自動車軽量化の背景と今後の展望

燃費の向上、CO2排出量の低減に大きく影響する自動車の重量。自動車メーカーはその重要性を認識し、古くから軽量化に取り組んできました。 ここではその歴史を振り返り、また今後どのように、どの程度まで軽量化を進めることができるのかを検証していきます。

自動車の成長と環境への影響

1769年フランスで、蒸気自動車が発明されて以来、自動車はガソリンを燃料に技術革新がすすみ、大衆化されていきました。OICA(International Organization of Motor Vehicle Manufacturers)によると、1908年に登場したT型フォードから約90年を経て世界の自動車生産台数は2000年に58M台、2017年には97M台となり年産100M台の時代を迎えようとしています。
国別にみると中国が29M、米国が11Ⅿ、日本が9.7M 、ドイツ5.6M、インド4.8M と続いており、上位5か国で60%以上を占め、この間の成長は年率9.6%です。しかしながら、みずほ銀行の調査では中期的には日本では高齢化、人口減少といった構造的な問題もありマイナス成長、世界的にもインド、ASEANといった新興国での成長が見込まれるものの、成長を牽引してきた中国の成長が鈍化することで、緩やかに拡大しつつも、成長は減速するとの予想もあります。

こうした自動車の大衆化の流れの中で安値安定していたガソリン価格が1970年代に発生したオイルショックを契機とする石油価格の高騰により上昇し、自動車の燃費に対する関心は増大しました。 一方、自動車数の増大はCO(一酸化炭素)、NOX(窒素化合物)、HC(炭化水素)等の排気ガス問題を発生させ、1970年代には米国の大気浄化法、いわゆるマスキー法が発令、日本でも1966年のCO排出規制に始まり、各種の排ガス規制法が年々厳しい方向に改訂されていきました。

また1970年代以降、地球の大気の仕組みに対する理解が進み、オゾン層破壊や地球温暖化が大きな問題として取り上げられるようになりました。
地球温暖化の要因としては温室効果ガスの存在が挙げられ、1988年に創設された国連気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)はその寄与は二酸化炭素76.7%、メタン14.3%、一酸化二窒素7.9%、オゾン層破壊物質でもあるフロン類(CFCs、HCFCs)1.1%と報告しています。英エネルギー企業BPによると、なかでも米国、インド、ロシア、日本が多く排出する国々で、日本は1,191Mトンと世界の約3.6%に相当する量を排出しています。
国土交通省によれば、2016年度の日本におけるCO2の総排出量は1,206Mトン(上記のGlobal Note データとほぼ一致)で、運輸部門は17.9%に当たる215Mトンを排出しています。そのうちの86.2%の99.3Mトンが自動車によるもので、航空機は4.7%にあたる10.1Mトンです。

<図1>運輸部門における各年度のCO2排出量の推移
<図1>運輸部門における各年度のCO2排出量の推移

(その他輸送機関はバス、タクシー、鉄道、航空、二輪車)

出典:国土交通省

図1は、運輸部門におけるCO2排出量推移を示したものです。1990年度から1996年度までに23%増加しましたが、その後、1997年度から2001年度にかけてほぼ横ばいとなり、2001年度以降は減少傾向に転じています。
2016年度の排出量(215Mトン)は、旅客輸送における自動車の燃費改善、貨物輸送における輸送量の減少等により2005 年度比で減少しており、1990年度レベルの排出量に近づいてきていることがわかります。
しかしながら、更なるCO2排出量の低減が課せられています。世界各国でもCO2排出量の規制を念頭にその主要因の一つである自動車の燃費向上目標をそれぞれ設定しています。各国の自動車CO2排出量目標推移ですが、欧州では2015年130ℊ/㎞、2021年95g/㎞、米国では2016年139g/㎞、2025年97g/㎞。日本では2015年139g/㎞、2020年122g/㎞と年々厳しい目標設定がなされており、EUが最も厳しい水準となっています。

CO2排出量低減に向けた自動車産業を取り巻く動き

自動車のCO2排出量削減に向けては主に以下の観点から対策が進められています。

(1) CO2排出量が少ないハイブリッド車、あるいは排出量ゼロの電気自動車、燃料電池自動車等のZEV(Zero Emission Vehicle)車の開発

(2) ガソリン車の燃費向上

(3) AI、IoT等を活用した交通システム、運行管理システム等の開発による、交通の円滑化

(1)のCO2排出量ゼロの電気自動車(EV:Electric Vehicle)や燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)の開発は実用化が進み、各国はZEVの全面採用を目指して、目標の具体化を進めています。例えば米国カリフォルニア州で施行されたZEV規制は、州内で一定台数以上自動車を販売するメーカーに対し、ZEV(Zero Emission Vehicle)を一定比率(14% : 2017年現在)以上販売することを義務付ける制度です。2018年から規制比率を16%以上とさらに上げ、対象自動車メーカーも拡大。対象車種も2017年まではZEVにカウントされていたハイブリッド車は除外され、EV、FCV、PHEV (Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に限定されています。この動きはさらに米国内で広がっています。
欧州ではドイツが2030年までに、フランスとイギリスが2040年までに国内でのガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針を決定し、オランダとノルウェーでは2025年までに排気ガスを排出するすべての車の販売を禁止する法案準備が進められています。

しかしながらコストや各種インフラの整備等にまだ多くの課題が残されており、ZEV化の大きな流れはあるものの、2030年まではガソリン車が依然として市場の多くを占めることも予想され、そのCO2排出量削減はこれからも継続的に続く重要課題と考えられます。

ガソリン車の燃費向上と車体の軽量化

CO2はガソリンの燃焼により発生する燃焼ガスの主成分であり、ガソリン消費量の低減がCO2排出量の低減に直結するため、自動車の低燃費化、即ち燃費向上が強く求められています。
自動車本体の燃費向上策の重要なものについて、表1にまとめました。

<表1>自動車の低燃費化技術
項目低燃費化技術
1車体軽量化車体構造見直し、軽量材料(高張力鋼板、非鉄金属、樹脂等)による代替、部品の小型化等
2エンジン回り改良燃焼効率改善、ターボチャージャー、可変バルブタイミング、摩擦係数等
3駆動系改善摩擦係数、AT多段化、無段変速機、アイドリングストップ等
4転がり抵抗低減タイヤ表面形状等
5空気抵抗低減ボディ形状改善等

いずれも自動車メーカーの競争領域技術であり、継続的な改良が進んでいますが、CO2削減の観点から考えると、車体の軽量化が最も効果的です。また、軽量化には各種材料開発も必要となるため、産業間の協力関係構築も重要となります。軽量化は、結果的に部品の小型化につながります。そうなれば、例えばエンジンやエンジンルーム内の部品の小型化においては、ドライバーなどの居住空間の拡大とともに、クラッシャブルゾーン(衝突でつぶれる領域)が大きくなり、衝突安全性に有利となり、ボディのデザイン自由度も増すことになります。
以上をまとめると、車両軽量化のメリットは単なるCO2排出量の削減にとどまらず、①燃費性能向上、②加速、停止などの走行性能向上、③各種快適性、安全性能の拡大等の自動車の商品価値向上となり、さらには④電気自動車、燃料電池自動車等の開発にも直接的に応用できるというものであり、今後の開発がさらに加速されると考えられます。
以上の自動車軽量化の流れを図2にまとめました。

<図2>自動車軽量化の流れまとめ
<図2>自動車軽量化の流れまとめ

おわりに

この記事では、自動車軽量化の背景と今後の展望について解説しました。他の記事では、自動車軽量化を見据えた最新技術やサービスを紹介しています。こちらもぜひ合わせてご参考ください。

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