機械設計初心者の方へ 基本的な金属部品の加工工程の流れと実際に製品ができるまで

はじめに

開発試作でも製品製造でも機械を製作するとき、材料を加工し、所定の形にして機能を待たせる部品製作は必須の作業となります。加工され、各々単独でそれぞれ機能をもった部品を組み立て、全体としていろいろな作業のできる機械、たとえば航空機などの輸送機、産業機械、建設機械、工作ロボット、組立ロボットなどが製作されます。
金属加工には金属を所定の形にする機械加工、金属の機械的性質を変える熱処理加工、金属の表面の性質を変える表面処理があり、以下の記事で、それらの基本的特徴を解説しました。

本記事では、具体例を用いた金属部品の加工工程の流れや、機械の設計から出荷までの製作フローについて解説していきます。

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具体部品を例に金属部品の加工工程の流れを紹介!

早速、具体的な部品を例に実際の加工工程を紐解いてみましょう。
下に3種の部品を例に挙げ、部品の仕様と加工工程を示しています。<図1>

<図1>金属部品加工の工程例
<図1>金属部品加工の工程例

(1)歯車付シャフト

部品に求められる特性として耐摩耗性、加工精度、表面粗さが良いことがあげられます。ただし、図面にはこのような定性的な表現ではなく、耐摩耗性が必要なら、材料として鋼材を使用し、熱処理として「焼き入れ・焼き戻し」を実施する事、表面硬度の数値、表面粗さの数値を書き込み指示します。また、シャフト径、歯車の寸法については、必要な寸法公差を書き込みます。
工程設定は図面を読み込み、どのような加工を実施すれば、図面に描かれた部品が作れるかを考えながら、加工の手順を決めます。これが加工工程となります。

(2)ネジ付きシャフト

この部品の場合、耐摩耗性は不要なので、硬度を高める焼き入れ、焼き戻しは実施しません。大量生産品のため、コストを抑える必要がありますので、細い材料から頭部部分は塑性加工(圧造)で太くし、材料の節約を図ります。さらに細い段差部分とネジ部も塑性加工(切削)で製作し、加工時間を短縮しさらにコストを下げます。耐蝕性が必要ですので、最後にめっき工程を加えます。

(3)真鍮板製歯車

この部品は機構上軽荷重であり大量生産品ですので、真鍮板をプレスで打ち抜いて製作します。 真鍮は打ち抜きやすい材料で、また錆びにくい材料なので「めっき」工程が不要です。打ち抜き後、エッジ部にバリがありますので、バレル仕上げでバリを除去します。

このように、求める金属部品によって必要な加工や工程数は異なります。加工工程の設計は図面に描かれた仕様を満足させながら、保有するリソースを活用していかに安く、大量の部品を生み出していくかを考えることが重要です。

以上、まずは金属部品の加工工程について簡単に解説しました。それでは、金属部品の加工工程の検討はどの段階で行えばよいのでしょうか。次は、機械設計から最終製品に至るまで、どのような検討がなされているのか紹介します。

機械設計から最終製品ができるまでの一般的な7つの製作フロー

どのような検討を踏まえ、私たちの身の回りにある製品ができているのか、その一般的な流れを解説します。

<表1>は機械設計から製品ができるまでの主な工程を示します。以下、機械設計、図面作成から加工までのフロ-に対し、簡単にポイントを解説します。

<表1>機械の製作フロー
番号 作業工程 作業内容概略
1 機械設計 ①機械性能仕様決定、コスト決定、生産量計画、
②設計情報収集(研究成果、目標性能達成に必要な技術情報等)
③設計作業
④1stデザインレビュー
2 部品製作図面
機械組立図作成
①部品製作図面:設計に基づき部品材質、形状、加工法などを考慮し、必要な寸法精度、仕上げ面粗さ、熱処理、表面処理などの指示を描き込む
②機械組立図:部品の組み立て順、接合方法の指示
③2ndデザインレビュー
3 加工工程設定 ①部品製作図に基づき加工工程、使用機械を設定する
②加工時間の設定
③治工具、型準備(鋳物型、プレス型)
4 材料調達 ①部品図に基づき材料を調達する 長納期品は早期に手配
5 部品製作 ①機械加工、熱処理、表面処理
6 機械組立 ①機械組立図に基づき部品をねじなどで組み立てる
②作業指導、組立ロボット活用
7 機械検査
出荷
①性能検査:仕様通りの性能発揮を確認
②出荷

1 機械設計

開発計画、あるいは機械受注に基づき機械の性能仕様を決定します。同時に機械のコスト計画や生産量計画も設定します。これらの目標を達成させるために、事前に収集した研究成果を含む設計情報の整理を実施し、設計作業に入ります。設計作業には3次元CADの利用も有効です。設計途中あるいは終了時に、各協力部署を招集し1回目のデザインレビューを実施します。このとき加工方法の議論も重要となります。

2 図面作成

部品図には設計に基づいた部品材質、形状を決定し描き込み、さらに加工法などを考慮して、必要な寸法精度、仕上げ面粗さ、熱処理、表面処理などの指示を書き込みます。生産技術・製造技術部署や加工事業者など、専門的知見や経験が豊富な方々に相談し、自分達の持っている技術的・設備的なリソースの強みを有効に使うことも大切です。図面完成時に2回目のデザインレビューを開きます。(デザインレビューの時期は目安)

3 加工工程設定

部品製作図に基づき加工工程、使用機械を決め工程設定書を作成します。<図1>に示すような大まかな加工工程でなく、部品の各部分をどの加工機で、どのような条件で加工するかを詳細に設定します。この作業は製造コストも含めた部品品質の程度を大きく左右する重要な工程です。外注するほうが有利な場合は外注します。また部品製作にかかる時間から1日当たりの生産数を算出したり、部品コストを算出します。
治工具の準備や鋳物型・プレス型の準備を実施します。これらは新たに製作する場合、数か月もかかる長納期品になるケースもありますので注意が必要です。

4 材料調達

部品の材料を購入します。鋳物や重量の大きい材料、特殊金属は納期に注意する必要があります。

5 部品製作

工程設定書に基づいて部品の加工を実施します。この作業は部品品質を決定する重要な工程です。工作設備のメンテナンス、ワークマンシップの醸成、技術教育等の活動が重要です。
<図1>の3の小物歯車はプレスの打ち抜きで製作しますので、パンチ、ダイス等金型が必要です。金型は生産が決まった時点で上流の工程設定部署と協議し、事前に製作しておきます。金型は製作するのに時間がかかりますので、注意が必要です。
図面に指定された寸法公差や仕上げ面粗さが、指定された工作機械、工作方法で満足できるかの工程能力チェックも必要です。特に大量生産品では、本格生産前の工程能力チェックが必須となります。

6 機械組立て

工程設定書に基づいて部品を組立て機械を完成させる工程です。ねじ締め、接着などの接合技術を用い、人手あるいはロボットによって組立てが進行します。

7 機械検査・出荷

完成した機械が仕様通りの性能を発揮できることを確認し出荷します。
ここまでの作業は順にこなしていくのではなく、各部署の情報共有によりコンカレントエンジニアリングと呼ばれる作業を並列に進めていく工夫がなされています。情報共有により手戻りが少なく、並行して仕事が進むので、開発期間を短縮することができます。



以上、一般的な製品ができるまでの流れを解説しました。
今回解説した工程の中では数々の試作が行われ、最終製品に向けて検討が進められます。具体的に、試作をどのように進めればよいかについては、他の記事で解説していますので、そちらも合わせて参考ください。

加工工程の検討には、専門家の知見や加工の経験が必要となります。可能ならば、社内に限らず、社外の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

製品機械設計上、強度、耐摩耗性、耐蝕性、硬度、耐候性等が必要な部品は種々の金属材料から、材料を決定し、図面で指示します。金属部品は機械の重要部分に使用されますので、機械の信頼性を確保するうえで非常に重要です。加工不良によるトラブルは製品の信頼性を大きく損ないビジネスへの影響も大きいので、加工部隊に万全の体制が必要です。

また、コンカレントエンジニアリングとともに、設計から加工生産・出荷までの工程にて、真摯にデザインレビューを実施し製品信頼性、コスト、不良ポテンシャルの事前チェックを実施することが重要です。デザインレビューは各部署の優秀なエンジニアの育成にも寄与していると考えられています。

まとめ

ここでは、金属部品の加工工程の具体例と、製品ができるまでの一般的な流れを簡単に解説しました。最近では、社会インフラの分野でもサステイナブルな社会を目指した製品開発が盛んで、材料を少なく、安く、効率の良い機械の開発を担う機械加工はさらに進歩していくでしょう。
金属加工の基本を理解し、より良い加工方法の選択、さらに新しい加工方法や新製品の実現のお役に立つことができれば幸いです。

他の記事では、金属材料に関する種類、特徴、主な用途などを紹介しています。そちらも合わせてご参考下さい。

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