EV、PHV…最新モデルが集結!ブガティ「シロン」LEGO版も!?パリ・モーターショー報告

1898年の初開催から今年で120周年を迎えるパリ・モーターショー、通称「パリ・サロン」。世界で最も古い自動車ショーである同時に、今年はモビリティやテクノロジーといった未来を見据えたショーへと進化しました。

その内幕を紹介するにあたって欠かせないのが、フランスでは頻繁に語られる「移動の自由」という概念です。誰でも、いつでも、どこにでも行ける自由であり、自動車の発明によって、格段に移動が自由になったといえます。

そもそも18世紀に自動車を発明したのはフランス人。世界初の自動車は、内燃機関ではなく、蒸気による外燃機関であり、陸軍の大尉のニコラ=ジョセフ・キュニョーが大砲を運ぶために発案したものです。世界初の自動車レースを開催したのも、世界初のナンバープレートを導入したのも、フランスです。

そんな風に、自動車の初期の歴史を繙くと、時を同じくして、19世紀後半に世界初のモーターショーがパリで開催されたのも頷けます。

会場となったポルト・ド・ヴェルサイユは、パリの南、15区に位置します。エントランスをくぐって正面の1号館には、自国フランスの自動車メーカーや大手部品メーカーが並びます。今年の主役はなんといっても、電動モビリティです。
元々、フランスは、原子力発電の割合が85%と高く、国を挙げて電動モビリティの普及を推進しています。加えて、2040年までにガソリン車もディーゼル車も販売を禁止すると宣言しており、パリ市内ではその適応が前倒しになる見込みです。

古き良きエレガンスと先進技術を融合するPSAグループ

<写真1>プジョー「e-Legend」
<写真1>プジョー「e-Legend」

49インチスクリーンに加えて、ドアに29インチ、サンシェードに12インチのスクリーンが搭載されており、ロータリーセレクターと6インチタッチスクリーンを使って車両の操作系統を操作できます。

プジョー、シトロエン、DSという3つのブランドを擁するPSAグループのブースには、未来を感じさせるコンセプトカーがズラリと並んでいます。プジョーからは、“未来のドライビングプレジャー”を提供する「e-Legendコンセプト」が登場。自動運転、電動化、コネクテッドといった次世代技術をすべて盛り込まれています。

一方で、エクステリア・デザインは、古き良きプジョーを感じさせるもの。過去の名車である「504クーペ」を彷彿とさせるモダーン・クラシックなデザインを纏い、インテリアでもウッドやベルベットといったクラシックな素材をふんだんに奢っています。同時に、49インチ・デジタルスクリーンやオーディオシステムによって囲まれたコックピットからは、自動運転モードでは、大型スクリーンでデジタルコンテンツを楽しめるなど、未来感を感じます。

2015年にシトロエンのサブブランドから、独立した「DS」も、注目の電動モビリティを発表しました。日本上陸を果たしたフラグシップSUV「DS7クロスバック」のPHV版と、今回初登場の「DS3クロスバック」のEV版「E-TENSE」です。切れ長のフロントランプやポップアップ式ドアハンドルで近未来感を演出すると共に、インテリアの質感の高さにも心を砕いた、まるで高級ブランドのバックのようなステッチを施されたドアトリムなど、DSブランドらしい都会的なラグジュアリーを演出しています。

<写真2>DSオートモービルのシニア・ヴァイス・プレジデントを務めるエリック・アポド氏
<写真2>DSオートモービルのシニア・ヴァイス・プレジデントを務めるエリック・アポド氏。

「SUVの旗艦モデル『DS7クロスバック』を発表し、DSブランドの位置づけを明確にしたことに加え、今回、小型の『DS3クロスバック』を発表するにあたって、プレミアムカーに相応しい高い質感の内外装にしました。コンパクトなサイズでもラグジュアリーカーとしての地位を守っています。2019年半ば市販が予定されている『DS3クロスバックE-TENSE』のコンセプトは特に、女性ユーザーからの好評。小さくでもラグジュアリーという、まるでジュエリーのようなモデルに仕上げました」

<写真3>DS「DS3クロスバックE-TENSE」
<写真3>DS「DS3クロスバックE-TENSE」

新世代のプラットフォーム「CMP」に100kW/260Nmの出力を生む電気モーターを搭載し、0−100km/h加速は8.7秒!50kWhもの大容量リチウムイオン電池を積んでおり、1回の充電で走れる距離は最大430kmを誇ります。

ルノーのロボカー3部作が完結

<写真4>ルノー「EZ-PRO」
<写真4>ルノー「EZ-PRO」

商用車に強みを持つルノーらしいコンセプトカー「EZ-PRO」は、パリの直前に開催されたハノーバーショーでワールド・プレミアされました。自動運転の機能を持つ商用EVで、物流分野でのラストワンマイルに加えて、シェアモビリティにも対応できます。配達時間と場所を指定して、コンシェルジュによる受け取りに加えて、スマホでのワンタイムキーを使えば、「EZ-PRO」自体がロッカーとなって荷物を受け取る指定もできます。

日産、三菱とアライアンスを組むルノーは、AI、自動運転、電動化といった新技術を満艦飾のコンセプトカーを発表。今回、パリ・サロンの目玉となった「EZ-Ultimo」は、2017年9月のフランクフルト・ショーで「Symbioz」、2018年3月のジュネーブ・ショーで「EZ-GOコンセプト」に続く、ロボカー三部作の完結編です。自動運転の機能を積んだ超高級リムジンであり、パリのような大都市を訪れる人のためにプレミアムな体験やプライベートな移動空間を提供します。

見るからに“未来のノリモノ”といった印象のスタイリングを持ち、地を這うようなスポーティなデザインが特徴的。大理石や木材といった高級感のある素材を採用するなど、軽量化よりも、高級感を重視した設計です。

全長×全幅×全高=5,700×2,200×1,640mm、ホイールベースは3,880mmのボディ・サイズは、十分にスペーシーですが、都市部での取り回しを考えて、4輪操舵を採用することにより、最小回転半径は5.8mに収められています。また、アクティブサスペンションの採用により、ラグジュアリーカーならではの乗り心地の良さを確保すると同時に、車高の調整もできます。レベル4以上の自動運転の機能を備えており、AIの採用によって、より自然な運転ができます。

エレガントなドレスを身にまとった女性が乗り降りしやすいように配慮されており、ドアがスライドするとともに、ガラス張りのルーフも跳ね上がります。室内は、最大3人まで向かい合わせに座ってくつろげるシート配置。ラグジュアリーな空間でリラックスしながらパリを観光する贅沢な移動を提供します。

<写真5>ルノー「EZ-ULTIMO」
<写真5>ルノー「EZ-ULTIMO」

専用アプリで1日、1時間といった単位でオンデマンド利用ができ、高級ホテルや航空会社の送迎用に使わることを想定しています。

ドイツ車もEVへのシフトが鮮明に

ドイツ車メーカーも、こぞって電動モビリティを展示。2年前のパリ・サロンで電動車専用のブランド「EQ」を発表して話題をさらったメルセデス・ベンツは、今回はEQブランド初の市販車となる「EQC」を発表しました。

フロア下にパワートレインや電池を収めるプラットフォームを採用し、全長×全幅×全高=4,761×1,884×1,624mmのボディ・サイズのわりに、広々とした室内空間を確保しています。前後に2基の電気モーターを搭載して、合計で最高出力300kW/最大トルク765Nmを発揮します。80kWhのリチウムイオン電池を搭載し、450km(NEDCモード)の巡航距離を確保。バッテリの生産はドレスデン近郊のケムニッツで行われて、最終組み立て工程はインダストリ4.0を導入したブレーメン工場内のCクラスの生産ラインで混流生産されます。

エンジン車では、パワートレインを組み込む工程を“マリッジ”と呼びますが、EQCでは電動パワートレインを組み込むため、“ダブルマリッジ”と呼ばれる電動車独自の工程を採用しています。リアアクスルに電気モーターとパワーエレクトロニクスを組み込む“マリッジ”工程のあと、第二の“マリッジ”工程となるバッテリの組み込みが行われます。

専用インターフェイス「MBUX」を搭載しており、車輌情報の表示、ナビや運転モードの設定も音声コマンドに対応しています。同社では、旗艦モデルである「Sクラス」と同等のEVサルーン「EQ S」を含む10機種のEVを2022年までに発表する予定です。

BMWは、同社の大黒柱である「3シリーズ セダン」のワールド・プレミアと「X5」をあわせて、2021年までのEV開発スケジュールを明らかにしました。ハラルド・クルーガー会長が登壇し、2019年にMINI「エレクトリック」、2020年にSUVのBMW「iX3」、2021年には自動運転機能を搭載する可能性が高い「BMW iNEXT」とBMW「i4」と、電動モビリティのラインナップを拡充します。

<写真6>「3シリーズ」
<写真6>「3シリーズ」は、BMWの次世代表示および操作システムとなる「BMWオペレーティングシステム7.0」を搭載。

直感的に操作できることを重視して、わかりやすい配置や構造にこだわって設計されており、さらにカスタマイズできる表示とすることで、適切な情報をドライバーに伝えられるそう。メーターパネルには、ナビが組み込まれており、センターコンソール上のコントロールディスプレイには、カスタマイズされた情報が表示されます。iDriveコントローラー、タッチ式、音声入力、ジェスチャーといった多様な操作方法から選ぶことができます。

<写真7>BMW ヴァイス・プレジデントDevelopment Electrified Drivetrains ステファン・ジュラシェク氏
<写真7>BMW ヴァイス・プレジデントDevelopment Electrified Drivetrains ステファン・ジュラシェク氏

「2008年からiシリーズのプロジェクトをスタートしてきました。その後にPHVのラインナップも広げ、さらに今後も電動モビリティの充実をはかり、販売も強化していきます。BMWでは、これまでエンジン車の走りの魅力を追求してきたように、電動モビリティならではの“駆け抜ける歓び”を追求していきます」

<写真8>BMW「X5」のHead of Projectを勤めるヨハン・キストラー氏(左)とProduct Managerを勤めるマルコ・モエラー氏
<写真8>BMW「X5」のHead of Projectを勤めるヨハン・キストラー氏(左)とProduct Managerを勤めるマルコ・モエラー氏。

「コネクティビティ、ドライバー・アシスタントシステムなどの最新技術をアップデートし、内外装ともに高級感を重視しています。来年には、PHVの発売も予定しています。ミッドサイズのスポーティなSUVの元祖ゆえに、デザインでも、走行性能でも、“BMWらしさ”を重視しています」

アイシンの新トランスミッションをシトロエンが採用

日本の部品メーカー大手であるアイシンは、2018年1月にグループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏がプレゼンテーションを行いました。最大の話題は、「DS7クロスバック」のプラグインハイブリッド仕様である「E-TSENSE」に採用された1モーター式PHV用トランスミッションのワールド・プレミアです。

アイシンの1モーターハイブリッドトランスミッションは、主力のATをベースとし、既存ATのトルクコンバーターをモーターとエンジン切り離しクラッチに置き換えたシンプルな構造。この切り離しクラッチによりエンジンとモーターの切り離しが可能になり、このトランスミッションを搭載することで、EV走行とハイブリッド走行を実現でき、大幅な燃費向上が見込まれるとのことです。

この1モーターハイブリッドトランスミッションは、既存のATと同サイズのコンパクトさで、8速ATのダイレクトなシフトフィーリングによる滑らかで上質な走りや燃費向上に貢献し、「DS7」の走りと魅力に貢献していくと意気込みを語っていました。

アイシンは、従来からの強みである2モーターのストロングハイブリッドに加え、1モーターハイブリッドやeAxle(eアクスル)の開発を独自に行なってきましたが、従来の8ATと同じサイズに収まり、4WDの需要にも対応する1モーターハイブリッドを新たに開発。電動化の時代に向けた開発を進めることで、2018年の9.83万基から2019年には10万5000基まで生産量を伸ばし、2010年には13万2000基の生産を目指すとのこと。

eAxleシリーズについては、ユーザーのニーズに合わせて、電気モーター、ギアボックス、パワーコントロールユニット(PCU)を組み合わせた状態の“電動モジュール”として提供します。

具体的には、50-200kWの容量に対応する電気モーター、同軸インライン/水平軸オフセットの減速機、一体型/別対型のPCUといったモジュールを組み合わせることにより、最適なモジュールを提供することで、乗用車以外にも商用車の電動化にも迅速に対応していくそうです。

<写真9>2018年1月にアイシン・グループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏
<写真9>2018年1月にアイシン・グループ取締役社長に就任した伊勢清貴氏。

大手部品メーカー「ヴァレオ」搭載車に試乗!

今年は、モーターショーの会場を飛び出して、パリのど真ん中に位置するコンコルド広場でエコカーに試乗できるイベントも開催。筆者はフランスの大手部品メーカー「ヴァレオ」が持ち込んだ2台の電動モビリティを試乗しました。同社は、パリ市街を外周する高速道路を24時間ノンストップで自動運転で走行するなど、近年、ドイツの大手部品メーカーと肩を並べる次世代技術をもっています。

最初に乗り込んだのは、48Vシステムを積んだ2人乗りの小型EV。渋滞した市街地を走るのにちょうどいいサイズで、始動時のトルクが最大となる電気モーターのメリットを活かして、思いのほか、キビキビと走ります。同社が独自開発した48V電気モーターを搭載し、最高速度は100km/hに。1回の充電で走れる距離は150kmを確保しています。

<写真10>ヴァレオ2人乗りEV
<写真10>ヴァレオ2人乗りEVでは、自社製48Vシステムに自社製モーターを組み合わせることで、最高速は100km/hに達し、1回の充電で150kmの走行が可能です。

次に乗り込んだのは、市販の「ゴルフ」に48Vシステムを組み込んだPHV。パリ市街はアンダーパスの坂やストップ&ゴーが多く、電気モーターの力強いトルクが頼もしい仕上がりで、家庭用電源でも充電できる使いやすい仕様です。

<写真11>48Vシステムを積んだテストカーの開発を担当したルイス・アレン氏
<写真11>48Vシステムを積んだテストカーの開発を担当したルイス・アレン氏。

「48V化するメリットの一つは、充電時間の短縮。欧州で一般的な家庭用の200V電源を使えば、4〜5時間でフル充電が可能です。40kWhのバッテリと15kWの電気モーターを積んでおり、約60kmの航続距離を確保。70km/hまではEV走行ができます」

<写真12>ヴァレオのR&D部門を率いるジャン-フランソワ・タラビア氏
<写真12>ヴァレオのR&D部門を率いるジャン-フランソワ・タラビア氏。

「電動化、自動運転など、次世代技術の開発を推進します。自動運転の機能を搭載したデモカー『Drive4U』では、より人間らしい運転を目指して、高速道路での走行や信号でのストップ&スタートはもちろん、交差点やロータリーのように高度な判断が必要な場所でも、工事中や表示に不備のある道路でも走行ができます」

その他、注目の自動車をご紹介!

ほかにも注目の新型車や目を引いたものを軽くご紹介します。

<写真13>「モンツァSP1」
<写真13>「モンツァSP1」

フェラーリの限定車「ICONA」シリーズのその第一弾となる「モンツァSP1」/「モンツァSP2」が発表されました。フェラーリ「812スーパーファスト」と同じ6.5リッターV12エンジンに10psのスープアップを施し、“バルケッタ”と呼ばれる簡易的なオープンボディに搭載します。<写真13>の「SP1」はシングルシーターで、「SP2」は2人乗り。

<写真14>ブガティ「シロン」LEGO版
<写真14>ブガティ「シロン」LEGO版
<写真15>ブガティ「シロン」LEGO版
<写真15>ブガティ「シロン」LEGO版

フランスが誇るスーパー・スポーツカー、ブガッティのなかでも、420km/hもの最高速を誇る「シロン」のレゴバージョンが登場。すべてレゴで組み立てられています。100万個以上のブロックが使われ、レゴ用モーターによって、20km/hという低速ながら自走できます。タイヤとシートベルトとブレーキ以外は、すべてレゴで組み立てられており、リアスポイラーやスピードメーターも可動するというから驚きです。

おわりに

冒頭で触れた通り、フランスには「移動の自由」という考え方が根付いています。自動車の発明によって、人々が自由な移動を手にしたことは紛れもない事実。これは、モビリティを消費する“MaaS(=Mobility as a Service)”といった次世代の移動を考えるにあたっても、重要な概念です。
パリ・サロンでは、単に移動の効率を追求するだけではなく、移動の快適さや楽しさ、ときにはラグジュアリーな移動の空間まで、彩りにあふれる“移動の未来”を垣間見せてくれるモーターショーでした。

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1961年創業。国内初のアルカリ乾電池やカセットテープで馴染みがあるが、現在は「自動車」「住生活・インフラ」「健康・理美容」の成長3分野を軸に事業を展開。各分野においてパートナーと連携し、事業、製品、サービスの構築をめざしています。
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野原電研(株)グループ品質保証部門が母体となり設立されたJTL(JAPAN TESTING LABORATORIES)株式会社。全国5箇所に加えアメリカにも拠点をもつ同社は、約200種類300台以上の評価設備を保有し、年間約10,000件の取引実績があります。

文/川端由美