自動車に用いられるプラスチック材料(1)~熱可塑性樹脂の種類、用途

自動車に応用されている樹脂材料が自動車のどの部位に応用されているかについて簡単に紹介しましょう。ここではまず熱可塑性樹脂の応用例を紹介します。<図1>にその概略を示しました。ただし、ここに記された樹脂用途は樹脂そのものだけでなく、樹脂の特徴を活かすために、繊維強化や他物質と複合化した樹脂の用途も含んだものとしています。

以下の記事でも自動車の軽量化を取り巻く背景や動向についても解説していますので、合わせて参照下さい。

<図1>自動車用プラスチック材料の分類
<図1>自動車用プラスチック材料の分類

自動車部品に用いられる熱可塑性樹脂~汎用樹脂

ポリプロピレン(PP)

汎用樹脂の中で自動車に最も使用されている、軟質かつ耐疲労性を有する熱可塑性樹脂。
靱性と軽量が求められる自動車の内装品や電装品に多く使われ、またさまざまな改質剤を配合したPP樹脂は自動車用バンパーとして広く用いられています。成形法も検討され、トランクルーム内のデッキボード、乗用車ではありませんがトラクターのルーフ部材、フェンダー・バックドアなどの外板部品に使われる事例もあります。

ポリエチレン(PE)

最も加工が容易でかつ安価なため広く使用されている樹脂素材であり、高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)があります。高密度ポリエチレンの剛性と反り耐性はポリプロピレンよりも優れています。
燃料タンク、給油口から燃料タンクに燃料を輸送するインレットパイプ等に使用されます。

アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)

アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)を主成分とするポリマーアロイです。耐衝撃性と靱性があり、成形加工、めっき、塗装といった二次加工がやりやすいので、自動車の内装部材および外装部材等に幅広く用いられています。
ダッシュボードトリム、電子エンクロージャー、ホイールキャップ・カバーあるいはクロムめっき加工されたABS製のホイールキャップ、グリル、フェンダーフレアー等に使用されます。

自動車部品に用いられる熱可塑性樹脂~エンプラ樹脂

ポリカーボネート(PC)

熱成形性に優れ、高透明性であり、耐衝撃性が普通のガラスの250倍で重量はその半分、低温特性が良く、使用可能温度-100℃~140℃と広範囲です。
窓材として使われはじめており、帝人はPC樹脂にプラズマCVD法によるハードコートを追加してガラス並みの耐摩耗性、耐候性を付与して世界初のPC樹脂製のピラーレスフロントウィンドウを開発。これは電気自動車のGLM「トミーカイラZZ」に搭載されました。

ポリアミド(PA)ナイロン

耐熱性、耐油性、耐疲労性、耐クリープ性に優れた材料です。
エンジンルーム内への適用例が多く、インテークマニホールド、ロッカーカバー、燃料系部品フューエルインジェクターのボディに使用されます。最近ではエンジンにより近い燃料部のスロットルチャンバー、インレット部品等の樹脂化が進みつつあります。

ポリアセタール(POM)

吸水性が小さく、引張強さ、弾性のほか、耐摩耗性、耐衝撃性に優れた材料。自己潤滑性があり、特に金属との摩擦係数が小さいことが特徴です。
自動車の燃料ポンプ等に使用されるほか精密な金属部品の代わりとして、電子・燃料装置用の部品、動力伝達用の部品に使用されています。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

熱安定性、耐候性、高絶縁性、耐有機溶剤・油・ガソリン性良好な材料です。自動車の電装品であるワイヤーハーネスやECUケースなどの需要が伸びています。

自動車部品に用いられる熱可塑性樹脂~スーパーエンプラ樹脂

熱可塑性ポリイミド(TPI)

熱硬化性PI樹脂の優れた特性(耐熱性、高強度など)を損なわず、射出成形による高効率生産を可能にした全芳香族ポリイミド。ガラス転移温度250℃で、結晶性(融点388℃)があります。摺動特性、耐放射線性、低吸水性、耐薬品性、難燃性で、400~420℃の領域での溶融流動性により、複雑な形状の製品も成形可能です。
高強度、高弾性、両剛性な繊維強化グレードは自動車構造部材、摺動性を生かした自動車のATF(Automatic Transmission Fluid)部品(スラストワッシャー、シールリング、ブッシュ等)・軸受等に使用されます。

ポリエーテルイミド(PEI)

射出成形可能な透明性樹脂で、融点は217℃、常用耐熱温度~170℃、難燃性ですが燃えた場合も発煙が少ない材料です。耐薬品性、耐水性、耐熱水性、電気特性、耐候性に優れ、機械特性が広範な温度帯域で安定しています。
ベアリングのリテーナーやスピードセンサ部品などの電装品に使用されています。

ポリフェニレンサルファイド(PPS)

高耐熱性、高い機械特性、濃硫酸以外の耐薬品性、寸法安定性、優れた電気絶縁性をもっています。熱変形温度260℃、連続使用温度170〜200℃で、比較的低コストな材料です。
HVインバータ、パワーモジュール部品、エンジンルーム周辺など、耐熱性が求められる場所での使用が多く、近年、電装品は複数のセンサーを組み込んだモジュール化が進んでおり、部品の大型化によりPPSの使用量が増加しています。

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

融点334℃、最高連続使用温度250℃、高耐熱性を備えていることで、引張特性、疲労特性、衝撃特性などにも優れ、濃硫酸、濃硝酸、飽和塩素水以外には浸食されない耐薬品性をもち、加えて耐放射線性もあり、電気絶縁性も高い材料ですが、高価です。
自動車のアクチュエーター、ギヤ、ベアリング、ワッシャー、シール、クラッチング、エンジン部品等に使用されています。

液晶性ポリマー(LCP)

耐熱性に優れ、高い剛性と弾性があります。ガラス繊維を混ぜ込んだGFRPとして、コネクタ、コネクタケース等の電装品に使用され、燃料タンク等への応用も期待されています。

ポリフタールアミド(PPA)

PPAはポリアミド(PA)の一種であり、最低2種のジアミン(diamine)と2種のフタル酸(phthalic acid)が入ったもので、PAより高い耐熱性、高温でより高い強度と剛性、高い耐薬品性があります。
HEV用でハーネスコネクタ関連の使用が増加しています。また、GFRP化でガラス転移温度(Tg)は160℃と高く、車載電子システム向けコネクター用途に使用されています。ガラス繊維強化品は変速機/冷却水系部品、エンジン廻り機構部品、油圧ピストン、シリンダ、モータエンドキャップに使用されています。

ポリスルホン(PSU)

耐熱水性、透明性などが高い材料で、バッテリーキャップ、ヒューズ、自動水栓センサ部品、イグニッション部品に使用されています。

ポリエーテルスルホン(PES)

耐熱性に優れ、広い温度範囲(-100~180℃)での剛性、寸法安定性があり、高温での耐クリープ性、耐ガソリン、ガソホール、エンジンオイル性に優れています。また、難燃剤無添加で、難燃性が比較的高いグレードであるUL94V-0に認定されています。 ギヤボックスのベアリングリテーナー、ブレーキシャフト用ブッシュ、キャブレター用コイルボビン、スラストワッシャー、ランプリフレクターなどに使用されています。

ここまで見たように、熱可塑性樹脂の中でも材料や特徴、自動車における用途は様々です。<表1>では、それらを整理しました。

<表1>熱可塑性樹脂の特性と用途
特性用途
PPポリプロピレン自動車用樹脂の約6割バンパー、トランクルーム内デッキボード、トラックルーフ等
PEポリエチレン加工性大高密度PE燃料タンク、インレットパイプ等
ABS成形性、メッキ性、塗装性良好ダッシュボードドリム、ホイールキャップ等の内外装品
PCポリカーボネート成形性。耐衝撃性良好、透明、使用可能温度-100°C~140°Cと広範囲自動車ルーフ、自動車ヘッドランプレンズ
PAポリアミド(ナイロン)耐油性、耐疲労性、耐クリープ性良好吸気管、ラジエータタンク、冷却ファン等
POMポリアセタール耐摩耗性、耐衝撃性、自己潤滑性燃料ホンプ、動力伝達用部品、電子燃料装置用部品
PBTポリブチレンテレフタレート高絶縁性、高熱安定性、耐有機薬品性、耐油性ワイヤーハーネス、ECUケース等 電装品回り
PPAポリフタールアミドPAより高い耐熱性、高温でより高い強度と剛性を示す。高い耐薬品性。PC、PA並み低価格車載電子システム向けコネクター用途、変速機/冷却水系部品、エンジン廻り機構部品、油圧ピストン、シリンダ、モータエンドキャップ
LCP液晶性ポリマー耐熱性に優れ、高い剛性と弾性があるGFRP化でコネクタ、コネクタケース等の電装品用途、燃料タンク等への応用
PPSポリフェニレンサルファイド高耐熱性、高絶縁性、高い機械特性、耐薬品性HVインバータ、パワーモジュール部品等
PEEKポリエーテルエーテルケトン高耐熱性(最高連統使用温度250℃)、高い機械特性、耐薬品性、耐放射線性があり電気絶縁性も高い。ただし高価アクチュエーター、ギヤ、ベアリング、ワッシャー、シール、クラッチング、エンジン部品等
TPI熱可塑性ポリイミド高耐熱性、耐薬品性構造部材、スラストワッシャー、シール部品・軸受等部材
PSUポリスルフォン耐熱水性、高透明性バッテリーキャップ、ヒューズ、自動水栓センサ部品、イグニッション部品
PEIポリエーテルイミド耐薬品性、耐水性、耐熱水性、耐候性ベアリングンリテーナー、スピードセンサ部品

まとめ

ここでは自動車に応用されている樹脂材料のうち、熱可塑性樹脂が自動車のどの部位に応用されているかについて簡単に紹介しました。他の記事では、より詳しく樹脂材料についてご紹介していますので、あわせてご参考ください。

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