フルモールド鋳造法で木村鋳造所が切り拓く、新たな鋳造の世界~鋳造の基礎知識・造型サービスを紹介~

INTERVIEW
株式会社木村鋳造所
常務取締役・開発統括
菅野 利猛
菅野氏の写真

金属を高温で溶かして型に流し込み、冷やして固める鋳造(ちゅうぞう)。その歴史はとても古く、紀元前4000年頃にメソポタミア地方で始まったとされています。日本の鋳物の歴史も紀元前数百年前まで遡り、仏像・仏具といった宗教に関わるものだけでなく、身の回りの生活用具が作られてきました。鋳物職人と呼ばれる言葉があるように、長年職人の経験や勘といった暗黙知が大きなウエイトを占める世界だったのです。ところが、この鋳造の世界でも、IT技術や装置技術の進展のなかフルモールド鋳造法と呼ばれる技術が注目されています。
この記事では、鋳造の基礎知識を説明したのち、フルモールド鋳造法(消失模型鋳造法)についてご紹介します。工場や研究所を回りながらお話くださったのは、日本でいち早くフルモールド鋳造法を導入し、造型サービスを提供してきた(株)木村鋳造所の常務取締役・開発統括で工学博士の菅野利猛氏です。

鋳造の基本的概要

●鋳造とは

鋳造という加工方法では、金属を溶かして型に流し込み、冷やして固めることで所望の形状を実現します。鋳造は、固体(固相)・液体(液相)間の変化、すなわち相変態(phase transformation)を巧みに利用しています。水道の蛇口、ドアノブ、指輪、マンホールの蓋など、私たちの身近には鋳造品がたくさんあります。

「固体から液体そしてまた固体というように、複雑な相変態を伴う加工方法は、鋳造だけです。それだけに他の金属加工に比べて難しいのです。たとえば、金属が凝固するとき、体積は収縮します。その際に、「巣(空洞欠陥)」と呼ばれる気泡ができるときがあります。しかも、巣は最後に固まる部分、つまり、表面ではなく中にできてしまうので、やっかいです。」と菅野さんは鋳造の難しさを語ります。

こうした巣の発生を抑えるために、鋳物職人は長年の失敗経験をもとに、金属の溶かし方や、それぞれの型に応じて「どこから」「どのように」溶かした金属を流し入れるかをを検討、工夫してきたのです。

鋳造法には数多くの種類があります。鋳型を作るための材料によって、金型鋳造法と砂型鋳造法に大きく分けることができます。
金型鋳造法は、耐熱銅や鋼材で製作した鋳型による鋳造法で、型の寿命が長く、繰り返し使用することができます。そのため、多量生産に向いている工法と言えますが、型の製造・取り回しが大変なため造型できる形状が限られています。

一方で、砂型鋳造法は、砂で製作した鋳型による鋳造法で、金型鋳造法と比べ型の寿命は短くなります。<写真1>に示すサンドアートでもイメージできるように、砂の持つ造型の自由度・耐熱性を活かし複雑な形状を持つ鋳物の製造に適しています。

<写真1>サンドアート(イメージ)

●用いられる材料

鋳造に用いられる材料は、高温で溶かすことができる金属になります。

「金属材料は、鋳造にされる前に、素材を溶かす工程を経ることになります。ですから、すべての金属は、基本的に溶かすことができれば鋳造が可能と言えるでしょう。ただし、電気炉で溶解できる最高温度は1,750度程度であり、その温度域でも部分的に溶けないようなものが含まれている材料は鋳造が極めて難しくなります。」と菅野さんは説明してくれました。

鋳造可能な代表的な金属として、鉄、銅、アルミニウム合金、青銅、チタン合金、マグネシウム合金、亜鉛合金などがあります。

金属材料の種類や特性については以下の記事で紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

この記事では、砂型鋳造法の中でも、発砲スチロール模型によって鋳型を作る”フルモールド鋳造法”に焦点を当て、その基礎知識についてご紹介します。

プロが教えるフルモールド鋳造の概要とメリット

「フルモールド鋳造法は、作りたい形状の発泡スチロール模型を砂の中に埋め込み、模型を燃焼気化させながら溶湯と置換する鋳造法です。砂を型とする鋳造法には、木型を使う方法もあります。木型は何度も使えるのに対し、発泡スチロール型は、鋳造すると型が溶けてなくなるため、生産量分の模型と型が必要となります。」

「フルモールド鋳造法の利点は、なんといっても納期を大幅に短縮できる点です。その理由は大きく2つあります。1つ目は、テーパーの有無です。木型の場合、型を抜くためのテーパーを付ける必要がありますが、テーパーはデータ上での計算が難しく、加工機で作っても段差が出来てしまう等失敗のケースが多いため、結局最後は人の手に頼らざるを得ないということも多いです。ここに大きな時間を要するため、木型の製作には時間がかかりますが、フルモールド鋳造法の場合はテーパーが不要なため、製作時間を短縮することが可能です。
2つ目は、型を作る難易度です。木型の場合、製作したい鋳物の逆の形を想像して、分割された複数の砂型を作る必要があります。経験豊富な職人さんしかできない技術と言えるでしょう。一方で、フルモールド鋳造法では、鋳物の模型を作るだけで良いので、完成図 (CAD図面)さえあれば発泡スチロール型が簡単に製作できるのです。」

木村鋳造所が提供するフルモールド鋳造法と木型法の比較
<図1>フルモールド鋳造法と木型法の比較(提供:木村鋳造所)

木村鋳造所でのフルモールド鋳造法による造型サービス~製造工程を紹介

それでは、フルモールド鋳造法による造型サービスの流れについて紹介しましょう。
鋳物の製造工程については、木村鋳造所の御前崎工場内の見学を通して説明して頂きました<写真2>。熱気やガスがこもる従来の鋳造現場のイメージとは異なり、設計・模型製作・鋳造・検査/加工/塗装の製造工程(現場)がコンパクトに集約された工場でした。

木村鋳造所御前崎工場(鋳造エリア)
<写真2>木村鋳造所御前崎工場(鋳造エリア)

<図2>が、木村鋳造所でのフルモールド鋳造法の製造工程となります。

木村鋳造所アが提供するフルモールド鋳造法の製造工程
<図2>フルモールド鋳造法の製造工程(提供:木村鋳造所)

1. 受注

顧客の要求事項を明確にし、製造工程に反映させながら計画します。仕様、目的、力のかかる部分が分かっていれば、材料や工法のアドバイスが可能です。

2. 模型製作

CAD/CAMによる、3DデータおよびNCデータの作成と、MAGMAシミュレーションによる鋳造解析を行うことで、最適な鋳造計画・方案を立案します。
CAD/CAMデータに基づき、NC加工機で発砲スチロールをパーツごとに加工し、組立指示書に基づいて模型を組み立てます。完成した模型には、自動測定器による模型寸法検査を行います。

3. 鋳造

模型に塗型と呼ばれる離型剤を塗布した後、鋳枠の中に模型をセットし、周囲を砂で固めます。これにより、鋳型が完成します。砂込めされた鋳枠に、溶かした鉄(溶湯)を流し込み、注湯が終わった後は水掛けによって鋳物を冷却します。鋳物が決められた温度まで下がったら、鋳枠から鋳物を取り出し、付着している砂や塗型剤を落とし、仕上げます。

4. 検査

自動測定器による製品寸法検査を行います、顧客の要望に応じて、より精密な非破壊検査を行うこともあります。

5. 加工/塗装

顧客の要望に応じ、ひずみの取り除き、錆び止め塗装、上塗り塗装等を行います。

6. 納品

外観、塗厚膜、フック等の安全部位を確認した後、製品を顧客の元へお届けします。

各工程での難しさと、それに対する木村鋳造所の取組みについて、菅野さんに詳しくお話を伺うことができました。

「フルモールド鋳造法の一番難しいところは、残渣と呼ばれる発泡の燃えカスが鋳物に残りやすく、品質が安定しないことです。木村鋳造所では、こうした課題に対し、2つの取組みをしています。1つ目は、発砲スチロール専門のメーカーとの共同開発により、フルモールド鋳造法に適した分子量・溶融温度に調整した模型材料を使用していること。もう1つは、事前の鋳造解析によるシミュレーションを徹底すること。この2つの取組みにより、課題を解決し、フルモールド鋳造でも安定した高品質な鋳物を提供することができているのです。」

「3DCAD/CAMを用いた模型データの作成、MAGMAソフトを用いたシミュレーションによる鋳造解析にも力を注いでいます。シミュレーションでは、鋳鉄をどの部分から流し込み、どのように流し、分岐して行くかについての計算や、発泡スチロール模型の形状から、削りすぎている部分、削りが足りない部分の算出を行っています。」

「発泡スチロールの模型を作るために要する時間は、システム導入時と比較し4分の1程度まで短縮することに成功しました。今後は、10分の1、20分の1という数字を目指したいと考えています。また、鋳造解析によって最適な鋳造計画・方案を策定していることも高品質な鋳物の提供に役立っています。実際、模型製作上の外部からのクレームはほぼ0パーセントです。1年で何万と作っている中でわずか1~2件程度です。この数字には自信を持っても良いと思っています。」

「塗型は、フルモールド鋳造法の中でも最も大きなポイントとなります。塗型は、砂や粘土等の天然の材料を用いることが多いため、塗った塗型剤にムラが生じると鋳物の品質が変化してしまうという難しさがあります。それを解決するため、木村鋳造所では塗型と呼ばれる離型剤を自社で開発しています。また、模型の表面積や重量から塗型の塗付時間や塗付量を計算するシステムを導入し、管理しています。塗型は、他のシステム化が進んでいる工程と比較し、経験豊富な職人さんの腕による部分が大きいですが、こうしたIT技術の導入により、品質の安定性を高めることに成功しています。」

フルモールド鋳造法をいち早く導入し、職人レスで、高品質な鋳造品提供に取り組んできた木村鋳造所。その強さを支えているのは、シミュレーション・プロセス管理におけるIT技術の徹底的な活用、型素材(発砲スチロール)や塗型などの共同/自社開発に代表される研究開発力でした。

まとめ

ここでは、鋳造の基本的概要と、フルモールド鋳造法を用いた木村鋳造所の造型サービスを簡単に紹介しました。フルモールド鋳造はその原理から、造型の自由度に優れ、製作期間の短縮が期待できます。まさに「試作に向いた鋳造法」と言えるでしょう。

株式会社木村鋳造所

木村鋳造所では、プランニングから鋳造、加工までワンストップでサービスを提供しています。金属製品の試作を考えている方は、ぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょうか。

以下の記事では、木村鋳造所のサービスについて、詳細をご紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

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