非破壊検査の種類とメリット・デメリット~放射線、超音波、磁気、電磁、浸透など

金属部材中の欠陥(きず)などを検査対象物の形状や機能を損なうことなく行う非破壊検査。品質分類や補修の要否、供用中の部材に対する残存寿命の推定などの判定を行うには必須の検査です。ここではいくつかの非破壊検査の原理・特徴をご紹介いたします。

非破壊検査とは?

非破壊検査とは、検査対象物の形状や機能を損なうことなく検査し部材中の欠陥(きず)を検出、品質分類や補修の要否、供用中の部材に対する残存寿命の推定などの判定を行う検査です。
欠陥の許容度は使用目的、使用条件、材質により異なり、溶接鋼構造物では欠陥許容度の決定に破壊力学的考え方が大きく取り入れられています。間接的手法である非破壊検査にはある程度の不確実性が伴う一方、近年ではあらかじめ存在する欠陥の状態を予測し最も適切な手法を選んで行うことで、確実性の高い判断を実現できるようになりました。

表1に主な試験方法の種類とその適用の概要を示します。

<表1>非破壊試験方法の種類と適用

試験方法 対象欠陥位置 おもな適用分野 適用が困難なもの
放射線透過試験 内部 鋳造材(パイプ、ひけ巣),溶接部(スラグ巻込み、ブローホール) 密着した割れ
超音波探傷試験 内部 圧延材(ラミネーション)、鍛造材・溶接部(割れ) 鋳鉄、オーステナイト鋼
磁気探傷試験 表面・表層 強磁性鋼全般、鋳鍛鋼材、鋼溶接部 非磁性材料
浸透探傷試験 表面開口 金属・非金属共通 多孔質材料
電磁誘導探傷試験 表面・表層 管・線など単純な形状のもの 形状が複雑なもの
アコースティックエミッション (割れの発生、成長) 圧力容器の耐圧試験時、その他溶接割れなど すでに存在している欠陥
スンプ法 表面 金属組織観察、金属組織の変化に伴う材料劣化など 内部

 

放射線透過試験(RT:radiographic test)

X線、γ線(以下放射線)の物体中を透過する性質から、一様な強さの放射線を照射することによって欠陥部分に現れた放射線吸収の差をフィルムに撮影する方法です。<図1>

<図1>放射線透過試験(RT:radiographic test)の原理
<図1>放射線透過試験(RT:radiographic test)の原理

通常、工業用X線装置は10~400kVpの管電圧を備え、鋼板の場合厚さ100mm程度の検査に適用されます。なお電子を加速させた高エネルギーX線装置では100mm以上の鋼板の検査が可能です。公称エネルギー12MeVのライナック、25MeVのベータトロンでは最高500mmまでの厚さの鋼板の検査も実現できます。

一方、γ線では、小型で高エネルギー放射線が得られ、複雑な形状や厚物の鋼材に適用されます。60Coは鋼板25~140mm、192Irは10~60mmの検査に適しています。

撮影の際、透過度計は識別度を測定するもので、識別可能な針金の最小径を試験体の厚さで除した値で表します。ここでは通常は2%が要求されます。階調計は板厚が20mm以下の場合に利用し、写真像の質の確認を行います。像質を改善するためには線源の寸法縮小が有効であり、小さな欠陥も検知できることから、近年ではマイクロフォーカスX線装置が使用されることも増えてきました。

検査対象物の欠陥に応じて、割れ、ブローホール、スラグの巻込みなどに分類し、また欠陥の大きさ、数によって等級分類を行います。これらの分類に関してはJIS上 にも多くの規格があり、JIS Z 3104、JIS Z 3105:1993、JIS Z 3106:2001、JIS Z 3107:1993などでは材質別の撮影方法、等級分類、判定基準を包含しています。

超音波探傷試験(UT:ultrasonic test)

<図2>超音波探傷法・フェーズドアレイ探傷法の原理
<図2>超音波探傷法・フェーズドアレイ探傷法の原理

超音波は波長が短く直進性があり固体と液体・気体の境界面で反射されやすいため、金属内の欠陥検出に適しています。超音波探傷法では、パルス発振器で発生させた電圧を振動子に加え周波数が500kHz~10MHzの超音波パルスを発生させるパルス反射方式とよばれる方式が主に用いられています。<図2>

振動子は水晶、チタン酸バリウム(略称チタバリ)、ジルコンチタン酸鉛(ジルナマ)、硫酸リチウムなどの電圧材料を切り出したもので、ダンパなどと合わせてこれらを取り扱いやすいよう1つのケースに組込んだものが探触子(probe)です。

振動子は送信・受信双方を兼ねることが多く、また近年では、広い周波数帯域を有する振動子としてニオブ酸鉛、高分子材料(ポリマー)や圧電体と高分子を複合化したコンポジット(複合圧電体)も使用されています。

固体中を伝わる超音波には空気中、水中を伝わる疎密波(縦波)のほか、横波、表面波、板波があり、いずれも探傷に使われます。

超音波が境界面に垂直に当たると一部の反射分を除いて残部が通過しますが、その割合は境界面で接している2つの物質の音速と密度で決まります。空気と鋼ではほぼ100%反射しますが、水と鋼では音圧通過率が12%あることから、探触子と試験材の間は水、油、グリセリンなどの液体で満たすことで通過を促します。

超音波が境界面に斜めにぶつかった場合には境界で反射と屈折が起こります。探触子と鋼のように固体同士の場合には反射波、屈折波ともに縦波、横波が存在しますが、斜角探触子では屈折縦波を臨界角以上にすることで横波だけが試験材中に入るようにしています。また通過率を良くするために屈折角は35°~80°の範囲で用いられています。

探傷感度を決める方法には、標準試験片の人工欠陥によるエコー高さを基準にする方法と、底面エコーを基準にする方法があります。探傷感度や測定範囲の調整、探触子の性能点検に種々の標準試験片、対比試験片が用いられます(例 JIS Z 2345:2000)。なお欠陥の分類、判定は、エコー高さ、欠陥指示長さ、個数(頻度)から総合的に判断されます。

超音波探傷は平板状の欠陥であればどれだけ薄い場合にも大きな欠陥エコーを得ることができますが、球状の欠陥(例えばブローホール)に関しては検出能力が低いことが特徴です。

また試験材の金属組織が微細であれば超音波は非常に遠くまで到達するため、直径が数mの大型鍛鋼品の内部の探傷も可能です。一方で金属組織が粗い場合には、わずかな反射や散乱が重なるため林状エコーや減衰が著しくなります。例えばステンレス鋼の鋳物と溶接部、大型鋳鋼品などでは、これらが原因で探傷が困難となります。

今日では、<図2>に示すように電子技術、映像化技術の進歩により、屈折角や音波の絞りを連続的に変化させることができるフェーズドアレイ探傷法(phased array method)や電気・磁気的作用を応用した電磁超音波探傷法が使用されるようになりました。また破壊力学的な手法による残存寿命の推定や補修の要否を決定する上で欠陥寸法のうち特に欠陥の深さを知る必要があることから、欠陥先端の回折波の伝播時間を取り扱う端部エコー法(flaw tip echo method)、TOFD法(time of flight diffraction method)も使用されるようになりました。

磁気探傷試験(MT:magnetic test)

<図3>磁気探傷試験の原理
<図3>磁気探傷試験の原理

磁気探傷試験とは、磁性体の表面のきずを見つけることができる試験です。強磁性体を磁化した際、表面近くに欠陥が存在すると表面上に漏えい磁場が発生するため、これを磁粉あるいはホール素子やマグネチックダイオードなどの感磁素子で検出し、欠陥の位置、形状、大きさを測ります。<図3>表面欠陥の検出法としては感度が良く肉眼による直接観察ができるため、最も有力な方法とされており、特に磁粉探傷法は古くから広く使われている手法です。

磁粉探傷の磁化方法には電磁石による磁場を用いる方法(極間法など)と電流による磁界を用いる方法(プロッド法、直角通電法は、試験体に直接電流を流す)の2種あります。いずれも磁場は欠陥に直角に加える必要があり、交流、直流ともに用いられますが、表面に近い内部欠陥の検出には直流のほうがより適しています。

また必要な磁化の程度、磁化電流は磁化方法、磁粉、試験体の磁化特性によって変わります。例えば極間法、プロッド法などでは JIS G 0565:1992に定めたA型標準試験片で表面有効磁場の強さ、方向を確認できます。

磁粉には主に微細な鉄粉が使用され、用途別に乾式用と湿式用の2種に分かれています。乾式用の場合は空気に分散させて用い、粒子径は10~60μmのものが多いのが特徴です。一方で湿式用は、1~10μmの磁粉を液体(白灯油または水)に分散懸濁させ検査液として用います。検査液の磁粉濃度は通常溶媒1ℓ中に含まれる磁粉の量で示されます。磁粉の種類には白色、黒色に着色した非蛍光磁粉のほか暗所で紫外線により黄緑色などの蛍光を発する蛍光磁粉があります。

また磁粉、検査液をふりかけることを磁粉の適用といいますが、こちらにも連続法、残留法の2通りの適用法が存在します。連続法では試験体に磁場が加わっている状態で磁粉を適用します。後者の残留法は保磁力の強い材料で磁化したあと磁粉を適用する方法です。

材質変化の境界、断面寸法の急変部では、欠陥がなくても磁粉模様が現れることがあります(疑似模様)。欠陥の判定にはそれまでの履歴なども含めた総合判断が必要です。JIS G 0565では線状欠陥と円形状欠陥について等級分類をしています。なお磁気探傷試験はオーステナイト系ステンレス鋼のような非磁性材料には適用できません。

浸透探傷試験(PT:penetrant test)

浸透探傷試験は、毛細管現象を利用して、試験体の表面に存在する欠陥を肉眼で見やすい像にして検出する試験です。次に示す4段階の作業工程で行われます。<図4>

<図4>浸透探傷試験における作業フロー
<図4>浸透探傷試験における作業フロー

(1) 浸透処理(試験体の表面にスプレーなどで浸透液を塗布するか、浸透液に浸漬する)
(2) 洗浄処理(欠陥以外の試験体表面に付着している浸透液を水または洗浄剤で取り除く)
(3) 現像処理(表面に白色微粉末の現像剤を薄く塗布する)
(4) 観察(指示模様の観察)

また、浸透探傷試験は浸透液と洗浄剤の違いで次のように分類されます。
蛍光体を含む浸透液を使用する蛍光浸透試験では、紫外線により欠陥を黄緑色に発光させます。一方、染色探傷試験では、赤色染料を含んだ浸透液を使用し、赤色の欠陥指示模様を観察します。それぞれに、そのまま水洗浄できる水洗性、乳化剤を加えて水洗する後乳化性、有機溶剤洗浄剤による溶剤除去性の3通りの探傷試験法が存在します。現像法としては、湿式、速乾式、乾式、無現像が知られています。

浸透探傷試験では試験体の表面状況によって結果が影響されるため、表面に開口した欠陥でも検出されない場合があります。また金属材料に限らず、陶磁器、プラスチックなどの表面きずには対応できますが、多孔質材料については一般的に浸透深傷試験では対応が困難です。

電磁誘導探傷試験(ET:eddy current test)

<図5>電磁誘導探傷試験の原理
<図5>電磁誘導探傷試験の原理

電磁誘導探傷試験では、交流を流したコイルを試験体に近接させ、コイルのインピーダンスが試験体の欠陥の存在により変化する様子を検知します。<図5>コイルの形状には、貫通型コイル(線、棒、管など断面が円形の試験体に適用)、プローブ型コイル(板、インゴットなどの表面の欠陥検出に適用)、内挿型コイル(管、穴などに入れて内面の試験に適用)があり、金属のほか黒鉛など導電性のある材料に適用できます。表面欠陥の検出に適しており、試験結果が電気的出力として得られるので自動化が可能です。また欠陥の検出のほか、金属の種類・成分の変化、寸法、塗膜、腐食状況の測定に適用できます。

アコースティックエミッション(AE:acoustic emission)

金属が割れ、または破壊されるときに発する弾性波(超音波)を多数の探触子で検出、解析して、割れの発生時期やその位置を検知する方法です。AE利用の直接的な動機は圧力容器の耐圧試験時のモニタとしての利用で、実際にこの分野の実用化が最も進んでいます。そのほか溶接割れ、水素による遅れ割れ、応力腐食割れの研究にも利用され、ほかの試験法より検出時期の早いことが特徴です。

スンプ法(SUMP:Suzuki’s universal micro printing method)

<図6>スンプ法試験の作業フロー
<図6>スンプ法試験の作業フロー

スンプ法試験は、郡是製糸(現:グンゼ)の鈴木純一氏が発明した金属顕微鏡試験で、試験面を研磨した後に材質と目的に応じた腐食液で腐食(エッチング)し、さらにその表面をアセチルセルロース膜に転写して光学顕微鏡で観察する方法です。<図6>

この方法は、大型部品の表面の金属組織観察や供用中の設備において高温で使用される部材の金属組織の変化に伴う材料劣化、クリープ損傷の初期事象などの検出、欠陥の発生事象、原因などを究明するために有効です。