プラスチック加工の基礎知識(1)~加工手順や選定ポイント、各加工方法のメリット

さまざまな用途に使用されているプラスチック。それらは用途に応じて、いくつもの加工がされています。しかし、それらの手順や特徴、用途を知らずして、加工方法を選定することはできません。まずはプラスチック加工の基礎知識について解説します。

以下の記事では、プラスチックの各加工方法について解説しています。合わせてご参照ください。


▽プラスチック加工の基礎知識シリーズ

プラスチック加工の基本知識~成形加工プロセス

まず、プラスチック成形加工の一般的なプロセスを示します。この記事では以下の図の各プロセスにおいて、押さえておくべきポイントを説明します。

<図1>成形加工の手順
<図1>成形加工の手順

要求性能の検討の際に押さえておくべきポイント

まず、どのようなプラスチック製品を作るのか、日用雑貨品か産業用品か、それはどのような形状となるのか、丸棒状、板状、フィルム・シート状、チューブ状、パイプ状、ボトル状かを決定して、そこで要求される機能を確認していきます。

台所用品や文具・おもちゃ類などの日用雑貨の場合、良好な成形性と軽量性や一定の強度と安全性があれば特殊な機能は不要ですが、産業用品の場合は要求される機能が各分野で異なるので、成形する製品に応じて必要な機能を挙げて、それに対応する要求性能を検討するようにします。

一般的な要求性能で挙げられる項目を以下に示します。これらの要求性能に対して、プラスチック材料の物性データを検討しながら、どのデータが対応するのか、もしピッタリと適合するデータがない場合には、その代用特性値(例えば、耐熱性ならば軟化温度、荷重たわみ温度、耐熱温度、等)を参考にします。

<表1>要求性能の例

項目 内容
強度 荷重の大きさ・かかり方(短期か長期、繰り返し)・負荷速度、応力の種類
寸法 寸法公差、寸法安定性(クリープ、線膨張、吸湿による寸法変化)
外観 色相、光沢、シボ(シワ模様)
機能性 電気的性質、摩擦磨耗性、表面硬度、光学的性能、耐薬品性、耐熱性、等
2次加工 接合、加飾、機械加工の必要性の有無
使用環境 どんな場所で使用する製品か(温度、湿度、屋外、使用時間)
その他 リサイクル性、廃棄処理、経済性

 

製品設計における要求性能については、すべての物性を検討する必要はありません。設計しようとする製品機能として要求される材料物性を重点的に検討すればよいのです。例えば、難燃性が要求されていなければ、その材料の難燃性の検討は必要ありませんし、電気部品でなければ、電気的性質は無視することもできます。

とはいえ、要求性能の検討においては、主要となる性能だけでなく、その他に求められる性能(副性能)、付加価値化のための性能などは、成形品の用途に応じて検討しておいたほうがいいでしょう。これらも併せて考えておくことは、材料の選定時の必要条件となります。 例えば、電気・電子部品であれば、次のような検討を行うことになります。

<表2>電子部品設計における検討例

検討項目 確認項目
主要性能 電気的特性 電気絶縁性、絶縁破壊電圧、誘電圧、耐アーク性
その他の性能 耐久性 機械的強度、耐熱性、耐薬品性
要求形状の確認 成形性 要求形状に適する加工法の確認
経済性 コスト 材料コスト、成形品の価値と生産量の確認、成形機コストの確認(自社製か、専門業者による成形か)
その他 安全性 製造環境や廃棄物処理での安全性確認

 

一方、構造用プラスチック成形品では、どんな成形品であっても、剛性、延性、耐衝撃性、耐熱性という必須の「基本物性」を無視できません。これらの四要素は、成形品設計のための基本物性としてだけではなく、成形品の信頼性設計のためにも必要です。

また、最近では、軽薄短小化や製造原価の低減策などにより、製品機器のプラスチック化も進んでいます。例えば、金属部品のプラスチック化、セラミック部品のプラスチック化、金属部品の機構変更を伴うプラスチック化(例:機械部品の静電気対策として導電性樹脂への変更、部品点数と組立工数削減のため一体成形したプラスチック部品の利用)などがあります。

各産業分野で用いられている金属部品やセラミックス部品をプラスチック化する場合では、生産性や使用するプラスチック材料の信頼性、製品使用寿命や成形品材料に求められる耐用年数、プラスチック材料に代替した場合のコスト低減の程度、プラスチック成形品に関係する諸規制、等についても検討しておかなければなりません。

また、使用する成形方法によっては、金型などの機械設備費において高額な初期投資が求められることもあるので、どの程度の生産量となる成形品なのかをあらかじめ検討しておくことも大切です。

材料の選定時に押さえておくべきポイント

一般的に、材料を選定する場合、プラスチック材料の事典やパンフレット、カタログ等のデータから候補材料をいくつかに絞り込むことになります。材料選定では、要求性能に応じた物性データだけにとらわれがちですが、どのような外観とするのか、成型加工性はどうか、材料の入手は容易か否か、価格はどのくらいか、等を検討しておくことも重要なポイントとなります。
外観と成形加工性からみた材料選定の際に検討しておくとよい項目を以下に示します。

<表3>外観と成形加工性からのチェック事項
項目 確認内容 チェック事項
外観 色相 材料の黄変度・色相変化(JIS K7373、Z8730)
光沢性 表面光沢度(光沢度計)、反射率(反射率計)
表面状態 表面粗さ(表面粗さ計)
加工性 熱安定性 熱天秤・示差走査熱量計による測定
流動性 メルトフローレート、溶融粘度特性の確認
加水分解性 予備乾燥条件等の関連データの確認
結晶性 結晶化度、結晶化速度
成形収縮性 成形収縮率の確認
離型性 離型抵抗性の確認

 

いくつかの候補材料を選んだあと、さらに絞り込んでいきます。この時点では、試験片や実用モデルを作成して、実使用条件に合わせた試験を行います。通常、この段階で選定作業は完了することになりますが、まだ要求性能を十分に満足できない場合には、要求性能の見直し、または候補材料の改良を検討することになります。この作業は、材料メーカーと共同で行う場合もあります。

加工方法の選定時に押さえておくべきポイント

成形法の種類

樹脂は大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂にわけられます。それらに応じた成形法がありますが、元来、それぞれの成形法は使用する樹脂の性質に適するように考案されたものです。したがって、成形する樹脂の種類によって成形方法はほぼ定まるので、どのような形状の成形品を作るかによって、その中から適切な成形法を選択することになります。<表4>では、各樹脂に用いられる成形法をまとめました。

<表4>各樹脂に用いられる成形法

プラスチック
材料
射出 押出 圧縮 トランスファ 積層 注型 カレンダ 粉末
(スラッシュ)
発泡 ブロー 真空圧空 参考)
成形材料関連
JIS規格
熱可塑性樹脂 ポリエチレン K6922
ポリプロピレン K6921
ポリスチレン K6923
AS樹脂 K6927
ABS樹脂 K6934
塩化ビニル系
樹脂
K67202
K6723
K6732
メタクリル樹脂 K6718
K6717
ポリエステル(PET) K6937
K6928-2
ポリアミド K6920
K6933
ポリカーボネート K6919
ポリアセタール K7364
変性
ポリフェニレン
エーテル
K7313
ポリエステル(PBT) K6928
フッ素樹脂
熱硬化性樹脂 フェノール樹脂 K6915
ユリア樹脂 K6916
メラミン樹脂 K6917
エポキシ樹脂 K6903
K6912
不飽和
ポリエステル
樹脂
K6919
ポリウレタン K7312
ジアリルフタレート
樹脂
K6918
シリコーン樹脂 K6911
○:一般的に利用、△:利用可能

 

各成形法から得られるプラスチック形状

成形方法で得られる形状を<表5>に示します。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の成形方法の異なる点は、前者が加熱溶融した樹脂を金型内に投入してそのまま成形し、冷却して固化させるのに対して、後者は溶融状態の樹脂(プレポリマー)を金型内に投入して、更に加熱・加圧によって化学反応(架橋反応)を起こさせて硬化させることです。
いずれの成形加工方法でも、樹脂の流動性(樹脂の流れやすさ)、収縮特性(成形時の樹脂の収縮程度)、熱安定性(熱による色相変化や熱分解による成形品への影響、熱分解ガスによる金型への影響)、離型性(金型からの成形品の取り出しやすさ)、等を確認してから成形条件を定めることになります。通常、どの樹脂をどのように流動させて目的とする形状に固化するかだけを考えがちですが、低コストで量産化を図るならば、金型から素早く取り出せること(離型性)も重要なポイントとなります。

<表5>主な成形法と成形形状

成形方法 主な形状(製品例) 適用樹脂
射出成形 様々な形状が可能 熱可塑性、熱硬化性
押出成形 断面形状が一定の製品(丸棒、パイプ、フィルム、シート、等) 熱可塑性
ブロー成形 ボトル形状 熱可塑性
圧縮成形 厚肉製品(インサート物がある製品も可能) 熱可塑性、熱硬化性
トランスファ成形 厚肉製品(インサート物がある製品も可能) 熱可塑性、熱硬化性
積層成形 積層版、積層管、積層棒、プリント配線板。 熱硬化性
注型成形 シート、フィルム、樹脂の塊(アクリル樹脂で出来た置物・昆虫標本、等) 熱可塑性、熱硬化性
粉末成形 大型容器(飲料水タンク、自動車のガソリンタンク、水層、等) 熱可塑性
カレンダ成形 シート、フィルム 熱可塑性
発泡成形 断熱材(冷蔵庫用、自動車のバンパー)、各種緩衝材、スポンジ 熱可塑性、熱硬化性
真空・空圧成形 各種食品容器(カップ麺等)、トレイ形状(冷蔵庫の内装部材、自動車の内装部材、精密部品の搬送用トレー、等) 熱可塑性
FRP成形 各種FRP製品 熱可塑性、熱硬化性

 

各成形法の長所と短所

次に、各成形法の長所と短所を示します。選定した成形法の特徴を確認しておくことも大切です。

<表6>各成形法の長所と短所

長所 短所
射出成形
  • 代表的な量産成形方法。
  • 成形速度が速く、各種形状製品が可能。
  • 多くの種類の樹脂が適用可能。
  • 後仕上げはごくわずかですむ。
  • 熱硬化性樹脂やFRPの成形も可能。
  • 成形機が高価。
  • 多品種少量生産では、型の取付け調節やシリンダ内の掃除が煩雑。
  • 成形品の断面が厚いと、収縮の痕や凹みができやすい。
押出成形
  • シートやフィルム押出、パイプ押出、丸棒押出、等の成形方法がある。
  • 金型構造が単純で成形機が安価。
  • 肉厚製品に適する。
  • 試作用切削材料の成形に用いられる。
  • 製品形状に制限がある。
  • 少量生産には不向き。
ブロー成形
  • ボトルの代表的な量産成形方法。
  • 金型構造が単純で成形機が比較的安価。
  • 薄肉の成型が可能(軽量化)。
  • 少量生産には不向き。
  • 製品部以外の仕上加工が必要。
  • 肉厚の精度がでにくい。
圧縮成形
  • 大型の肉厚製品に適する。
  • 成型機が単純であり比較的安価。
  • 均一な加圧による成形ができる。
  • 成形品内にインサート物(繊維や金具)を含有させる場合に適する。
  • 少量生産に限定(大量生産には不向き)。
  • 成形速度が遅く、成形品の精度は困難。
  • インサート物も加圧されるので、精細なインサート物では使用が難しい。
  • 熱可塑性樹脂成形も可能だが、専門業者が少ない。
トランスファー成形
(移送成形)
  • 成形サイクルは圧縮成形より短い。
  • 金型を閉じて材料を注入するため、成形品の製品性能が良い。
  • 軟化させた材料を注入するのでインサート物を傷めない。
  • 材料のロスがでる(カル、等)。
  • 製品強度は圧縮成形製品より劣る。
  • タブレット成形機、加熱室、高周波予熱機が必要となるため成形機は高価となる。
積層成形
  • 金型に適切な加圧ができ、かつ大型製品、厚肉製品が可能。
  • 材料のロスがない。
  • インサート物を入れやすい。
  • バリが厚く仕上げに時間を要する。
  • 厚み方向の寸法精度が出にくい。
注型成形
  • 小ロット生産が安価で早くできる。型の材質は任意であり、型は安価。
  • 成形型の設計段階で微調整が容易。
  • インサート物を入れやすい。
  • 1つの型で成形できる数量が制限される(型の耐久性)。
  • 複雑形状は不向き。
  • 成形時間が比較的長い。
粉末成形
  • 単純形状であれば内面が平滑で肉厚分布を均一にできる。
  • 金型構造が単純なため型代は安価であり、多品種少量生産に適する。
  • 成形時間が比較的長い。
  • 複雑形状は不向き(肉厚が均一にならない)。
カレンダ成形
  • 大量生産に適する。
  • 厚さの精度への対応が可能。
  • シート等の表面に模様をつけられる。
  • 大設備となるので、小ロット生産に不向き。
  • 製品形状に制限がある(断面形状が一定)。
発泡成形
  • 同容量製品に比べ、軽量化製品となる。
  • 断熱性と柔軟性がある製品を作ることができる。
  • 金型は特殊であり、付帯設備も必要となるため高価な設備になる
  • 意匠性のある製品には不向き。
真空・圧空成形
  • 金型費が安い(木型、石膏型でも可能)。
  • 多品種少ロット生産に適する。
  • 片面成形であり、複雑形状には不向き。
  • 肉厚が不均一になりやすい。

 

金型の製作時に押さえておくべきポイント

成形方法が定まったら、金型の設計に入ります。金型設計は豊富な経験と知識が必要です。また金型製造のための機械も必要であり、自社での金型設計や製造が困難な場合は、専門メーカーと共同で行うことになるでしょう。

金型の寿命は設備コストに、金型からの成形品の取り出しやすさは生産性に大きな影響を与えます。また、複雑形状の金型は複雑さに応じて高価になっていきます。

金型設計においては、金型温度と樹脂の流れ方、インサート物の有無、成形品の取り出し方、ガスの抜き方、仕上げ加工の有無、等を確認しておきます。 以下に、一般的な注意事項を示します。


(1) 金型材料の検討
金型に用いる金属としては、合金鋼、焼入れ鋼、ステンレス鋼、ベリリウム鋼や真鍮(特別な型の場合)、亜鉛合金、鋳鉄、等が挙げられます。これら各種金属の中から、型の大きさと製造費用、製造予定数、成形圧力、等を検討します。

(2) 成形用樹脂との関係の検討
使用する成形用樹脂によっては金型が腐食する場合があります。例えば、ステンレス鋼は耐蝕性がありますが、普通鋼を用いる場合はクロムメッキ処理が必要となります。

(3) 金型の検討
型構造はできるだけ簡単にして、なるべく軽量にします。また、成形品の取り出しが容易、かつバリの発生が少ないようにします。さらに、補修など微調整が可能なようにしておくとよいでしょう。

おわりに

この記事では、プラスチックの加工方法の種類、原理、特徴について解説しました。他の記事では、プラスチック材料の性質や物性測定についても分かりやすくまとめていますので、そちらもあわせてご参考ください。


▽プラスチック加工の基礎知識シリーズ

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参考文献
・『これでわかるプラスチック技術』 (高野菊雄、工業調査会)
・『プラスチックが一番わかる』(大石不二夫、技術評論社)
・『やさしいプラスチック成形材料』 (本間精一、三光出版)
・『プラスチック成形品の信頼性設計』 (冠木公明、工業調査会)

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