リアルタイム材料特性計測で材料革新をリードするインデント・プローブ・テクノロジー 株式会社 (1/2)

はじめに

従来、材料開発では原料メーカーが発行したカタログ・仕様表にある素材特性を頼りにし、実態と合わせるためにはさらに研究者の経験や勘を頼りにすることも多く、各種プロセスを経て実装状態にある製品に対し、本当の意味での「力学物性」の把握はできていませんでした。現在、この分野に革新を起こそうとしているのが「インデント・プローブ・テクノロジー株式会社」(以下「IPT社」)です。

顕微インデンテーション技術の特徴

IPT社の顕微インデンテーション技術を使えば、材料の弾性・塑性・粘弾性特性(クリープ・応力緩和)や破壊挙動などの力学物性をリアルタイムで測定することができます。その測定原理は、弾塑性体に対してはダイヤモンド製の透明圧子(サンプルに押し付ける治具)を所定の力まで押し込み(負荷)、力を取り除く(除荷)という1サイクルの力学応答性(荷重と接触面積との関係)を、もしくは、粘弾性体では押し込み状態を長時間保持しながら力学応答性の変化を、圧子越しに光学顕微鏡で観察するというものです。

非常に単純な原理ながら、今まで測定することのできなかった材料特性の測定に次々と成功しています。また、IPT社の装置<図1>を使用した観察で「合金材料の定説とは異なる変形機構」が明らかになるなど(参考文献1)、破壊挙動のメカニズム解明にとっても非常に強力なツールになりつつあるのです。

<図1>装置全体(顕微インデンター外観)
<図1>装置全体(顕微インデンター外観)

従来の測定方法との違い

従来の手法には2種類が存在します。第一の簡便法は、分銅を利用した「おもり」で圧子を押し込み、その後に圧子をはずした後のサンプル表面の圧痕(窪み、凹み)を測定する手法です。しかし、この方法では接触開始から圧痕が残るまでの履歴を追うことができません。また、第二の手法は計装化法と呼ばれ、圧子を押し込む力と押し込み深さを同時に計測する手法ですが、この方法では、材料の弾性回復や材料毎に異なる表面変形挙動が分からず、表面変形を推算した値を基にして力学物性値を計算していました。

一方で、IPT社では<図2>に示すように透明な圧子をサンプルに押し付けながら、リアルタイムに光学顕微鏡で力学応答性(荷重と接触面積との関係、すべり・転位などの変形、マイクロクラックなどの破壊挙動)をイメージ形式で取得することができます。その結果、<図3>に示すように力学物性値を表面変形量の推定値ではなく実測値を用いた評価・解析が可能となりました。

<図2>サンプルと圧子との位置関係を自在に制御できる粗動・微動機構
(左:盛り上がり、右:沈み込み。サンプル事にそれぞれの度合いが異なるため、これまでは弾性仮定を置いて押し込み深さ計測値htから接触面積Acを推算していました)
<図3>圧子押し込み時を側面から見た表面変形の模式図

<図3>圧子押し込み時を側面から見た表面変形の模式図
(左:盛り上がり、右:沈み込み。サンプル事にそれぞれの度合いが異なるため、これまでは弾性仮定を置いて押し込み深さ計測値htから接触面積Acを推算していました)

<動画1>IPT社製品の圧子押し込み時の力学応答性(接触面積)イメージ(ウレタンゴムの場合)

<図4>従来製品の圧子押し込み時の力学応答性(接触面積)イメージ
<図4>従来製品の圧子押し込み時の力学応答性(接触面積)イメージ

シミュレーションへの応用

さらに、IPT社のテクノロジーのインパクトはリアルタイム計測にとどまりません。彼らが切り拓く未来を語る上でのキーワードとなるのは研究開発にコンピュータシミュレーションを活用する「Computer Aided Engineering(CAE)」です。CAEとは、製造現場での試行錯誤をシミュレーションに置き換えて、研究開発工程のスパンを短くする手法を指します。CAEをうまく活用すれば、実機を伴う試作・実験回数を減らし、時間的・金銭的なコストを削減することができるのです。<図5>

<図5>CAE活用による製品開発スキーム(イメージ)
<図5>CAE活用による製品開発スキーム(イメージ)

CAEを用いて研究開発を加速するには「シミュレーションの正確さを担保するための実験・検証」が必要不可欠ですし、材料の真の物性値が明らかになっている必要があります。これらのデータ取得には時間がかかったり、そもそも測定ができなかったりすることが運用上のボトルネックになりがちでした。従来測定できなかった真のデータが微小試験体を用いて迅速かつ高精度に測定できるIPT社の技術は、これらのものづくり業界を大きく変えるブレークスルーとなりうるものです。

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