押さえておきたい金属3Dプリンターの基礎知識~造形原理や原料からメリット・デメリットまでを簡単紹介~

はじめに

ここでは金属加工法の一つである積層造形(3Dプリンター)を取り上げます。最近では、Additive manufacturing, AM(付加製造)と呼ばれています。
3Dプリンターは、2010年前後より急激に注目を集めており、デスクトップの個人用から高度技術を集積した産業用まで多様な機種が開発されています。
3Dプリンターの特徴は、図面なしに、形状を示すデジタルデータから複雑な形状の部品を直接造形出来ることです。また、原料の多くは樹脂材料ですが、金属材料を用いた3Dプリンターの活用も盛んになっています。
形状の自由度の幅が広いことや、従来の金属加工方法に比べ製作にかかる工数が少ないことが魅力となり、試作時に検討される方も多いのではないでしょうか。

金属用3Dプリンターについて、まず押さえてほしい基礎知識として、金属3Dプリンターの原理や、使用される金属材料、特長と課題や活用事例などを解説していきます。

金属3Dプリンターの代表的な2つ方式

まずは、金属3Dプリンターの概要について押さえていきましょう。ここでは、代表的な方式と使用される金属材料について紹介します。

【金属3Dプリンターの方式】

<表1>に金属3Dプリンターの代表的な方式を示します。金属3Dプリンターは種々の方法が開発されていますが、パウダーベッド方式とメタルデポジッション方式の大きく2つに分けられます。

<表1>金属3Dプリンターの代表的な方式
方式 使用熱源による方式 材料形態
パウダーベッド方式
(Powder bed fusion)
レーザビーム方式
Selective laser melting(SLM)
Selective laser sintering(SLS)
合金粉末
電子ビーム方式
Electron beam melting
合金粉末
メタルデポジッション方式
(Metal deposition)
レーザビーム方式
Laser metal deposition(LMD)
Laser engineered net shaping(LENS)
合金粉末
アーク放電方式 合金ワイヤ

<パウダーベッド方式>

金属粉末を敷き詰め、熱源となるレーザや電子ビームで造形する部分を溶融・凝固させる方法です。金属粉末を敷き詰め、溶融・凝固を繰り返すことで造形します。造形終了後には、固化していない粉末を取り除いて造形物を取り出す必要があります。
パウダーベッド方式には、以下の(1)レーザビーム熱源方式と(2)電子ビーム熱源方式があります。

(1) レーザビーム熱源方式
敷き詰められた金属粉材料にレーザビームを照射して、溶融・凝固または焼結させて積層造形します。金属3Dプリンターのなかで最も普及している方式です。

(2) 電子ビーム熱源方式
敷き詰められた金属粉材料に電子ビームを高真空中で照射し衝突させることで、運動エネルギーを熱に変換し粉末を溶融させます。レーザビーム方式は窒素などの不活性雰囲気中で溶融凝固がなされますが、電子ビーム方式は真空中で溶融凝固がなされます。
プリンターの構造は上記のレーザビーム熱源方式に近いです。
また、レーザビーム方式はレーザを照射する際の位置決めをミラーの角度を変えて行うのに対し、電子ビーム方式は、磁界によるレンズを用いて電子ビームの向きを変えるので、機械的な移動はなく、電気的であることから高速な位置決めが可能です。

<メタルデポジッション方式>

溶融した金属材料を所定の場所に積層・凝固させて造形する方法です。金属粉末を材料とする(1)レーザビーム熱源方式と、合金ワイヤーを材料とする(2)アーク放電方式があります。
パウダーベッド方式に比べ、高速造形が可能ですが形状精度は低いです。また、パウダーベッド方式と異なり、造形終了後にパウダーの除去作業は不要です。金型などの金属材料へ追加工(肉盛り)もできます。

(1) レーザビーム熱源方式
ノズルから金属パウダーを噴射すると同時にレーザ光を照射することで金属パウダーを溶融池に供給、凝固させて造形を行います。部品形状を溶融ノズルまたはステージを移動させ描きます。金属粉の供給経路を切り替えることで、異種金属の造形が可能です。また、レーザ出力が大きいため、高速造形が可能です。

(2) アーク放電方式
金属ワイヤー先端のアーク放電により金属ワイヤーを溶融し、これを積層することによって造形します。装置価格や材料費が比較的安く、高速造形可能です。

主に使用される7種の金属材料の特長と用途

<表2>に金属3Dプリンターに使用される粉末金属材料を示します。プリンターメーカによってはこの表より、さらに多くの材料に対応する機種もあり、逆に対応できない機種もあるので、プリンター導入の際はメーカへの確認が必要となります。

<表2>金属3Dプリンターに使用されている主な材料
名称 成分 特徴 用途(一例)
鉄鋼系 マルエージング鋼 Ni, Co, Mo 高硬度 時効処理にて硬度HRDC53程度に硬くなる 金型、医療、機械部品、バネ
純鉄粉末 軟磁性材 磁気回路部品
ステンレス SUS316L 耐蝕性良好  一般機械部品、食品・薬品製造機部品
アルミニウム系 ダイカスト材(ADC12相当) 軽量 アルミニウム製機械部品、多用途
チタン系 TiAl6V4 軽量、生体との親和性良好 航空機、インプラント等医療分野
インコネル系 Ni5Cr18Mo5 耐熱性良好 航空機、自動車関連
銅系 純銅、銅合金 熱伝導性、電気伝導性良好 熱機器、電気機器

各金属材料の特性については、他の記事でも解説していますので、そちらも合わせてご参考ください。

ここまでは、金属3Dプリンターの概要について簡単に紹介しました。次は、造形方法についてもう少し具体的に解説していきましょう。

金属3Dプリンターの構造と造形方法

ここでは例としてレーザ溶融法(SLM)を採用している金属3Dプリンターの原理と構造を説明します。
<表3>に金属3Dプリンターの代表的な仕様を示します。装置は日々開発され、それに伴い仕様は次々に変化するので参考として下さい。

<表3>金属3Dプリンターの装置仕様例
造形方法 レーザー溶融法 積層造形
造形サイズ 250x250x250mm など
造形積層ピッチ 0.02mm~0.05mm
材料 合金金属粉
※参考 コンセプトレーザ社 資料(2017年8月)

<図1>に材料の金属粉供給時とレーザ照射時の3Dプリンターの構造を示します。

3Dプリンターの構造、材料の金属粉供給、レーザ照射機構
<図1>3Dプリンターの構造、および材料の金属粉供給とレーザ照射機構

(1)材料供給時

左から材料バケット・造形ステージ・余剰分バケットが配置されています。
材料バケットには上に移動する供給エレベータ上に金属粉末が貯蔵されています。
供給エレベータは1サイクルに数10ミクロン上昇し、コータ―はもち上った金属粉を掻き取り右に移動させ造形ステージに供給します。
造形ステージのエレベータは一回の造形厚さ分だけ低下し、そのスペースにコータによって金属粉が供給され、敷き詰められます。余った金属粉は余剰ボックスに落下・溜められ、再利用されます。

(2)レーザ照射時

金属表面へのレーザ照射に当たっては、
①コンピュータでSTLベースの3DCADデータを層ごとにスライスして、各層の照射形状を決めておき、
②層ごとの形状データに基づき、レーザは金属粉表面上に2次元的に高速位置決めされ、表面を照射・溶融・固化させます。

レーザ溶融法(SLM)では、現状400ワットほどの高出力レーザが使用されています。

上広がりの容器形状の造形プロセス
<図2>上広がりの容器形状の造形プロセス

それでは次に、具体的に<図2>(3)のような、器状の目的形状を作成する場合の手順を解説します。

<図2>の(1)において、
まず、造形品の土台となる造形ベースをエレベータの上部の板にねじで固定しておきます。

①1層目は器の底部分を造形します。ベース上に敷き詰められた金属粉にレーザが器の底形状の円形に照射し、金属粉が溶融・固化されます。

②1層目が完了するとエレベータは1層分の厚さ(積層ピッチ分)だけ降下し、そこに新たな金属層が敷き詰められます。

③2層目からは器の側面部分を造形します。円輪状にレーザが照射され、金属粉が溶融・固化されます。

④②、③を繰り返し器の形が造形されます。このとき、レーザの照射されない部分の金属粉は固化していないので、器造形物は金属粉に埋もれた状態となります。

⑤造形ベースをプリンターから下ろします。<図2>(4)このとき、レーザで照射されていない部分の金属粉は固化していないので、造形物は金属粉に埋もれています。

⑥刷毛などで金属粉を丁寧に除去したます。<図2>(5)

⑦造形された器を、コンター(電動帯のこぎり)などで造形ベースから切り離し、造形の完了となります<図2>(6)

3Dプリンター加工による造形は積層造形であるため、造形物の表面は細かい段差のある形状となります。そのため、1層の厚さを薄くすればするほど、表面段差は小さくなりますが、積層回数が増え、造形時間が増えてしまうため、造形時には注意が必要となります。

金属3Dプリンターの特長と課題

ここまで、金属3Dプリンターの概要と造形の流れを簡単に解説してきました。
金属3Dプリンターには数々の利点があり、機械の設計思想・生産思想にイノベーションを起こす可能性がありますが、必ずしも万能ではありません。金属3Dプリンターの特長と課題について以下にまとめました。<表4><表5>

<表4>金属3Dプリンターの特長
# 特長 内容
1 機械設計の自由度が高い ①機能・効率オリエンティッドな形状設計が可能
⇒開発機械の高性能化
 軽量化、 低コスト化、 新機能の実現
2 コストパーフォーマンスが良好 ①数個から数10個の部品を一体化可能
②金型、治具の必要な少量生産品コスト低減
3 開発リードタイムを短縮できる ①ダイカスト部品は試作金型不要
②加工に必要な刃物、治具の物量数低減
③部品機能試作・評価のスピード向上
<表5>金属3Dプリンターの課題
# 今後の課題 内容
1 材料コスト 原料の金属粉体造粒の低コスト化
2 造形精度・速度 ①造形精度向上と高速化
②残留熱応力によるひずみ、反りの低減
3 後処理工数 ①サポート材の形状工夫による除去工数の削減
②最終的にはサポート材の無い造形方法
4 設備の購入費、保守費 ①装置購入費用の低減
②付帯設備費用の低減
③メンテナンス費の低減
5 機能拡大 ①異種金属を用いた造形
②傾斜組成などの高機能化
③造形物の大型化

金属3Dプリンターの活用領域

3D金属プリンターは従来の加工では不可能であった形状も造形できることから、機械設計の自由度が高く、性能向上や軽量化が特に強く求められる航空機部品製作に利用され、大きな成果を上げています。
また、金型製作への適用も期待されており、3Dプリンターと加工機を組み合わせた複合加工機が開発されています。原理的にはレーザ照射と高速切削仕上げのサイクルを繰り返して、造形する方式です。

金属3Dプリンターが活用されている主な部品
航空機部品:航空機エンジンカバー用ヒンジ、航空機エンジンの燃料ノズル、航空機エンジンのタービンのブレード 等
金型 :深リブ加工を用いる金型、冷却水管 等

まとめ

ここでは、まず押さえてほしい金属3Dプリンターの基礎知識について解説しました。他の記事では、金属3Dプリンターを用いて造形する際の流れとサポート材の配置の工夫や、実際に提供されている金属3Dプリンターサービスについても紹介しています。ぜひ、そちらも合わせてご参考ください。

既に述べたように、3Dプリンター技術は積層造形であり、形状データがあれば、複雑な形状の部品も型や刃物を用いず、図面もなしに欲しい形状を得ることができます。
また、従来の加工技術では不可能な形状、たとえば複雑な中空形状も比較的容易に形成できます。従来の加工技術と3Dプリンターによる付加加工を巧みに組み合わせることで、更なる価値の増大が期待されており、つい高精度な造形にも期待してしまいたくなりますが、積層造形という原理的に、切削加工と同等の高精度な造形はできないことについても理解しておくことが重要です。メリット・デメリットを正しく理解して、部品製作の目的に沿った活用を検討しましょう。検討の際には、できるだけ専門家の方へ相談することをおすすめします。

以下の企業では、金属3Dプリンターを用いた試作への相談にご対応されています。 金属3Dプリンターを用いた試作を検討されている方は、ぜひ一度ご相談してみてもよいかもしれません。

白銅株式会社
非鉄金属および鋼、プラスチック材料の専門商社白銅は、「ダントツの品質」、「ダントツのスピード」、「ダントツのサービス」、「納得の価格」でお客様のモノづくりを強力にサポートします。
株式会社仙北谷
要望があればお客様へのコンサルティングにも対応。仙北谷は、切削・放電加工・3Dプリンター加工を用いて、試作・単品加工、治工具や金型の設計製作を中心に事業を展開している会社です。

また、(株)仙北谷さんには、試作条件に応じた加工選びのコツについてもお聞きしています。金属3Dプリンターのお話はもちろん、試作でよく用いられる切削や鋳造についても紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

金属材料を用いた試作加工のご相談はこちらから

株式会社クライム・ワークス
企業や研究機関の開発支援を行う試作メーカ。新製品の開発工程における試作品の製作、検証用治具の提供だけでなく、協力会社と連携して量産試作に向けたユニット品の製作まで対応します。
プロトラブズ合同会社
IT(情報技術)を活用して自動化、標準化を導入。より拡張性のある短納期プロセスを確立させたことにより、短納期での試作・小ロット生産を実現したオンデマンド受託製造会社です。