金属粉末射出成形(MIM)を用いた金属部品の製造工程~MIM入門講座(2)

金属粉末を原料とすることで、複雑形状の部品を高い精度と強度で量産することができる非常に優れた部品製造方法である金属粉末射出成形(MIM)。この記事では、MIMによる部品製造工程と、そのなかでも品質を大きく左右する脱脂工程で採用される主要な脱脂法について解説します。

▽MIM(金属粉末射出成形)入門講座シリーズ

1.金属粉末射出成形(MIM)による部品製造工程

MIMによる部品製造工程のなかで、部品が形作られる(造形の)主要な工程は、「射出成形」、「脱脂」、「焼結」の3工程になります。要求仕様に応じて、「コイニング(サイジング)」、「機械加工(2次加工)」、「熱処理・表面処理」の工程が追加され、「非破壊検査」工程などで部品の品質評価が行われます。
ここでは、造形前に成形材料であるペレット(コンパウンド)を製造するための、「混錬」、「造粒」工程から説明します。

混練工程

<図1>加圧混錬
<図1>加圧混錬

平均粒径約10μmの金属粉末と、体積比35~40%のバインダー(結合材、可塑材、潤滑材)を混錬機に投入し、加圧と加熱をしながら混錬します。

造粒工程

<図2>造粒
<図2>造粒

粘土状の混練物を、造粒機(ペレタイザー)にかけ、混錬物を加圧しダイスから頭を出した部分を回転刃で刈り取ってペレット(コンパウンド)を造ります。

射出成形工程

<図3>射出成形
<図3>射出成形

コンパウンドを射出成形機に入れ、可塑化して金型のキャビティ内にMIM材料を射出成形します。成形体をグリーンパーツと呼びます。射出成型機は、一般のプラスティック射出成型機と同じです。

脱脂工程

<図4>脱脂(左:溶媒脱脂 右:加熱脱脂)
<図4>脱脂(左:溶媒脱脂 右:加熱脱脂)

グリーンパーツを溶媒の中にいれ結合材以外のワックス類を溶かし出します(溶媒脱脂)。あるいは、加熱してバインダーを熱分解し揮散させます(加熱脱脂)。 脱脂体をブラウンパーツと呼びます。

焼結工程

<図5>焼結(左:バッチ式真空焼結炉 右:連続式焼結炉)
<図5>焼結(左:バッチ式真空焼結炉 右:連続式焼結炉)

焼結炉にブラウンパーツを入れて焼結します。焼結品をシルバーパーツと呼びます。 このシルバーパーツの寸法が、製品寸法になるように「バインダーが消失した体積部分の収縮量(伸び尺)」だけ大きく金型キャビティ寸法は作られています。

コイニング(サイジング)工程

MIMの一般公差以上の要求仕様に対して、必要に応じてコイニング(サイジング、矯正)を行います。コイニングは、矯正金型とプレス機などにより行われます。

機械加工(2次加工)工程

IT等級で、9級以上の精度が必要な場合は、研削加工、フライス加工、穴・ネジ加工、転造加工など、機械加工を行う必要があります。

熱処理・表面処理工程

MIM材は一般溶製材と同等の、熱処理や表面処理を行うことができます。

非破壊検査工程

寸法検査、焼結密度、化学分析とくに炭素含有量(C%)の管理は重要です。客先要求仕様で、重要機能部品ではX線検査や磁気探傷検査を実施することがあります。

2.MIM脱脂の種類と特徴

MIM製法の要は、「いかにしてバインダーを焼結前に完全に除去するか」ということです(故意に脱脂でバインダーを一部残し、焼結で炭化させて焼結体のカーボンをコントロールする提案もあります)。この脱脂法の違いは「脱脂技術」と「そのための樹脂選定と配合」にあります。量産で使われている主な3つの脱脂法「溶媒脱脂」「加熱脱脂」「触媒脱脂」を取り上げその特徴(長所・短所)をご紹介しましょう。

溶媒脱脂

種類:
パーマテック(Parmatech)法(米)溶媒脱脂、AMAX法(米)溶媒脱脂
長所:
数百グラムの大物、肉厚部品ができます。低炭素から高炭素鋼までカーボンコントロールが可能、機械的品質が高い。脱脂時間が短い。
短所:
廃液のリサイクル、安全性の配慮が必要。

加熱脱脂

種類:
ウイテック(Witec)法(米)加熱脱脂、VI法(米)真空・加熱脱脂、シングルステップ・SS法(日)加熱脱脂
長所:
加熱脱脂装置が安価、あるいは加熱脱脂を省略できる(VI,SS)。
安価部品の大量生産向き。
短所:
小物に限定される。大気脱脂の場合、粉末が酸化されるので酸化されにくい金属のみに限定される。大物ではカーボンコントロールに難あり、高炭素鋼には注意が必要。

触媒脱脂

種類:
BASF法(独)硝酸・触媒脱脂
長所:
数百グラムの大物、肉厚部品ができます。低炭素から高炭素鋼までカーボンコントロールが可能、機械的品質が高い。ポリアセタール(POM)系バインダーのため脱脂変形が少ない。脱脂時間が短い。
短所:
POM含有量が多いため成形温度が20~30℃高い、金型温度も100℃を超えるため成形取り出しに工夫が必要。触媒脱脂炉を含むシステム一式が高価。
POM分解ガスの処理・安全性の配慮が必要。BASF社(独)の標準グレードでは問題ないが、CoやB(焼結促進材料)の開発を考えたとき、これらは硝酸と反応するので課題がある。


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著者:八賀祥司(はちが しょうじ)
技術士(機械:MIM金属粉末射出成形)、某MIMメーカーで20年間、材料開発から工程設計、金型仕様設計、生産準備から出荷まで行う。現在は現場を離れ、MIMの普及のため精力的に活動している。

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