自動車に用いられるプラスチック材料(3)〜CFRP技術開発の動向

自動車の軽量化は、各種性能と加工性の両立をめざす材料開発ともいえます。現在、次に示す視点で、多くのプラスチック材料開発が進められています。

  • (1)自動車適用部位の要求特性に応じたきめ細かな樹脂材料の改良
  • (2)生産性を上げるための材料とその加工技術のセット開発
  • (3)自動車適用を目指した多様な複合材料(CFRP)技術開発
  • (4)マルチマテリアル化に対応した関連業界との共同開発

ここでは、以上の4点について説明いたします。

以下の記事でも自動車の軽量化に関するプラスチック材料について解説していますので、合わせて参照ください。

プラスチック材料の改良

(1) 長期耐久性ナイロンの開発

耐熱材料であるポリアミド樹脂のナイロンを開発したことで有名な米国のDuPontは継続的にその改良を続けています。新しい化学構造を持った高分子骨格、新しい改質技術、添加剤処方等により、従来のナイロンでの製品設計及び加工の容易性を維持する一方、熱と化学薬品への優れた長期耐久性を達成しています。
彼らはターゲットとなる用途の要求に合わせ、それぞれの製品に対して最適化しています。対象となる自動車向け部品としては、トランスミッション部品などがあります。

(2) DuPontベースレジン複合

DuPontはポリフタルアミド(PPA)の樹脂開発において、ベースレジンとして、脂肪族アミンとさまざまな特性をもたらす芳香族酸から成る2種類のベースレジンを用い、要求特性に応じてこの2 種類のベースレジンを基本要素として構成しています。得られた耐熱気性のPPAは180℃の熱気に 3,000 時間さらされた後でも高い強度を維持しており、ホースやCACエンドタンク部品等にも利用可能としています(PPAザイテル® HTN)。主な用途は以下になります。
非強化:自動車電装品/ ワイヤーハーネスコネクタなど
ガラス強化:変速機/ 冷却水系部品、エンジン廻り機構部品、油圧ピストン、シリンダ、モータエンドキャップ

(3) 架橋型PEEKの開発

ドイツのエボニック社は米国のグリーンツィードアンドカンパニー社と共同でたわみ温度170℃から300℃以上に高めた高耐熱性架橋型PEEK「ARLON 3000XT」を開発しました。PEEK樹脂の高い摺動(しゅうどう)特性や優れた耐油性・耐薬品性に加えて、架橋構造によって高温下でも変形せずに高い強度を保てるため、エンジンや変速機の内部に使う摺動部品(オイルシール部品等)として、3~5年後の市販モデルへの搭載を目指しています。この架橋型PEEKは射出成形加工が可能で設計の自由度も高いことから、金属に比べコスト高ではありますが、全体コストは下げられるとしており、鉄や熱硬化性ポリイミドからの代替需要を狙っています。

プラスチック材料と加工技術のセット開発

高質感TPSの開発

三菱化学は新規射出成形工法を考え、その方法に適合できるTPS「ラバロンTM」を独自のポリマー組成とコンパウンド技術や化学修飾改質技術により開発しました。従来TPSの汎用グレードは、耐摩耗性、耐傷付性、耐油性が各種自動車用内装部品規格に不適合で、自動車部材向けには、カップホルダー用滑り止め、各種可動部分の目隠しカバーや安全確保用カバー、衝撃保護カバーとしての使用に留まっていました。

高級車系や同じ車系内の上位グレードの手に触れる内装パネル部材においては、上質な質感が求められるケースが多く、設備の導入、部品構成の複雑化、工程数の増加から部品コストが高くなるという問題点がありました。そこで射出発泡表皮2色成形工法等といった工法を創出し、あわせてそれに適した材料を開発しました。

その結果、高度な耐摩耗性、耐傷付性、良好な触感を満たし、塗装やコーティングといった表面処理を施すことなく各種自動車内装部品、例えば、グリップ類やフットブレーキペダルパッド等の足元周辺部材などの用途に多く採用されています。

また、これらの特徴を高いレベルで維持しながら、耐熱性を有する高流動性グレードもラインナップしています。このグレードは、大型部材の射出成形性、シボ形状の転写性が大幅に向上することから、射出薄肉表皮成形工法や射出薄肉表皮2色成形工法等の無塗装射出成形表皮材としての適用が可能としています。

CFRP技術開発の最新動向~GFRP、CFRPの開発事例を紹介

ガラス繊維強化のGFRPは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の多様な樹脂との組み合わせで自動車業界でも広く利用されてきましたが、CFRPの自動車への適用はその生産性も含めて研究段階にあり、本格的採用に向けて各所で検討が続けられています。

CFRPの技術開発は航空機業界から進んできており、ボーイング社の航空機B787ではその使用重量比は既に50%を超えています。このCFRPは高強度、高剛性等の力学的性能を最重要視しており、炭素繊維と熱硬化性樹脂をオートクレーブ中で加熱硬化成形するものです。しかしながらコストが非常に高く、一般飛行機や自動車のすべてに適用するには生産性が低く、量産にはまだ遠い状況にあります。

CFRPの作成方法としては、上記のオートクレーブ法のほかに、型の中に強化繊維を詰め、そこに硬化剤を含む母材樹脂材料を注入してできるだけ早く硬化することを狙ったレジントランスファーモールド(RTM)法、短繊維長の炭素繊維と熱可塑性樹脂を混錬してプレスするプレス成形法、さらに短い炭素繊維と混錬して射出成型する方法等があります。製造コストとその力学的安定性とは逆相関にあります。
自動車用には力学特性と成形性とのバランスが取れた製造法、材料の開発が望まれており、各所で研究されています。 以下に最近の事例を示しました。

中空体GFRPの開発(2018.01.12)

栗本鉄工所はマツダと共同で車のハンドルなどを支持する構造部材のクロスカービーム向けに、ガラス繊維強化樹脂の中空体を開発しました。従来の鋼材製クロスカービームは円筒状ですが、今回のGFRP製は素材特性を生かすため四角形状。中空体の長さは1400ミリメートルで、筒の厚みは2.4ミリメートル。連続成形が可能な引き抜き成形法を採用することで生産コストを低減し、軽量かつ鋼材と同等の強度を確保しています。鋼材を使う従来品と同等の強度で、重量は約30%軽く、生産コストも低減できます。
ガラス繊維を用いた引抜成形法によりコストを抑え、自動車構造体に適用できたとしています。

熱可塑性CFRP(CFRTP)の開発(1)~NEDO ISMA PJ(2017.10.16)

NEDOと新構造材料技術研究組合(ISMA)の組合員である名古屋大学ナショナルコンポジットセンター(NCC)は、成形性・融着性に優れる熱可塑性樹脂と炭素繊維を混練するLFT-D(Long Fiber Thermoplastics–Direct)工法を用いること、また熱可塑性CFRPの融着可能な利点を生かした超音波融着法によりシャシー部材を接合することで、熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のみによる自動車用シャシーの製作に世界で初めて成功し、熱可塑性樹脂と炭素繊維の供給から最終製品までの一貫自動生産システム構築が可能となったとしています。

熱可塑性CFRP(CFRTP)の開発(2)~帝人-GM連合(2018.03.10)

帝人の炭素繊維と熱可塑性樹脂を使った複合材料(CFRTP)が、米GMの主力ピックアップトラックの新モデルの車体構造材に採用されます。帝人のCFRTPはポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂を使った複合材料で、ボックス・ベッドとよばれる荷台の内側を構成するパネル部品として用いられる予定。荷物の積みおろしに耐えられる強度や衝撃吸収性のほか、これまでの鋼板部品に比べ25%軽量化できることがポイントです。このCFRTPの成形時間は1分程度で大量生産が可能で、製造コストで優位性が高く、量産車の構造材にCFRTPが使われるのは世界初とみられています。

マルチマテリアル化対応技術の最新動向~2つの事例を紹介

CFRPを用いた大型一体部品(2017.06.19)

東邦テナックスは大型バス用ルーフカバー製造において、ジーエイチクラフトと基礎設計の段階から協業し、得意とするCFRP(熱硬化性炭素繊維強化プラスチック)材料に加え、アルミや軽量エンジニアリングプラスチックなどを使用するマルチマテリアルの一体化技術を構築しました。これにより高外観性、複雑形状、量産性を満足するルーフカバーという大型一体部品を製造し、トヨタの燃料電池バス(FCバス)に採用されています。バスはその構造上、特に車体上部の軽量化が求められており、こうした各種材料の一体化技術はますます重要になると考えられます。

3Dプリント自動車(2018.03.26)

インターナショナル・マニファクチャリング・テクノロジー・ショー2014(IMTS2014)の会場で製造された世界初の3Dプリント自動車「ストラティ(Strati)」の車体には、炭素繊維で強化されたABSが用いられました。その車体重量はわずか1,100ポンド(約500kg)です。
3Dプリント用素材を手がける中国企業のPolymakerは、ボディなどを3Dプリンタで成形する電気自動車「LSEV」をイタリアのEVメーカー、X Electrical Vehicle(XEV)と共同で量産すると発表。量産開始は2019年第2四半期の予定です。

まとめ

以上、軽量化技術の最近の動向を概観してきましたが、材料開発においては樹脂の複合化を考慮し、軽量化を目標とする部位に必要な特性を出すための工夫が各所でなされています。またその得られた材料を各部品に適用するため、その加工性を上げる加工技術にも踏み込む努力がなされています。ガソリン自動車は3万点以上の部品からなっており、常に新材料の適用はその他の部品への影響も考える必要があります。自動車のマルチマテリアル化の時代、異種材料間の接着、組み立ての加工の工数低減など、材料性能の確立と並行して進める課題が多く、研究開発も自動車メーカーを中心に部品メーカー、材料メーカーが連携した開発がいままで以上に増えてくると思われます。

このほかの記事では、より詳しくプラスチック材料についてご紹介していますので、あわせてご参考ください。

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