金属3Dプリンターは稼働率が重要!〜試作アウトソーシングのポイント(後編)

INTERVIEW
株式会社J・3D
代表取締役
高関 二三男
インタビュイーの写真

前編に続き、3Dプリンターでの試作などの可能性について、金属3Dプリンター業界で高い成長率と技術力、実績を備えた企業である名古屋のJ・3Dの高関二三男(たかせきふみお)社長に話を聞いていきます。後編では、ユーザーがどんな設計データを用意したらいいか、金属3Dプリンターによる造形の可能性と技術的な限界、コスト、他社との連携などについて説明していただきました。(以下、敬称略)

前編では同社の金属3Dプリンター技術と特徴、3Dプリントの要点などについてご紹介しましたが、後編ではユーザーが試作品などの造形を依頼する上での注意点などをまとめていきます。

以下の記事では、金属3Dプリンターに関する基礎知識や、実際に提供されている金属3Dプリンターサービスについて紹介しています。あわせてご覧ください。

管理の難しい金属3Dプリンター

高関社長は3Dプリンターでは「やってみなければわからない」と言うように、「常識や造形ルールなどの範疇に入らない構造も可能になるかもしれない」とのことでした。例えば、どんなことが可能になったのでしょう。

高関

ある大手自動車メーカーから依頼いただいた試作造形でしたが、中空のものはサポート材が必要ということがルールのところ、その設計ではサポート材が使えませんでした。しかし、試しにサポート材なしでやってみたらできたんです。
それ以後、従来のルールではできないと考えられているような造形もできそうだということになり、例えば、エンジンのターボ(過給器)もインコネル718で作ってみたら強度的にも大丈夫なものができました。

こうした注文というのは試作品ですか。

高関

そうですね。その自動車メーカーの場合は製品開発のための技術的な知見を得るための試作品でした。航空用エンジンで使われているGEの場合は部品一つひとつが高価ですし、航空機用ならある程度のボリュームが見込めるかもしれません。自動車でもF1なら大丈夫だとは思いますが、通常の量産品には金属3Dプリンターは向かないのではないでしょうか。
3Dプリンター自体、不安定な機械で、レーザーの出力だけを考えても管理をしっかりやらないと、例えば出力が下がったとしても、その理由がわかりません。レンズが曇っている場合もありますし、ほかの原因の可能性もあります。同じ要素でも管理のやり方によって、できあがる金属の冶金特性が代わってしまう厄介なところがあります。

現在、マルエージング鋼、アルミニウム、インコネル、チタンなどで造形が可能とのことですが、素材の点では今後どのような可能性が考えられますか。

高関

粉体の種類では、基本的にいまリリースされている素材がベストだと考えています。それ以外の素材でも試してみましたが、やはりパラメータの蓄積などが必要で、すぐにはできません。素材によって、形状はできあがるけれど密度が少ないなどの問題も生じます。
アルミニウムA7075というジュラルミンと亜鉛の合金などの複合素材では、融点の低い亜鉛が燃え尽きてしまって合わせることが難しい面もありますが、亜鉛の融点を基準にしてエネルギー計算からパラメータを考えれば将来的にはできるようになると思います。また、銅などのレーザーを反射する素材も難しいのですが、波長の短い緑色のレーザーを使えば吸収率が上がって可能になるでしょうし、エンプラ(エンジニアリングプラスチック)でも可能性はあるでしょう。

<写真1>チタン素材の3D造形物
<写真1>チタン素材の3D造形物

コストを考えた3Dデータ作成を

3Dプリンターのサイズによって造形サイズも規定されてしまうと思いますが、どれくらいまでの大きさが可能ですか。

高関

素材に熱を加えて積層ピッチを積み上げていくわけですから、造形の大きさにも限界があります。現在は1辺が25cmの立方体が可能ですが、例えばマルエージング鋼で250mm3の塊りを作ろうとしてもできないんです。なぜなら、熱の残留応力で各層に矛盾が生じ、ピッチごとに歪みが出てしまうからです。金属の収縮力は強大ですから、歪み力によって機械の土台にネジ止めている素材が剥がれ飛んでしまうようなことが起きます。チタンならおそらく1辺が10cmの立体でも難しいと思います。
GEは1辺が1m程度の造形が可能な航空機用の大きな3Dプリンターを使っているのだと思いますが、仕組みは同じでも材料も含めてかなり特殊な機械で独自のパラメータを使っているのでしょう。
プリンター自体、ピッチが往復する占有時間でコストが変わってきますし、中が密になるほどコストも高くなるため、むしろその場合は鋳造でやったほうがいいかもしれません。ですからニーズがあるかどうかも疑問です。

それらコストの点はどうでしょうか。

高関

これまで最大の大きさもので400〜500万円の販売実績がありますが、それは中空の部分が多い造形でした。前述したようにマルエージング鋼では難しいですが、仮に内部が密の同じ大きさのものを作ると1,000万円を超えてしまいます。
金属の粉体自体の価格はそう高価ではありませんが、管理や在庫コストがかかります。将来的に粉体の価格はさらに下がっていくと予想され、販売価格の15〜20%が材料費で、その他が1億円の3Dプリンターの償却費用になるというような見積もりです。

造形の3Dデータは顧客が用意しなければならないと思いますが、注意する点はありますか。

高関

用意していただくデータは、3Dプリンターの特性をよく考えられて作られているべきだと思いますが、これまでのケースを振り返ると、ほとんどの場合、どうすれば安く、つまり早く造形できるかということを考えてデータをお作りになっていません。基本的に皆さん、既存の作り方やいまあるものを想定してデータを作っているのだと思います。
金属3Dプリンターの場合、マシニングセンターなどによる機械加工とは逆で、前述したように中空なほどコストが安くなります。材料費はもちろん、レーザーが往復する積層ピッチの面積が大きければ大きいほど、時間がかかり、機械の占有時間が長くなるためです。
どちらかといえば、構造が複雑であればあるほど安くなる可能性が高いのですが、弊社としても機械への負荷が減って故障リスクも少なくなるため、稼働時間が短いほうが助かるともいえます。

3Dデータのトポロジー(最適化)を考えたほうがいいのでしょうか。

高関

弊社としても、強度や軽量化、サポート材の位置や造形後の取り出し方など、トポロジーで最適化された設計をお勧めしていますが、トポロジーの設計ソフトウエアがまだあまり普及していないこともあり、そうした考え方をするお客さまはまだまだ少ないと思います。
こうしたソフトウエアでは、最適解のリクエストを投げかけると20〜30の回答が提示されることもあるので、その中から金属3Dプリンターの造形ルールに応じたものをチョイスしたり優先したりしつつまとめていかなければなりません。また、試作品の場合、最後は部品として量産に可能かどうか観点も入っていくため、さらに難しくなると思います。

3Dデータの作成サポートなどはどのようになっていますか。

高関

データはお客さまが用意して弊社へいただくのが大前提ですが、もちろんデータの不具合についてはチェックをし、修正できる箇所なら弊社でも対応可能です。ただ、設計のアイディアや造形ルールのご相談は受けますが、試作品などの場合、用途や設計意図などがわからない部分も多く、思ったような効果が出ないといったリスクもあるため、データ作成の請負といったところまでは考えていません。現状、CAE解析(Computer Aided Engineering、コンピューター支援設計)の問題評価くらいまででしょうか。

金属3Dプリンターの可能性と役割

医療用で金属3Dプリンターに可能性があるそうですね。

高関

現在、名古屋市立大学病院と共同でカスタムメイドの人口股関節を金属3Dプリンターで製造受託するサービスを立ち上げようとしています。インプラントの人工股関節は、海外からの輸入に頼っていますが、これを患者さん個々人のX線CT画像データから骨形状データを抽出して3D化して造形し、骨格や病態に合わせたチタン製の人口股関節をカスタムメイドするというわけです。
医療の場合、品質管理が厳しく素材のトレーサビリティの管理や工程の認可などが必要ですが、2年後の商品化を目指しています。国内で作ることができれば、コスト抑制効果も期待でき、高齢化が進む中、患者さんやご家族の負担の軽減につながるのではないかと考えています。

金属3Dプリンターの業界団体などはありますか。

高関

まだありませんが、機械メーカー、CADメーカーが集まった普及啓発のためのグループはあります。また、弊社は白銅、SOLIZE Productsと3社でセミナーを開催しています。白銅とは、弊社が持っていないプリンターや粉体での造形をお願いしたり、またその逆もあったりするような協力関係にあります。競合する関係ですが、持っているプリンターなどによってお互いに得手不得手もあり、これからの技術なので情報交換は常にやっています。

今後、金属3Dプリンターの可能性はかなり大きいのではないですか。

高関

国は2014(平成26)年からTRAFAM(技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構)という組織を立ち上げ、国産のプリンター開発に乗り出していますが、かなり苦戦するのではないかと思います。なぜなら、この分野のパテントは海外にほとんど抑えられているためで、これまでにない画期的なイノベーションでも登場しない限り、国産の金属3Dプリンターは難しいでしょう。
ただ、少子高齢化で技術の継承者が少なくなり、物作りの現場は部品設計などを根本から考え直さなければならない状況にあります。部品点数を少なくし、組み立てやすく軽量な設計造形にしなければなりませんが、金属3Dプリンターはこうした問題を解決するための技術だと思っています。

おわりに

前編に引き続き、この記事ではユーザーが3Dプリンターを用いた試作品などの造形を依頼する際の注意点から、金属3Dプリンターによる造形の可能性と技術的な限界、コスト、他社との連携まで説明していただきました。

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文/石田雅彦