鋳造に革命を~フルモールド鋳造法に代表される木村鋳造所のサービスの強みとは~

INTERVIEW

株式会社木村鋳造所
常務取締役・開発統括
菅野 利猛

金属を溶かして、砂や粘土等で作った鋳型の中に流し込み、あらゆる形を自由に作り出すことができる鋳造法。古くは紀元前4,000年まで遡り、現在でも自動車や飛行機部品の製造に用いられる等、金属加工を考える上で欠かせない加工法です。
この記事では長い歴史をもつ鋳造で、常に技術革新をもたらしてきた(株)木村鋳造所のサービスについてご紹介します。工場や研究所を回りながらお話くださったのは、(株)木村鋳造所の常務取締役・開発統括で工学博士の菅野利猛氏です。

創業90周年を迎えた木村鋳造所、本社は静岡県の清水町に、工場は静岡県御前崎市と群馬県太田市にあります。静岡県伊豆の国市には先端プロセス技術センターもあります。2014年にはアメリカのシカゴにKimura Foundry Americaを設立し、海外にもビジネスの場を広げています。
木村鋳造所はフルモールド鋳造法に1966年から挑戦し、特化してきたことで、他社との差別化を図りました。しかし、4代目代表取締役木村寿利氏は「鋳造方式にこだわらずお客様のニーズに応える鋳造サービスを提供する。」と方針転換をし、現在ではフルモールド鋳造法に加え、最新技術である3Dプリンターを活用した新たな鋳造法にも取り組んでいます。
“木村鋳造所の技術にはどのような強みがあるのか”、”それはどのようにして成し遂げられたのか”を探ります。

常に最先端の鋳造を~高品質な製品を素早く届けることができる秘訣とは~

木村鋳造所は、高品質な金属製品を短納期で提供できるという強みがあります。本章では、その強みを実現できる秘訣について解説をしていきます。

1 納期短縮の仕組み

1.1 フルモールド鋳造法、3Dプリンターの活用
「木村鋳造所の技術により、短納期を実現することができます。木型による鋳造で加工する場合、通常半年以上はかかりますが、フルモールド鋳造法は余裕をもっても1ヵ月あれば製造できます。さらに短い時間で製作できるのが、DMP(Direct Molding Process)と呼ばれる、3Dプリンターを駆使した独自の砂型造形による工法です。こちらの工法では、注文を受けてから最速3日で納品したという実績があります。ただし、フルモールド鋳造法に比べるとコストがかかります。お客様にはコストよりも『開発期間の短縮』という付加価値を提供することで、喜ばれています。」

1.2 ITによる製造工程の一元管理
木村鋳造所では、装飾品などの鋳物部分を作成するだけでなく、加工から塗装までワンストップで行っており、これにより、顧客は複数の加工事業者に依頼する必要がなく、工数の削減に繋がります。<図1>

<図1>製造工程(提供:木村鋳造所)
<図1>製造工程(提供:木村鋳造所)

また、KIMURAグループの全工場、全部門がオンラインで繋がっており、受注から模型・鋳物の製造、加工、出荷までの全てのプロセスにおいて、リアルタイムで進捗状況を確認することができます。これにより、各工場の稼働状況を一元管理し、各工場、各部門に効率良く作業を振り分けることができます。

2 高品質な製品提供の仕組み

2.1 充実した品質検査体制
木村鋳造所では、素材の表面および内部の状態を、非破壊検査寸法検査塗装検査によって測定しています。これにより、常に製品の状態を確認することができ、高品質の鋳物製品を提供することができます。

2.2 新素材を使用した鋳造により、新しい機能を実現
一方、新素材で鋳物の品質を向上させるという付加価値も追求し続けています。「木村鋳造所は、比較的高い温度でないと溶けない鉄や鋳鋼素材の鋳物を得意としています。耐摩耗性に優れた製品にするために、鋼管の内側を高クロム鋳鉄で鋳包む(=被覆する)という技術も開発しました。」と菅野さんは説明します。

「他にも、リバースエンジニアリングサービスの提供をはじめました。昔に作られた製品で、現物はあるが、設計図はないという製品を復元するものです。もともと、発泡スチロールの模型や鋳物製品が規格通りのサイズに仕上がっているかを検査する、立体測定機械ATOS(非接触光学式3次元測定機)が木村鋳造所では活躍していました。これを転用して、現物を測定し設計データを作ります。更に、その設計データから、弊社と協力企業にて各パーツ(部品)を製造し、過去つくった製品が復元できるのです。この手法を用いて、愛知県の明治村に保存されていた富岡製糸場のブリューナ・エンジン(横型単気筒蒸気機関)を復元したという実績があります。まさに、木村鋳造所のIT技術と鋳造技術が合わさって『時間を遡る』お手伝いをしたとも言えますね。」

このように創意工夫を重ねて、木村鋳造所では高付加価値を求め続けています。

金属材料の基本的な特性については他の記事で紹介しています。そちらも合わせてご参考ください。

試作だけでなく量産にも対応!木村鋳造所の用いるフルモールド鋳造法の特徴

「フルモールド鋳造法はとても奥が深く難しい工法です。しかし、その鋳造法に特化したことで、木村鋳造所は他社との差別化に成功し、大きな成長を遂げることができました。」
フルモールド鋳造法は、発泡スチロールで作った製品の模型を砂に埋め込み、溶かした金属で発泡スチロールを置換する鋳造法です。発泡スチロールの型は溶けて消失するので、鋳造のたびに新しい発泡スチロールの型を作る必要がある一方、木型と異なり、中子製作が不要であるため、鋳型の製作にかかる時間は短く済みます。そのため、一品ものが中心の試作に適した工法と言えます。実際、わが社では試作を含む一品ものの製作が全体の15%程度を占めています。」と菅野さんは語ってくれました。

<写真1>フルモールド鋳造に用いる発砲スチロールのディーゼルエンジン模型
<写真1>フルモールド鋳造に用いる発砲スチロールのディーゼルエンジン模型

「木村鋳造所ではこの工法を用いることで、自動車のボディを形作るプレス金型を主に生産してきました。1990年頃から、産業機械用の鋳物や発電に使われるディーゼルエンジン用の鋳造品などエネルギー関連の鋳物にも事業を広げ、他には、舞台の装飾品や公園のモニュメントなどの鋳物も手がけています。木村鋳造所では、1キログラムほどの小さな鋳物から最大約40トンの鋳物まで製造できます。」

<写真2>プレス金型用鋳物(提供:木村鋳造所)
<写真2>プレス金型用鋳物(提供:木村鋳造所)
<写真3>工作機械用鋳物(木村鋳造所で加工された)
<写真3>工作機械用鋳物(木村鋳造所で加工された)
<写真4>エネルギー関連鋳物(提供:木村鋳造所)
<写真4>エネルギー関連鋳物(提供:木村鋳造所)

フルモールド鋳造法は、1点ものの加工に向く鋳造法ですが、木村鋳造所では量産も対応可能です。「わが社の強みは、IT技術と組み合わせることで、発泡スチロールの模型を低コストで量産できることです。まだパソコンが普及する以前の1987年からCAD/CAMを導入し、データがあれば、経験豊富な模型職人に頼らなくても同じ形の発泡スチロール模型を量産できるシステムを導入しました。このシステム化により、不良品の原因究明も効率よくできるようになりました。」

最新の鋳造技術にも注力!木村鋳造所が提案する「機械設計の限界を払拭する世界オンリーワン鋳造技術」

フルモールド鋳造法に大きな特徴を持つ木村鋳造所ですが、最新技術の導入にも注力しています。それが、3Dプリンターを活用した「フルモールド鋳造技術とDMP造形技術を組み合わせた新しい鋳造技術」です。この複合技術により、これまで鋳造が困難であった、最小肉厚3mmの複雑中空構造を有する最大30トンの大型鋳物、特に大型ディーゼルエンジン用部品の製作が可能になるそうです。

「木村鋳造所で用いる3Dプリンターは、砂を積層する方式を採用しています。3Dプリンターを使い鋳造で必要となる中子と呼ばれる砂型をつくると、従来のフルモールド鋳造法では実現が難しい複雑な鋳造が可能になります。つまり、設計の自由度が格段に上がるのです。たとえば、細い冷却水の流路をもつような鋳物も鋳造できるようになります。」

「普及しはじめた現在の金属3Dプリンター技術では、強度の求められる製品の製造には向いておらず、強度を上げることが今後の課題になっています。一方で、木村鋳造所の技術は、製品の大きく単純な形状をフルモールド鋳造技術で製作し、製品内部の複雑な中空構造をDMP造形技術で作製することで、アンダーカットや薄肉化といった従来の設計上の制約が解消できます。すなわち、性能優先の製品設計が可能になるのです。」

この「フルモールド鋳造技術とDMP造形技術を組み合わせた新しい鋳造技術」も、木村鋳造所のIT技術と鋳造技術を駆使することで、お客様の『開発期間の短縮』のお手伝いをしたものと言えるでしょう。

終わりに

常に最先端の鋳造品をお客様に提供しつづけてきた木村鋳造所は、今回ご紹介したようなリバースエンジニアリングサービスや、機械設計の限界を払拭する世界オンリーワン鋳造技術を通じて、『時間を遡る』、『開発期間の短縮』といったお客様の「時間」を価値に変えるお手伝いを行なっています。また、鋳造はとても複雑な現象で、素人が一朝一夕で扱えるものではありません。

「昔は、金属製品の設計をする人は鋳造の勉強をしてから設計をしていました。それくらい、鋳造で作れる製品には大きな制約があったのです。しかし、鋳造の技術が進歩して設計の自由度は格段に広がりました。今では、設計者は鋳造の勉強をしなくてすむようにもなりました。」と菅野さんは語っています。

鋳造は多くの要因が複雑にかかわっている製造法です。しかし、現在は“仕様と目的、どこにどういう力がかかるのか”さえ明確になっていれば、材料や工法はアドバイス可能とのことです。

以下では、金属加工について、種類やそれぞれの特徴について、ご紹介しています。

また、以下では材料・加工・計測解析など、試作を考える上では欠かせない技術情報を、各分野の専門家からお伺いしたお話をもとにご紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。