プラスチック計測・分析のいろは (1)~組成計測:元素分析、分離分析、クロマトグラフィ

研究開発のなかで、試料に含まれる物質を構成する元素の同定やその濃度の把握といった組成計測は欠かせないものです。この記事では、世の中で広く用いられるプラスチックの組成計測に関わる、元素分析と分離分析、クロマトグラフィの各方法についてその原理や特徴をご紹介します。

以下の記事でもプラスチック材料の計測・分析内容についてまとめておりますので、あわせてご参考ください。

元素分析(elementary analysis or elemental analysis)

自動元素分析 蛍光X線(automatic elementary analyzer、fluorescent X-rays)

バルクを対象とした分析法で、X線を照射したときに放射される蛍光X線を測定して、試料中の元素の検出・定量を行う分析法です。その波長と強度から、B(ホウ素)より重い元素を対象とした元素の組成や量についての情報が得られます。文化財の調査、犯罪捜査などにも用いられる非破壊分析法の一つです。

X線マイクロアナライザ (X-ray microanalyser:XMA)

固体表面の微小部分(局所)の元素分析をする装置で、直径1μm以下に絞った電子線を試料表面にあて、そこから出てくる特性X線をX線分光器で測定します。その波長から元素の種類が、強度から元素の含有量を判定できます。電子線で試料面を走査して元素の2次元分布を観測できる装置(electron probe microanalyser:EPMA)も使われています。

微小部分(局所)を単位に非破壊分析をBe以上の原子番号のすべての元素について行えるため、金属中の不純物、鉱物の分析、また化学や生物学の分野など広く用いられています。

X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy:XPS、electron spectroscopy for chemical analysis:ESCA)

物質に単色光を照射したときに放出される光電子の運動エネルギー分布、角度分布、スピンの状態などを測定することにより、物質表面の電子構造や原子配列、磁気的性質などの情報を得る方法です。光源の種類により、真空紫外線を用いる紫外光電子分光法(ultraviolet photoelectron spectroscopy:UPS)と、X線を用いるX線光電子分光法(X‐ray photoelectron spectroscopy:XPS)に大別されます。

UPSでは原子価電子のみしか放出させられませんが、微弱なエネルギー(数~数百meV)を検出できる高分解能な計測法であり、価電子準位に注目した研究に適します。特に光エネルギーを走査し、運動エネルギーをほとんどもたない(zero kinetic energy:ZEKE)電子のみを検出する、しきい光電子分光法(threshold photo electron spectroscopy)では1meV以下という非常に高い分解能が得られています。

XPSは通常、分解能は高くありませんが(0.5~1eV程度)、内殻電子も放出させることができ、しかもそのイオン化エネルギーが化学的環境によって変化するので(化学シフト)、元素分析、状態分析が行うことができる特徴があります。

これらの測定によって得られる光電子の運動エネルギー分布を光電子スペクトル(photoelectron spectrum)といいます。固体・液体試料では、光電子は表面から数百pm~数nm程度の深さからしか放出されないので、光電子分光法は表面や吸着原子・分子の構造や電子状態についての情報を得るための有力な方法です。

分離分析(separation analysis)、クロマトグラフィ(chromatography)

薄層クロマトグラフィ(thin layer chromatography:TLC)

シリカゲル、アルミナ、セルロースなどの粉末吸着剤を焼セッコウなどと練り合わせてガラス板やアルミニウム板に固着させた薄層を固定相とするクロマトグラフィです。一般に展開時間が短く(数十分)、分離能率がよいとされています。有機化学実験で反応生成物の定性分析や少量混合物の分離などに多用され、無機吸着剤は試薬や熱で変化しにくいため、いろいろな検出反応が使える利点があります。

ガスクロマトグラフィ(gas chromatography:GC)

ガスクロマトグラフィとは、移動相に気体を用いるクロマトグラフィのことです。分析対象物質は、酸素・窒素などの無機ガスやエステル、アルデヒドなど、常温で気体として存在する物質か、400℃程度まで加熱して気体となり熱的に安定している物質となります。

ガスクロマトグラフィは、一般に固定相に固体を用いる気固クロマトグラフィ、液体を含浸させた固体を用いる気液クロマトグラフィに大別されます。

移動相であるキャリヤーガス(キャリアガス)は試料送入部を経て分離管に入り、検出器を通って外に出ます。分離管中で試料成分は固定相固体に対する吸着性の差、あるいは固定相液体に対する分配係数の差に従って移動速度に差を生じて分離されますが、これを分離管に入れる前のキャリヤーガスと分離管から出てきたガスの熱伝導率を比較して検出します。

検出器にはこのほか試料成分を水素炎中に導入して生じるイオン電流を測定検出する型など多くの種類があります。試料を注入してから成分が検出されるまでの時間を保持時間(retention time)といい、定性分析の指標として用いられます。各成分に対応する検出器の応答曲線の記録をクロマトグラムといい、応答曲線(ピーク)の高さまたは面積から定量分析を行うことができます。

気液クロマトグラフィはマーティンらによって発表され(1952)、以来最も重要な化学分析法の1つとして広く利用されています。

熱分解ガスクロマトグラフィ (pyrolysis gas chromatography:PYGC)

不揮発性物質を揮発性のある低分子物に熱分解し、ガスクロマトグラフで分析する方法です。高分子の固定定量、微細構造、熱安定性、熱分解機構の研究に用いられて近年発展を遂げ、高分子研究に欠かせない手段となりました。分析対象物質として、具体的にはポリマー、プラスチック、ゴム、塗料、染料、樹脂、コーティング、セルロース、木材、繊維などの不溶性材料があり、特にポリマーの物質における構造的特徴(キャラクタリゼーション)の有効な計測・分析手段として用いられています。

高速液体クロマトグラフィ(high precision liquid chromatography、high performance liquid chromatography:HPLC)

ほぼ均一で極めて微細な球形粒子を固定相に用いた液体クロマトグラフィです。理論段数が高く、大きい流速のもとですぐれた分離能が得られます。小型(直径約3mm、長さ10~100cm)のカラムを用い、数~数十分の操作で完了します。送液にはポンプを用い、溶離液中の成分の検出、定量は屈折率、可視紫外吸収、導電率の測定、ボルタンメトリーなどの各種計測手法にて行われます。多種類の固定相が開発され、広範囲の無機イオン、有機化合物の分離に活用されています。

おわりに

この記事では、プラスチックの組成分析を計測する方法のうち、元素分析と分離分析、クロマトグラフィの各方法について簡単に紹介しました。他の記事では、樹脂材料や樹脂加工についてより詳しくご紹介していますので、あわせてご参考ください。

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