基板実装の品質と効率を左右する接続端子の選び方

身の回りにある自動車、携帯電話、コンピューター、家電製品等、さまざまな電化製品に欠かせない電子回路は、基板上に様々な部品が実装されそれらが互いに接続されて、機能を果たしています。近年、IoT時代と呼ばれ、ウェアラブルデバイスの小型化・軽量化が進み、自動運転システムを備えた自動車の開発が活発化するなか、センサーやカメラなどの新たな部品を搭載する製品が増えています。このような背景の中で、製品化に向け部品をいかに効率よく省スペースに収めるか、組立を簡便化するかといった実装における課題は大きくなる一方です。
今回は、電子部品の実装において陰の立役者ともいえる接続端子に焦点を当て、30年以上の歴史を持つアイクレックス株式会社の接続端子製品と加工・組立サービスについてご紹介します。

端子を作り続けて30年アイクレックス社の紹介

アイクレックス株式会社
アイクレックス株式会社

アイクレックスは1988年に株式会社ASエンジニアリングとして埼玉県川越市に創業し、以来2011年埼玉県狭山市の新社屋に移転後の現在に至るまで、主に接続用端子や電気接続用部品類の設計製造販売を行ってきました。端子の成形加工にとどまらず、挿入機の開発も行うことから、実装(挿入)技術も保有しています。したがって、接続用部品を購入したお客様が実際に製品に実装するところまでを想定して、適切な製品の提案が可能です。
アイクレックス株式会社 営業部 松本氏にお話を伺いました。

端子を基板実装する時の課題

実際に端子を基板に実装する際に想定される課題にはどのようなものがあるのでしょうか?これまで、クライアント企業から端子の挿入に関連して相談を受ける中で傾向はありましたか?

「これまでたくさんの案件に携わってきましたが、お客様の製品によって端子に求められることも異なりますので、案件ごとに悩みごとも千差万別です。しかし、だいたいのケースで以下の空間・環境・工程の制約のうちいずれか(もしくは複数)が関連しています。」

(1) 空間の制約

「製品内で設計通りに部品を組み立てることは、当たり前のことのように思えますが、案外難しい時もあります。周囲の部品と干渉せずに、限られたスペース内に部品や基板を収めるためには、その接続に使用する端子を配置するスペースにも制約が出てきます。」

「前後の工程で作業の邪魔にならないか、または部品があっても実装が可能かどうかを考慮する必要があります。端子の大きさ、間隔、形状など、適したものを選ぶことで限られた空間でもある程度自由度をもって実装することが可能になります。」

既存の製品の小型化を目指す場合等、空間の制約はますます重要になってきますね。

(2) 工程の制約

「できるだけ少ない工程で部品を実装することは、生産コストに直結する重要な要素です。複数の接続ピン端子を挿入する場合は、既にピンが等間隔で固定されているピンヘッダーを使用し一度に複数の端子を挿入したり、自動で端子を連続挿入する機械を導入したりすることで工程を削減することができます。ピン端子を1本1本冶具などにセットして挿入することに比べ、工数の削減だけでなく、挿入精度の向上も期待できます。」

(3) 環境の制約

「考慮しないといけないのは必ずしも生産工程だけではありません。製品によっては、実際に使用される環境に応じた対応が求められます。例えば、自動車など、温度差の大きい環境で使用される製品では、端子の変形や、強度低下の恐れがあります。環境に合った端子の種類を選択することが必要です。」

フルカスタムピンヘッダーで端子挿入の課題を解決する

さまざまなピンヘッダーを見せていただきました
さまざまなピンヘッダーを見せていただきました

端子接続の3つの制約について教えていただきましたが、これらによって生じる課題を解決する御社の主力サービスがフルカスタムピンヘッダーということですね。まず、ピンヘッダーとはどういうものなのでしょうか?

「ピンヘッダーを用いることで、複数のピン端子を任意の本数・間隔で一度に挿入(設置)することができます。また端子を補強する効果もあります。代表的なものは、細長い基板(ベース部)にピンが等間隔で一列に並んでいるもので、市販品も標準品としてネット販売されています。この場合、ピンのピッチ(間隔)など、最適なものを選択することになります。」

「一方、空間の制約上、市販品にはないピッチでピンを挿入したい場合やピンの長さを変えたい場合も発生します。このような場合に、弊社のフルカスタムピンヘッダーサービスをご利用いただいています。」

どのようなカスタマイズが可能なのでしょうか?

「フルカスタムでしたら、①端子(種類・形状・サイズ)、②ベース部(種類・形状・サイズ)、③ピッチ、の3点のカスタマイズが可能です。また、これらを最適な組み合わせでカスタマイズすることも可能です。」

ピッチを自由に変える
端子の長さを自由に変える

御社のフルカスタムピンヘッダーはどのような業界や製品向けに用いられていますか?

「最終製品は多種多様ですね。産業機器や車両関係、家電などに組み込まれる多種多様な部品に用いられています。」

「産業機器であれば、多関節ロボットやガスメーター、リレー、液体/空圧制御装置(圧力センサー、真空レギュレーター、圧力センサーコントローラ、電磁弁、デジタル圧力スイッチ、など)、LEDドットマトリックスなどがあります。」

「自動車であれば、エアバック作動用センサーやウィンカー、電動自転車の電源などが挙げられます。」

「弊社の端子は特定の業界や製品用途に特化していないので、基板の接続でお困りの事があれば、どんな製品でもご相談いただけると思います。 他にも鉄道模型のレールにも採用されたケースがあります。」

これまで、どのようなカスタマイズによって課題を解決してきたのか具体的な事例を教えてください。

フルカスタムピンヘッダーによる課題解決事例

複数種類の端子を組合せる

信号線・電源など、複数の種類の端子を用いる部品の実装時、ピンヘッダーを複数設置するスペースがなかったため、同じベース上に複数種類の端子を挿入したヘッダーを提供しました。

基材の形状を変える

ロータリーエンコーダーなどの円形の部品など、基板の形が特殊な場合、通常の直線配列のピンヘッダーを配置すると面積のロスが大きくなってしまいます。
ヘッダーのベース部の形を部品に合わせて変えることで、効率的にスペースを使うことができました。

ピンの形状を変える

スルーホール基板では、穴の内側にメッキがされていて表と裏をつないでおり、そこにピンを挿してハンダ付けを行います。
自動車をはじめとする温度差がある環境では、繰り返しの温度変化でピンの伸縮が起こり、ハンダ付け部に力がかかって接合が弱くなるという問題が発生していました。
ピンの形状を直線ではなくウェーブ形状にすることで、伸縮による影響を緩和しました。

接続方法を変える

部品を実装した後に基板同士を重ねて接続したい場合など、ハンダ付作業をすることが難しい場合があります。
ピンを押し当てて接続するスプリングアクションタイプのピンヘッダーを採用することで、ハンダ作業の難しい箇所での接続を可能にしました。
基板同士を正しい位置で合わせるだけでカチっと嵌めることができるので、組み立て作業の終盤で活用されています。

基材を分離する

ペースが限られており、ピンヘッダーを設置するスペースすら確保できない場合があります。一方で、一本一本端子を挿入するのもとても手間となります。
そこで、ピンヘッダーを挿入した後で、ベース部を折り取ることのできる設計に変更しました。これにより、もとは10本ほどの端子を一本一本挿入していたのに対し①ヘッダーの挿入、②ベースの折り取りの2ステップで挿入が可能になりました。


ピンヘッダーのベース部には基本的にプリント基板と同様のガラスエポキシ基板(FR-4)を用いています。材質間で温度による伸縮の差が少ないので、リフロー方式のハンダ付けなどで発生する熱による変形を防ぎます。

サービス利用の流れ

「基本的にどのサービスも同様の流れで進めます。お客様のご要望、ご相談内容をお伺いし、社内の知見をフル活用して対応します。」

アイクレックスのサービス利用の流れ
アイクレックスのサービス利用の流れ

「納品方法は、基本的には製品仕様やお客様のご希望に合わせて、保護のために、緩衝材の使用や、スティックへの梱包、そのまま機械にかけて実装する場合にはトレイやリール状にして納品することも可能です。」

フレキシブルでスピーディな連続接続端子挿入システム

アイクレックスの連続ピン端子挿入機
アイクレックスの連続ピン端子挿入機

「ピンヘッダーは、端子をユニットにして、基板に挿入することで工数を削減し、挿入精度を向上しますが、さらにたくさんの端子を挿入する場合やボビン等の成形品に端子を挿入したい場合などには、機械を使って基板に直接端子を高速で打ち込む、「プリフォーム連続接続端子挿入システム」を導入いただく場合もあります。」

「ピンヘッダーのようにベース部のスペースを必要としないので、部品実装スペースに余裕ができます。また端子の挿入ピッチや挿入パターンについても挿入機のプログラムでさまざまに設定可能です。」

本システムはオリジナルのプリフォーム連続端子と連続挿入機で構成されているのですね。それぞれの特長を教えて下さい。

プリフォーム連続端子

連鎖状のピン端子を基板やボビンに自動挿入
ピン端子の基本的仕様

「弊社のプリフォーム連続ピン端子は、用途や目的に応じて、先端や圧入部にさまざまな加工を施すことができます。仕様上対応可能な範囲内であれば、金型などのイニシャル費をかけずに製作できます。また、ピンは連続した一本のリール状になっており、1本ずつ切り離して挿入するため、パーツフィーダによるバラ挿入に比べて挿入確率が高くなります。」

連続挿入機

 

アイクレックスの連続ピン端子挿入機(ライトアングル)

 

 

「1時間に約6,000~14,000本という高速位置決め挿入性能を誇ります。プログラム制御により、位置決め、端子切り替えなどに対応します。挿入パターンを変更する際も治具の交換は必要なく、NCのチャンネル操作で挿入プログラムの変更ができます。プログラムの設定から、操作方法のレクチャー、アフターフォローまで行いますので安心して導入いただけます。」

本システムは、設備投資が必要ですが、生産計画によってはコスト削減と設計の自由度が向上しそうですね。

「そうですね。小ロットで製作したい場合など、お客様のご要望によっては、弊社にてモジュールのアセンブリを行う『接続端子アセンブリサービス』を選択いただくこともあります。プリント基板にご要望の通りに端子を挿入して納品する、いわゆる『端子付きプリント基板』だけでなく、一度お預かりした成形品や支給基板に端子を打つことも可能です。」

全社挙げてお客様の課題解決に取り組む

「弊社ではお客様のニーズに応える力・新しい製品を作り出す力・継続して改善していく力を強みとしています。営業がお客様からいただいてきた課題を2週間に1回、営業・技術・経営が集まって対応方法を協議する場を設けています。三者が一同に会することで、アイディアがブラッシュアップされ、内部コストがかかる場合は、実施するかどうかの経営判断もその場で行うことができます。全員で課題に取り組むことで、お客様の信頼を得る仕事ができていると思います。」

これまでで苦労した案件にはどのようなものがありましたか?

「問い合わせから製品化まで1年くらいかかった案件もあります。組みあがった製品の中の割り当てスペースが5mmくらいしかないことがわかったが、どうにかその中に実装したいという相談もありました。やっとのことで実装できる端子の形状のアイディアが出ても、形状が複雑で、加工方法を見つけるのにも苦労することも多々あります。自社で不可能な場合は協力会社を探して回ることもあります。」

「難しい案件であればあるほど、アイディアが形になり試作品を社員総出で製作している時の充実感はたまりません。お客様ごとに特製の逸品を作る仕事なので、毎月新しい部品が生まれ、お客様になくてはならない製品となり、リピートしていただくことが我々の仕事の醍醐味です。接続端子は目立たない存在ですが、このような部品の存在を広く知っていただき、課題解決に活用していただきたいと思います。」

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は、基板接続端子でお客様のQCDのバランス最適化をめざしているアイクレックス社のサービスをご紹介しました。新製品の設計時はもちろん、既存製品でも改善の余地があるかもしれません。基板の接続で困っていることがあれば、まずは相談をしてみてはいかがでしょうか。

アイクレックス株式会社

1988年に株式会社ASエンジニアリングとして埼玉県川越市に創業し、以来2011年埼玉県狭山市の新社屋に移転後の現在に至るまで、主に接続用端子や電気接続用部品類の設計製造販売を行う。端子の成形加工にとどまらず、挿入機の開発も行うことから、実装(挿入)技術も保有。接続用部品を購入したお客様が実際に製品に実装するところまでを想定して、適切な製品の提案が可能。

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