軽量化に向け一斉に舵を切る素材メーカー、自動運転や3Dプリンターの展示に注目集まる―「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」

2018年5月23日~25日に横浜市で開催された「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」。自動車メーカーから部品メーカーまで、様々な企業が出展。自動車技術に関わる人々が多数来場し、情報収集や情報交換に勤しんでいました。

来場者が集中している展示から共通項を探していくと、キーワードとして浮かび上がってきたのは「自動運転」「EV化」「環境対応」。特に材料という切り口に絞って見てみると、自動車の「軽量化」に向けた提案が数多く見られ、実際数多くの来場者が説明員に質問を投げかける姿が目立ちました。

また自動運転の展示や3Dプリンター分野の展示にも数多くの来場者が目を向けており、新技術に対する関心の高さを改めて認識させられる展示会でした。

軽量化に向け新しい提案が続々

旭化成

旭化成は軽量化に向けた技術を複数展示していました。その1つが「SunForce」というm-PPE樹脂を主原料にした発泡ビーズ。「軽量である上に耐熱性、難燃性、寸法精度、断熱性などに優れる」(説明員)としており、今回はEVでバッテリー周辺部品、例えば断熱部品やスペーサーへの適用を想定した展示をしていました。

<写真1>m-PPE樹脂を主原料にした発泡ビーズ「SunForce」。旭化成の展示にて
<写真1>m-PPE樹脂を主原料にした発泡ビーズ「SunForce」。旭化成の展示にて

カネカ

カネカの展示でも軽量化に向けた新技術に注目が集まっていました。その1つがPC系アロイ材で流動性と発泡性を両立させた成形品。実際に手に持つとその差が実感できるほどで、展示によれば20%以上の軽量化が見込めるとのことでした。

<写真2>カネカによるPC系アロイ材の成形品サンプル。手前が発泡成形のサンプル。手で持ち比べたところ、奥の非発泡品に比べて明らかに軽かった。
<写真2>カネカによるPC系アロイ材の成形品サンプル。手前が発泡成形のサンプル。手で持ち比べたところ、奥の非発泡品に比べて明らかに軽かった。

信越化学工業グループ

信越化学工業グループの展示で軽量化素材としてアピールしていたのは、高摺動性材料の「EXELAST」。触ってみると、一般的なPVCよりもさらさらとした触感が特徴となっています。

自動車の窓周りなどの摺動部材で採用されつつある素材です。これまではゴムに起毛を組み合わせた材料を使われていましたが、こちらの材料に変えることで軽量化が実現できることがポイントです。また単一材料とのことで「従来よりもリサイクル性にも優れており、環境対応という面でも有利」(説明員)と強調していました。

<写真3>高摺動性材料「EXELAST」の展示。信越化学工業グループのブースにて
<写真3>高摺動性材料「EXELAST」の展示。信越化学工業グループのブースにて

住友化学

住友化学は金属材料の代替品としてスーパーエンジニアリングプラスチックの「スミカエクセル PES」を展示していました。耐熱性と寸法精度、寸法安定性を備え、射出成形による低コスト化や軽量化が見込めるといったメリットがあり、既に自動車用のオイルコントロールバルブに採用されているそうです。

もう一つ、これまで発泡が難しいとされていたLCP(溶融液晶性ポリエステル)の発泡成形品を展示していました。

一般的には発泡により軽量化が見込めますが、発泡により強度が下がります。住友化学はLCPの特性に着目した加工技術により、強度を一定レベルで保てるメドが立ってきたそうです。

<写真4>スーパーエンジニアリングプラスチックの「スミカエクセル PES」によるオイルコントロールバルブの例
<写真5>LCP(溶融液晶性ポリエステル)の発泡成形品の展示

積水化学工業

積水化学工業では軽量化に向けた製品として、ドアパネル周辺素材の提案をしていました。ドアトリムやバックドアなどに高倍率発泡成形品を適用するというもので、あるメーカーの規格に沿って製作したドアトリムでは、強度を保ちつつ、890gから580gへと35%の軽量化を実現しています。

また高倍率フォームを使った軽量化の例として「フォームエアダクト」を展示していました。エアコンなど家電で実用化している高倍率フォームを自動車の部品として活用できないかという提案で、説明員によれば、「強度の問題をクリアする方法や具体的な適用方法などについては、他社と組みながら詰めていきたい」とのことでした。

<写真6>「フォームエアダクト」の展示。積水化学工業のブースにて
<写真6>「フォームエアダクト」の展示。積水化学工業のブースにて

ヘガネスジャパン

ヘガネスジャパンは金属の焼結材料を使ったギアを展示していました。この『焼結ギア』は軽量で従来のギア製品に比べて「ミニマムで8%」(説明員)の軽量化が見込めるそうです。また材料の特性上極小の気泡が内部に残り、それが音や振動の減衰効果を発揮するそうです。「EV化の流れの中、これら2つのポイントを自動車メーカーに訴求していきます」(説明員)。

<写真7>ヘガネスジャパンによる「焼結ギア」の展示
<写真7>ヘガネスジャパンによる「焼結ギア」の展示

三菱ケミカルホールディングスグループ

三菱ケミカルホールディングスグループでは、既に実用化されている素材を中心に、軽量化に向けた複数の展示を押し出していました。炭素繊維を用いたシートモールディング・コンパウンド(SMC)や、GMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)、ガラス長繊維ポリプロピレン、射出発泡成形用材料、超極細アクリル繊維などです。

<写真8>炭素繊維を用いたシートモールディング・コンパウンド(SMC)による部品例の展示。
<写真9>GMT(ガラスマット強化熱可塑性プラスチック)関連の展示。
<写真10>超極細アクリル繊維の展示。
<写真11>射出発泡成形用材料の展示。

<写真8>~<写真11> 三菱ケミカルホールディングスグループのブースにて

以下の記事では、自動車の軽量化のポイントとなる、プラスチック材料の種類、特徴、用途について解説しています。合わせてご参照下さい。

「自動運転」時代には内装材に注目 質感向上に向けた製品も

住友化学

また、自動車の内装材で使われることを想定した材料も展示していました。1つが住友化学の「質感向上ポリプロピレン」で、最大の特徴は発色の良さ。顔料の発色性を高めたことがポイントで、シボ成形品を無塗装で成形できることがメリットです。

「自動運転が進むと内装により目が行くようになるので、今後は質感を向上させた材料がより注目を集めるようになると思います」(説明員)。

<写真12>「質感向上ポリプロピレン」のサンプル品。住友化学のブースにて
<写真12>「質感向上ポリプロピレン」のサンプル品。住友化学のブースにて

クルマの樹脂化に沿った塗装剤の提案

クラレ

クラレの展示では、進む自動車の樹脂化を踏まえた新しい塗装技術の提案がありました。加飾フィルムを使って塗装を代替させる技術で、塗装やめっきに匹敵する耐久性を確保しつつ、工数の削減にも貢献するとのこと。ABSやPPなどに対してもプライマーレスで対応できるそうです。

<写真13>クラレが開発中の「自動車外装用加飾フィルムによる塗装代替」の展示パネル
<写真14>クラレが開発中の加飾フィルムを適用したサンプル品

日立金属

自動車で欠かせない意匠性の向上、そして強度アップというキーワードでも見逃せない展示が数多くありました。その1つが日立金属の展示。アルミの薄肉製造技術を使って意匠性を高めたアルミホイール「SCUBA」や、高い強度と靱性を持つ鋳鉄を使った部品が展示されていました。

<写真15>日立金属のアルミホイール「SCUBA」の展示例。
日立金属の高靱性ダクタイル鋳鉄「NMS 600 CM」は、高い靱性と寸法精度により薄肉・軽量化に貢献できるとのこと。サスペンションなどでの用途を想定しており、同社の従来品では15.0kgだったのが開発品では11.2kg(軽量化率25%)にできたそうです。(スペックは日立金属のパンフレットより引用)
<写真16>日立金属の高靱性ダクタイル鋳鉄「NMS 600 CM」の展示例。

日立金属の高靱性ダクタイル鋳鉄「NMS 600 CM」は、高い靱性と寸法精度により薄肉・軽量化に貢献できるとのこと。サスペンションなどでの用途を想定しており、同社の従来品では15.0kgだったのが開発品では11.2kg(軽量化率25%)にできたそうです。(スペックは日立金属のパンフレットより引用)


日立金属のアルミホイール「SCUBA」は、従来品に比べて約15%軽量化したとのこと。サイズ20″×7.5”では13.0kg(従来品は15.3kg)、サイズ18”×7”では8.7kg(従来品は10.3kg)。(スペックは日立金属のパンフレットより引用)

その他

ほかにも素材関係ではデュポンが軽量化というキーワードで接着技術やポリマー技術を、三井化学が素材の軽量化技術や金属や樹種材料の一体化技術を展示していました。

3Dプリンターの展示にも注目集まる

SOLIZE

3Dプリンター関連の展示にも多くの来場者が足を留めていました。SOLIZEは金属3Dプリントの受託製造、試作品製作サービス、3Dプリンターの販売について展示。金属材料を使った造形品のほか、高耐熱・光透明材料による光造形品の展示では、アニール処理により耐熱温度を高めたサンプルが置かれていました。

またSOLIZEでは3Dプリンターを使った「デザインレビュー支援ツール」という試作支援サービスも紹介していました。こちらのサービスで想定しているのは、設計段階の金属部品をまずは樹脂で出力し、実物と同じ形状の部品を手で触りながら検証して設計を詰める、という使い方。「材料が樹脂であれば成形のコストが安く、短納期で提供できます。材料が違うといっても、やはり手で触りながら確かめるというのは非常に有効です」(説明員)。

<写真17>SOLIZEによる3Dプリンター関連の展示。左下が「デザインレビュー支援ツール」を想定した3Dプリンターでのサンプル出力例
<写真17>SOLIZEによる3Dプリンター関連の展示。左下が「デザインレビュー支援ツール」を想定した3Dプリンターでのサンプル出力例

東レ

また東レが3Dプリンター関連の展示として、3Dプリンター向けに流動性やポリマー特性を考慮したPPS樹脂パウダーの展示をしていました。

<写真18>東レによるPPS樹脂パウダーの展示
<写真18>東レによるPPS樹脂パウダーの展示

以下の記事では、金属3Dプリンターに関する基礎知識を解説しています。合わせてご参照下さい。

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