コストや製品性能に効いてくる賢い加工方法の選定とオーダーのコツ

みんなの試作広場ではこれまでもさまざまな金属加工方法についてご紹介してきました。しかし、これから製造する部品に最も適した加工方法を判断するには、さらに深い理解が必要かもしれません。
今回は金属加工方法を選ぶ時に押さえておきたい各種加工方法の特徴や考慮したいポイントについて、長年金属加工に携わる中野鍛造所代表取締役徳田氏にお話を伺いました。
鍛造はもちろん、よく比較される鋳造や切削についても豊富な知見をお持ちの徳田氏は、加工品の形状、強度、寸法精度、生産数・・・さまざまな要件を検討してはじめて、最適な加工方法を選択できると言います。鍛造加工を中心に、他の加工方法と比較を交えながらご説明いただきました。

加工方法のメリットを最大限に活用するには

「まずは対象の部品についてよく理解する必要があります。我々加工事業者は日々お客様の部品の機能的な要求や製造計画を考慮しながら、ものづくりのサポートに努めています。加工品が、製品のどの部分にどのように使われるのかを知っていれば、より良いアドバイスを行うことも可能です。」

「しかし、それらに関係する情報をいただけないと、ただ単に図面通りに作る他なく、お客様の製品の目的や用途に鍛造加工が適しているのかどうかの確信さえ持てないことがあります。」

「例えば、明確な判断基準の一つとして価格があります。強度を保ちながら軽量化、薄型化したいといった鍛造のメリットを求めているのであれば、鍛造加工向きですが、該当するものがないのであれば、同じ価格で提供する場合でも他の加工方法の方が安く作れる場合があります。」

「弊社には、本当は鍛造に向かないものであっても、鍛造で成型する技術はあります。しかし、不必要なコストをかけて鍛造することが本当にお客様のメリットになるのかどうか、常に考えています。」

一方で、研究開発者の方々は製品に関する情報を社外に出すことにどうしても抵抗がありますよね。自分で鍛造向きかどうかを判断する方法はありますか?

「いくつかチェックポイントがありますのでご紹介します。」

まずは形状をチェック。鍛造に不向きな特徴とは?

型鍛造の金型と加工品
<写真>型鍛造の金型と加工品

「例えば、型鍛造は丸棒などの金属材料を、製品の寸法・形状に合わせた一対の金型に入れて、圧力をかけ、製品をつくる方法ですが、加工品の形状が逆勾配になっている部分があると、金型から加工品が抜けなくなってしまいます。」

「このような形状の場合、鋳造であれば砂型を使って知るので、形状の自由度が比較的高く、若干の逆勾配があっても、加工が可能な場合があります。しかし、鍛造は金型を使っているため、砂型のように壊して取り出すことができません。」

(左)逆勾配の金型(右)正しい抜き勾配の金型
<図>(左)逆勾配の金型(右)正しい抜き勾配の金型

「形状を変えずにこのような加工品の鍛造を行うのであれば、勾配を減らすように多少肉付けし、切削加工で余分な部分を削る必要があります。そのため、コストは上がってしまいます。」

(左)切削加工で余分な部分を削る(右)パーティングラインの位置を変える
<図>(左)切削加工で余分な部分を削る(右)パーティングラインの位置を変える

「または、金型を工夫することで解決する方法もあります。一対の金型の合わせ目のことをパーティングラインと呼びますが、逆勾配にならないように、パーティングラインを変えて金型を作ることもあります。」

「この際、パーティングラインの位置に左右非対称の段差が生じると、素材が押される左右の力によって、(断層がずれるように)金型が押されてずれやすくなるため、型ずれしてしまい、金型が割れやすくなってしまいます。このような金型は持ちが悪く、鍛造加工費のコストアップにつながる要素になります。」

パーティングラインの設計の悪い例とよい例
<図>パーティングラインの設計の悪い例とよい例
左右非対称な部品の例
<写真>左右非対称な部品の例

部品の機能上、加工品の形状を変えられない場合でも、工夫次第で鍛造を用いることもできるのですね。一方である程度のコストアップも覚悟しなければならない。判断が難しいですね。

「そうですね。そこで私は、鍛造ならではのメリットが多く得られるのであれば、鍛造加工を検討することをお勧めしています。」

次に製品要件をチェック次の5つに多く当てはまれば鍛造向き

「部品の機能要件と照らし合わせ、以下に多く当てはまるようであれば、鍛造のメリットを多く享受できる、鍛造向きの部品と言えます」。

(1)安定した強さを出したい

「鍛造の一番の特徴は、成型品の強度が高く、またその強度のバラツキが非常に安定しているところです。鍛造によって、メタルフロー(ファイバーフロー)が生じ、材料が様々な方向に流れるため、耐衝撃性や曲げ強度が高くなります。単に、圧力がかかっているだけでなく、このメタルフローが生じるため、強度が高くなるのです。」

加工品の組織形状の比較
<図>加工品の組織形状の比較

「メタルフローが生じることで、硬さと、曲げてもパキッと折れないようなしなやかさが生じます。したがって、鍛造は強度を保ちながら、軽量化、薄型化が可能です。 日本刀も熱した鉄を叩くので、切れ味とともに靭性と硬さがあります。硬さだけだとガラスのように欠けやすく、靭性だけだと柔らかすぎて切れないので、そのバランスが重要です。」

(2)材料を節減したい

「鍛造は最終形状に近い形に成型してから、バリと呼ばれる余分な部分を切削によって取り除きます。切削加工で元の素材から削り出す場合に比べて、削りだす量は少なく済みます。そのため、材料を節約することが可能です。」

(3)量産したい

「切削加工では量産が難しいものでも、鍛造では量産が可能になるという特徴もあります。 数個の部品を作るのであれば代替の部品は切削で削り出して作ることもできます。しかし、数千、数万の数量を作ろうとすると削り出しでは時間がかかり過ぎてしまいます。鍛造加工は力をかけて一気に最終形状に近い形まで成形するので、一度金型を作ってしまえば一つ一つの加工スピードは早いです。ある程度の成型を鍛造で行い、その後に切削加工で形を整えるほうが効率的で安価な方法です。」

(4)内部欠陥を減らしたい

「鍛造することによって、組織が緻密になり、内部欠陥がなくなるため、引張り強度、硬さなどの機械的性質のバラつきが最小限に抑えられます。」

「鋳造は形状の自由度は高いですが、巣が発生しやすいので強度が落ちます。やはり形状と、強度、コストなどの複数の要素のトータルバランスが重要です。一見鋳造の方がコスト低く見えても、巣の検査等を考えると、結果的に鍛造と変わらないこともあります。」

(5)寸法ばらつきを減らしたい

「砂型鋳造はロットごとにバラツキが出てしまうので、一般的な砂型鋳造は鍛造に比べると寸法精度は下がります。鋳造加工法の中にはアルミダイキャストや蝋型で鋳造するロストワックスといった精密鋳造方法もありますが、生産性は鍛造加工と比べると低くなりますので、それぞれの特徴を理解した上で検討することが大切です。また、鍛造加工の中でも冷間鍛造の方がより高い精度を実現することができます。」

何をどこまで求めるか?コストに効いてくる確認ポイント

部品の機能要件を満たした上で、すこしでもコストを安く抑えたい場合、着目すべきポイントはありますか?

「そうですね。まずは以下の2点を確認いただきたいと思います。」

変形度合い

加工品の例
<写真>加工品の例
鍛造に用いられる丸棒素材
<写真>鍛造に用いられる丸棒素材

「形状の複雑度によっても、コストは変わって来ます。左の写真の二つの加工品のうち、複雑なのはどちらだと思いますか?右の単純な丸、四角の形状をしているものより、左の方が面の数が多く、複雑ですよね。鍛造は右の写真のように円柱の素材を縦か横に配置してプレスでつぶして成型します。もとの素材からの変形度合いが大きいほど、複雑になり、成型が難しくなります。この時に着目すべきは加工品の面の数です。面の数が少なければ少ないほど鍛造向きですし、欠陥も出にくくなります。」

「また、この写真の例ように複数のパーツが角度をつけて交わっているような形状のものは、金型も複雑になるため、コストがあがります。同じ重量のものを作るとしても、形状が複雑、金型が作りにくい、慎重な管理が必要など、手間がかかる方がコストはかかります。」

「ロゴマークや品番などを入れる場合も、マークがつぶされないようにするため、金型の管理費は高くなります。一方ロゴマークがあることによって、お客様内部での管理が簡単になるメリットもあります。」

寸法精度

「加工品の図面には必ず寸法が記載されていますが、どの部分の寸法に精度を求めるかを見極めて、ある程度のフレキシビリティを持つと、コストを抑えられる場合があります。」

「例えば、ある鍛造品のリブに±0.1㎜の寸法公差があるとして、このリブの用途を抑えておくことは役に立ちます。もし、すべり止めのためのリブなのであれば、この±0.1㎜にそこまでこだわる必要がなくなります。すべり止め用のリブであれば、経時劣化などで寸法が多少変わってしまっても、大きな問題ではないからです。その結果、コストが大幅に変わってくることもあり得ます。部品の設計意図や、部品の機能的要件を理解することで結果的にコストを安く抑える道を見つけられることがあります。」

「一つの加工品の中でも精度を求める部分とそうでない部分がある場合があります。私達は”急所”と呼んでいますが、あらかじめその位置をおさえておくことで、金型設計の際に反映させることができ、お客様にメリットを提供できます。」

加工単価が下がっても、組立、検査、管理など、その他の工程で余計なコストがかかってしまうことが考えられますね。製品にまつわるコストを総合的に見て判断することが大切だということが分かりました。

オーダー上手になるために、発注時に伝えておきたいこと

「我々は長年金属加工に携わっていますから、いろいろな知識が蓄積されています。オーダー時に相談いただければ、よりよい提案を行うことが可能です。例えば以下のような例があげられます。」

他の部品との適合性

「設計段階において部品用途をふまえた最終構造を検討しておくことは勿論、後工程についても注意を払う必要があります。ある産業用機械部品では、四角柱状の部品を図面の寸法通りに作ったのですが、後になって他の部品と焼き嵌めをする工程があることがわかりました。もし焼き嵌めすることを知っていたら、焼き嵌めに適した円柱状を提案することができました。加工品の後工程の内容などもオーダー時に伝えておくとよいかもしれません。」

加工品の使用環境

「加工品が使用される時に、水が流れるのが、それともガスが流れるのか、かかる圧力はどのくらいかなどについては事前に確認できるとよいです。使用環境に応じた材料の選定、加工方法を選定することができます。」

まとめ

いかがでしたでしょうか。金属の加工方法を賢く選定するためには、まず加工品の用途をよく理解し、加工の目的と加工方法から得られるメリットが合致しているかを確認することが重要でした。また加工方法に不向きな特徴やコスト削減の余地を見極める目の付け所についてもプロの知見をご紹介しました。金属加工方法の検討や発注の際に活用いただければと思います。