航空機分野におけるプラスチックの技術開発動向 (1/3)

航空機は空飛ぶ密閉空間であり、燃費向上に寄与する軽量化を行なう際にも常に安全性を担保することが強く求められています。したがってその素材開発は単なる材料開発に留まらず、航空機というシステムにおいて開発材料がシステム全体にどの様な影響を与えるかを常に考慮しなければなりません。すなわち各種技術開発は以下の2点を強く意識して進められていると考えられます。

(1)軽量化と安全性に準拠した素材ソリューションの提案
(2)軽量化とコスト削減を意識した加工性、製造法、部品等を含めたトータルソリューションの提案

以下の記事でもプラスチック材料についてご紹介していますので、あわせてご参考ください。

インテリア向けプラスチック材料の開発

航空機内装材にはより軽く、より安全で、より意匠性を上げられる材料が望まれていますが、厳しい安全性基準をクリアし、かつ望む性能の新材料を開発するのは容易ではありません。一方航空会社は軽量化、ブランドの差別化、コスト削減、乗客の満足度アップを常に求めており、幅広い用途に使用できる素材等を必要としています。

こうした中、樹脂メーカーは各社とも他樹脂との複合化、樹脂の変性、繊維強化など多くの手段を駆使して安全性を含めた性能確立を目指しています。各社新材料のセールスポイントはまず安全性のどの規則を満足しているかをはっきりと示し、次に軽量性と加工容易性をセットで強調できる材料として売り出しています。

まずは<図1>に航空機用のプラスチック材料について、概観を示します。

<図1>航空機用プラスチック材料の分類
<図1>航空機用プラスチック材料の分類


そこで目を引くのがPC、PEI、PA、PPSU、PES、PEEK等の高耐熱樹脂です。いずれもエンプラ、スーパーエンプラに属し、耐熱性だけでなく、何らかのFST耐性があります。

これらをベースにした樹脂の改良、さらには材料開発から一歩踏み込んだ半製品開発を進めています。

例えば産業用熱可塑性フィルム製品を製造するSABIC社はPCをベースとしたコポリマーを開発し、FAR28.583等のFST規制をクリアするとともに押出成形性や豊富なカラーバリエーションを売りにして、ライトプロファイルやレンズカバー等の用途に用いています。

またドイツの化学品メーカーBASFは自社のPPSUあるいはPESを Diab’sDivinycell ®F50の発泡コアと組み合わせて、全熱可塑性樹脂製航空機用壁材ULTRASON ®として供給しています。

日本の航空機内装品の最大手であるJAMCOは上記高耐熱性樹脂メーカーではありませんが、軽量化の要となる壁材の芯となるハニカムコアの原材料であるアラミド紙への接着剤塗布から加熱圧着、フェノール樹脂の含浸にいたるまですべて独自の技術を使い一貫生産し、これをガラス繊維やカーボン繊維の薄い板で挟み込んだハニカムサンドイッチパネルを製造して壁材としています。

3Dプリンティングによる航空機部品製造の進化

3次元造形システム専業メーカーの米国ストラタシス(Stratasys)社は米国ボーイング社の要請で、コンピュータ上の3次元データを自動的に立体造形するシステム「フォータス」向けにPEI(ポリエーテルイミド:ULTEM9085)を採用し、航空機の壁、窓枠、エアコンの空気孔など内装品、シート部品、各座席のテーブルなどを製品のCAD設計データから直接造形しています。

同社のFDM方式3Dプリンターで特注プライベートジェットの室内空調部品や小型飛行機の操縦席の計器パネル等、航空機の実使用部品を作ることはかなり以前から行われていましたが、それは数の少ない場合に限られていました。
しかし2016年10月に欧州のAirbus社が新しい A350 XWBの内装や電子機器に使う部品をStratasys社のプリンターを用いてPEI(ULTEM9085)樹脂で製造することをAirbus社規格として認め、実際に1機あたり1,000個以上の3Dプリント部品が航空機内で使われるという大きな変化がありました。

また、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した琥珀色の非晶性スーパーエンプラであるPEI、ウルテム(ULTEM™)をGEから引き継いだSABICも自社のPEI(ULTEM™ 9085)樹脂にStratasys社の3Dプリンターを用いて既存のエコノミーシートの設計および製造過程を見直し、流線型で人間工学的に優れたシートのデザインをデザイン会社のStudio Gavari社にライセンスしています。
これはULTEM™ 9085が3Dプリンティングとの適合性が高く、連邦航空局(FAA)のFAR 25.853規制およびOEM毒性要件に準拠していることを強みに、この材料をいろいろな形の内装品に仕上げていく戦略と考えられます。

3Dプリンティングによる航空機内装品の製造は品質、コスト、時間のいずれにおいても未だ課題が多いのが現状です。しかしながら、いままずできる部品に限って製造し、3Dプリンティングの足りないところを補う周辺技術や品質管理方法を開発することで、例えば部品点数の削減など従来手法の改善だけではできないものの提供が可能になるという認識が生まれつつあります。

構造材用高耐熱性樹脂の開発動向(1)~CFRP材料開発 次ページ

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