自動車の部位別重量とその動向

自動車の燃費にもっとも大きく影響を及ぼしているのが、その重量です。車体重量と燃費の関係は100㎏の軽量化で燃費は1㎞/l向上すると言われており、燃費向上の歴史は車体軽量化の歴史と言っても過言ではありません。では、自動車のどの部分の重量が大きな割合を占めているのでしょうか。ここでは、自動車の部位別重量を明らかにし、今後どの部分の軽量化を進めようとしているのか、その動向をご紹介します。

車両重量の推移と部位別重量

図1は、日本の乗用車(自家用・営業用)の平均重量推移(参考文献1)を示したものです。いままで自動車メーカーは常に重量の低減を念頭に置き開発を進めてきましたが、過去30年間で乗用車の平均重量は約400kgも増加しています。また各メーカーの同一車種でも重量が増大し、大型化が進んでいます。 この重量増大の要因として以下の3点が挙げられます。

(1) 自動車安全基準の強化に伴う部材厚さも含めたフレーム構造等の見直し
(2) 予防安全装置の搭載
(3) 快適性向上のための搭載機器の増大

安全基準のさらなる強化は今後も進むと考えられ、各自動車メーカーには重量増を抑えつつ、安全性を高める努力が求められています。

<図1>日本の乗用車(自家用・営業用)の平均重量推移
<図1>日本の乗用車(自家用・営業用)の平均重量推移

自動車部位別の重量は車種ごとに異なりますが、おおまかな重量比率を表1に示しました(参考文献2、3)。目安として、ボディ部はもっとも重く車全体の約30%、次にエンジン系を含むパワートレイン部が約25%、サスペンション部が12%と続きます。この三つで70%近くを占めており、これらの軽量化が必要となってきます。

ZEV化が進むとパワートレイン部は大きく変わり、気化器、燃料噴射装置等のエンジン部品、プロペラシャフト、トランスミッション等の駆動・伝達部品、スタータモータ、オルタネータ等の電装部品が不要となります。

<表1>自動車各部位の自動車に占める重量比率

部位 構成部品例 重量比率
ボディ関連 骨格系 シャシー、ルーフ、フェンダー、ドア、フェンダーエプロン、 サイドシルなど 20%
外板・外装系 外板パネルなど 6%
ラジエータグリル、バックドアガーニッシュ、ホイールキャップ、マッドガードなど 7%
内装系 コンソール、インテリアガーニッシュ、インスツルメントパネル、 フロントピラーガーニッシュ、センタクラスタ、レジスタなど 11%
足回り系 サスペンション系 サスペンションアーム、スプリング、 ショックアブソーバーなど 12%
ホイール系 タイヤ、ホイールなど 7%
ステアリング系 ステアリングシャフト、ステアリングギア、タイロッドなど 3%
パワートレイン 吸排気・燃料系 インテークシステム、エキゾーストシステムなど 7%
燃料装置系 フューエルポンプ、フューエルフィルター、フューエルホースなど
エンジン系、トランスミッション系 シリンダーブロック、トランミッション(変速機)、プロペラシャフト、ディファレンシャルギア、ドライブシャフトなど 18%
電装品等 オルタネーター、電圧レギュレーター、鉛蓄電池、スターターモーター、ガソリンエンジンの点火装置、燃料噴射装置、カーエアコンとクーラーコンプレッサー、カーオーディオやカーナビ、エンジンコントロールユニットなど 9%

 

しかしボディ部はガソリン車もZEV各車も共通で、ボンネットからドア、ルーフまで多くの鋼板で覆われています。鉄が強度とあわせて加工性にも優れ大量生産に向いているとはいえ、軽量化のためには鉄と代替可能的な構造材料が求められます。
ここでは鉄代替可能性のある各種軽量化材料の特性を表2にまとめました。



<表2>鉄鋼材料と各種軽量化材料との特性比較

鉄鋼 高張力鋼
(ハイテン)
Al合金 Mg合金 Ti合金 合成樹脂 CFRP
(カーボン/エポキシ)
比重 7.9 7.9 2.7 1.8 4.5 0.9~2 1.6
引張強度
(MPa)
~270 ≧490 ~600
(純Al:80)
~510
(純Mg:190)
~500
(純Ti:270)
20~80 ~1,500
比強度
(kN・m/kg)
~63 ≧115 ~220 ~270 ~260 89 ~780
ヤング率
(GPa)
206 203 70 40 106 <5 ~50
線膨張率
(10-6/K)
14 14 24 26 8.5 30~100 <1
使用部位 ボディ全般 ボディ全般 モノコックボディ、シャシー、シリンダー、ブロック、ピストン、ラジエター ステアリングホィール、インスツルメントパネル コンロッド、バルブ、サスペンション用スプリング 内装材 ボディ全般
特性 強度が大きく、加工性に優れ、かつ安価 引張強度が高く、肉厚低減が可能 比強度は大きいが、剛性は低い 耐腐食性小、ヤングも低い 引張強度大、高耐食性大、延性展性大 軽量、加工性大 比強度、比剛性大

 

ボディ部軽量化の動向

ここでは表2に示した各種軽量化材料候補についてそれぞれの特徴と活用状況を簡単に触れておきます。

(1) 高張力鋼材

軽量化の最初に考えるのはボディ部材の低減、まずは板厚を薄くすることですが、あわせて安全性が担保されなければなりません。

鉄鋼板の使用量を低減するために引張強度の高い高張力鋼(ハイテン)の開発が進み、ボディの各所に採用され、引張強度が1,000MPaを超える超高張力鋼も開発されています。

高張力鋼(High Tensile Strength Steel; HTSS)とはMnなどの合金成分を添加、熱処理等で組織の制御を行い、一般構造用鋼材よりも強度を向上させた鋼材です。一般的に強度が高いと延性が低下し、成形不良が発生しやすくなるため成形性と強度を両立させた高張力鋼の開発が進められています。コストは従来の鋼材よりも高くかかりますが、アルミニウムなどの軽量素材よりは割安であり、補修やリサイクルも比較的容易なため環境に優しい鋼材としても注目されています。

国際鉄鋼協会が中心となり世界の鉄鋼会社33社が参加し1999年から共同で推進したULSAB-AVC(Ultra-Light Steel Auto Body-Advanced Vehicle Concept)プロジェクトでは、高張力鋼材を多用し、1,500㏄クラスの小型乗用車で19%(1,147kg→933kg)、2,500ccクラスの普通乗用車で32%( 1,470kg→998kg)の軽量化を達成したと発表しています(参考文献4)。

自動車メーカー各社も高張力鋼の採用比率を高めており、例えばマツダは2019年に市場投入予定の次世代小型車向けボディで使用比率を大幅に高めています。引っ張り強度が780MPa以上の鋼材の使用比率を現行の18%から45%に拡大、980MPa以上の超高張力鋼材は9%から36%と大幅に増やしてボディを軽量化し、燃費性能の向上につなげるとしています(参考文献5)。

(2) Al(アルミニウム)

アルミ合金は鉄と樹脂の中間的な特性があり、鉄よりは軽く樹脂よりは重い、強度は鉄より劣りますが樹脂より優れています。しかしながら合金の種類やその製造工程によっては引張強さを大きくすることができ、鉄に比べて高い比強度(引張強さ/比重)が得られるため鉄の代替材としての需要が拡大しています。

鉄からアルミニウムに代替した部品として、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、変速機ケース、ホイールピストン、サスペンションなどがあります。

1990年代に入り、高級車やスペシャリティカーを中心にフード、トランクリッドなどのクロージャパネル類にアルミ圧延板が使われてきました。また1990年にホンダのフラグシップ車として発売されたホンダNSXはモノコック構造で展伸材を用いたオールアルミ車体でした。1994年に発売されたドイツのアウディ・A8はアルミスペースフレーム構造でアルミ鋳物が多く採用されています。また2012年に日本で公開されたEVであるテスラ「モデルS」はシャシーがすべてAl製で、補強部材としてボロン添加スチール材を採用してボディ全体の軽量化を達成しています。

こうしたAl合金は生産量の少ない高級車への採用が中心でしたが、2015年米国フォードは人気車種のピックアップトラックF-150(年間販売台数~10万台)のボディにAl合金を全面的に採用しており、こうした動きは欧州各国や日本でも加速されています。

(3) Mg(マグネシウム)

マグネシウムはすべての構造用金属の中でもっとも軽く、比強度はもっとも高い素材であり、また人体に大量に含まれる無機物の一つであるため、生体適合性、生分解性も有しています。

しかしながら耐食性に最大の課題があり、異種金属との接合部の電食対策が重要になります。またヤング率が低いため、剛性が必要とされる部品への適用はリブ構造等の工夫が必要になり、適用部位が限定されます。

2003年発売のFord F150のラジコアサポートでは鋼板プレス部品からマグネ鋳物に変更して軽量化を達成しています。また2006年発売のAudi R8ではエンジンフレームの一部にマグネシウム製パーツを採用していましたが、旗艦セダンであるAudi A8では2017年の新機種モデルにMg合金をストラットの補強材として使用しており、従来より28%軽くなったとしています(参考文献6)。マグネシウム合金鋳物の車体への適用は欧米車メーカーが積極的で、少量の車種ではありますが、ドアインナ、バックドアインナなどのクロージャパネル、リングホィール、インスツルメントパネルなどのインテリア部品、車両コンポーネント部品にも使われています。

(4) Ti(チタン)

Ti合金の降伏強度と疲労強度はFeやAlに比べて優れていますが、ヤング率が小さく軽量構造材材料としてはAl、Mgに劣るため、ボディ系ではなくシャシーやパワー系統に用いられています。

(5) 合成樹脂

鉄の次に多くの重量を占めるのが樹脂です。ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)ポリ塩化ビニル(PVC)、ウレタン(PU)、フェノール(PF)といった材料が主に利用されてきました。耐熱性や表面硬度には問題がありますが軽く、成形性に優れているため、内装材や外装材にも多く採用されており、熱可塑性樹脂のPPは安価なためバンパーやインストルメントパネルなどの部品に使用されています。2000年以降は汎用樹脂から高耐熱の高機能樹脂の採用が進んでいます。

(6) FRP(繊維強化樹脂)

繊維強化樹脂は樹脂の弱点である強度を繊維と複合化することにより高めたものであり、ガラス繊維等は良く用いられていましたが、炭素繊維を用いたCFRPは比強度、比剛性も大きく注目され、一部ボディ等への応用が始まっています。
以上、材料的には鉄からアルミ、さらには樹脂へと軽量化材料の使用拡大の流れが続いており、用途に応じて材料を使い分け、あるいは組み合わせてそれぞれを相互に使いこなすマルチマテリアル化が進行してきています。では、この軽量化の動きとしてどの材料が自動車のどの部位に適用、あるいは適用が検討されているのでしょうか。現状をまとめたのが表3です。

<表3>部位別軽量化材料適用事例

部位 材料特性要件 高張力鋼
(ハイテン)
Al Mg Ti 合成樹脂 FRP
ボディ関連 骨格系 部材剛性、耐久強度等 フロント、リアは~800Mpa(衝撃吸収性能要)キャビンは超ハイテン(変形耐性大)ピラー、サイドメンバー、ルーフレール、クロスメンバー他 モノコックボディ、シャシー、フロントフード、バックドア、ルーフ、フェンダー、トランクリッド フロントフード、ルーフ、シャシー
外板 張剛性、耐デント所性 パノラマルーフ
外装系 ホイールキャップ、テールランプ、レンズ等
内装系 意匠性、塗装性等、大型品への適用 インスツルメントパネル、座席シート インスツルメントパネル ダッシュインシュレータ
足回り系 サスペンション系 部材剛性、耐久強度等 サスペンションアーム ナックル、アッパーアーム、キャリア、オールAlサスペンション ストラット
ホイール系 ホイールディスク
ステアリング系 ステアリングホィール
パワートレイン 吸排気・燃料系、燃料装置系 耐熱性、耐腐食性 インテークバルブ、アウトレットバルブ エアクリーナー、レゾネーター、エンジンカバー等
オイルパン
エンジン系、トランスミッション系 摩擦低減、耐久性 シリンダーブロック、ピストン、ラジエータ エンジンブロック、クランクケース、シリンダーヘッドカバー コンロッド プロペラシャフト
電装品等 高絶縁性、耐油性等、耐水性等 ワイヤハーネス(電線導体のAl化) ホットメルト接着剤 コネクタ、コネクタケース

 

いずれもすべてが軽量化材料として代替されているものだけではなく、試験的に、あるいは一部車種等に用いられている部位も示していますが、確実に多くの軽量化材料による代替が進行していることがわかります。

ボディは普通鉄鋼から高張力鋼へとシフトしつつあり、さらに高級車を中心に高張力鋼からAl化への動きが顕著になりつつあります。またCFRPを部分的に使うケースも現れてきています。Mg合金、Ti合金が使用されることはそれほどでもありませんが、特に航空業界ではMgを多用しようとする動きもあり(参考文献7)、その進展により自動車業界への反映も期待されます。

ボディを中心とした軽量化材料による鉄の代替により、ボディ重量の全体に占める比率がどのように変化するかを知るために、生産台数の少ない高級車ではありますが、既に販売実績のあるAudi車のAl化に伴うボディ重量の変化を一例として取り上げます。
<表4>はその変遷を表にしたものですが、1994年にAudiがAl製モノコックボディの初代Audi A8を発売して以来、そのボディ重量はすべて200Kg 台に抑えられており、ボディの重量比率は第三世代のAudi TTの22.4%を除けば、20%以下と確実に下がっています。また並行してMgやCFRPを取り込んで組み合わせ、マルチマテリアルの製造技術を検討していることも伺えます。
これにCFRPの適用が本格化すれば、ボディの重量比率はさらに下がるのではと期待されます。またこのような試みは他の大手メーカーでも積極的に検討されており、ボディを含めた車全体の軽量化は確実に進展し、部位別の重量比は大きく変化していると考えられます。

<表4>AudiのAl化車のボディ重量変化(参考文献8)

車種名 車種コンセプト 年度 車両重量
(kg)
ボディ重量
(kg)
ボディ重量
比率
初代Audi A8 Al製モノコックボディ 1994年 249
Audi A2 1.2 TD I 同上、構成パーツの削減 1999年 825 153 18.5%
第二世代Audi A8 同上、構成パーツの削減 2002年 1,670 220 13.2%
第二世代Audi TT スポーツカー複合素材化車両重量の68%がAl 2006年 1,260 206 16.3%
初代Audi R8 CFRP、Mgを一部使用 2007年 1,565 206 13.2%
第三世代Audi A8 Audi A8 Sedan 2010年 1,835 231 12.6%
第三世代Audi TT 複合素材 熱間成形(スチール+Al) 2014年 1,230 276 22.4%
第二世代Audi R8 Audi R8 Coupe AlとCFRP(RTM法)との組合せ 2015年 1,454 200 13.8%

 

自動車部品用材料構成の動向

軽量化材による鉄代替は継続的に続けられており、軽量化材料のさらなる軽量化材による代替なども起こりつつあると言えます。米国エネルギー省(EIA)資料をベースにした経産省の自動車用材料の使用比率見込みとしては、2030年に鉄材は50%を下回り、AlとMgの非鉄金属、樹脂とCFRPがいずれも20%近くに増大すると予想しています。そこに至るまでには技術的課題が多く、期待値的意味合いもあると考えられますが、世界中で自動車のCO2ガス排出大幅削減に向け軽量化の検討が進められており、これらの技術が組み合せられれば、CO2排出ガスがゼロのZEV時代が現実のものとなるのもそう遠い将来ではないと言えるでしょう。

おわりに

この記事では、自動車軽量化に関連して、部位別の重量とその動向について解説しました。他の記事では、自動車軽量化を見据えた最新技術やサービスを紹介しています。こちらもぜひ合わせてご参考ください。

参考文献
(参考文献1)『乗用車(自家用・営業用)の大型化(重量化)の推移』環境省データベース

(参考文献8)『アウディにおけるボディ開発 革新、品質、そして精密性』Audi Media Info 2017年6月

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