【パリ・モーターショー】現地レポート (2/2)

ドイツ車もEVへのシフトが鮮明に

ドイツ車もEVへのシフトが鮮明に

ドイツ車メーカーも、こぞって電動モビリティを展示。2年前のパリ・サロンで電動車専用のブランド「EQ」を発表して話題をさらったメルセデス・ベンツは、今回はEQブランド初の市販車となる「EQC」を発表しました。

フロア下にパワートレインや電池を収めるプラットフォームを採用し、全長×全幅×全高=4,761×1,884×1,624mmのボディ・サイズのわりに、広々とした室内空間を確保しています。前後に2基の電気モーターを搭載して、合計で最高出力300kW/最大トルク765Nmを発揮します。80kWhのリチウムイオン電池を搭載し、450km(NEDCモード)の巡航距離を確保。バッテリの生産はドレスデン近郊のケムニッツで行われて、最終組み立て工程はインダストリ4.0を導入したブレーメン工場内のCクラスの生産ラインで混流生産されます。

エンジン車では、パワートレインを組み込む工程を“マリッジ”と呼びますが、EQCでは電動パワートレインを組み込むため、“ダブルマリッジ”と呼ばれる電動車独自の工程を採用しています。リアアクスルに電気モーターとパワーエレクトロニクスを組み込む“マリッジ”工程のあと、第二の“マリッジ”工程となるバッテリの組み込みが行われます。

専用インターフェイス「MBUX」を搭載しており、車輌情報の表示、ナビや運転モードの設定も音声コマンドに対応しています。同社では、旗艦モデルである「Sクラス」と同等のEVサルーン「EQ S」を含む10機種のEVを2022年までに発表する予定です。

BMWは、同社の大黒柱である「3シリーズ セダン」のワールド・プレミアと「X5」をあわせて、2021年までのEV開発スケジュールを明らかにしました。ハラルド・クルーガー会長が登壇し、2019年にMINI「エレクトリック」、2020年にSUVのBMW「iX3」、2021年には自動運転機能を搭載する可能性が高い「BMW iNEXT」とBMW「i4」と、電動モビリティのラインナップを拡充します。

<写真6>「3シリーズ」は、BMWの次世代表示および操作システムとなる「BMWオペレーティングシステム7.0」を搭載。
<写真6>「3シリーズ」は、BMWの次世代表示および操作システムとなる「BMWオペレーティングシステム7.0」を搭載。

直感的に操作できることを重視して、わかりやすい配置や構造にこだわって設計されており、さらにカスタマイズできる表示とすることで、適切な情報をドライバーに伝えられるそう。メーターパネルには、ナビが組み込まれており、センターコンソール上のコントロールディスプレイには、カスタマイズされた情報が表示されます。iDriveコントローラー、タッチ式、音声入力、ジェスチャーといった多様な操作方法から選ぶことができます。

<写真7>BMW ヴァイス・プレジデントDevelopment Electrified Drivetrains ステファン・ジュラシェク氏
<写真7>BMW ヴァイス・プレジデントDevelopment Electrified Drivetrains ステファン・ジュラシェク氏

「2008年からiシリーズのプロジェクトをスタートしてきました。その後にPHVのラインナップも広げ、さらに今後も電動モビリティの充実をはかり、販売も強化していきます。BMWでは、これまでエンジン車の走りの魅力を追求してきたように、電動モビリティならではの“駆け抜ける歓び”を追求していきます」

<写真8>BMW「X5」のHead of Projectを勤めるヨハン・キストラー氏(左)とProduct Managerを勤めるマルコ・モエラー氏。
<写真8>BMW「X5」のHead of Projectを勤めるヨハン・キストラー氏(左)とProduct Managerを勤めるマルコ・モエラー氏。

「コネクティビティ、ドライバー・アシスタントシステムなどの最新技術をアップデートし、内外装ともに高級感を重視しています。来年には、PHVの発売も予定しています。ミッドサイズのスポーティなSUVの元祖ゆえに、デザインでも、走行性能でも、“BMWらしさ”を重視しています」

アイシンの新トランスミッションをシトロエンが採用

日本の部品メーカー大手であるアイシンは、2018年1月にグループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏がプレゼンテーションを行いました。最大の話題は、「DS7クロスバック」のプラグインハイブリッド仕様である「E-TSENSE」に採用された1モーター式PHV用トランスミッションのワールド・プレミアです。

アイシンの1モーターハイブリッドトランスミッションは、主力のATをベースとし、既存ATのトルクコンバーターをモーターとエンジン切り離しクラッチに置き換えたシンプルな構造。この切り離しクラッチによりエンジンとモーターの切り離しが可能になり、このトランスミッションを搭載することで、EV走行とハイブリッド走行を実現でき、大幅な燃費向上が見込まれるとのことです。

この1モーターハイブリッドトランスミッションは、既存のATと同サイズのコンパクトさで、8速ATのダイレクトなシフトフィーリングによる滑らかで上質な走りや燃費向上に貢献し、「DS7」の走りと魅力に貢献していくと意気込みを語っていました。

アイシンは、従来からの強みである2モーターのストロングハイブリッドに加え、1モーターハイブリッドやeAxle(eアクスル)の開発を独自に行なってきましたが、従来の8ATと同じサイズに収まり、4WDの需要にも対応する1モーターハイブリッドを新たに開発。電動化の時代に向けた開発を進めることで、2018年の9.83万基から2019年には10万5000基まで生産量を伸ばし、2010年には13万2000基の生産を目指すとのこと。

eAxleシリーズについては、ユーザーのニーズに合わせて、電気モーター、ギアボックス、パワーコントロールユニット(PCU)を組み合わせた状態の“電動モジュール”として提供します。

具体的には、50-200kWの容量に対応する電気モーター、同軸インライン/水平軸オフセットの減速機、一体型/別対型のPCUといったモジュールを組み合わせることにより、最適なモジュールを提供することで、乗用車以外にも商用車の電動化にも迅速に対応していくそうです。

<写真9>2018年1月にアイシン・グループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏。
<写真9>2018年1月にアイシン・グループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏。

大手部品メーカー「ヴァレオ」搭載車に試乗!

今年は、モーターショーの会場を飛び出して、パリのど真ん中に位置するコンコルド広場でエコカーに試乗できるイベントも開催。筆者はフランスの大手部品メーカー「ヴァレオ」が持ち込んだ2台の電動モビリティを試乗しました。同社は、パリ市街を外周する高速道路を24時間ノンストップで自動運転で走行するなど、近年、ドイツの大手部品メーカーと肩を並べる次世代技術をもっています。

最初に乗り込んだのは、48Vシステムを積んだ2人乗りの小型EV。渋滞した市街地を走るのにちょうどいいサイズで、始動時のトルクが最大となる電気モーターのメリットを活かして、思いのほか、キビキビと走ります。同社が独自開発した48V電気モーターを搭載し、最高速度は100km/hに。1回の充電で走れる距離は150kmを確保しています。

<写真10>ヴァレオ2人乗りEVでは、自社製48Vシステムに自社製モーターを組み合わせることで、最高速は100km/hに達し、1回の充電で150kmの走行が可能です。
<写真10>ヴァレオ2人乗りEVでは、自社製48Vシステムに自社製モーターを組み合わせることで、最高速は100km/hに達し、1回の充電で150kmの走行が可能です。

次に乗り込んだのは、市販の「ゴルフ」に48Vシステムを組み込んだPHV。パリ市街はアンダーパスの坂やストップ&ゴーが多く、電気モーターの力強いトルクが頼もしい仕上がりで、家庭用電源でも充電できる使いやすい仕様です。

<写真11>48Vシステムを積んだテストカーの開発を担当したルイス・アレン氏。
<写真11>48Vシステムを積んだテストカーの開発を担当したルイス・アレン氏。

「48V化するメリットの一つは、充電時間の短縮。欧州で一般的な家庭用の200V電源を使えば、4〜5時間でフル充電が可能です。40kWhのバッテリと15kWの電気モーターを積んでおり、約60kmの航続距離を確保。70km/hまではEV走行ができます」

<写真12>ヴァレオのR&D部門を率いるジャン-フランソワ・タラビア氏。
<写真12>ヴァレオのR&D部門を率いるジャン-フランソワ・タラビア氏。

「電動化、自動運転など、次世代技術の開発を推進します。自動運転の機能を搭載したデモカー『Drive4U』では、より人間らしい運転を目指して、高速道路での走行や信号でのストップ&スタートはもちろん、交差点やロータリーのように高度な判断が必要な場所でも、工事中や表示に不備のある道路でも走行ができます」

その他、注目の自動車をご紹介!

ほかにも注目の新型車や目を引いたものを軽くご紹介します。

<写真13>「モンツァSP1」
<写真13>「モンツァSP1」

フェラーリの限定車「ICONA」シリーズのその第一弾となる「モンツァSP1」/「モンツァSP2」が発表されました。フェラーリ「812スーパーファスト」と同じ6.5リッターV12エンジンに10psのスープアップを施し、“バルケッタ”と呼ばれる簡易的なオープンボディに搭載します。<写真13>の「SP1」はシングルシーターで、「SP2」は2人乗り。

<写真14>ブガティ「シロン」LEGO版
<写真15>ブガティ「シロン」LEGO版

フランスが誇るスーパー・スポーツカー、ブガッティのなかでも、420km/hもの最高速を誇る「シロン」のレゴバージョンが登場。すべてレゴで組み立てられています。100万個以上のブロックが使われ、レゴ用モーターによって、20km/hという低速ながら自走できます。タイヤとシートベルトとブレーキ以外は、すべてレゴで組み立てられており、リアスポイラーやスピードメーターも可動するというから驚きです。

おわりに

冒頭で触れた通り、フランスには「移動の自由」という考え方が根付いています。自動車の発明によって、人々が自由な移動を手にしたことは紛れもない事実。これは、モビリティを消費する“MaaS(=Mobility as a Service)”といった次世代の移動を考えるにあたっても、重要な概念です。
パリ・サロンでは、単に移動の効率を追求するだけではなく、移動の快適さや楽しさ、ときにはラグジュアリーな移動の空間まで、彩りにあふれる“移動の未来”を垣間見せてくれるモーターショーでした。

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文/川端由美




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