フルモールド鋳造法で木村鋳造所が切り拓く、新たな鋳造の世界~鋳造の基礎知識・造型サービスを紹介~ (1/3)

INTERVIEW

株式会社木村鋳造所
常務取締役・開発統括
菅野 利猛

金属を高温で溶かして型に流し込み、冷やして固める鋳造(ちゅうぞう)。その歴史はとても古く、紀元前4000年頃にメソポタミア地方で始まったとされています。日本の鋳物の歴史も紀元前数百年前まで遡り、仏像・仏具といった宗教に関わるものだけでなく、身の回りの生活用具が作られてきました。鋳物職人と呼ばれる言葉があるように、長年職人の経験や勘といった暗黙知が大きなウエイトを占める世界だったのです。ところが、この鋳造の世界でも、IT技術や装置技術の進展のなかフルモールド鋳造法と呼ばれる技術が注目されています。
この記事では、鋳造の基礎知識を説明したのち、フルモールド鋳造法(消失模型鋳造法)についてご紹介します。工場や研究所を回りながらお話くださったのは、日本でいち早くフルモールド鋳造法を導入し、造型サービスを提供してきた(株)木村鋳造所の常務取締役・開発統括で工学博士の菅野利猛氏です。

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鋳造の基本的概要

●鋳造とは

鋳造という加工方法では、金属を溶かして型に流し込み、冷やして固めることで所望の形状を実現します。鋳造は、固体(固相)・液体(液相)間の変化、すなわち相変態(phase transformation)を巧みに利用しています。水道の蛇口、ドアノブ、指輪、マンホールの蓋など、私たちの身近には鋳造品がたくさんあります。

「固体から液体そしてまた固体というように、複雑な相変態を伴う加工方法は、鋳造だけです。それだけに他の金属加工に比べて難しいのです。たとえば、金属が凝固するとき、体積は収縮します。その際に、「巣(空洞欠陥)」と呼ばれる気泡ができるときがあります。しかも、巣は最後に固まる部分、つまり、表面ではなく中にできてしまうので、やっかいです。」と菅野さんは鋳造の難しさを語ります。

こうした巣の発生を抑えるために、鋳物職人は長年の失敗経験をもとに、金属の溶かし方や、それぞれの型に応じて「どこから」「どのように」溶かした金属を流し入れるかをを検討、工夫してきたのです。

鋳造法には数多くの種類があります。鋳型を作るための材料によって、金型鋳造法と砂型鋳造法に大きく分けることができます。
金型鋳造法は、耐熱銅や鋼材で製作した鋳型による鋳造法で、型の寿命が長く、繰り返し使用することができます。そのため、多量生産に向いている工法と言えますが、型の製造・取り回しが大変なため造型できる形状が限られています。

一方で、砂型鋳造法は、砂で製作した鋳型による鋳造法で、金型鋳造法と比べ型の寿命は短くなります。<写真1>に示すサンドアートでもイメージできるように、砂の持つ造型の自由度・耐熱性を活かし複雑な形状を持つ鋳物の製造に適しています。

<写真1>サンドアート(イメージ)
<写真1>サンドアート(イメージ)

●用いられる材料

鋳造に用いられる材料は、高温で溶かすことができる金属になります。

「金属材料は、鋳造にされる前に、素材を溶かす工程を経ることになります。ですから、すべての金属は、基本的に溶かすことができれば鋳造が可能と言えるでしょう。ただし、電気炉で溶解できる最高温度は1,750度程度であり、その温度域でも部分的に溶けないようなものが含まれている材料は鋳造が極めて難しくなります。」と菅野さんは説明してくれました。

鋳造可能な代表的な金属として、鉄、銅、アルミニウム合金、青銅、チタン合金、マグネシウム合金、亜鉛合金などがあります。


金属材料の種類や特性については以下の記事で紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

この記事では、砂型鋳造法の中でも、発砲スチロール模型によって鋳型を作る”フルモールド鋳造法”に焦点を当て、その基礎知識についてご紹介します。

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