「こう光らせたい」と思っても、その光り方が似合うキャラクターと似合わないキャラクターがいます。さらに今回は光の演出によってストーリーを感じさせるような商品にしたいと考えました。

アニメーションのストーリーを光の演出で追体験してもらう

松本

パイロットがコックピットに乗ろうとすると電気がついていて、ガンダムを起動するとまずは目が光る。そしてバーニア(噴射装置)が青く光り始めて、温度変化で色が変わってきて、最後には炎を噴射して赤色になるというようなストーリーを光で演出することに挑戦したのです。

前田

特にGP01はガンダムの試作機ですので、アニメーションの中でも、ドッグの中で開発されている場面や、キャラクターがコックピットに乗っている場面など、モビルスーツそのものの細部が映し出されることの多いキャラクターでした。その点では、ライティングを多くして細部のメカニカルや質感にこだわる今回のFORMANIA EXには向いているキャラクターでしたね。

そこは、LEDやマルチカラーLEDなどを扱う電気回路の知識をもっているメンバーがコレクターズチームに加わってくれたことが非常に功を奏しましたね。松本はここに来る前は子ども向け商品の開発部門にいて、電気回路もかなり使っていたために、LEDの使い方などを相談して進めました。

ほかにも、チームの中にはガンダムに長年関わってきた先輩もいますし、設計については外部協力していただいているブレーン様もいらっしゃいますので、みんなで意見を出し合ってこのキャラクターを作り込んでいきました。

<写真2>「FORMANIA EXガンダム試作1号機 フルバーニアン」(メーカー希望小売価格 税込32,400円)
<写真2>「FORMANIA EXガンダム試作1号機 フルバーニアン」(メーカー希望小売価格 税込32,400円)

金属の持つ重厚感、質感、ルックスをいかに表現するか

FORMANIA EXは樹脂だけでなく金属パーツのダイカストも採用していますが、その理由は細部の強度といった点でしょうか。

松本

そうではありません。大事なのは質感ですね。完成品トイが他の製品と比べてとても特殊な点は、キャラクター性を活かすといった観点から素材を選ぶという点です。

例えば1970年代から当社の人気商品である「超合金」シリーズでは、もちろん製品の強度も気になる部分ではあるのですが、開発者が着目しているのは、金属です。金属は重いことに価値がありますし、触ったときにひんやりしていること、ギラっと光るルックス、格好いい、といった点も大事になります。そういったところは他の世の中の製品に比べて、本当に完成品トイの特殊な点だと思います。

「FORMANIA EX」でも重要なのはダイカストでそうした金属の重厚感や質感をいかに演出してユーザーを満足させられるかという点でした。とはいえすべてダイカストにするのではとても高くなってしまうのと、ダイカストで作るのは難しい形状というのもありますので、どのパーツにダイカストを採用するのかという点は非常に熱い議論がなされました。

前田

こうしたキャラクター商品を作るうえで難しいところは、ファンの皆さんにも、私たちにも、その作品や、キャラクターに対する思い入れや、キャラクター像というものがあるということです。

プロダクト開発者としてその時点でもっとも格好いいもの、ピーキー(先端技術を取り入れた)なものを作りたいという思いはあるのですが、それがキャラクターのイメージから逸脱してしまっては意味がなくなってしまうというか、このキャラクターである必要がなくなってしまいます。そのあたりは開発者の熱量だけでは成り立たない部分があり、バランスが求められるところですね。

<写真3>前田氏が見る先はもはや製品ではなく〝作品〟だ。
<写真3>前田氏が見る先はもはや製品ではなく〝作品〟だ。

《後編に続く》

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株式会社クライム・ワークス
企業や研究機関の開発支援を行う試作メーカ。新製品の開発工程における試作品の製作、検証用治具の提供だけでなく、協力会社と連携して量産試作に向けたユニット品の製作まで対応します。

文/嶺竜一