「JASIS関西 2019」現地レポート―分析機器、科学機器の注目企業を紹介

2012年から関東圏(幕張メッセ)で開催されている分析機器、科学機器メーカーが一堂に会する最先端科学機器・分析システムとソリューションのためのアジア最大級の展示会Japan Analytical & Scientific Instruments Show (JASIS)。そのJASISが2019年2月5〜7日に「JASIS関西」として初めて関西圏(グランキューブ大阪)で開催されました(主催:一般社団法人日本分析機器工業会、一般社団法人日本科学機器協会、後援:経済産業省、文部科学省、環境省、農林水産省、公益社団法人日本分析化学会、ほか)。今回そのなかで小さくともキラリと光る企業と製品をいくつかご紹介いたします。

関西圏だけでなく九州からも来場者が!

関西での開催ということでやはり京阪といった関西圏の企業、ディストリビューターはブースも大きく説明員の数も多く目立ちましたが、関東の分析・計測機器関係の企業も出展していました。三菱化成や三菱化学の企業内部門時代から高機能化学分野の中堅企業として実力を発揮している三菱ケミカルアナリテックもその一つ。

西井俊文営業推進部部長代理によれば
「JASISには長く出展させていただいてきましたが、今回は関西圏で初の展示会ということでこちらのお客さまの動向を見極める意味も含めて出展しました。

実は最初はお客さまが果たしておいでいただけるのか少し不安だったのですが、意外にも関西圏のみならず遠く九州からもおいでくださるなどと盛況でホッとしました。やはり、千葉の幕張で開催されるJASISだと宿泊出張になってしまい遠いのでハードルが高いというお客さまが多いようです。

技術説明会も満員札止めで幕張よりも入りが多い印象で、こちらのお客さまは情報に飢えていたのかなという実感があります」と言います。

<写真>株式会社三菱ケミカルアナリテック営業推進部部長代理 西井俊文氏
<写真>株式会社三菱ケミカルアナリテック営業推進部部長代理 西井俊文氏

化学分野や樹脂・ゴム、製薬・化粧品から環境、電子材料、エネルギーまで幅の広い製品群を取扱っている三菱ケミカルアナリテックですが、分析・計測器関係では特に水分計、蛍光X線分析装置などが評価されています。

特に水分を嫌うリチウム電池の素材評価で水分計は必須の計測機器です。
「今回制御部と計測部を分け、データを無線で飛ばして最大4チャンネルで複数のお客さまが共有できる機能を備えた新製品を出典しました。来場されているお客さまをみると、関西圏はやはり電池産業が多く、車載電池の分野でもかなりニーズがある印象があります」と西井部長代理。

水分計は、分野にもよりますが分析・計測関係の技術者・研究者にとっては必須の計測器でしょう。ただ、最近は機器の原理を知らずに扱える簡便性の高い製品も増えたせいで、水分計に限らず、調子が悪くなったりメンテナンスが必要になったりしてもお客さまが自分でできなくなっているようです。

そのため、三菱ケミカルアナリテックでは、10年ほど前から原理などの講習セミナーを各地で開いていると言います。西井部長代理によると「水分計などはこの50年間ずっと同じ原理で作られています。ただ、タッチパネルになっているなどと操作が簡単になっていることもあり、原理を知らずに扱うことができるようになって、お客さまからも原理やメンテナンスについて知りたいという要望が高くなっています」とのこと。

<写真1>水分測定装置 CA-310電量滴定法
<写真1>水分測定装置 CA-310電量滴定法
水分測定装置 CA-310電量滴定法:最新型カールフィッシャー法の水分計で、試料中の微量水分の測定が精度良くできる。 電量滴定法・容量滴定法に気化法などのさまざまなオプションを用意し、目的に応じた組み合わせで使用可能とのことです。

民生品に近い分野では、蛍光X線分析層装置を購入するお客さまに貴金属類の小売業関係者が多くなってきているようです。貴金属類を買い取る際に商品の真贋などを評価するため、非破壊測定できる蛍光X線分析層装置を1店舗に1台というように導入するわけです。これも時代のニーズと言えそうです。

<写真2>蛍光X線分析装置XR5500
<写真2>蛍光X線分析装置XR5500
蛍光X線分析装置XR5500:簡単な操作で自動分析できるRoHS/ELV規制のスクリーニング分析に最適な小型・軽量モデル。レポート作成機能も標準搭載し、微小部分析(φ1mm~)とFP法の組み合わせにより異物分析に使用できます。

分析・計測器の多くはすでに技術的に飽和し、改良の余地はあまり多くなく、また簡単に壊れるものでもないため、常に一定の買い換え需要があるわけでもありません。そのため、お客さまのほうから既製品の改造のアイディアをいただき、それに対応した製品を提供することも多くなっているようです。

西井部長代理によれば「そう頻繁に買い換える装置ではないため購入条件として、お客さまが使い慣れた他社製のガラス容器やサンプル用カラムを弊社の機器で使えるようにアタッチメントなどを改造してほしいといったリクエストもあります。また、自動化などとともに装置の小型化にも取り組み、新たなニーズを掘り起こすようなこともしています」とのことです。

例えば、酸やアルカリなどの試薬を使う前処理用の蒸留装置を、使い回しの良いように1/10ほどに小型化し、少量ロットでも蒸留できるようにした製品です。廃棄物処理や排水規制が濃度規制から総量規制になって厳しくなり、環境基準の点からもエネルギー・コストなどの点からも少量ロットにニーズがあるのだと言います。

<写真3>小型蒸留装置 DS5100
<写真3>小型蒸留装置 DS5100
小型蒸留装置 DS5100:JIS法の手順で、使用する試薬類の全体比を変えることで分析後に排出される廃液を減らし、環境負荷を低減できる蒸留装置。 蒸留系統をコンパクト化することで、従来の大型蒸留装置に比べ、全体の廃液量や電気使用量を削減できます。

「香り・におい」を可視化するにおいセンサー

会場には、多種多様な分析・計測器を取り扱うディストリビューターも多く、オープンソリューションフォーラムのテーマである「香りとにおい」や「次世代電池」に関するディストリビューターの出展もありました。先端技術系の専門商社である入江もその一つ。関東からの出展で、今回は香りを可視化し、官能・感応評価の分析・計測器するにおい識別装置を展示していました。

入江の田中孝戦略事業本部リーダーは「今回フォーラムのテーマになったようににおいが注目され、官能・感応を数値化したいというニーズが増えています。これまでこうした官能・感応の評価では、個々人の体調や大気の湿度などによって、データがばらばらになり、きちんと測定することが難しかったのですが、QCM(水晶振動子)というセンサーを使うことで、ある程度きちんと測定・評価できるようになりました。この日本製の製品で使われるQCM基板の大きさはSDカードサイズで、小型化と低コストを実現しています」と自社取り扱い製品をご紹介くださいました。

<写真>入江株式会社戦略事業本部リーダー 田中孝氏
<写真>入江株式会社戦略事業本部リーダー 田中孝氏

このメーカーのにおいセンサーは大小2種類があり、小型のほうは7種類のにおいを検知できる吸着シートが5枚セットで35種類のにおいを分析評価できるようになっています。においの分子は多種多様なものの組み合わせでもあり、そのすべてを検知するセンサーを作れば高コスト以前に非現実的でもあります。この製品ではにおいを35種類に集約することで、においの傾向を評価できると言います。

田中リーダーによれば「我々が感じやすい代表的なにおいについて、35種類の吸着シートはQCMの重み、水晶振動数の変動で違いをみています。例えば、レモンの香りでも35種類のうちの1種類で反応するのではなく、35種類の重みのパターンという相対的な比較になっているのです。

この装置を導入していただくのは飲食関係のお客さまが多いのですが、お客さまのほうでもにおいのライブラリをお持ちなので、35種類の重みパターンがライブラリのどれに対応するのかで個々のお客さまが分析評価できるようになっています」とのことです。

<写真4>小型匂いイメージングセンサー
<写真4>小型匂いイメージングセンサー
小型匂いイメージングセンサー:アロマビットという日本のベンチャーが開発したにおいセンサーで、香り・においをセンサーで測定し、可視化・分析することができます。においセンサーモジュールおよびQCM、におい吸着膜を搭載しているセンサーチップ計5枚のセット。

また入江では今回、においセンサー以外に食感(テクスチャー)を数値化する装置も出展しています。これは粘土計の製造で有名な英国の企業が開発したもので、多種多様なアタッチメントにより拡張性が高く、分析対象や業種のニーズに対応できるそうです。

「食品に限らず、化粧品、チューブの固さ、曲げ応力をみたりする用途に使えます。また、介護などで咀嚼力が弱っている高齢者に対し、食品の柔らかさなどを剪断力で分析評価し、歯ごたえなどをみたりすることができます」(田中リーダー)

<写真5>テクスチャーアナライザーCT3
<写真5>テクスチャーアナライザーCT3
テクスチャーアナライザーCT3:粘度計で全世界トップシェアを誇る英国ブルックフィールド社製。食品開発における食品の美味しさや・安全性(咀嚼、嚥下性等の食べやすさ)や、品質管理(硬さ変化、強度試験)、官能評価結果への補足資料(定量性・客観性)を得る事ができるそうです。拡張性の高い豊富なアタッチメントを取り揃え、医薬品・化粧品のテクスチャー測定にも使用できる圧縮・引張試験機となっています。

電池産業が強い地元関西からも出展

オープンソリューションフォーラムでは次世代電池のセミナーも開催されていたこともあり、電池製造の技術者・研究者も多く来場していたようです。JASIS関西の地元、大阪のディストリビューターである三ツワフロンテックは、塗工電極の集電箔との密着力の定量化にも使われるSAICAS(Surface And Interfacial Cutting Analysis System:被着体の剥離強度とせん断強度を測定する装置)、米国NEI社の電池材料、次世代電池開発の品質管理に使える充放電試験データ管理ソフトなどを出展していました。

塚本取締役販売促進部長によれば「長寿命で危険性が低い全固体電池などの次世代電池の開発競争が激しくなっていることもあり、電池の分野にはかなり伸びしろがあると考えています。弊社の電池部門は、リチウムメタルからリチウムイオンになった頃からやってきたので長いですよ。二次電池の材料などの取扱いは10年以上やっています。関西圏にはかつて電池産業が林立していた時代もありましたが、今でもマーケットはまだまだ大きいと思っています」と言います。

<写真>株式会社三ツワフロンテック取締役販売促進部長 塚本章氏
<写真>株式会社三ツワフロンテック取締役販売促進部長 塚本章氏

JASIS関西は分析・計測器の展示会ですが、食品業界と電池業界のように違う業種業態でも、扱う材料が共通していたり分析・計測する対象が同じだったりします。ですから、同じ水分計をまったく別の業界の研究者・技術者が使っていることはよくあります。

また、最終的な製品に至る過程でも原料の形態や性質が変化することもあり、例えばリチウムイオン電池では原料のリチウムなど(正極材)と黒鉛など(負極材)ではその性質も異なり、電極にする過程でも品質評価の方法が変わってくるわけです。

そのため、携わる原料、工程、研究対象によって技術者・研究者の目的も違うことになります。三ツワフロンテックが今回のJASIS関西に電池関係の展示品を出展した理由の一つも、電池業界以外にはどんな業界のお客さまが来るのかを探るためだったと言います。

「電池の使われる原料は、粉もあれば液体もあります。分析・計測器にしても電池だけで使える装置というわけではないのです。ですから、今回は新規顧客の開拓の可能性、違う分野でマーケティングできないか、それらを探るために出した意味合いも大きいです」(塚本取締役販売促進部長)

<写真6>Lab RAM II
<写真6>Lab RAM II
Lab RAM II:米Resodyn Acoustic Mixers社の低周波共振音響ミキサー。粉体同士や粉体と液体などをプロペラやインペラーを用いず音響振動により混合するミキシング装置。それによって時短・高効率とより均一な混合が可能になりました。
<写真7>IS-POLISHER
<写真7>IS-POLISHER
IS-POLISHER:池上精機の精密研磨装置で小型・軽量が特徴。包埋が不要なので研磨作業を短縮させることができ、低荷重研磨機構により、試料へのダメージを軽減することができます。リチウム電池の研磨にも使うことができます。

まとめ

今回の「JASIS関西」は大手企業も数多く出展していましたが、『みんなの試作広場』が注目したのは、そのなかで小さくともキラリと光る企業と製品。この記事ではそれら3社をご紹介しました。このような技術や製品に出合うことができるのもJASISの醍醐味。関西で開催は私たちにより多くの機会を与えてくれる場となっていました。