3Dスキャンの24時間365日出張サービスが研究開発者にウケる理由とは

INTERVIEW

原製作所
社長
原 洋介

24時間365日出張3次元計測サービスを行う、国内でも珍しい3Dスキャン及びリバースエンジニアリングの専門会社が、長野県上田市にあります。24時間、しかも365日3次元計測の必要性があるのかどうか、非常に気になりますが、原社長の明快な回答ですぐに理解することができました。

職人さんが翌朝すぐに仕事に取りかかれるように

「24時間365日対応は、休日夜間に対応してくれというニーズが多いためですね。R&Dセンターや工場で、お客様が試作や量産化設計の行程で形にしたモノを、私たちが深夜帯や休日に計測して3DCADデータにしてあげれば、翌日出勤してすぐに設計担当の方や職人さんが、検証や修正作業に入れる。開発や量産化設計はスピードが命。わずかな無駄もなくし、最速で開発・量産化を進めるために我々は寄与しているのです」

そう語る原洋介社長以下、計測スタッフは4名。その自信は、サービスの利便性だけでなく、高い技術力に裏打ちされたものです。3次元計測の精度、スピード、計測可能な環境、対象物の大きさ、そのどれを取っても「日本で当社より技術と経験がある会社はないと思います」と原社長は言います。

<写真1>原製作所の原洋介氏(中央)とスタッフのみなさん
<写真1>原製作所の原洋介氏(中央)とスタッフのみなさん

ミクロから直径120mのものまで計測可能!

計測範囲は、ミクロのものから最大φ120mの測定物に対応。その幅の広さに驚きます。小さなものは、精密部品、昆虫の羽根、レンズの球面などから、文化財、人体、義手義足、自動車、大きなものは、大型航空機やロケット、産業機械まで。多種多様な依頼に対応します。立体物から正確な3DCADデータを作成するために、どの点を、どの距離から、どの角度から測るか。そのためにはどのような測定器を使い、どのような治具や、足場が必要か。経験と技術がものをいう。多数のノウハウが詰まっているそうです。

2008年の事業開始から現在までの10年間で、477社から依頼を受け、2万を超える計測を行ってきました。日本全国のみならず、フランスや台湾をはじめ、海外にも出張して計測を行ってきました。依頼件数は増え続けており、対象物の多様化も難易度も年々進んでいるといいます。


モノは成形した後に必ず変化する

原製作所の創業は1952年。満州から帰国した祖父が菓子製造を始めた時にスタートします。1980年代に機械加工に業務を移し、父の代に、研磨、切削などを得意とする町工場になりました。なぜ3代目の原さんは10年前、3次元計測の専門部門を立ち上げたのでしょうか。

「私は2007年まで、インクス(現SOLIZE)という3DCADと3Dプリンターを使った3D造形のエンジニアリング会社に勤務していて、設計と開発の手法提案を行っていました。3DCADの導入によって自動車メーカーや重工企業などのクライアントは設計の工程を短縮することには成功しましたが、量産化設計において試作品を計測する工程がアナログのままで、結局、設計からリリースまでのスピードを短縮できていなかったのです。そこで計測をデジタル化する必要があると思いました」

<写真2>
<写真2>


3DCADの出現により、モノの設計は一気に自由度を増し、なめらかな流線型のデザインが可能になりました。しかし実際にそのモノを製造する際に、設計図通りの精度の高いものづくりをするのは簡単ではありません。

「鋳物、プレス、樹脂成形、いずれもモノは成形した後に必ず変化するので、金型を修正したり材料の流れを調整するなどして、ズレを補正しないといけません。その工程で精度の高い計測は必ず必要なのです」(原社長)。

日本の多くの開発現場では当時、1点1点、針を当てて図表を取る接触式の計測機器で計測がなされていました。それを行っているのは設計スタッフ。非常に時間がかかる作業でした。

そこで、原さんが世界の最先端の測定機器をリサーチすると、計測時間を大幅に短縮できる非接触式の3Dスキャナがあることを知りました。「日本の製造業で、計測に困っている会社は山ほどある」。そう確信した原さんは、上田の実家に戻って会社を継ぐことを決めました。

観音像のスキャンから事業が拡大していった

ドイツGOM社の非接触光学式3次元測定器を導入し、測定事業を立ち上げました。が、事業開始すぐにリーマンショックが起き、1年間はほぼ仕事がこない状態となってしまいました。
しかしそれにめげることなく、展示会に出展したり、ホームページで情報公開したり、地元の商工会議所などでPR活動を続けました。

初期に自主的に行った仕事の一つに、上田市の真言宗智山派の寺院、前山寺(ぜんさんじ)にある観音像のスキャンがあります。岩屋の中にあるために保存環境が悪く、何度も補修を繰り返してきたため、補修箇所もわからなくなっていました。この観音像を再び綺麗に補修した際に、データを取っておくべきだとスキャンしたのです。
そして、地域の中小企業から、測定案件が入るようになりました。「今までできなかったことができるようになった」と評判が評判を呼びました。

そうした成果を含めて情報公開を続けた結果、2009年ごろから徐々に仕事が入って来るようになりました。そして原製作所には、原さんと同じインクス社から転職した2名を含む3名が加わりました。

仕事の多くは製造の現場ですが、変わったものでは、漫画『キン肉マン』の超人フィギュアをよりリアルなものにしたいという要望から生身のボディービルダーをスキャンするといったものや、手術用のインプラントもあります。

「人体に入れるモノは異物ですから、少しでも形が精密でなければ違和感や痛みが出てしまいます。MRIの3Dデータから作成した図面通りに完璧にできているかが重要なのです」(原社長)。

また、川崎重工からの依頼で、第二次大戦中に川崎航空機工業が開発・製造した戦闘機「飛燕」の唯一現存する機体を修復する「飛燕修復プロジェクト」にも参加。原製作所が機体の測定を行いました。

<写真3>Leica レーザートラッカー
<写真3>Leica レーザートラッカー

光学式3次元測定器では、5メートルほどの大きさまでしか測定できないため、2017年、世界最高の測定機器であるライカ社製レーザートラッカー式3次元測定システムを導入。60メートル離れて測定した場合の誤差範囲は375マイクロメートルと高精度。大型航空機や船舶、ロケットの測定も可能になりました。大きく幅が広がり、あらゆる製造物の測定が可能になったのです。

最新のテクノロジーによって、製造業の最先端がますます進化し、スピードも増していく中で、現場で技術を磨く測定のプロフェッショナル集団のニーズも、ますます増していくでしょう。

文/嶺竜一

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