プラスチック加工の基本知識(8)〜表面処理・表面加飾について解説

プラスチックの表面処理・表面加飾について、最近では単なる「加飾」のみならず、各種機能を付与する「機能性付与加飾」、VOC(Volatile Organic Compounds)排出問題などから「塗装レス加飾」等も注目されています。ここでは、従来からの表面加飾方法である、塗装、印刷、メッキ、各物理蒸着(PVD)、ホットスタンピングなどのコーティング技術概要を紹介します。

以下の記事でも、プラスチック加工についての解説をしています。合わせて参照下さい。

塗装について~概要と注意点

プラスチックは主に次の目的で塗装されます。

<表1>プラスチックの塗装目的
目的備考
高級感付与加工の痕や色むらを隠す。メタリック感やパール感の付与
表面硬度向上シリコーン系やアクリル系の塗料で塗装
耐候性向上各種安定剤、紫外線吸収剤の塗装
電気的性質付与導電性や電磁波シールド性の付与のための塗装

プラスチックを塗装する際の注意点は以下のとおりです。

<表2>塗装における注意点
注意点備考
表面処理脱脂等による表面の清浄化。また、結晶性樹脂(PE、PP等)は有機溶剤に浸食されにくいので塗装は困難。そのため各種前処理が必要になります。
耐有機溶剤性非晶性樹脂のように有機溶剤に浸食されやすいものは、有機溶剤の選定に注意が必要です。
耐熱性耐熱性に劣る樹脂の場合は、塗装する樹脂の性質に応じた塗装条件を選定します。
その他成形時に離型剤を用いた場合、その除去が困難となるため、塗装を目的とする場合、離型剤の選定には注意します。

印刷の種類と特徴

1)シルク印刷

メッシュ状の幕(スクリーン)にある孔からインクを対象物へ印刷する方法。昔はスクリーンに絹(シルク)を使用していたため、シルクスクリーン印刷ともよばれ、主に平面への印刷に用いられていました。最近では「回転シルク印刷」技術が登場し、円筒面を有するボトル等への印刷も行われています。

2)パッド印刷

凹版上にインクを塗布して、余分なインクを除いた後に弾力性のあるシリコーンゴム製パッドで対象物に転写印刷する方法。対象物としては、平面に限らず球状・円形形状への印刷も行われています。

3)グラビア印刷

凹版印刷の一種で、細かい凹点(グラビアセル)内にインクを溜めて、ローラーでインクを転移印刷する方法。グラビアセルに詰められたインクの量によって濃淡を表現できます。同様のオフセット印刷は対象物が紙であるのに対し、グラビア印刷はプラスチックフィルム等の紙以外のものにも利用されます。

4)フレキソ印刷

プラスチックフィルムへの印刷方法として、フレキソ印刷も挙げられます。グラビア印刷が金属製のロール上のグラビアセルによる方法であるのに対し、フレキソ印刷は弾性のあるゴムや樹脂を使用した凸版印刷であり、ポリエチレン単体の袋等への印刷に使用されています(貼り合わせたラミネート製の場合はほとんどがグラビア印刷)。グラビア印刷と比較し、印刷品質の面での課題があります。

5)レーザーマーキング

対象物にレーザー光を照射し、表面層を剥がす、溶かす、焦がす、削る、酸化させることで、表面を6~8ミクロン程度の深さで刻み込む方法。こすれや剥がれによる加飾の劣化がないのが特徴で、金属・革・石材・アクリルなど幅広い素材に対応できます。塗装品・メッキ品の表面のみをレーザーで加工して、商品名や型番などを印字処理することも行われています。

6)インクジェット印刷

「版」を作製する必要がないため、手軽にフルカラー印刷ができるという特徴があります。しかし一般的な樹脂は表面の濡れ性に課題があり、高品質印刷のためさまざまな工夫がなされています。例えば印刷する対象物の表面処理や塗出と同時にインク加熱乾燥処理を施す、またはUV硬化型の特殊インクの開発などが挙げられます。また最近では、インクジェット印刷と水圧転写技術によるプラスチック製品の加飾も行われています。

物理蒸着の原理、種類、特徴について

真空蒸着

真空蒸着とは、プラスチックに金属光沢を付与する方法の1つです。真空中では金属などが気化する温度を低くできるため、真空中で金属を加熱蒸発させてプラスチック表面に析出させます。
真空蒸着の手順は、プラスチックに下塗り(アンダーコート)を行ってから乾燥させ、蒸着金属膜を付着させてから、蒸着膜を保護するトップコートを行います。
蒸着金属としてはアルミニウム、金、銀、亜鉛等が用いられますが、装飾用としてはアルミ蒸着が主流です。また装飾目的以外では、ガスバリア性を付与した機能性フィルム、レトルト食品包装材などでも利用されています。

<図1>真空蒸着法簡略図
<図1>真空蒸着法簡略図

2)スパッタリング

スパッタリングは、対象物(プラスチック)を陽極側に、ターゲット(コーティング材料)を真空装置内に配置して行われます。装置内に充填されているAr(アルゴン)ガスをイオン化し、これをターゲットに衝突させて、そこから飛び出したターゲットの分子を薄膜にしていく方法です。
スパッタリング法ではほとんどの金属メッキが可能であり、真空蒸着では困難であったCr(クロム)メッキや、ABS樹脂以外の各種樹脂にも金属メッキができるという特色があります。 そのため使用分野も広く、スパッタリング製品は装飾用として、また自動車・弱電・光学・各種産業機器など幅広く応用されています。その反面、他の加飾方法と比較して成膜速度は遅く、面積あたりのコスト高が課題とされています。

<図2>スパッタリングの簡略図
<図2>スパッタリングの簡略図

3)イオンプレーティング

真空蒸着法とほぼ同じ原理で、異なるのは、真空装置内で放電を起こしてプラズマを発生させ、そこに蒸発させた金属粒子を通過させてイオン化し、対象物(プラスチック)に電子的に吸着させて皮膜を形成する点です。これにより蒸着法に比べ、より密着性の強い膜を作ることができます。最もポピュラーな膜は金色の窒化チタン膜ですが、処理条件によって、シルバーからブラウンまで幅広い着色が可能です。また、チタン以外の金属、窒素以外のガスを用いたカラフルな色のコーティングも実用化されています。

ホットスタンピングの原理と特徴について

プラスチックに金属光沢を付与する、あるいはロゴやデザイン等を印刷する方法として、ホットスタンピングがあります。箔押しともいわれます。薄いプラスチックフィルムに加飾層と接着層を積層した転写箔を用いる加飾方法です。
対象物(プラスチック)に転写箔を重ねフィルム側から加熱・加圧することで、加飾層がフィルムから剥離して対象物に付着します。転写箔の作製には、コストがかかるため、大量生産向きといえます。ホットスタンピングには、ラバー押し、刻印押し、木目模様押しなどがありますが、基本原理を以下に示します。金属製刻印を加熱し、転写箔をこの凸部で成形品に押し付けて加飾を施します。

<図3>ホットスタンピングの簡略図
<図3>ホットスタンピングの簡略図

その他表面加飾方法について~熱転写とメッキの概要

1)熱転写

あらかじめデザイン等を印刷した専用シートを用いて加熱加圧により対象物に転写する方法です。ホットスタンピングとは違い転写箔ではなく、印刷したシートを使用するので、多色刷りが可能です。
通常の専用シートは比較的容易に入手でき、シートに柔軟なフィルムを用いればコップやボトル等のプラスチック製品に転写できるため、加飾方法としては簡便です。また専用シートに機能性転写フィルムを用いることで、耐擦傷性、防汚性、導電性、紫外線カット性、反射防止性、耐溶剤性などの機能を素材表面に付加することも可能となります。

2)メッキ

主にABS樹脂に対し、電気不良導体であるプラスチックにも金属光沢を付与しメッキ処理を施すことができます。ABS樹脂は、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂であり、三種の成分から構成されています。このブタジエン成分を酸化溶解して投錨効果を有する表面として無電解学メッキと電気メッキを行うことで、表面にメッキ皮膜が形成できます。

まとめ

ここではプラスチックの2次加工のうち、表面処理・表面加飾についてご紹介しました。他の記事では、プラスチック材料の物性測定についても分かりやすくまとめていますので、そちらもあわせてご参考ください。

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