今さら聞けない!金属加工の種類と特徴、選定時の注意点

はじめに

材料を所定の形に加工することで機能を待たせる部品製作は、製品製作においてとても重要なプロセスです。
部品製作の一般的な流れは

(1) 設計図作成(機械設計に基づき、部品製作図や機械組立図を作成)

(2) 加工工程設計(加工方法・加工順、加工時間、使用する加工機械を設定)

(3) 材料調達

(4) 製作

と続きます。
設計図では材質や形状だけでなく、部品に求められる強度や硬度、耐摩擦性、耐蝕性、耐浸性、寸法精度等、様々な仕様を指示します。この時、加工方法を考慮しながら設計することはとても大切です。
また、部品に求められる仕様や、保有するリソースに合致した部品を製作するために重要になってくるのが加工工程の設計です。技術的・設備的なリソースの強みを有効に使うために、生産技術や製造技術の担当者とも相談しながら進めるとよいでしょう。
本記事では、加工工程の設計を行うために必要な基礎知識として、代表的な加工原理と加工方法とその特徴を紹介します。
また、他の記事では、金属部品の加工工程の流れや、一般的に製品ができるまでの流れについて解説しています。そちらも合わせてご参考ください。

金属部品の加工方法は「機械加工」、「熱処理加工」、「表面処理」の3種類に分けられる

はじめに、金属加工方法の種類について説明します。1. 金属を所定の形にする「機械加工」、2. 金属の機械的性質を変える「熱処理加工」、3. 金属の表面の性質を変える「表面処理」の3つに大きく分類することができます。
各加工方法の種類について、主なものを紹介します。

1. 機械加工

材料から製作図面に示された形状に加工することを機械加工といいます。機械加工はその原理から大きく4つに分類されます。

(1)成形
成形には大きく3種類あり、材料を溶融し型に流し込み所定の形を得る鋳造、大きな力で材料を変形させ所定の形を得る塑性加工、金属粉末を型で成型し、高温で粉末同士を結合させ強度を得る焼結があります。<表1>

<表1>成形:型にはめて所定の形状を作る
加工方式 方式説明 加工手法名
鋳造 材料を溶融し型の中で凝固させ所定の形状にする 重力鋳造
ダイカスト鋳造
低圧鋳造
ロストワックス
連続鋳造
塑性加工 材料を大きい力で変形あるいは切断し所定の形状にする 自由鍛造
型鍛造
押し出し
引き抜き
圧延
曲げ加工
深絞り加工
せん断加工
ファインブランキング
順送型プレス加工
焼結 材料粉で所定の形状を作り焼成することで強度を得る 焼結加工

各加工方法について、以下の記事で詳しく解説しています。ご参考下さい。

(2)除去加工
除去加工は、所定の形状を作るために不要な部分を取り去る加工です。刃物で削る切削加工、砥石で削る研削加工、砥粒で削り精度の高い滑らかな表面を得るラッピング加工、電極と金属材料の間で放電させ、金属を溶かして除去する放電加工などがあります。
<表2>

<表2>除去加工:不要な部分を取り去り所定の形状を作る
加工方式 方式説明 加工手法名
切削 刃物によりワークを削る 旋削加工
フライス加工
穴あけ加工
歯車加工
ブローチ加工
研削 砥石によりワークを削る 平面研削
円筒研削
芯なし研削
両面研削加工
ホーニング加工
超仕上げ加工
ELID研削
砥粒研磨 砥粒によりワークを削る ラップ加工
バレル加工
放電加工 電極とワークの間で放電させ、ワークを削る ワイヤ放電加工
型彫り放電加工
切断加工 溶融あるいは高エネルギーでワークを切断する レーザ切断
ガス切断
ウォータージェット切断
※ワーク:作業対象となっている加工対象物のこと

以下の記事では除去加工について、詳細にまとめています。ご参考下さい。

(3)付加加工
付加加工は、必要部分に材料を付加して所定の形状を作る加工で、最近注目を浴びている3Dプリンターによる積層造形があります。また、複数の金属でも造形ができるため、構造の複雑な航空機のエンジン部品にも実用化されています。<表3>

<表3>付加加工:材料を付加して所定の形状を作る
加工方式 方式説明 加工手法名
積層造形 必要な部分に材料を付加・固化し所定の形状を作る 金属3Dプリンター
(Additive manufacturing)

(4)結合
部品材料同士を結合し機能や所定の形状を得る加工です。特に接合技術は電子機器から大型構造物に至るまで様々な製品の生産・製造のために重要な技術のひとつです。<表4>

<表4>結合:部品同士を結合して所定の形状を作る
加工方式 方式説明 加工手法名
材質的結合
(接合・溶接)
対象物同士を材料的に結合する方法であり、材料を強固かつ高性能に結合できる 接合
溶接
圧接
ロウ付け
ハンダ
機械的結合 継手として応力を伝達することは可能だが、材料的には接合していない ボルト締め
カシメ
焼バメ
化学的結合 水素結合等の弱い結合力により接合されている 接着
蒸着
メッキ

以下の記事では接合加工について、詳細にまとめています。ご参考下さい。

2. 熱処理加工

部品に高温低温の履歴を与え結晶組織を改善し、硬さを増したり、靭性を増したりすることを目的とした処理を熱処理といいます。

(1)全体熱処理
部品全体の金属組織を変える目的で、主として鋼材に適用される熱処理としては、焼き入れ・焼き戻し処理があります。加工硬化した材料を軟化させる方法として焼きなまし処理が、材料の結晶組織整える方法として焼きならし処理があります。焼きなましはアルミニウム、真鍮など鋼以外の材料にも適用します。
他に、鋼の経時変化を抑制するサブゼロ処理、合金成分を溶け込ませ改質する固溶化処理があります。<表5>

<表5>全体熱処理:部品の全体組織を改質する
加工方式 方式説明 加工手法名
熱処理 熱サイクルにより金属材料の組織を改善する 加工手法名
焼き入れ
焼き戻し
焼きなまし
焼きならし
特殊熱処理 0℃以下に冷却するなどして材料の合金成分を固溶させる材質改善 固溶化熱処理
サブゼロ処理

(2)表面熱処理
部品表面のみを加熱し焼き入れを施す方法や、表面に炭素を浸み込ませ、焼き入れを施し表面を硬化させる方法があります。部品を高温の窒素雰囲気中に置き、窒素を浸み込ませて表面を硬化させる窒化処理もあります。<表6>

<表6>表面熱処理:部品表面の組織を改質する
加工方式 方式説明 加工手法名
表面焼入れ 高温化で炭素を表面に含浸させ、その後急冷し焼き入れを行う等表面硬化 加工手法名
炎焼入れ
高周波焼入れ
レーザ焼入れ
電子ビーム焼入れ
熱拡散処理 高温下の窒化雰囲気に部品を置き、金属表面を効果させる 浸炭焼入れ
浸炭窒化焼入れ
窒化処理

3. 表面処理

表面処理は部品の表面に保護膜を形成させ耐蝕性や潤滑性能などを付与する処理です。

(1)電気化学処理
対象の部品表面に金属を付着させるめっき、処理剤を利用する化成処理、電解溶液中で酸化させる陽極酸化処理があります。<表7>

<表7>電気化学処理:部品表面に金属膜、酸化膜を生成させる
加工方式 方式説明 加工手法名
めっき 金属の表面に金属の薄膜を被覆する 加工手法名
電気めっき
無電解めっき
化成処理 金属の表面に処理剤を作用させて化学反応を起こさせ、耐食性、表面親和性などの改質を図る 3価クロム化成処理
リン酸塩処理
陽極酸化 電解質溶液中に金属を浸し、金属を陽極(正極)として通電し酸化被膜を作る アルマイト処理

(2)塗装
塗装とは、対象物の表面を塗料の被膜で覆う表面処理法です。防錆用や耐候性に優れ熱い被膜を作るもの、装飾用や耐光性に優れ発色よく光沢ある表面に仕上がるもの、艶消し等特定の性質を持つもの等があります。塗料には液状の流動性塗料と粉末状の粉体塗料があります。<表8>

<表8>塗装:部品表面に塗膜を付着させる
加工方式 方式説明 加工手法名
流動性塗装 対象物を塗料に直接浸したり、対象物に塗料を流したりするバルク塗付とスプレー等で吹き付ける霧化塗付がある 流し塗り
ローラー刷毛塗り
電着塗装
スプレー塗装
粉体塗装 粉末状の塗料をを塗り付ける 静電粉体塗装
流動浸漬塗装

(3)物理的表面処理
金属鋼球を部品表面に衝突させ、表面を均一に塑性変形させることで加工硬化生じさせ高い硬度を得るショットピーニング。対象物の表面に細粒の粉体を衝突させ、酸化膜などを除去するサンドブラスト加工があります。<表9>

<表9>物理的表面処理:部品表面の改質
加工方式 方式説明 加工手法名
ショットブラスト 粒上物を空気圧等で対象物にぶつけることにより、対象物表面を硬化、錆とり等の改善をする ショットピーニング
サンドブラスト

最近注目の新しい加工方法(積層造形(3Dプリンター))について

ここでは、従来の加工方法とは一線を画す新しい加工法、積層造形(3Dプリンター)についてもう少し解説したいと思います。
「積層造形」とは、材料を一層ずつ積み上げながら、所定の形状を作り上げる加工方法のことであり、最近では、Additive manufacturing, AM(付加製造)と呼びます。3Dプリンターは部品の3次元データから直接形状を作ることで、加工工程を大幅に削減することができるため、ラピッドプロトタイピングとも呼ばれ注目されています。
これまで部品の試作を行う際には、鉄鋼やアルミニウムのむく材を総削りで製作するか、試作金型で製作するかのどちらかの方法をとっていたため、試作に長時間を費やしていました。一方、3Dプリンターは、3次元データをインプットするだけで、短時間に製作できるため、開発試作の大幅なスピードアップとコスト削減が期待できます。その他にも、従来の加工方法が持つ制約をクリアすることによって、部品製作の新たな可能性が生まれているようです。

・組み立て部品を、単一部品として成型することによる更なる生産性向上

・金属塊の中に球形空孔等を形成することによる機械強度と軽量性の両立

・新材料の活用や機能性・省資源(使用素材低減)を重視した形状設計など

用途によっては加工精度を満たせない、金属粉末材料の種類が限られるなどとまだまだ課題もありますが、この領域の発展に注目が集まっています。

金属材料を用いた積層造形(3Dプリンター)については、他の記事でも解説しています。合わせてご参考下さい。

金属加工方法を選定する際に重視すべき3つのポイントはこれ!

これまで、代表的な金属加工原理と加工方式を紹介しましたが、種類が多くどの加工方法を選定すれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。
加工方法を選ぶにあたり、まず考慮したほうがいいのは部品の①要求仕様への合致度、②製作コスト、③製作期間です。これらの考慮事項の重要性はその部品を製作する目的によって異なります。ここでは研究開発品の試作と量産製品試作を例にそれぞれ考慮事項の重要性を考えてみましょう。

(1)研究開発品の試作

① 仕様合致度

研究試作は機械の機能・性能の実証実験ですので、図面仕様を満足した加工部品を使用する必要があります。ただし、実証実験に関係しない個所は、ありものの部品を使用するなどして、早期に実験・評価に移行し試作を加速させる等の対応も必要です。

② 製作コスト

限られた研究費を有効に使う上で重要です。コストの安い加工方法を見出し、実際の量産に採用されれば、ビジネスに大きく貢献できます。

③ 製作期間

研究スピードを早める上で重要です。納期、加工精度を考慮し自社で製作するか、外注先で製作するかの検討も含まれます。

(2)量産製品の試作

量産製品の試作にあたっては、前項の①~③に加えて④量産体制も考慮に入れる必要があります。例えば、生産量に応じて同じラインを複数構築できるかどうかといった視点です。
また、開発のステージによっては考慮項目の優先順位が変化します。例えば量産試作のステージではいち早く製品を世に出すべく開発スピードを高めるために納期を優先しますが、量産ステージに入ると経営状況によっては増産を優先しコストを圧縮させるケースもあります。
また、金属加工方法を選定する際にまず押さえておきたいポイントを試作メーカーさんにお聞きしています。具体例を含めながら解説していますので、そちらも合わせてご参考ください。

まとめ

ここまで、金属加工方法とその工程設計についてご紹介しました。
近年、サステイナブルな社会を目指すため、少ない材料で・安く・効率の良い製品の開発を担う機械加工はさらに進歩していくものと考えられます。また、ITや機械技術の高度化に伴い、機械化・自動化・情報化による加工技術が急速に進展し、NC複合加工機や3Dプリンターをはじめとする高機能化した技術力・設備が台頭してきました。これらにより、加工工程の集約、効率的なロット生産が可能となり、プロセスリードタイムの短縮と在庫削減を実現しています。
より良い加工方法の選択、新しい加工方法や新しい製品の実現のために、まずは金属加工の本質を理解しましょう。

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