今さら聞けない金属粉末射出成形(MIM)の基礎知識~MIM入門講座(1)

金属粉末射出成形(MIM)とは、金属粉末を原料とした部品製造法の一種で、複雑形状の部品を高い精度と強度で量産することができる非常に優れた製法です。しかし、比較的新しい製造技術のため、製造方法やノウハウの蓄積が十分ではなく、理論が定まっていない現状もあります。本連載では、そんなMIMについて体系的にわかりやすく解説していくなかで、この記事ではMIMの歴史と特徴といった基礎知識について紹介します。


▽MIM(金属粉末射出成形)入門講座

1.金属粉末射出成形(MIM)とは

金属粉末のイメージ画像
金属粉末のイメージ画像

MIM=Metal Injection Molding。「Metal=金属粉末」「Injection=射出」「Molding=成形」の頭文字でMIM。日本語の読みは「ミム」「エムアイエム」です。初期の頃は「金属射出成形」と訳されていましたが、後年「粉末」が追加され、「金属粉末射出成形」と呼ばれています。その理由は、ダイカストやチクソーモールディングなどの溶融金属の射出成形との混同・誤解を避けるためだと思われます。技術分類では、MIMは「プラスチック射出成形技術」と「粉末冶金技術」の複合技術です。

<図1>粉末冶金体系の中のMIM法の位置づけ
<図1>粉末冶金体系の中のMIM法の位置づけ

<図1>の粉末冶金体系で、MIMは粉末射出法(PIM法)の下位概念で、金属粉末を使うものです。樹脂(バインダー)を混ぜているのでプラスチック射出成形と同様な造形が可能です。ちなみに、金属粉末ではなくセラミック粉末を使うものがCIM(シム)です。CIMの工程順はMIMとほぼ同じです。

2.MIMの誕生と歴史

1973年、4人の起業家がカリフォルニア州にMIM製造会社を創業します。会社の名前はパーマテック社。1981年3人の起業家はそれぞれ暖簾を分け合うと、別々に起業します。その一人Ray Wiech氏が起こした会社が、現在、日本のメーカーで最も採用されているウィテック社です。

現在量産で使われているMIM法は、パーマテック法、ウィテック法の他に、AMAX法、自社独自開発法、BASF法、シングルステップ(SS法)、などがあります。MIMと言ってもこのように製法が多種存在し、各々の製法で長所短所が異なるため、同じ金属材質であっても、各社のMIM部品の機械的特性や形状・大きさの制約などが異なります。

MIM誕生から約40年間における国内技術動向(四世代)

第一世代 1980~1990年 黒船来航・開国時代
パーマテック社が、創業から6年後の1979年にMetal Powder Industry Federation’s (MPIF)の5つの賞のうち2つを受賞すると、世界的にMIMブームとなります。日本国内でも大手企業がその開発に着手したころ、基本特許を持つウィテック社が日本法人を設立。特許侵害を回避するため、多くの日本の会社がウィテック社のライセンシーとなります。

他方、国内の2社がパーマテック社のライセンスを取得。さらに、独自の技術開発を堅持する強者メーカーも存在しました。研究開発は閉鎖的でメーカー間の交流はなかったのですが、1988年より、大学等の研究論文が発表されはじめます。


第二世代 1991~2000年 MIM元年 国内市場50億円
自力・他力で量産が開始されます。国内MIM市場規模は50億円まで上昇。パーマテック、ウィテックの基本特許・技術契約が切れはじめ、だれでも使えるオープン技術となりました。この第二世代はMIM元年と言えるでしょう。

さらに、島津メクテム(現在:島津産機システム)が加熱脱脂と焼結を連続で行うMIM専用焼結炉を開発すると、それを利用したシングルステップ(SS法)が登場します。また、MIM成形材料の外販やMIMコンサルタントが誕生。大学等の研究も活発に行われ、1997年MIM関係論文数が20を超え最大となります。



第三世代 2001年~2016年 自然淘汰・進化時代 国内市場150憶円
年15億円以上のペースでMIM市場は急成長していきますが、リーマンショックにより前年2007年のピーク150億円から、2009年には100億円まで激減します。翌年若干回復しますが、それ以降2016年まで緩やかに減少。設備の老朽化とMIM担当技術者の定年時期に合わせるかのように撤退・統合が進んでいきます。一方、技術的(Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=納期)に優位性の高い企業はさらに発展・進化します。



第四世代 2017年~ MIM再成長と新代替工法の出現
2017年からMIM市場が上向きに転じ、年5億円増の回復が予測されています。スーパーアロイ(超合金)のMIM論文が発表されるなどして、MIM技術は確実に向上しています。一方、2018年にMIMと同じ金属粉末を使った3D積層装置が米国2社から発表。これは、MIMの代替工法なのかMIM発展のチャンスなのか、業界の注目を集めています。

3.MIM製法の長所と短所

MIM製法には、多くのメリットがある一方デメリットも存在します。製品の形状や求められるスペックによって、MIM製法を部品に採用するか慎重に検討しなければいけません。

長所

(1) ニアネットシェープの実現
形状の自由度が高い。三次元形状を作れる。シャープエッジ、異形穴、交叉穴など。数部品の一体化によりコストダウンを行った事例も多い。

(2) 高精度
MIMの一般公差は、±0.5%と、寸法精度がロストワックスの±1%より高い。

(3) 高密度
相対密度で96%以上を実現。高炭素で液相焼結が進行するものは、ほぼ100%の相対密度が得られる。

(4) 高強度
圧粉焼結では得られない溶製材に近い機械強度が得られる。

(5) 高表面品位
表面粗さは、Rmax6~8μm(Ra1.5〜2)が可能。

(6) 少ロット~大量生産、短納期
数百の少ロットから、数万という単位の量産まで可能。納期面でも、工程がシンプルなので、リピート生産品であれば1~2週間が可能。

(7) 多種材種
SUS316L,SUS420J2,SUS440C,SUS630,SNCM415、SKD11,SKH51、Ti合金など。

(8) 熱処理・表面処理
溶製材と同等の熱処理、メッキ等の表面処理が可能。

短所

(1) 原材料が高い
MIM法で使用する金属粉末は、微粉末で、キロ単価数千円と高価です。そのため10グラム程度のものがMIM部品では多く、30グラムを超えると、例えば、ロストワックス精密鋳造品に機械加工を加えた方が安価になる場合が多い。ただし、MIMは精度や表面粗さが良いので加工完成品まで考えると、大きくてもMIM化にメリットがあるものも多い。300gを超えるものも(溶媒脱脂)散見されます。

(2) 製品設計への制約
 肉厚は5mm(加熱脱脂)15mm(溶媒脱脂)以下。薄肉厚0.8mm(部分的であれば0.3mm)。


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著者:八賀祥司(はちが しょうじ)
技術士(機械:MIM金属粉末射出成形)、某MIMメーカーで20年間、材料開発から工程設計、金型仕様設計、生産準備から出荷まで行う。現在は現場を離れ、MIMの普及のため精力的に活動している。

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