簡単解説!合成樹脂の特性と起こりやすい不具合事例

はじめに

人類が銅や鉄を発見して以来、長年にわたり金属材料全盛の時代が続きました。
しかし約110年前、合成樹脂が発明されたことで、金属材料の一部が合成樹脂に取って代わられるようになりました。
金属から合成樹脂への転換の目的は、軽量化、生産性向上、コストダウンなどです。
現在ではさまざまな種類の合成樹脂が研究開発され、目的や用途に応じて使い分けられています。
ここでは、合成樹脂の種類と特性、プラスチックに関する代表的な不具合とその原因について解説します。

合成樹脂の種類と特性

では次に、合成樹脂の種類と、それぞれの特性について少し詳しく紹介しましょう。
他記事では、合成樹脂の基本的な種類と特性、選定基準について紹介していますので、そちらもご参考ください。

現在、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂では、熱可塑性樹脂の方が圧倒的に生産量が多く、今後も熱可塑性樹脂の生産量の方が増えていくと予想されます。
その理由の1つが生産性の高さです。特に熱可塑性樹脂を「射出成形」で加工する方法は、成形機と金型さえあれば、原材料を投入するだけで連続的に作れるものであるため、多くの場面で使用されています。
とはいえ、一度硬化すると再び流動することのない熱硬化性樹脂でなければ役割を果たせない場合も少なくなく、特に工業用製品において重要な役割を果たしています。
また、熱可塑性樹脂には、<図1>のように、高分子の鎖がランダムな状態になっている「非結晶性合成樹脂」と、長い鎖が一部規則正しい配列をしている「結晶性合成樹脂」があります。
結晶性合成樹脂は、透明性が出にくく残留ひずみが入りやすいこと、成形収縮率が大きく寸法精度が出にくいことといった短所があります。
その一方で、長所は、薬品耐性やガスバリア性に優れていること、結晶化度が高くなるとより高強度、高弾性の性質を持つといったことです。

熱可塑性樹脂の構造(イメージ) <図1>熱可塑性樹脂の構造(イメージ)

非結晶性合成樹脂は、透明性が高いこと、結晶化現象がないこと、成形後のひずみが少なく寸法精度が高いことなどの長所があります。
しかし、有機溶剤によって膨潤、溶解しやすいため、応力と薬品の共存によってクラックが発生する「ソルベントクラック現象(環境応力割れの一種)」(後述)を起こしやすいといった短所があります。

熱可塑性樹脂の用途は、主に耐熱温度により「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」に分けられます。
汎用プラスチックの代表例は、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)などで、PETボトルに使われるポリエチレンテレフタレート(PET)などもこれに含まれます。
一方、エンプラとは、主に耐熱性が必要な工業用部品に使われるプラスチックで、その主なものは、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変形ポリフェニレンエーテル(変形PPE)です。
このように、プラスチック成形品を作る際には、合成樹脂の長所と短所を十分に考慮した上で選定することが重要です。

作りたいものの用途や、使われる際の環境条件が異なる中で、数多くある合成樹脂の内から材料を選定することは難しいことが多いのではないでしょうか。そのようなときは、加工経験が豊富な専門家へ相談することや、複数の合成樹脂材料で実験してみることもいいかもしれません。

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プラスチック関連の代表的な不具合事例と発生のメカニズム

プラスチック成形品の不具合が発生するケースとしては、主に、「成形時」、「他の物質との接触時」、そして、「物理的な負荷」の3通りが想定できます<表1>。

<表1>プラスチックの主な不具合事例
No. 分類 不具合現象 重要キーワード
1 成形 インサート周囲のクラック 熱膨張率、内部応力、切削油、応力腐食割れ
2 締付け時のクラック 低分子量、強度不足、高締付け力
3 ファンガイドの保管時のクラック 予備乾燥不十分、加水分解
4 他物質との接触 ドレントラップボールのクラック PC、可塑剤、応力腐食割れ
5 ランナボス部のクラック ABS、食用油、応力腐食割れ
6 継ぎ手のクラック PVC、気密試験液、応力腐食割れ
7 物理的 ヒューズホルダの破損 クリープ
8 プリント板取付部クラック 疲労
9 吹出しグリルの変形 熱膨張、残留応力、熱変形温度

【成型時に起こりやすい不具合例】

一例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を射出成形する際に発生する加水分解や劣化があります<図2>。

射出成形機のメカニズム
<図2>射出成形機のメカニズム

PETはペレットの乾燥が十分でないと、射出成形時の温度(280度程度)で加水分解を起こし、成形品の強度が低下します。加水分解は150度以上の温度で起こりやすくなるため、ペレットの乾燥も150度以下、できれば120度で数時間十分に乾燥処理を行う必要があります。

【他の物質との接触時に起こりやすい不具合例】

代表例として環境応力割れがあり、中でもソルベントクラック現象はプラスチック関連の不具合で散見されます。
ソルベントクラック現象とは、成形品に大きな内部応力が存在する場合、薬品や油と接触するとこれらの薬品や油が成形品中に浸透することで、分子間の滑りがよくなって応力が急速に解放され、クラック(割れ)が発生するというものです。
結晶性合成樹脂よりも、非結晶性合成樹脂の方が発生しやすいことが分かっています。
<図3>のように、クレーズ(ひび)は、引っ張り方向に対して垂直に発生します。

環境応力割れのイメージ
<図3>環境応力割れのイメージ

ソルベントクラック現象を防止するには、内部応力や外部からの負荷を低減することなどが考えられます。
このようにプラスチックは、熱や紫外線、酸素に加え、化学構造が類似した有機溶剤や油に敏感に反応する場合があるので注意しましょう。

プラスチックは耐水性に優れていますが、熱可塑性樹脂であるナイロン(米国樹脂メーカーの商品名)などのポリアミド(PA)やポリイミド(PI)は吸湿性があるため、湿度による寸法の変化に注意が必要です。

【物理的な負荷により起こりやすい不具合例】

代表例として、クリープ破壊があります。クリープ破壊とは、成形品に対して長期間にわたり、変形や引っ張りなどの負荷がかかり続けることによって破壊が起こる現象です。
応力が一カ所に過度に集中しないような設計にすることが重要であり、パイプやねじ、耐圧容器などを設計する際に十分考慮する必要があります。

まとめ

このように合成樹脂にはさまざま種類があり、その種類によって特性が異なります。そのため、プラスチック成形品を作る際には、目的や用途に応じてより最適な合成樹脂の選定が不可欠です。また、プラスチックに関する代表的な不具合を把握しておくことで、事故の低減につながります。

他の記事では、もし予想と反して事故が発生してしまった場合の合成樹脂の解析手法や原因の検証方法や、開発者を悩ませる劣化のメカニズムについて説明しています。ぜひ、そちらも合わせて読んでてください。

また、先端的な測定や分析についての取り組みを紹介する記事もあります。ぜひそちらもご参考ください。

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