“リーンIoT”で高速に試作を繰り返す商品開発!

INTERVIEW
ピクスー株式会社
CEO
塩澤 元氣
インタビュイーの写真

いまや新製品の開発にIoTという観点は必須。既存の製品をインターネットにつなげて利便性をより良くするという発想が必要になっています。しかし、新たな装置、サービスを発想したとしても、すぐに製品を試作してクラウドにつなげるには幾多のハードルが存在します。そんなときに相談できる試作会社も最近は増えています。それらの会社の中でも“リーンIoT”という新たな言葉を標榜するピクスー株式会社のCEO塩澤元氣氏に話をおうかがいしました。

最初はペット用給餌器を作る予定だった——

ピクスーの創業は2016年3月。最初に取り組んだのはペット用給餌器「カメラ・スピーカー付きスマート給餌器Pixoo/ピクスー」の開発です。外出していてもスマートフォンでペットに餌をあげられ、備え付けられたカメラを通してペットの様子を見ることができるもの。開発に当たっては、その資金をクラウドファンディングで調達しようとしましたが、500万円の目標額にわずかに届かずファンディングに失敗。あえなく開発を断念することになりました。

<写真1>スマート給餌器Pixoo
<写真1>スマート給餌器Pixoo

しかし元リクルートでWeb開発をやっていた塩澤氏やフランス出身で組み込みシステムのプログラミングに精通したシモハメド ラムラウイ氏ら創業メンバーは、自分たちの強みに改めて磨きをかけ、世の中のニーズに応えるためにリーンIoTというサービスを立ち上げました。

<写真2>ピクスー株式会社のCEO塩澤元氣氏(左)とCTOシモハメド ラムラウイ氏
<写真2>ピクスー株式会社のCEO塩澤元氣氏(左)とCTOシモハメド ラムラウイ氏

リーンIoTとは、どういうものなのか?

「リーン」という言葉を聞いたことがある人もいることでしょう。最近では「リーン・スタートアップ」という起業論としても有名です。英語のLEANには「痩せた、引き締まった」というような意味ですが、ビジネス用語的には「無駄のない」という意味で使われます。となるとリーンIoTとは「無駄のないIoT」ということでしょうか? 塩澤氏はこう応えます。

「新しい製品は試作から始まります。アイディアを形にして、検証して、また新しい形を作っていく。それを繰り返して、確実に製品に仕上げていくことが大切です。一方的な思い込みである方向にだけ製品開発をして無駄なコスト、無駄な時間を生じさせないようにしなければなりません。私たちはこの“繰り返し”を高速に回して、“無駄なく”確実な製品化に突き進むためのお手伝いをしています。
なぜ高速に回すことができるのかというと、一つはIoT関連に特化していること。私はWebサービスの開発経験が長いのでクラウドサービスなどは得意です。一方パートナーのシモハメドは製品作りが得意。この2人でほとんどのIoT試作はできてしまいます。あと、案件はすべてこの2人で回しているので、意志決定も速く、依頼された案件はすぐに実行できます。だから、形にして検証することがすばやく行えます」

そう笑いながら話してくれる塩澤氏には自信のほどがうかがえます。確かに試作であれば、小さな単位で始めるので、実際の作業も小さくまとまっていたほうがいい。外野がいろいろと出てきて、「あーだこーだ」と言われることもない。基本的にクライアントから直接依頼事項を聞いて、すぐに作業に取り掛かって、早ければ2週間後には納品できるそうです。そして2週間で検証して、フィードバックされた試作を繰り返すというわけです。

<図1>リーンIoTでは、初めから完成度の高いシステムはあえて作らず「アイディア」の中から重要な要素だけを抽出することで「試作品」を高速に開発。
<図1>リーンIoTでは、初めから完成度の高いシステムはあえて作らず「アイディア」の中から重要な要素だけを抽出することで「試作品」を高速に開発。

「検証データ」から学習した内容を次フェーズの仕様に反映させ、これを何回か繰り返すことで、本当に役に立つIoTシステムを創っていく。

<図2>開発まで約2週間。検証も2週間で行うスピード感がポイント。
<図2>開発まで約2週間。検証も2週間で行うスピード感がポイント。

クラウドでもセキュリティは問題ないレベル

最近はクラウドに対する信用度合いも上がっています。アマゾンのAWS(Amazon Web Service)、マイクロソフトのMicrosoft Azure(マイクロソフト・アジュール)など、各社からサービスが提供されています。とはいえ企業としてはクラウドを利用するからにはそのセキュリティにも万全な対策をしたいもの。その点についてはどうなのでしょうか。

「基本的に私たちに持ち込まれる案件は、部門レベルの小さなものです。クライアントが大手企業であっても、最初のアイディアレベルで重要なデータは取り扱いませんし、試作段階から企業のサーバーを利用することもありません。まずは私たちが提供するサーバーで試験運用します。

私たちが利用しているのはheroku(https://jp.heroku.com/)というサービスで、クラウドで名高いSalesforce社の一事業部門なので、信頼性が高いものです。このサービス自体もAWS上で動いているので、クラッシュなどの心配もありません。

お客様もこの段階でセキュリティを問題にする方はいらっしゃいません。個人データを取得することもありませんから。
ときにコスト・時間的に情報の暗号化を省略することもありますが、お客様と十分に話し合って了承していただき、かつ個人データ以外で取り扱うくらいでしょうか」

たしかに試作レベルから自社サーバーを使用するというのも、システム障害などを考えるとあまり現実的ではありません。試作は外部で行い、製品化が見込めるようであれば、製品化の最終段階で自社サーバーに接続して運用テストをするところがほとんどでしょう。

試作コストも気になるところだが

リーンIoT、いろいろなものをネットにつなげて新しいサービスを生み出すことは心躍る作業です。しかし、やはり気になるのはそのコスト。どの程度を目安としておけばいいのでしょうか。

「私たちはウェブサイトで『相談無料、最短1か月、50万円から』と紹介しています。そのため、個人の方から企業の方まで数多くのお問い合わせをいただくのですが、個人の方はほとんどが相談して、金額を聞くと、そこで終わってしまいます(笑)。さすがに個人レベルではちょっと高いかもしれませんね。企業の方はそういうことはありません。どれだけの工数がかかるのかを理解していただけるので、スムーズに話が進みます。

しかしコスト感がわかりにくいとすれば……たとえば、普通のオーブントースターを改造して温度センサーを付けて、そのデータをクラウドに送るとしますよね。クラウドで見られるのは、リアルタイムな温度変化など1〜2画面。この場合、時々刻々の温度変化をデータベースに格納し、それをWebで見られるようにするわけです。これで、材料費込みで100万円くらいでしょうか。この程度のコスト感を持っていただければいいと思います」

おわりに

彼らはWebiot (ウェビオ)というIoTセンサーも開発しています。これは、店舗・オフィス・宿泊施設など、さまざまなサービスのIoT化を、低リスク・低コストで高速に実現するための「ネット接続済みセンサー」。いま提供しているのは「温度・湿度・気圧センサー」「加速度センサー」「人感センサー」「超音波距離センサー」「ボタンセンサー」「CO2センサー」「照度センサー」「ドア開閉センサー」の8種類。今後ますます増えていくそうです。
これらを使って、たとえば、社員食堂入口に置かれたトレーの合計重量を計測することで、何人利用したかを計測。その他、自動車工場の修理場にセンサーを置くことで、修理場の稼働率もわかります。

<写真3>各種センサーがそろっているWebiot
<写真3>各種センサーがそろっているWebiot

このようなサービスをサブスクリションモデルで提供しています。これらのサービスで自身の知見を蓄積して、新たなサービスに活かしていると言います。先のトースターの例もあるように、手元にあるものすべてがインターネットにつながっていく世界。その世界を実現するために、彼らのようなIoT試作会社に協力をお願いするのも一つの方法かもしれません。

以下の企業も試作サービスを提供しています。試作加工のご相談はこちらから。

株式会社中野鍛造所
あらゆる非鉄金属部品に高精度な鍛造・加工技術を用いてスピード納期で対応。株式会社中野鍛造所は、高品質とコスト削減を実現する独自の一貫生産システムを持ち、高精度な鍛造試作品をご提供しています。
株式会社NCネットワーク
国内最大級のモノづくり受発注サイト「エミダス」に登録された18,000社以上の工場データベースから、技術スタッフが依頼内容に最適な工場を選定。NCネットワークには、加工方法が分からない試作・開発品から、特殊車両のように少ない生産台数ながら厳密な品質保証が求められる量産品まで幅広い経験があります。
株式会社仙北谷
要望があればお客様へのコンサルティングにも対応。仙北谷は、切削・放電加工・3Dプリンター加工を用いて、試作・単品加工、治工具や金型の設計製作を中心に事業を展開している会社です。
QMS株式会社
成形試作・検査治具のベストソリューション。QMS株式会社は、AV機器・OA機器・光学機器・電子機器制御機器・自動車・通信機器などの開発試作サポートを行っています。
プロトラブズ合同会社
IT(情報技術)を活用して自動化、標準化を導入。より拡張性のある短納期プロセスを確立させたことにより、短納期での試作・小ロット生産を実現したオンデマンド受託製造会社です。
株式会社クライム・ワークス
企業や研究機関の開発支援を行う試作メーカ。新製品の開発工程における試作品の製作、検証用治具の提供だけでなく、協力会社と連携して量産試作に向けたユニット品の製作まで対応します。