金属加工で生じる「欠陥」の原因と対策【鋳造品編】

鋳造や鍛造、溶接など様々な方法で金属材料を加工する際、避けて通れないのが「欠陥対策」。欠陥は製品における品質不良の原因となり、歩留まり低下による製品価格の上昇、上市後のリコール発生につながる恐れがあるため、製造現場では迅速な原因究明、対策が必要となります。
特に鋳造では、鋳造方案とよばれる様々な設計内容や使用される材料、鋳造時の作業方法などが原因となりさまざまな欠陥が生じます。そのため、鋳造品の製作に取り掛かる前に、どのような欠陥が発生する可能性があるのか、またその対応方法を、予め想定しておくことが大切になります。もちろん、製作後に欠陥が生じた際は、発生原因に応じ速やかに鋳造方案や造形について見直しを行うことが大切です。

鋳造品に発生する欠陥の全体像を確認しよう

鋳造品に発生する欠陥の形状と種類と主な発生要因
<図1>鋳造品に発生する欠陥の種類

鋳造品には割れやへこみ、出っ張りなど表面に現れる欠陥や、内部に空洞ができる欠陥など様々な形状の欠陥が現れます。また、鋳型の砂を巻き込んでしまうケースなど、鋳型の不良に起因する場合も存在します。金属の鋳造には、鋳造方案の決定、使用材料の選定(金属、砂)、鋳造作業の実行(金属溶解、調砂、造型、注湯など)等、多岐にわたる鋳造プロセスが存在し、そのプロセスの随所で欠陥の原因が潜んでいる可能性があります。<図1>

それぞれの特徴を把握し欠陥の種類を特定しよう

欠陥にはそれぞれ形状に特徴があります。まずは、これらの特徴を押さえることで、欠陥の種類を見分けましょう。形状が似通ったものでも発生原因が異なる場合もあるので、注意が必要です。<表1>

<表1>欠陥の種類と特徴
形状名称特徴
割れ高温割れ凝固中、最終凝固部に破断面が発生する。
低温割れ冷却過程やその後時間が経過してから発生する。
破断面は脆く、へき開面を示す場合もある。
巣(孔)ひけ巣鋳造品の内部に空隙が発生する「内びけ」と、表面がへこむ「外びけ」がある。
下記「空孔」と合わせ「鋳巣」と呼ばれる。
鋳造品の欠陥ひけ巣の形状(内びけ、外びけ)
空孔鋳造品内部に生じる空洞。直径2-3mm以上の球状の空洞を「ブローホール」、それ以下のものを「ピンホール」といい、最終凝固部に発生する樹枝状の小孔の集まりを「ミクロキャビティ」という。また、鋳造品の表面があばた状になる「煮え」が発生することもある。
鋳造品の欠陥空孔の形状(ブローホール)
形状不完全湯回り不良鋳型の奥部まで溶湯が回らず、角などが丸くなってしまうなどの形状不良。
湯境複数方向から溶湯が流し込まれた際に、溶湯が合流した部分に発生するしわ。
出っ張り洗われ注湯の流れにより鋳型の砂が流されてできたへこみに、溶湯が流れ込み凝固することによってできる不規則な出っ張り。
すくわれ高温の溶湯に長時間さらされた鋳型の表面から砂がはく離した部分に、溶湯が流れ込み凝固することにできるこぶ。
鋳造品の欠陥すくわれの形状
べイニング鋳造品の表面に発生する、板状の出っ張り。
鋳造品の角すみ部に発生しやすい。
鋳肌不良焼付き鋳型の砂が溶解し、溶湯と混合し鋳造品の表面に付着し砂落としが困難になる状態。溶湯が鋳型の砂の間に入り込み、砂と溶湯が混ざり合う「浸透型」(「さしこみ」)と、化学的な反応によって引き起こされる「非浸透型」がある。
砂かみ「洗われ」や「すくわれ」により鋳型から剥離した砂が鋳造品の表面や内部に介在してしまう状態。

加工品の表面に現れる欠陥は、外観目視により特定することができる場合が多いという特徴がありますが、加工品の内部に発生する欠陥の把握には、放射線透過検査などの非破壊検査が必要です。より正確でスピーディな欠陥検知には、専門知識と技術を兼ね備えた専門家に依頼することも有効です。

欠陥別の原因を把握し、対応策を検討しよう

どのような欠陥が発生する可能性があるか、あるいは発生しているかを把握したら、その原因と対策を確認しましょう。欠陥の原因は必ずしも一意に決まるということではありませんし、同時に複数の欠陥が発生している可能性もあります。あらゆる角度から原因を分析し、順次対策を講じることが重要です。 以下に、それぞれの欠陥の代表的な原因と対策を紹介します。

高温割れ

凝固冷却時の体積収縮により引張り応力が発生し、主に最終凝固部に亀裂が生じる現象です。多くの破面が酸化していることも特徴です。これを防ぐためには冷却速度をなるべく均一にすることが有効で、具体的には冷やし金を使用する、鋳込み時間を短くするなどの対応が考えられます。また、鋳型の鋭角になる部分はなるべく設けないようにし、適当な面をとることも有効です。

低温割れ

常温近くになった際に冷却の不均一による内部応力が原因となって発生します。対策としては、冷却時に常温まで下がる前に再加熱し内部応力が発生しないように調整するとよいでしょう。

ひけ巣

押湯*不足や、鋳込み温度が高温で冷却時の収縮分が大きくなってしまうことで鋳造品内部や表面に隙間ができてしまうことが原因となります。
ひけ巣は最終凝固部に発生しやすいので、押湯や冷やし金を使用し最終凝固部を押湯部分などの製品外に移動させることが有効です。また、鋳込み温度を下げ、冷却時の収縮分を調整することでひけ巣の発生を防ぐことも可能です。
*鋳造の際に鋳型に注入する余分な溶湯

空孔

注湯の際に溶湯や鋳型から発生するガスが巻き込まれることによって、鋳造品内部や表面に空洞が発生します。ひけ巣と混同しやすいですが、発生原因が異なるので異なる対策を検討する必要があることに注意が必要です。
ガスは注湯中の酸化物が発生させる場合や、鋳型の通気性が低く酸化物が含まれる際に発生する場合などが考えられ、注湯温度が低いときにも発生しやすくなります。対策としては注湯中の酸化物をなるべく除去し清浄に保つことや、鋳型や取鍋の乾燥を徹底すること、さらに巻き込まれたガスを速やかに放散させるためのガス抜きが必要になります。

湯境、湯回り不良

「湯境」は溶湯の合流面に酸化膜が介在することで湯じわができる現象、「湯回り不良」は溶湯が鋳型を満たす前に凝固してしまう現象で、いずれも湯流れの不十分が原因です。対策としては、鋳込み温度の低いものは入れない、湯口方案の修正、鋳型のガス抜きをよくするなどの方法が考えられます。

洗われ

注湯の勢いに鋳型表面が耐えられないと砂がはく離し、「洗われ」が発生します。溶湯の流れの衝撃を緩和できる堰を設置する、注湯量を調整するなどの対策を講じます。

すくわれ

鋳型の表面が長時間用等にさらされることに耐えられず、砂がはく離することで発生します。鋳型の熱間強度を高くすることなどが有効です。

べイニング

溶湯の熱により鋳型が膨張し、クラックが発生、そこに溶湯が流れ込み凝固することにより板状に出っ張りが発生します。これを防ぐには鋳型の砂のサイズと分布、注湯温度、充填率を見直し応力が高くなりすぎないように調整することや鋳型の基本材料を見直すことなどが考えられます。

焼付き

「浸透型」の焼付きは鋳型の込め付けや込め付けのむらが原因となるので、固く鋳型を込め付けることや塗型を使用することなどで防止できます。「非浸透型」は鋳型と注湯が化学反応を起こし発生するので、対策には鋳型を還元性雰囲気に保つことや化学反応を起こしにくい砂を採用することが有効です。

砂かみ

鋳込み中に鋳型からはく離した砂が溶湯に巻き込まれてしまうことで発生します。砂に強度を持たせる、鋳型の表面安定度を上げるなどの鋳型の改善を施し、砂のはく離を回避しましょう。

以上のように、欠陥の発生原因に応じ適切な対応策を検討することが必要ですが、大幅な鋳造方案の見直しや造型方法の変更が必要になる場合など、自社内で適切な対処ができないときは、豊富な経験と知識を備えた専門の加工事業者に相談してみましょう。

まとめ

ここでは、金属鋳造で発生する主な欠陥について紹介しました。欠陥は製品の見た目や製造原価に関わるだけでなく、安全性にも大きく関係します。設計や鋳造方案の策定の際にはこれらの欠陥の発生を考慮し、事前にシミュレーションを行うことが大変有効です。また、金属鋳造は凝固の際の体積収縮や凝固速度により欠陥が生じやすい性質を持つため、加工後にしっかりと検査を行いましょう。